63 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:11:51.20 ID:ft/YjGomo
第十七夜 墓
茄子「本日もアイドル百物語のお時間となりました」
ほたる「今日は……丹羽仁美さんのお話なんですよね?」
小梅「う、うん。そう」
茄子「仁美さんと言えば、戦国アイドルとして有名ですね」
小梅「う、うん。今回も、武将の話をしてた」
ほたる「……やっぱり慕ってる戦国武将の幽霊とか会ってみたいものなんでしょうか?」
小梅「……そうみたい」
茄子「といっても何百年も前の人ですし、お話しするのも大変そうですね」
ほたる「……でも、源平合戦の落ち武者の霊が……とか、そんなお話も聞いたことがあります」
小梅「……源平に限らず、落ち武者にまつわる伝説は結構多い……。でも……」
茄子「でも?」
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小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season 2 第十六夜
シリーズスレ
白坂小梅のラジオ百物語
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64 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:12:48.53 ID:ft/YjGomo
小梅「その村の周りで起きた……小さな戦にまつわる出来事も、有名な合戦のお話にすり替わっていることが多い……らしい」
ほたる「……有名なお話に引っ張られるということですか」
茄子「法螺が大法螺になっていく感じでしょうかね」
小梅「口伝えの伝承だから……有名な方が後に残りやすかった、のかも」
ほたる「……なるほど」
茄子「伝承は伝えるほうも聞いているほうの反応がいいほうがいいでしょうし、覚えていくのにもよさそうですしね」
小梅「う、うん」
ほたる「でも、そうすると……どんどん派手になってるってことでしょうか」
小梅「……そうでもない。むごたらしい話は、柔らかめになっていくことも、お、多いから」
ほたる「ふむふむ……。でも、いずれにしても変化はしていくんですね」
小梅「だ、だからこそ面白い……」
茄子「この番組で語られたお話も、いろいろな形に変じて伝わっていくかもしれませんね。さて、それでは、仁美さんのお話に参りましょう」
小梅「うん。お聞き……ください」
65 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:13:17.17 ID:ft/YjGomo
丹羽仁美(18)
○一言質問
小梅「一回だけ霊たちと交信できるとしたら……誰とお話しする?」
仁美「慶次様!……と言いたいところだけど、慶次様は死んだ後とか出てきたくなさそうだしなー。うーん……。あ、松風とかいいかも!」
66 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:15:38.44 ID:ft/YjGomo
やあやあ、小梅ちゃん。
今日も元気に傾いてる?
え?
どうしたら傾けるかって?
んー……まあ、小梅ちゃんの場合は、その年齢にしては結構尖ったアクセつけてたりするから、十分傾いてるかも。
うん、傾いてる傾いてる。
それはともかく、アタシ、前から訊いてみたかったことがあるんだ。
小梅ちゃん、武将の霊とか、見える?
え?
見たことない?
そうなんだ……。
へえ、あんまり古い霊には会ったことないんだね。
それは、あれ?
成仏とかしちゃうってこと?
よくわからない?
そっかー……。
はい?
日本だと神格化されちゃうから、神様になっちゃうのかも?
あー、なるほどー。
幽霊じゃなくて神様になっちゃうとそうそうは出てきてくれないかー。
むしろ、社にいったら、いつでもおわすと考えれば、そっちのほうがお得かもねー。
67 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:17:54.95 ID:ft/YjGomo
あ、怪談だったね。
そうそう。
怪談って昔からあるよね。
たとえば、島左近が石田三成の寝所に寄ってくる化け物を退治したとか。
家康が住んでた頃の駿府城に、脚の生えた肉の塊が現れたとか。
昔の話は古狸とかが正体だったりすることも多いけど。
いまじゃ、実際に狸とか見ることの方が少ないから、その手の話は少ないのかな?
それはともかく、今日はアタシの知り合いの話をすることにするね。
いや、あんまり戦国関連の話ばっかりすると、お前は止まらないからってうちのプロデューサーがね。
本当は熱く語って戦国好きを増やしたいところだけど、これは小梅ちゃんたちの番組だし。
とはいえ、これから話す知り合いも、史跡巡りで知り合ったその手の趣味の仲間だけどね。
その知り合いは、アタシとは違って、史実重視の方向性でさ。
アタシは、ほら、人物重視だから。
うん。
それで、その子は、自分で歴史をいろいろ調べて、いろんなところに行ってたみたいなんだ。
古戦場跡地とか、城址とかね。
68 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:19:13.85 ID:ft/YjGomo
それで、そんな調査の中で、とある武将のお墓を調べることにしたんだって。
名前?
あー、わかんない。
アタシもまるで聞いたことなかったから、マイナーな人だと思うよ、たぶん。
ともかく、その子は色んな資料をひっくり返して、とうとうあるお寺にその武将の墓があるらしいことを知ったのね。
アタシにはよくわからないけど、お墓とか調べるといろいろと歴史的なことがわかるんだって。
お寺に資料が残ってることもあるだろうしね。
ただ、その子はその人のお墓にもうでること自体、結構重視してたみたいだね。
自分が調べてる人のお墓があったら、そりゃあ、挨拶くらいしておきたくなる気持ちはわかるかな。
ちなみに慶次様のお墓がある場所は有力な説はあってもこれって決まって無くて、供養塔が……。
あ、うん。ごめんなさい、プロデューサー、小梅ちゃん。
ええと、それで、そのお墓の前まで行ったんだけど、なにしろ古いお墓だったから、もう崩れかけてる感じだったんだって。
69 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:20:08.40 ID:ft/YjGomo
うん、墓石がね……なんていうの?
塔みたいな感じなんだけど、ちょっと割れてるところがあったりとかして。
それで、その子が行った時に、結構大きめのかけらが、足下に転がってきたんだって。
まるでいまお墓から落ちてきたみたいにね。
その子が手を広げたくらいの破片だって言ってたから、まあ、大きめだよね。
で、お墓を見ると、明らかにそれが割れ落ちたんだろう場所があって。
その子はついついかけらを拾って、その元の場所にあててみたんだって。
修復とか出来るわけもないけど、とりあえず戻してあげたいみたいな感覚で。
そうしたらね、ぴったりあっただけじゃなくて、すうっと継ぎ目が消えちゃったんだって!
うん。
古い石の表面がくっついて。
え? って驚いて引っ張ってみても全然取れないし、それどころかひびが入ってる様子もない。
表面に生えてる苔まで、最初からつながっていたかのように自然と見えたって。
70 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:20:48.51 ID:ft/YjGomo
もう、ほんとびっくりだよね!
その子自身はなんだか狐につままれたような感覚だったらしいけど、その後でとても信じられないような幸運がいくつも続いたらしくて。
『いいことしたってことかな?』
って笑って言ってたよ。
面白いよねー。
これって、歴史に名を残す人は、それなりに力を残してるってことかも。
うん、やっぱりカッコイイって思うな!
71 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:21:35.38 ID:ft/YjGomo
茄子「なかなか興味深いお話でしたね」
ほたる「……悪いほうに考えちゃうのは悪い癖なんですが、もし、そのままその人がかけらを放置してたら……」
小梅「ば、ばちがあたることも……あるかもしれない、ね」
茄子「うーん。そこまで意地悪かどうかはわかりませんけれどね」
ほたる「そ、そうですね」
茄子「でも、少なくともその人は葬られた方に畏敬の念を持ち、墓石が元通りになってほしいと願う優しい心があったことは確かですよね」
ほたる「やっぱり、よくしてくれる人にはよくしたいと思うものかも……しれませんね」
小梅「う、うん。ただ、この武将の人みたいな場合はともかく、たちの悪い霊だと……」
ほたる「……だと?」
小梅「助けてくれるって思い込んで、すがりついてきちゃうことも……」
72 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:22:19.41 ID:ft/YjGomo
茄子「なるほど……。そういうこともありえるんですね」
小梅「う、うん。そういう場合は、悪意とか善意とか関係なく……。違う世界の存在だから、いろんな影響が……出ちゃう」
ほたる「なるほど……。それで、今日は偶然の接触から生じたオカルトなお話が次のコーナーなわけですね」
小梅「う、うん」
茄子「では、そろそろ次に参りましょうか……」
第十七夜 終
73 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/08(土) 23:23:23.49 ID:ft/YjGomo
ということで以上です。
仁美ちゃんは、どれくらいの知識量なのかあんばいが難しいですw
74 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/08(土) 23:30:48.66 ID:QYbPD9JDO
石って水と並ぶ心霊源だよな
知り合いにも石に纏わる話持ってる人多いし
75 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/09(日) 00:45:54.62 ID:NX1BUCsR0
石は意思に通じ、遺志にも通じるからなあ
76 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/09(日) 01:07:43.33 ID:9zg4Nlp/0
乙です
転載元:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 Season 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370268734/
コメント
コメント一覧
普通に歴史詳しくてもいいのに
正しい史実を知ることは難しいから…
もう挽回は無理だろうな。
無双やBASARAで歴史物(というか美形武将が)好きになったニワカの線は。
案外大河ドラマ制作のスタッフにいたら良い仕事したかもな丹羽ちゃん。
延々と微妙にズレた戦国ホラーを披露する丹羽ちゃんも面白そう
スタッフはにわか知識について響の沖縄弁とかから学ばなかったのかね
霊にまとわり憑かれるケースって、余計なトコに行ったり
また余計な事をしたりすると―――だったりだけど、
然るべき場所で然るべき事をすると良いリアクションがある話も多いね
まるで、こぶとりじいさんの話みたいに