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トップページ水瀬伊織 > P「受験か」伊織「そうよ」.Part1



1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/15(土) 03:17:45.38 ID:tQ+SaEXW0





「今、いい?」

パソコンから顔を上げると、伊織が立っていた。
一枚のプリントを手に持っている。

P「駄目」

伊織「ここなんだけど」

P「駄目って言ってんじゃん!?」

伊織「駄目でも聞くわ」

P「はいはい……っと、はいよ、どこだ?」

伊織「ここ」





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2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:21:04.51 ID:tQ+SaEXW0



プリントの、伊織が指し示した場所を見る。
問題にざっと目を通し、伊織の回答も確認しておく。

P「ああ、これな」

俺は立ち上がってホワイトボードのマーカーを取った。
伊織は俺の椅子に座る。

ホワイトボードに『U』の形をざっと書く。

伊織「ちょっと、それはわかるわよ」

P「いいから確認だ。一応な」

伊織「……はーい」

……しかし、素直に頷くようになったな。
思いながら、『U』の字の左上に接するように○を描く。




3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:22:10.93 ID:tQ+SaEXW0



P「んじゃ、ここの位置エネルギーを100とするか」

○の近くに位=100と書く。

P「この時物体は静止している。運動エネルギーは?」

伊織「0」

P「そうだな」

運=0と記入する。

P「じゃ、手を離すと物体はレール上を転がっていった。そして一番下まできました」

『U』の字の底に○を描く。

P「この時の位置エネルギーは?もちろん、一番下が基準面な」

伊織「0。で、運動エネルギーは100」

P「そうだな」

位=0、運=100と○の近くに書きこんだ。




4VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:23:30.82 ID:tQ+SaEXW0



続けて、『U』の字の右上に○を描く。
一つ目に描いた○と同じ高さ。

P「はい、それぞれ?」

伊織「運動エネルギーが0、位置エネルギーが100」

P「オッケイ」

それぞれ記入する。

今度は一つ目に描いた○と一番下の二つ目の○の間、やや下寄りにもう一つ○を描いた。

P「じゃあここ。運動エネルギーを……25にするか」

描いた○の近くに運=25と書く。

P「はい、位置エネルギーは?」

伊織「75」

P「おし」

書きこむ。
ここからは口頭でいいだろう。




5VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:24:30.77 ID:tQ+SaEXW0



P「位置エネルギーと運動エネルギーを合わせて何エネルギー?」

伊織「力学的エネルギー」

P「じゃ、その力学的エネルギーはどの場合もいくつになってる?」

伊織「100」

P「そのことを?」

伊織「えっと、力学的エネルギー保存の法則」

P「よし。ちなみに一番物体の速さが速くなっているのはどこだ?」

伊織「一番下」

P「両端の物体の高さは?」

伊織「どちらも同じ高さ」




6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:25:25.51 ID:tQ+SaEXW0



P「おし、基本の確認終了」

伊織「だから大丈夫って言ったでしょ」

まあ、このくらいはぽんぽん答えてもらわないとな。
ボードをひとまず消し、今度はひらがなの『し』の字を少し横に引き伸ばしたような形を描く。

P「んじゃ問題のこれだ」

言いながら『し』の字の左上に○を描いた。

P「さっきの基本ができてる伊織様ならきっとできるぞ?」

伊織「はいはい、お願いしますー」

返す言葉にもどこか元気がない。
当然か。
ちらりと時計を見ると、時間は10時を回っていた。




9VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:29:50.16 ID:tQ+SaEXW0



レールから飛び出したあたりの位置に○を描く。

P「こいつが最高点に達したとき、こいつ、止まってるのか?」

伊織「?」

しばらく待つ。

伊織「止まって……ない」

P「そう。横には移動してるだろ?だから……」

伊織「……もうわかったわ」

P「……物体の運動エネルギーは?」

伊織「もう!わかったって言ってんでしょ!?」

この半分怒った顔。
これはちゃんと納得した時の顔だ。これなら大丈夫だろう。




8VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:27:08.41 ID:tQ+SaEXW0



P「初めに物体はこの位置。手を放したら運動を始めて一番下を通り、レールから飛び出しました。そういう問題だな?」

飛び出した後、物体はどの高さまで上がるか。
選択肢は三つ。

ア、最初の物体の位置より、高く上がる
イ、最初の物体の位置と同じ高さまで上がる
ウ、最初の物体の位置より、低い位置までしか上がらない

伊織はイに○をつけていた。

伊織「そうよ。だから、さっきと同じならエネルギー保存で同じ高さまで上がるじゃない」

P「まあな……伊織、一個質問。飛び出した後の物体が最高点に達したときのことを考えてくれ」




10VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:30:52.32 ID:tQ+SaEXW0



P「ほい、んじゃ俺に説明してくれ」

伊織「えっと……横方向には運動してるから、運動エネルギーが0じゃないってことでしょ?運動エネルギーが0じゃないってことは、位置エネルギーは100にはならないから、100以下だから、元の物体と同じ位置までは上がらないってこと」

伊織「これで満足?」

P「ああ。オッケイ」

伊織「はぁ……わかってみると簡単ね」

P「まあな。ただ、この問題はよく出るパターンだけど初見の人なら8割くらいは間違える問題だぞ。今間違っておいてよかったな」

伊織「ふん」

一応のフォローもお気に召さなかったらしい。
伊織的には、正解の2割に入りたかったんだろう。




11VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:32:27.80 ID:tQ+SaEXW0



P「あとはいいのか?」

伊織「うー……うん」

P「んじゃ、キリのいいところでそろそろ帰るぞ。もう10時半になる」

伊織「そうね」

伊織は自分のデスクに戻っていく。
その背中を見ながら俺は考える。

だいぶ勉強する体力もついてきたと思う。
基本的な動きや勉強法も完璧だ。
ただ……これからは本当に、精神的にも肉体的にもきつい時期に入る。
伊織といえども。

弱さを見せない分、心配でもあるんだよな。




12VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:32:59.97 ID:tQ+SaEXW0



伊織「ちょっと、終わったわよ」

伊織の声で我に返る。

伊織「そろそろって言ってたアンタが準備してないって、どういうわけ?」

P「悪い悪い、すぐ準備するよ。あ、チョコ食うか?」

伊織「うん」

俺がデスクの引き出しから出したミニチョコを、伊織は素直に受け取った。
その間に俺は手早く準備を済ませる。

伊織「……おいしい」

P「おし、行くか」

伊織「うん」





13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:34:11.55 ID:tQ+SaEXW0





事務所からの帰りは、伊織を送っていく。
この習慣ができてから……もう何か月だ?
3、4か月ぐらいか?

以前は新堂さんが伊織の送迎をしていたが、現在帰りに送るのは俺になっている。
理由は

P「あー、じゃあ目ん玉のつくり。覚えてなきゃならないとこ全部」

伊織「網膜、視神経、虹彩……レンズ、または水晶体」

P「完璧」

伊織「簡単すぎ。次」

これだ。




14VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:34:53.12 ID:tQ+SaEXW0



車内では口頭でやり取りできる一問一答形式の出題を、俺が出し、伊織が答える。
これは伊織が言い出したことだった。

P「数学。三平方で覚えてなきゃならないやつ。1:1:√2みたいなやつな」

伊織「えーと……3:4:5と、1:2:√3、あとは」

P「あと一個」

伊織「ちょ、言わないでよ!思い出すから!!」

P「へーへー」

伊織「……」




15VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:35:24.09 ID:tQ+SaEXW0



伊織「……ひんと」

P「全部整数、ちょっと数字が大きい」

伊織「!……5:12:13!!」

P「正解」

伊織「ふふん」

P「……すごいすごい」




17VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:37:33.96 ID:tQ+SaEXW0



いくつかやり取りをした後、大体は世間話に移す。

P「この間の模試、解き直しやってるか?」

伊織「やってるわ。あ、それも質問がいくつかあったんだった。明日持ってくるから」

P「ああ」

勉強方法のことや、

伊織「……って、わかってるわよそんなこと!律子だってそう言ってたし!」

P「……直接は言ってないだろうな」

伊織「い・ち・お・う・ね!でも次は言っちゃうかもしれないわ!」

P「勘弁してくれ」

仕事の愚痴など。




18VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:44:15.82 ID:tQ+SaEXW0



なるべく勉強漬けにならないよう、一応配慮しているつもりだが……伊織はわかってて話をしているんだろうな。
その上で、この時間が多少の息抜きになっていればいいと思う。

伊織「ちょっと聞いてる!?」

P「聞いてるって!」





19VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:45:13.61 ID:tQ+SaEXW0





P「おし着いた」

伊織「ありがと。アンタ明日は?」

P「んーと……ちょっと待った。明日結構……」

鞄からスケジュール帳を取り出し、確認する。

P「そうでもなかった。8時くらいには戻ってる。遅くても9時」

伊織「わかったわ」




20VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:46:32.35 ID:tQ+SaEXW0



P「ゆっくり休めよ。いつも言ってるが……」

伊織「無理なんてしてない。いっつもわかったって言ってるでしょ」

P「……そうかい」

助手席から伊織が降りる。

伊織「……いつもありがとね」

P「お……」

伊織「おやすみ」

ドアが閉じる。
その向こうで伊織が手を振っている。
遠く敷地内に見える玄関には、いつものように(顔は確認できないが)新堂さんが立っていた。

俺も軽く手を振って、車を出す。





21VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:47:51.55 ID:tQ+SaEXW0



―季節は冬の初め、十二月。

水瀬伊織。
元俺の担当アイドルにして、現竜宮小町のリーダー。

そして、今年高校受験を控える受験生だ。




プロローグ了、つづく




22VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 03:52:15.03 ID:tQ+SaEXW0



って感じでちょくちょく書いていきたいと思います。読んでくれた方ありがとうございました。

補足:以前書いた、伊織「あ~よかった」、ってやつと同じ設定で書いてます。知らなくても問題ないように書くつもりで   はいます。
   URLは忘れましたスマソ

今回はプロローグでしたが、次回以降は4月から時系列で書いていく予定です。もしよろしければお読みください。




28VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:06:04.90 ID:WidONYcl0



―4月

年度が変わり、新しい始まりの季節。
別れと、そして新しい出会いの季節でもある。

当然、この765プロにも新しい出会いが―

小鳥「えー!?新しい事務員さん、入ってこないんですかあ!?」

ありませんでした。





29VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:06:54.30 ID:WidONYcl0



高木「うむ、応募は殺到したのだがどうもティン!とくる人材がいなくてねえ。いやあ、まいったまいった、はっはっはっ」

小鳥「まいったじゃないですよ!ただでさえみんな知名度が上がってきて忙しくなってるのに、このまま私ひとりじゃほんと過労死しちゃいますよ!?」

高木「うむ、音無君は本当によく働いてくれているよ」

小鳥「全然わかってないぴよーーー!!」

律子「……ぶっちゃけ、プロデューサーも足りてませんよね?」

P「……言うな。現実が重くのしかかってくる」

アイドルが売れてきているのは喜ばしいことだが、そうすると裏方の負担も増える。

P「はあ……ほんと、今年も乗り切れるかな……?」

律子「ですねえ」

こんな会話をしている最中も、俺と律子はお互いも見ず、手も止まらない。
まあ、なんだかんだで去年も乗り切ったから大丈夫……だと思いたい。




30VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:08:06.17 ID:WidONYcl0



とまあ、新年度になって顔ぶれは変わらないとはいえ、全く関係ないわけでもない。
うちの事務所のアイドルの多くは学生だ。
新しい学年になり、いろいろと変化もあるだろう。

俺たちも学校の様子を聞いたり、年間行事予定表を集めたりと何かと忙しい。

あずさ「……学生さんは大変ねえ」

貴音「そのようですね」

あずさ「懐かしいわあ……」

貴音「おせんべい、食べますか?」

P「……」





31VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:08:59.59 ID:WidONYcl0





数日後。
基本的には大過なく過ごさり、新年度の慌ただしさも収まってきた、そんな日の午後。

P「お疲れさまでーす」

小鳥「あ、プロデューサーさん、お帰りなさい」

P「お疲れです。あ、来客中ですか?」

奥の応接室から話し声が聞こえた。
声量を落として音無さんに尋ねる。

小鳥「はい。ええと……」




32VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:10:36.43 ID:WidONYcl0



応接室のドアが開いた。
中から見覚えのある男性と社長が出てくる。

俺は姿勢を正して会釈をした。
音無さんは出入り口のドアを開けて、その場に控える。
男性は俺の方をちらりと見た後、社長に声をかけた。

男「じゃ、また連絡する」

社長「ああ、待っているよ」

重みのある声でそういった。
俺は会釈したまま男性の顔を記憶の中から検索していた。

見送りのため、社長は男性と共に外に出て行った。
音無さんが戻ってくる。




33VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:13:14.77 ID:WidONYcl0



P「……あの方は?」

小鳥「伊織ちゃんの、お父様です。ほら、水瀬グループの」

そうだ、伊織の父親か。
道理で見覚えがあるはずだ。
伊織の父親、そして水瀬グループの社長。

P「珍しいですよね。何の用事だったんですか?」

小鳥「さあ?私も詳しくは……」

ドアが開いて、社長が戻ってくる。

高木「ふう……お、ご苦労様だね」




34VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:14:14.49 ID:WidONYcl0



P「あ、お疲れさまです。なんだったんですか、伊織の父親」

高木「うむ……詳しくは律子君が戻ってきてから話そうと思うんだが、水瀬君……伊織君の進路のことでちょっとね」

P「し、進路……ですか?」

高木「うむ、さしずめ進路相談と言ったところかな?はっはっはっ」

P「……」

高木「……音無君、お茶をもらえるかな?」

小鳥「あ、はい」

高木「まあ、詳しくは今日の夜にでも話そう。君は事務所に戻る予定だったかな?」

P「は、はい、一度戻ってこようとは思っていましたが」

高木「ではその時に律子君も交えて話そう」





35VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:15:38.60 ID:WidONYcl0




―夜

高木「……ということで、ひとまず今日の話は落ち着いたよ」

P「……」

律子「……そうですか」

律子はしゃんと背筋を伸ばして、頭を下げた。

律子「申し訳ありません、本来ならば私が配慮するべきでした」

高木「いや、いいんだ。対応が後手に回ってしまったのは私のミスだ」

高木「それに彼は私の友達だ。私に直接話すのが一番手っ取り早かったんだろう。彼も多忙な男だからねえ」




36VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:20:07.29 ID:WidONYcl0



話はこういうことだった。

伊織は今年中学三年生になり、来年には高校生だ。
ということは、通常であれば行きたい高校を選び、その高校の入学試験を受ける必要がある。
いわゆる受験だ。
が、水瀬グループの令嬢ということもあり、基本的には父親の意向で入る高校が決められており、その点については以前から約束していたため伊織も特に反対ということではないらしい。
ここまではまあいい。

ただ、父親には気にかかっていることが一つあった。
伊織の学校の成績があまりよろしくないことだ。
俺は、もともと伊織は勉強はできる方だったと記憶している。
しかし、伊織は売れ出した時期が早かったこともあり、去年から仕事の時間が増えてきていた。
そして今は竜宮小町だ。
765プロの一番の稼ぎ頭。
学校の成績も維持しろというのは正直酷だろう。
俺たちならわかる。
いつもアイドルを見ている俺たちなら。

しかし、父親の立場で言えばそうではない。
もともと伊織の父親は伊織のアイドル活動についてあまり賛成している方ではなかったはずだ。
それでも、今までは伊織の意志に表立って反対することはなかった。
だが、今回ばかりは、ということらしい。




37VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:26:32.41 ID:WidONYcl0



高木「水瀬君を一年も活動停止にすることは、正直難しいねぇ……」

律子「でも、お父様のおっしゃっていることもその通りです。いくら私立で入学ができるからとはいえ、中学の勉強がおろそかになっているのは……」

高木「そこなんだよ、問題は」

父親は、社長の方から本人に一年間活動停止を言い渡してくれないかということだった。
受験という名目であれば周囲も納得するし、今までの遅れをこの機会にしっかり取り戻させたい、と。
社長は本人の意向も尊重したい旨を伝え、一度本人と家庭で話し合ってほしいと提案した。
その上で必要であれば、三者面談でも四者面談でも行い今後どうするか決定しようと。




38VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:27:35.79 ID:WidONYcl0



高木「伊織君はよく頑張ってくれているが、どうしても限界はある」

高木「しかし、彼の娘を思っている気持ちも理解できる。真面目な男だからね。両方を知っているからこそ、私もあまり強くは言えなくてね」

P「……親としては、当然の考えですからね」

高木「うむ、この先アイドルを続けるにしろそうでないにしろ、しっかり勉強をしてほしいというのは親のさがというものだよ」

律子「……」

小鳥「どうするのが一番なんですかねえ」

P「悩みどころですね」




39VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:28:48.23 ID:WidONYcl0



律子「私、一度伊織と話してみます」

P「律子」

高木「いや、それはやめておいた方がいいだろうね」

律子「なぜですか?」

高木「家庭で一度話し合うということで今回の話は納まった。きっと伊織君と彼…父親と、奥さんは進路について話しあっているはずだ」

律子「はい」

高木「さらに、学校でも進路の話は出ているはず。両親に言われ、学校でも言われ、その上律子君、君にもその話をされたらどうだろうか?」

律子「それは……」




40VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:29:24.76 ID:WidONYcl0



P「……」

確かに、社長の言う通りだ。

P「……律子」

律子「……はい」

P「悩んでるようだったら、話を聞いてやればいいんじゃないか?いつでも話は聞くって伝えてやれば。それなら構いませんよね?」

高木「うむ。むしろ、そうしてやってくれたまえ」

律子「……はい」




41VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:29:57.23 ID:WidONYcl0



P「あんまり、一人で抱え込むなよ。だから、社長だって俺たちがいる場所で話してくれたんだから」

律子「……」

高木「では、この件は先方からの連絡待ちだ。その後、改めて対策を考えよう」

律子「……ふふ」

高木「うん?」

小鳥「ねー、律子さん」

律子「ほんとですね」

二人は顔を見合わせて、得心がいったように笑っている。




42VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:31:05.98 ID:WidONYcl0



P「どうした?」

律子「いえいえ、うちの男の人たちは極端だなあと」

小鳥「こういう頼りがいのあるところを、もう少し普段の時にも見せてくれればねー」

高木「おいおい、ちょっとひどいんじゃないかね?いつも頼りになるだろう?」

律子「そうですね、ありがとうございます。……プロデューサー殿も」

P「あ、ああ……俺も社長と同じ感じだったの?」

小鳥「もうちょーっと、普段から今のオーラを出してれば、律子さんもコロッっといっちゃうかもしれませんよぉ?」

律子「ないですね」

P「……」

高木「……社長と同じ感じって、どういうことかね?君ぃ」

P「あ、いや、その……!」





43VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:31:33.53 ID:WidONYcl0



律子「ふふ……」

律子「……」

律子「やっぱり、伊織のプロデューサー……ね」

小鳥「律子さん?どうかしました?」

律子「……いいえ、なんでもないですよー」





44VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:32:22.16 ID:WidONYcl0





P「んがー……」

凝り固まった体を伸ばす。
筋肉を緊張させ一気に力を抜くと、じんわりと体にしびれが残った。

小鳥「どうぞ」

音無さんがお茶を持ってきてくれる。

P「あ、ありがとうございます」

小鳥「まだ時間かかりそうですか?」

P「まあひと段落はしましたが……もうちょっとやっとくと明日楽なんで。音無さんは何もなければお先にどうぞ」





45VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:33:18.59 ID:WidONYcl0



音無さんはそれには答えずに、ちらりと応接室の方を見た。

小鳥「……あっちも長いですね」

P「そうですね」

応接室では伊織と律子が何やら話している。
らしい。
俺が事務所に戻ってきたときにはもう応接室に入っていたので、少なくとも30分以上は経っている。

P「来た時の伊織って、どんな感じでした?」

小鳥「うーん、私にはいつも通りに見えましたけど」




46VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/15(土) 23:34:41.63 ID:WidONYcl0



聞いた話では、伊織の方から律子に声をかけたということだ。
正直、話の内容が気になって残っているところもいくらかはある。

その時、ちょうどドアが開いて伊織が出てきた。
ちょうどそちらの方を見ていた俺の前に、つかつかと歩いてくる。

P「お……」

伊織「あんた、今から私の専属家庭教師ね」

伊織の後ろでは、律子が手を合わせてこちらに申し訳なさそうな顔を向けていた。




つづく




48VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/15(土) 23:45:05.13 ID:OXQCpADSO


乙~
そう考えたら765の成績どんな感じなんだろ?個人的には千早は当然偏差値72です・・・結構有りそう




49VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/16(日) 07:58:57.33 ID:JDxW6sQVo


>>48
偏差値70↑って相当だな
超一流クラスじゃないか?
と思って調べてみたら、一番近くてわかりやすいのが慶應義塾高等学校だった




51VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 18:55:40.72 ID:eVIX8xcw0



P「あー……」

目の前には仁王立ちの伊織がいた。

P「……何言ってんだお前?」

伊織「だから、あんたは私の専属家庭教師になるの。今日から。今から。この瞬間から」

P「それはもう聞いた」

伊織「あ、よろしくお願いします」

そう言って伊織はぺこりと頭を下げた。




52VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 18:58:22.41 ID:eVIX8xcw0



伊織「『きちんと頭を下げてお願いする』、どう?ちゃんと言われた通りにしたわよ?」

P「……ちゃんと説明してくれ。意味が不明だ」

こいつの言うことはいつも唐突だ。
慣れたつもりが、いつも俺の予想の斜め上のちょい内角を攻めてくる。

P「俺もある程度は事情は聞いてるがな、何がどうなれば……」

律子「……プロデューサー殿」

P「律子」

律子「詳しくは私が説明します。伊織はもう帰りなさい」

伊織「あらそう?じゃ、頼んだわよ」

そう言って伊織は事務所を出て行った。
あとには呆けた顔の俺と、律子、音無さんだけが残される。




53VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:00:23.57 ID:eVIX8xcw0



糸が切れたように、律子は椅子に沈み込んだ。

P「意味が分からん」

律子「はあぁ……私も疲れましたよ」

小鳥「お、お疲れさまです。長かったですね」

律子「あの子を制御するのはほんと、エネルギーがいりますね」

律子「ま、今回は制御できなかったに近いですけど」

P「んで、どういうことだ?お疲れのとこ悪いが」

律子「ああ、はいはい。えーとですね……」




54VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:01:23.95 ID:eVIX8xcw0



小鳥「あのー……」

音無さんが時計を指差しながら言う。
時間は10時半を回っている。

小鳥「とりあえず今日はもう帰りません?そろそろ明日に響きそうな時間ですし……」

P「あ、もうこんな時間ですか」

律子「ふぅ……そうですね」

P「じゃあ、お二人さんは俺が送りますよ」

P「律子、そん時に話聞かせてくれ」

律子「うぃー……」

珍しく律子が伸びていた。

P「……はあ。面倒の予感」





55VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:02:04.37 ID:eVIX8xcw0





―車内

律子「えーと、順を追って話すとですね」

律子が話し始める。

律子「まず、伊織は家で両親と話し合いをしました」

小鳥「この間のことですね」

律子「ええ。で、お父様からは勉強は大丈夫なのかと聞かれたと」




56VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:03:03.01 ID:eVIX8xcw0



小鳥「正直どうなんですか?」

律子「まあ学年の上位三分の一には入ってるってことでしたけど」

P「……かなり落ちてるな」

P「以前はトップ10前後だったはずだ」

小鳥「ぴよっ!?そ、そんなに頭良かったんですか?伊織ちゃんって!」

P「まあ、お家柄もありますが……」

律子「基本負けず嫌いですからね」

P「んだ」




57VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:05:59.37 ID:eVIX8xcw0



律子「戻しますね。伊織は大丈夫と言いました。お父様はそれでも心配でした」

律子「実際成績は落ちているじゃないかと」

P「まあなあ」

律子「それから勉強の大切さ、高校に入ってから勉強について行けなくなることの怖さ、将来についてなど、延々とお話しされた、と」

小鳥「うつむきながら堪えている伊織ちゃんが目に浮かびますねぇ……うふふ」

P「妄想は後にしてください」

律子「そこで伊織は、どうしたらお父様が納得してくれるのかを考えました」

P「……なんとなく予想できた。当たってほしくはないが」




58VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:07:41.09 ID:eVIX8xcw0



律子「竜宮小町リーダー兼負けず嫌い日本代表、伊織ちゃんは言いました」

律子「『ならお父様が安心できるように、実力で高校に受かって見せます!』」

小鳥「……当たってました?」

P「……見事に」

律子「それで、お父様が指定した高校を受験して、見事合格してみせることになった、と」

律子「……めでたしめでたし」

P「はあ……あいつはほんと、どこまでいっても伊織だな」




59VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:09:34.29 ID:eVIX8xcw0



小鳥「でもなんでプロデューサーさんが家庭教師なんですか?」

小鳥「伊織ちゃんならほら、すごくいい塾とか通えそうじゃないですか」

律子「それは私も聞きたかったんですが……プロデューサー殿って、家庭教師をやってたことあるんですか?」

P「家庭教師じゃなく、塾講師な」

律子「へえー、ちょっと意外ですね」

小鳥「……先生……プロデューサーさんが先生……」

後ろから怪しいつぶやきが聞こえてくる。

律子「それでですか。伊織が、あいつ数学と理科ならできるわよ、って言ってました」

P「以前ちらっと話したことを覚えてたんだろうな。……失敗した」




60VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:10:07.06 ID:eVIX8xcw0



律子「一応私は止めたんですよ?かなり厳しいから考え直した方がいいって」

律子「万が一受験するにしても、きっちりスケジュール調整して、塾や予備校に通ったほうが効率もいいだろうし」

P「……」

確かに、律子の言ってることは正しい。
しかし。

P「それじゃ、あいつは納得しなかっただろ」

律子「……よくご存じで」

律子の提案を次々にはねのける伊織が目に浮かぶ。
不覚にも少し笑ってしまった。




61VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:13:03.87 ID:eVIX8xcw0



P「あいつ、普通の提案を嫌うからなあ。期待通りじゃなくて、期待以上の結果を出したがる癖がある」

律子「基本的にはいいことなんですけどね」

P「まあな」

父親を見返すために、よりハードルの高い「受験」で実力を認めてもらう。
いや、認めさせる、か。
しかも両親に頼んで塾に通ったり、今までの仕事を減らしたりすることなく。

P「かっこいい伊織でいたいんだよな、あいつ」

律子「さすが、元プロデューサー」

P「元言うな。まあ事実だが」

それが伊織のいいところであり、俺が惹かれた部分でもある。
が、今回ばかりは正直分が悪いと思う。

小鳥「……放課後……教室……いや保健室?……」




62VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:14:03.73 ID:eVIX8xcw0



P「ところでさ」

律子「はい?」

律子の話を聞いて気になっていることが2つあった。

P「一応確認なんだが」

P「まず、合格だったら父親を納得させられるってこと。これはいいが」

P「……万が一、不合格だったら?」

律子「……あの子も、最初は言うのを嫌がってました。絶対に合格するから大丈夫、って」

P「あ、もしかしてそれで時間かかったのか?」

律子「それもありますね」




63VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:15:29.25 ID:eVIX8xcw0



P「で、どうなんだ?」

律子「……お父様が社長におっしゃったように、一年間勉強のために活動休止」

P「まあ……そうか」

律子「はい……高校に入学してから、中学の復習と高校の内容をみっちりやるそうです」

P「そうか。……もうひとつ」

P「受験校は父親の指定ってことだったな?」

律子「はい」

P「そうか……」

律子「何か気になる点が?」

P「……ないとは思うが、最悪、負けが仕組まれた勝負になっている可能性もある」




64VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:17:08.60 ID:eVIX8xcw0



律子の眉間に皺が寄る。

律子「……どういうことですか?」

俺は律子に説明した。

高校受験の合否は受験前に半分決まっていると言っても過言ではない。
というのも、高校受験は、受験の点数以外に選考の基準となっているものがあるためだ。
学校での成績――いわゆる、評定。
三年生の評定はこれからの努力次第で変えられるが、一、二年生の評定は変えられない。
そして、多くの高校では二年生の評定も選抜基準に含まれるのだ。
つまり現段階で伊織の成績が受験する高校の基準に対してあまりにも足りていなかった場合、戦わずして負けになる可能性がある。




65VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:18:47.86 ID:eVIX8xcw0



話を聞いた律子は明らかに動揺していた。

律子「……そうですか。知りませんでした」

P「たぶん、普通は知らないさ。受験の制度も年々変わってるし、自分の時のことなんてあんまり覚えちゃいないからな」

P「だが、伊織の父親がそこまでするとも考えにくい」

律子「で、ですよね……」

P「いちおう、調べてはみる。かなり厳しいことになってなければいいがな」

律子から、伊織が受験する予定の高校名を聞く。

律子「すいません、よろしくお願いします」

P「ああ」




66VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:19:30.78 ID:eVIX8xcw0



律子「……いまさらですが、どう思いますか?」

P「どの話についてだ?」

律子「伊織が受験するって話です」

P「……正直、無謀だ」

俺は本心を話した。

P「できれば避けるべきだと思う。まだ伊織の成績も把握してないから何とも言えんが」

P「……律子は自分が受験したときのこと、覚えてるか?」




67VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:21:01.31 ID:eVIX8xcw0



律子「え?い、いえ正直そんなに……」

P「そうか……俺が以前教えていた経験で話すとだな」

P「自分の本当の志望校に合格できるのは、受験生全体の二割程度だと思う」

律子の目がわずかに大きくなった。

まず、自分の成績と行きたい高校の受験難度を考えて、最初からあきらめる。
これが三割程度。
次に、受験勉強の大変さに、途中で「違う高校でいいや」と妥協しドロップアウト。
これが約二割。
さらに評定により、受験で満点でもとらない限り合格できない状況に追い込まれ、あきらめる。
これも二割程度。
で、無事受験までたどり着いた三割のうち、一割が残念ながら不合格。

結果、本当の志望校にいけるのは二割程度。




68VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:21:45.02 ID:eVIX8xcw0



P「――と、こんな感じだ。まあ、あくまで俺の主観だが」

律子「……大変ですね」

P「ああ、大変なんだ。……伊織はたぶん、それだけ厳しいってことを知らん」

律子「そうですね。私だって今びっくりしてますから」

P「だから、避けられるなら避けたい。が、ここまで話が進行してしまっているから……どうだろうな」

律子「……」

車内の空気が重くなる。




69VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:22:29.85 ID:eVIX8xcw0



律子を脅すようなことを言ってしまったかもしれない。
しかし、受験は本当に大変なのだ。
これは関わった者でなければたぶんわからない。

P「ま、とりあえずは明日になってからだな。俺もちょっと伊織と話をしてみるよ」

律子「……なんだか、大変なことになってきましたね。すいません」

P「律子のせいじゃない。それに」

律子「?」

P「大変なのは、765プロの通常運転だ」

律子「……ですね」




70VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:24:29.84 ID:eVIX8xcw0



P「ところで」

律子「はい?」

P「後ろ、任せていいか?」

律子「いやです」

きっぱり。

はあ。
俺はため息をついて後部座席を見る。

小鳥「……ああ、先生駄目です……いいじゃないか、小鳥君……うふふ」





71VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:26:07.58 ID:eVIX8xcw0





『件名:遅くにすまん
本文:明日は事務所に戻る予定か?』

『件名:まだ寝ないわよ
本文:特に用事がなければ戻らないわ。何か用?』

『件名:Re;まだ寝ないわよ
 本文:話がある。悪いが帰りに事務所に寄ってくれ』

『件名:受験の話?
 本文:わかったわ』




72VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:26:37.68 ID:eVIX8xcw0



『件名:Re;受験の話?
 本文:そんなとこだ。あとその時に学校の成績を聞くから思い出しておくように』

『件名:わかったわ
 本文:成績って、テストの順位とかでいいの?』

『件名:Re;わかったわ
 本文:それもあるが、各教科の5とか4とかの成績だ。通知表持ってないだろ?』

『件名:持ってないわ
 本文:お父様お母様に見せたら、学校に返却してるもの』




73VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 19:30:42.18 ID:eVIX8xcw0



『件名:Re;持ってないわ
 本文:じゃあ、大体でいいから思い出しておけ。以上』

『件名:わかったわ
 本文:じゃあまた明日ね。おやすみ』

P「あとは選考基準、定員、実地要領……ってとこか」

P「さ、もうひと頑張りするか」



つづく




74VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 20:43:48.41 ID:eVIX8xcw0



とりあえずここまで。
読んでくれた方ありがとうございました。




75VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/17(月) 20:48:02.59 ID:zZm8Mwkgo


通常入試に内申関わるっけか?
地方ごとにも制度違うから把握し切れないな




76VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/17(月) 21:14:33.48 ID:eVIX8xcw0


>>75
県ごとに違いますからね。実は2次選考っていう点数だけで合否が決まる場合もありますし。
そこらへんは優しく見てやってください。



ちなみに伊織の受験校の名前募集します。
何でもいいです。




85VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:50:51.92 ID:DfiTI0gC0



――翌日。

伊織「戻ったわ」

午後8時20分、伊織が事務所に帰ってきた。

P「おう、お疲れさん」

小鳥「お疲れ様、伊織ちゃん」

伊織「うん。律子はまだ戻ってないの?」

P「ああ。じゃ、ちょっと話してもいいか?」

伊織「ふう、一息もつかせてもらえないわけね」

大仰にため息をつく。




86VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:51:36.74 ID:DfiTI0gC0



P「まあもう遅いし、さっさと話を終わらせて帰りたいだろ?」

伊織「まあね。あ、今日送って」

P「……送って?」

伊織「送ってく・だ・さ・い!」

P「気が向いたらな」

俺は立ち上がった。
鞄から封筒を取り出す。




87VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:52:08.71 ID:DfiTI0gC0



小鳥「じゃ、お茶持っていきますね。社長室ですよね?」

P「はい、すみません」

伊織「……社長室?」

P「行くぞ」

伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」




88VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:53:36.36 ID:DfiTI0gC0





高木「……なるほど。状況は分かったよ。ご苦労だったね」

俺が報告を終えると社長は組んだ手の上に顎を乗せ、目を閉じて考え込んだ。
俺の横には気持ち不満そうに見える伊織がいる。

父親に指定された、伊織の受験する高校は小出高等学校。
偏差値は67。
印象としては、各地域ごとのいわゆる「できる」生徒が進学する高校と言ったところだ。
超難関というほどではない。
そこまでではないが――

高木「……君の考えを聞きたい」

P「やめた方がいいでしょう」




89VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:54:46.95 ID:DfiTI0gC0



伊織がこちらを睨んでいるのがわかる。
俺は伊織の方には顔を向けなかった。

高木「そうかね?」

P「分が悪いです」

伊織「アンタ……」

伊織が口を開く。
まあ、自分に関係なく話が進行しているのだ。
伊織が割り込まないはずがない。

伊織「アンタ、あたしが合格するのは無理だって思ってるの?」

P「……そうだ」

言う。はっきりと。




90VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:55:52.32 ID:DfiTI0gC0



伊織「……!」

伊織「なにを……!」

声を上げようとして、思いとどまった。
……成長したな、と思う。
すぐに食って掛かってきた昔がなつかしい。

伊織「……説明しなさいよ」

P「いいだろう」

P「成績に関してはさっき説明したな。可能性はなくはない」

P「ここからは一般的な受験に関する知識と、俺の考えだ」




91VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:57:37.04 ID:DfiTI0gC0



P「厳しい理由は大きく分けると2つ。一つ目は圧倒的に時間が足りない」

P「伊織は仕事をしてるからな」

伊織「ちゃんと時間を作って勉強するわよ」

P「そういうレベルじゃないんだ」

伊織「……どういうことよ」

P「あのな」

P「学校でみんな部活に入ってるだろ?」

伊織「そうね」

P「受験では、運動部より文化部の方が厳しくなる傾向がある。なぜかわかるか?」




92VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 18:59:48.72 ID:DfiTI0gC0



伊織「さあ。でも普通は毎日遅くまでやってる運動部の方が大変なんじゃないの?」

P「そう思われがちだがな」

P「三年生になったら夏の大会で運動部は引退するだろ?」

伊織「そうなの?」

P「知らないか……まあいい、引退するんだ」

P「そうすると、学校が終わると時間がまるまる空くわけだ。そこを勉強に充てる」

P「まあ、そこできっちり切り替えるのがなかなか難しかったりするんだが……」

P「一方、文化部は秋の文化祭あたりで引退するケースが多いからな」

P「2、3か月引退には差がある。そこがでかい」

P「ま、すべてが当てはまるわけじゃないが一つの例として捉えてくれ」




93VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:00:50.07 ID:DfiTI0gC0



P「ちなみに、夏は受験の天王山、、って聞いたことあるか?」

伊織「……ない」

高木「あるとも!」

P「いいますよね。まあそのくらい夏の勉強は大切だってことだ」

P「周りは皆、夏休みだからな。塾の講習とか合宿なんかでがりがり勉強する」

P「ただ、伊織の場合は夏も仕事だろ?夏休みなんか特に忙しい」

伊織「……」

P「ただでさえ一部の授業は休まなければならない」

P「2、3か月の引退時期の差で厳しいと言われてるのに、伊織は受験直前まで仕事だ」

P「受験生はお盆も正月もないが、お前は元々ないようなもんだしな」




94VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:01:27.13 ID:DfiTI0gC0



高木「うむ、年末年始などむしろ忙しい時期だからね」

P「そうです……とにかく、周りと比べて時間がなさすぎる」

伊織「……だったら」

伊織「だったら今まで以上に頑張ればいいでしょ!?」

P「それだ」

伊織「……なにが?」

P「二つ目の理由」




95VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:02:24.08 ID:DfiTI0gC0



P「お前は自己管理が苦手だ」

伊織「……」

P「無理して焦って根詰めて、体調を崩す」

P「受験生は体調管理も仕事なんだよ。もちろんアイドルもな」

P「……お前が一番わかるだろう?今よりさらに睡眠時間を削って、普段通りに動けるのか?集中して勉強できるのか?」

伊織「……」

高木「うーむ」

P「……なあ、俺は別にお前をいじめたいわけじゃないぞ?」

P「昔経験してるからわかるんだよ、受験の厳しさが」




96VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:03:21.40 ID:DfiTI0gC0



そう……昔経験したんだ。
受験は生易しいもんじゃない。

生徒はみんな、思ってるんだ。

自分は結局、合格するんじゃないか……って。

しかし現実は甘くない。
がんばって練習しても、死ぬほど練習しても、部活の試合で負けることがあるように。
点数が足りなければ容赦なく落とされるのだ。

そんな思いを伊織には――

伊織「……って何?」

P「……?」

伊織「昔経験してるって、なに?」




97VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:04:22.78 ID:DfiTI0gC0



P「いやだから前話しただろ?昔塾の講師をしてて……」

伊織「アンタが昔教えた生徒に、私がいたわけ!?」

P「……!」

伊織「私は今回初めて試験を受けるの!それなのにどうして無理だなんて決めつけるわけ!?アンタはなに?神様!?」

伊織「……馬鹿!」

P「……伊織」

高木「ふむ……水瀬君、彼の話を聞いてどう思ったかな?」

伊織「馬鹿だと思いました」

P「……言いすぎだ」

高木「はっはっはっ、そうかね!」




98VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:05:50.14 ID:DfiTI0gC0



高木「気持ちは変わらないかい?」

伊織「はい。むしろ、見返してやりたいやつが増えました」

高木「……よろしい。やってみたまえ」

P「……本気ですか?」

高木「うむ」

高木「ああ、もちろん君には水瀬君のサポートを頼むよ」

伊織「別にやりたくなきゃもう頼まないわ。無理だと思って見物してたら?それじゃ、失礼します」

そう言って伊織は社長室を出ていった。




100VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:06:21.70 ID:DfiTI0gC0



高木「はは、彼女は強いねえ」

P「……全くです。あんなに怒るとは」

高木「まあ、あれは無理だと言われたことよりも、君に……」

P「はい?」

高木「いや、なんでもない。しかし、水瀬君は本気のようだね」

P「そうですね」

高木「……そして、私も負け戦は嫌いなんだよ」




101VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:06:52.59 ID:DfiTI0gC0



高木「勝てると思うからGOサインを出すんだ。水瀬君と君なら、ね」

P「……」

P「……努力します」

高木「うむ!君も大変だと思うが、頼んだよ」





103VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:07:35.22 ID:DfiTI0gC0





社長室から出ると、伊織が俺の椅子に座っていた。

……あの顔は、まだ怒ってるな。

P「あー……結局、お前の勉強を見ることになった」

伊織「……」

無言。
く……この感じ、昔を思い出す。

P「……」

昔、か。




104VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:08:09.68 ID:DfiTI0gC0



P「……はは」

伊織「……なに笑ってんのよ!?」

P「いや、昔なんて毎日こんな感じだったなと思ってな」

伊織「……」

伊織の顔はまだ怒っている。
顔は怒っている、が。

P「まさか伊織にひっぱたかれて喝入れられるとはなあ」

伊織「ひっぱたいてないわよ」

P「言葉でひっぱたかれたんだよ」




105VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:08:47.87 ID:DfiTI0gC0



P「ま、これで覚悟も決まった」

伊織「……」

P「……言っとくが、相当厳しいぞ」

伊織「……わかってるわよ」

P「今お前が考えてるキツさより、3倍は覚悟しておけ」

伊織「……」

伊織「きょ、去年より?」

P「ああ。たぶんな」




106VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:09:26.19 ID:DfiTI0gC0



伊織「……」

伊織「ふん、望むところね」

伊織「私だって去年より3倍は成長してるから」

P「はは、そうか」

P「よし……合格、するか」

伊織「……当然でしょ」

『伊織ちゃんなんだから』




107VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/18(火) 19:10:43.37 ID:DfiTI0gC0



二人の声がかぶった。

P「やっぱりな、ははは」

伊織「~!うっさい!変態!」

P「さて、帰るぞ。帰りの車内で早くもミーティングだ」

伊織「……ふん!」

ということで、伊織と俺の受験戦争は始まった。
正直、かなり厳しい戦いになると思う。
先のことを考えるとハゲそうだ。

それでも。

俺は久しぶりに伊織と活動することに、気持ちが高揚しているのを感じた。



つづく




117VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:38:04.66 ID:Iff+GRNX0


>>1です。
投下します。

※実在の人物・高校等は関係ないです。念のため。
小出高校(おでこうこう)は都内のどっかにある設定でお願いします。




118VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:39:19.50 ID:Iff+GRNX0





美希「お疲れさまですなのー!」

P「ん……おうお疲れ」

美希「ハニー!今日のミキはもうぐったりなの!きっとハニーのハグがなきゃ死んじゃうの!」

P「そうか。あ、そういや給湯室におにぎりあるぞ」

美希「え!ほんと!?」

P「ほんとほんと」

美希「やったー!ハニー大好きなのー!」




119VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:39:50.95 ID:Iff+GRNX0



言って美希は給湯室に駆けて行った。

時間はもう9時半を過ぎた。
美希が疲れているのもわかる。
念のためおにぎりを買っておいて正解だった。

P「……っ」

椅子の上で体を伸ばす。首を回す。腕を回す。
右肩が張ってるな。
左手で肩を揉みほぐす。

P「しかし……」

こんだけ美希が騒いでも来ないってことは……

寝てるな。





120VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:57:50.22 ID:Iff+GRNX0



美希「はーにい!」

後ろから美希がのしかかってくる。

P「どうしたー?食べながら立ち歩くなって言ってるだろー?」

美希「もう食べちゃったの」

P「……」

美希「それよりハニー、疲れてるみたいなの。ミキが肩もみしてあげるの!」

肩もみ。
抗いがたい誘惑だ。




121VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:59:02.75 ID:Iff+GRNX0



P「ほんとか?」

美希「うん!ミキ、肩もみ上手いんだよ!」

美希が両手でグニグニと肩をもんでくる。

美希「わ、すごい凝ってるの!」

P「ああ~……」

声が出ない。いや出ているが。
なぜ人にしてもらう肩もみはこんなに気持ちいいのか。

美希「パソコンばっかりカタカタやってるからなの。たまにはミキと外に遊びに行けばいいって思うな」

P「できるならおれもそうしたいよ。けどお前らが有名になってきたから、仕事が増えてな」

美希「あれ?でもこれ……」




122VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 21:59:43.38 ID:Iff+GRNX0



パソコンをのぞきこみながら美希が言う。

美希「……さんすう?」

P「数学だろ」

美希「同じなの。これ、ハニー何やってるの?」

P「伊織の問題作りだ。あ、お前もやるか?」

美希「結構です」

敬語だった。




123VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:00:36.03 ID:Iff+GRNX0



P「お前もおんなじ学年だろ……」

美希「でこちゃん、調子はどうなの?」

話をそらしやがったな。

P「……まあまあ」

まあまあ、あんまり変わっていなかった。





124VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:01:32.54 ID:Iff+GRNX0





伊織に最初に出した指示は二つ。

一つ目。

P「仕事が終わったら事務所に帰ってきて、勉強すること」

伊織「えー……」

P「えーじゃない。命令」

伊織「家でやったらだめなの?」

P「駄目」




125VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:02:20.51 ID:Iff+GRNX0



P「二つ目は……」

伊織「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ」

P「なんだよ」

伊織「なんで家じゃだめなのか説明してよ」

P「眠くなる。すぐ集中力が切れる。以上」

伊織「以上って……」

P「家に帰ると大抵スイッチが切り替わるんだ。オフになる」

P「これは環境の問題だからしょうがないな。人間そういうふうにできてるんだ」

P「だから事務所でスイッチ切らないようにして勉強。わかんないところがあったらすぐに聞けるしな」





126VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:03:24.28 ID:Iff+GRNX0



P「それに、自分の部屋だとすぐ他のものに意識が移っちゃうだろ」

P「ぬいぐるみとか」

伊織「まあ……ってなんでよ!」

P「あれ?シャルルとお話ししてるんじゃないのか?」

伊織「そ、そんなこと……」

P「まあなんでもいいや。とにかく命令」

P「あっちにお前専用の自習スペース作ってやるから」

伊織「ふーん。一応考えてんのね」

P「一応ってなんだよ。次」




127VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:04:07.44 ID:Iff+GRNX0



P「二つ目。学校の提出物はきちんと出すべし」

伊織「提出物?」

P「ノートを提出しなさいとか、ワークをここからここまで月曜までに、とかあるだろ?」

P「それをきっちり提出する」

伊織「そんなの、しょっちゅう早退とか遅刻とかしてるんだからわかんないわよ」

P「それを変えるんだよ」

P「今までちゃんとやってなかっただろ?」

シャルルをわさわさ触り始める。
……図星か。




128VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:04:53.21 ID:Iff+GRNX0



P「……学校の友達にこまめに連絡して、提出物の情報をしっかり聞け」

伊織「ねえ」

P「なんだ」

伊織「それより勉強をきっちりして、テストで点数を取った方がいいんじゃないの?」

はあ。
俺はため息をついてから、説明する。




129VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:05:26.40 ID:Iff+GRNX0



学校の成績……評定。
ちなみに伊織は

国語…5  技術家庭科…4
数学…4  保健体育…3
英語…5  美術…5
理科…4  音楽…5
社会…4  

だった。伊織の記憶違いがなければだが。

P「この評定ってのは単にテストの成績だけで決まっているものじゃないんだ。各教科ごとに観点別評価というものがあってだな」

伊織「……観点別評価?」

P「ああ」




130VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:07:49.37 ID:Iff+GRNX0



例えば、「関心・意欲・態度」であったり、「知識・理解」「技能・表現」など、各教科の中でもさらに細かく評価される観点が設定されている。
それぞれの項目を十分に満たしていればA、まあまあならBと言ったように評価が決められ、それを点数化して合計し、最終的に『5』や『4』などが決められる。

P「つまりテストでいい点を取ったとしても絶対に『5』がつくとは限らないんだ」

P「提出物をきちんと出したり、授業中に積極的に発言したりしないと『関心・意欲・態度』はAにならない」

伊織「……ってことは」

やはり頭の回転ははやい。

P「そうだ。逆に言うと、提出物がきっちりできてれば主要5教科ぐらいはオール5になった可能性はある」

そういうと伊織はわずかにだが顔をしかめた。





131VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:08:35.08 ID:Iff+GRNX0



評定の受験における重要性はすでに説明している。
ちょっとした油断が成績に響いたことを悔いているのだろう。

わかっていたらやったのに。

そうありありと表情から読み取れた。

P「まあ、過ぎてしまったことはしょうがない」

P「それに、提出物などがおろそかでこの成績ってのは正直驚いた」

本心だ。

伊織「……ふん」





132VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:09:47.64 ID:Iff+GRNX0



P「ま、わかったらこれからはきっちりやれ。できるかぎり」

P「あとは、『ここわかんないんですけどぉ~』って先生に聞きに行け。評価につながる」

伊織「……気持ち悪い」

P「俺がやるからキモいんだ。お前そういうの得意だろ」

伊織「人聞きの悪いこと言わないでよ。それに卑怯じゃない、それ?」

P「わからないところを聞きに行くんだ。何も卑怯じゃない」




133VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:10:59.74 ID:Iff+GRNX0



伊織「……気が乗らないわ」

P「……練習!!」

伊織「せ、先生!あの……さっきの授業でわからないところがあったんですけど……質問しても――」

伊織「――いいですか?」

P「ぐはっ」

伊織の上目遣い、破壊力バツグン。

伊織「って、なにやらせんのよ!」

ゲシゲシ。

P「蹴るな!」

伊織「アンタが変なことやらせるからでしょ!変態!」




134VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:12:12.21 ID:Iff+GRNX0



P「とまあ、こんなところだ。あとあたりまえだが学校の授業はちゃんと聞いとけ」

伊織「わかったわ」

P「はい、じゃあ復讐だ」

伊織「え?」

P「これからやること。二つ」

伊織「……毎日事務所に戻って勉強する、提出物をきちんとする」

P「おし、おっけい」

伊織「……」

P「じゃあ、とりあえず……って、なんだ?」

伊織が俺の顔をまじまじと見ている。




135VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:13:02.89 ID:Iff+GRNX0



伊織「なんだかほんとに先生っぽかったわね、さっきの」

P「……ほっとけ」

先生――か。

またそう呼ばれることになるとは。

伊織「ところで、その二つだけでいいの?」

P「ああ。いきなりいろいろ詰め込んでもしょうがない。少しずつだ」

伊織「そう。わかったわ」

信頼してくれているんだろう。
指示に対してそれ以上食い下がることはなかった。




136VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:14:38.40 ID:Iff+GRNX0



以前であれば、

伊織『なんで!?時間がないんだから!私だったらもっとできるわ!!』

ってところかな。
変わったもんだ。

伊織「なににやにやしてるの。気持ち悪いわよ」

P「……」

あんまり変わってないかもしれない。




137VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/20(木) 22:15:21.92 ID:Iff+GRNX0





ってことで、指示を出してから数日。

P「あーあー……」

伊織は机に突っ伏して寝ていた。
シャーペンを握りながら、すーすーと寝息を立てていた。

美希「でこちゃん、寝ちゃってるの……」

美希が後ろから小声で話しかけてくる。

P「まあな。今日は8時くらいからやってたからな」

起こさないように、上着をかけてやる。





138VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:16:22.39 ID:Iff+GRNX0



新堂さんに連絡をして、迎えの車を回してもらう。

美希「でこちゃん、起こさなくてよかったの?」

P「ああ」

美希「でも、勉強しないといけないんじゃないの?」

P「それはそうだ。でも、伊織にはまだ勉強する体力がついてないからな」

P「まずは勉強する習慣をつける。それができたら集中して勉強できる時間を少しずつ伸ばしていく」

P「今はその基礎作りだな」




139VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:17:04.59 ID:Iff+GRNX0



美希「へぇー、ハニーもいろいろ考えてるの」

P「なんだそりゃ……でもキツいはずなのに、まあまあがんばってるよ」

美希「でこちゃん偉いの」

P「そうだな」

伊織にとって、己の矜持は相当大切なものなんだろう。
それを守るために、今までひやひやさせられることも多かったが。

P「そういや、美希も三年だろ。高校はどうするんだ?」




140VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:18:07.36 ID:Iff+GRNX0



美希「あ、そうなの。なんかそのことで社長から電話があったみたいだよ」

P「社長から?」

そうか。もう手は打ってあったのか。

美希「パパもママも、好きなところに行きなさいって」

P「ふーん、どっかいきたいとこあるのか?」

美希「ないの」

P「ないのってお前……」





141VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:18:44.99 ID:Iff+GRNX0



美希「ミキは、アイドル活動ができるところならどこでもいいの」

美希「ミキね、今は仕事をしているときが一番楽しいから!」

P「……」

美希「あ、でもハニーとデートしてる時間は一番より上なの!」

P「……はは、そっか。ありがとな」

P「お……来たかな?ちょっと見てくる」





142VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:25:16.70 ID:Iff+GRNX0



美希「うん」

美希「……」

美希「ミキも、受験勉強ってやつ、してみればよかったかな?」

美希「……でも、勉強はきらいなの……」

美希「うぅー……」

美希「……」

美希「ま、いっかなの!」




143VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:26:13.17 ID:Iff+GRNX0





つづく


入れ忘れました。




144VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 22:27:15.18 ID:Iff+GRNX0



はい、ってことで今回は以上。
読んで下さった方、ありがとうございました。
毎回コメントくれる方もありがとうございます。




145VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/20(木) 22:48:10.88 ID:1d6Io/RSO


乙~
5教科オール5とってた俺より内申いいじゃねぇかチクショウやはりあのデコの中身はギッシリ脳ミソか…




146VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/20(木) 22:55:00.77 ID:pab57Q68o


そうかまだ中学なのか
乙でーす
しかし毎回思うけど、評価基準がぜんぜん違う学校の成績を受験資格とか合否の判断基準に使うのってどうなのかね
関係ない話で申し訳ないけど




148VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/20(木) 23:20:27.63 ID:Iff+GRNX0


>>146

いやほんとそうだと思いますよ。
学校によって教師によって、内申のつけ方全然違いますからね。

まあ最近は内申:点数の割合を4:6とか3:7とか点数重視にしている高校が多くなってきているようですが。
生徒会長とかも評価の対象にされていたり、言い出したらきりがないですがね。




155VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:15:23.30 ID:RH1VzN/O0





今日は土曜日。
明日は日曜日。
本来なら楽しい休日の午後。

P「はーい、それじゃ作戦会議を始めまーす」

伊織「……」

二人ともだらっとしていた。




156VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:20:16.60 ID:RH1VzN/O0



P「やる気出せよー、土曜日のせっかくの空き時間なのにってのもわかるけどもー」

伊織「アンタもね」

P「俺はどうせこの後も仕事なんだよー」

P「明日も仕事だよー」

伊織「私だって仕事よ」

P「……最後に一日休み取ったのいつか覚えてるか?」

伊織「覚えてるわけないでしょ。去年じゃない?」

P「はあ……」

伊織「ため息つかないでよ。こっちまでやる気なくなるわ」




157VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:21:10.63 ID:RH1VzN/O0



P「ま、こんなこと言っててもしょうがないし、やるか」

伊織「……はあ」

P「って、お前もため息ついてるじゃん」

伊織「ついてないわよ……はあ」

P「……」

伊織「デートでもしたいわ」

P「な、なぬ!?」

伊織「何慌ててんのよ、ばか。冗談に決まってるじゃない」




158VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:27:46.62 ID:RH1VzN/O0



P「ぐ……!」

P「……」

P「……そういや、今度夏祭りがあったなあ」

伊織「夏祭り?」

P「ああ、結構近くでな。出店も出るし花火もやるみたいだ」

伊織「ふーん」

P「ふーんって……」

P「だ、誰か誘って行ってこようかなー?」

伊織「アンタが誘ってついてくる子がいるとも思えないけど」

P「……」




159VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:28:27.86 ID:RH1VzN/O0



伊織「それにどうせ仕事でいけないのがオチよ。いつものパターンじゃない」

P「……んあー」

伊織「はいはい、さっさとやるわよ。そんな妄想してないで」




160VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:29:01.54 ID:RH1VzN/O0





季節は初夏。6月になっていた。

伊織が受験勉強を始めて一か月半ほど。

勉強をする習慣もある程度ついてきたし、提出物もしっかりやっている……らしい。
まあ、仕事が長引いて事務所に来る時間がなかったり、どうしても疲れて寝落ちしてしまうこともあるにはあったが、良くやっている方だと思う。
提出物については伊織の言を信用するしかない。
まさか学校にまで侵入するわけにはいかないしな。




161VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:29:58.39 ID:RH1VzN/O0



ということで、今日は基本的な学習方法についてと、約三週間後に迫った中間テストについての作戦会議だ。

P「とは言っても、成績を見る限りじゃテストの点数は悪くなさそうなんだがな」

伊織「そりゃ毎回テスト前はちゃんと勉強してるわよ」

P「うむ。ただ、これからは『効率のいい』勉強方法を身につけていかないとな」

伊織「ふーん」

P「ってことで、これをやれ」

一枚のプリントを差し出す。
理科。




162VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:30:57.21 ID:RH1VzN/O0



伊織「はあ!?実際にやるの?」

P「言葉で説明したってわからんだろ。実践あるのみ」

伊織「くっ」

P「ちゃんとテスト範囲のプリントになっているはずだから安心しろ。テスト勉強にもなる」

伊織「……はいはい」

P「できたら教えてくれ」

伊織「うん」

伊織がバッグから筆記用具を取り出したのを確認して、俺は会議室を出た。





163VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:33:00.41 ID:RH1VzN/O0



俺が教える教科は数学と理科。
いわゆる理数系。
正直、文系の科目は指導するのは無理だった。

ただ、伊織は文系か理系かと言えば文系寄りだった。
国語は『5』だし、本人もまあまあだと言っていた。
古文が少し苦手らしい。
英語は安定の『5』。まあこれは当然か。
リスニングはおろか、普通に話せる。
半分バイリンガルみたいなもんだしな。
社会は『4』だが、嫌いではないらしい。
この嫌いではないという感覚は重要だ。
苦手意識がなければ社会は暗記科目だから何とかなるだろう。
まあ時間はかかるかもしれないが。




164VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:33:45.36 ID:RH1VzN/O0



そして理数科目。
数学は『4』。
伊織曰く、

伊織「問題が解けると嫌いじゃないけど、最近難しいから嫌い」

らしい。

数学は積み重ねの教科だ。
2年生ぐらいから成績が落ち始めたようなので、そこの内容がしっかり入っていなければ、3年の内容について行けるはずがない。
ただでさえ3年の内容は難度が高いのだ。

理科『4』。
伊織曰く、

伊織『嫌い』

……。




165VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:34:25.95 ID:RH1VzN/O0



まあいい方向に考えれば、苦手強化を指導するのが俺の任務なのだから問題はない。

これで伊織が文系科目が苦手だったりしたら俺は必要ないということになる。
むしろ現役高校生の春香とか千早に任せた方がいい、なんてことにもなりかねない。

伊織「できた」

なんてことを考えながら仕事をしていたら、伊織がやってきた。

P「できた?」

伊織「うん」

P「できました、だろ」

伊織「で・き・ま・し・た!」

会議室に戻る。




166VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:35:12.34 ID:RH1VzN/O0



P「よし、こんな感じで問題をやるだろ?プリントでもワークでもいいが」

P「そしたら丸付けだ」

解答を渡す。

伊織「え?アンタが丸付けしてくれるんじゃないの?」

P「アホか。いつも俺がいるわけじゃないだろ」

P「それとも、いつも俺がいたほうがいいのか?」

伊織「冗談」

伊織はさらさらと添削していく。





167VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:36:00.57 ID:RH1VzN/O0



伊織「できたわ」

P「間違ったところ赤ペンで正しい答え書いたか?」

伊織「書いたわ」

P「んで、その間違ったところは覚えたか?」

伊織「だいたい」

P「完璧に覚えろ。なんだ大体って」

伊織は大げさにため息をついて、プリントを見直す。
ちなみに今回やった単元は『遺伝と生殖』。
大半が暗記のところなので、間違ったところは覚えてなかっただけ、という可能性が高い。
染色体数とか、説明が必要そうなところもあるけどな。




168VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:41:43.11 ID:RH1VzN/O0



ちなみに、ここの単元はそんなに苦手というわけではないはずだ。
伊織が、というより女子が、ということでだが。
女の子は暗記が多いところ、つまり生物や化学の暗記部分が強い傾向がある。
そのかわり物理や化学の計算は苦手だ。
『光』や『電気』、『運動』なんかの単元は特に女子に嫌われる。
逆に男子はそういうところが得意だったりする。

伊織「大丈夫。覚えたわ」

P「じゃ、これ」

伊織がやっていたプリントを回収し、新しいプリントを渡す。

伊織「?」




169VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:42:14.66 ID:RH1VzN/O0



伊織「これ……おんなじプリントじゃない」

P「そうだ」

伊織に渡したのは、さっき丸付けをしていたプリントとまったく内容が同じものだ。
ただし、また一からやらなきゃないまっさらなやつだが。

P「今やったばかりなんだから、もちろん今度は全問正解になるよな?」

伊織「……」

P「じゃ、よろしく」

伊織が恨みがましい目を向けてくる。
無視して俺は会議室を出た。




170VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:42:51.63 ID:RH1VzN/O0



しばらくすると伊織がプリントを持って会議室を出てきた。

伊織「……」

無言でプリントを差し出してくる。

P「完璧か?」

伊織「……知らない」

不安だな、こいつ。
今度は俺が丸付けをする。
伊織は固唾をのんで見守っている。

P「……はい、一問間違い」

伊織「……」




171VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:43:36.09 ID:RH1VzN/O0



P「言い訳は?」

伊織「……なによ、その言い方」

伊織「ちょっと勘違いしただけでしょ!?」

P「そこが重要なんだよ」

P「いいか、別に俺はいじめてるわけじゃないぞ」

P「必要なことだからやってるんだ」

そう、重要なことなのだ。
ここをちゃん認識していないといまいち成績が伸びない、ということになってしまう。





172VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:44:14.52 ID:RH1VzN/O0



P「いいか、ただでさえ人間の記憶ってのは次第に薄れていくんだ」

P「一回やった内容はそこで100%覚えるつもりでいかないとな」

伊織「……」

不満そうだ。

P「例えばさ、今日やった内容を100%覚えたとするだろ?」

P「それでも、人間は忘れる生き物だから明日には80%に減ってるんだ」

P「これはしょうがない。誰でもそうだ。だからもう一回復讐して覚えなおすしかないんだ」

P「ここまでは納得できるか?」

伊織「……うん」




173VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:45:32.26 ID:RH1VzN/O0



P「じゃあ、今日やった内容が50%しか入ってなかったらどうだ?」

P「明日になったら40%になる」

P「全体の40%しか覚えてない状態でテストを受けたらどうなるかわかるだろ」

伊織「……わかったわよ」

素直にうなずく。

伊織は基本的には頭がいい。
文句を言っているときも大抵は納得できない理由があるからだ。
だからちゃんと理由を説明してやれば、理論的に正しければ、納得してくれる。

ただし、時には感情論で文句を言ってくることもある。
……その時は手ごわい。




174VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:46:48.92 ID:RH1VzN/O0



P「って感じで一人で勉強するときもやるわけだ」

伊織「まとめると?」

P「①問題を解く
  ②丸付け、間違い直し
  ③もう一度同じ問題を解いてみる」

P「間違い直しをしているときによくわからないところがあれば質問しに来い」

P「わかりやすく教えてやる」

伊織「わかった」

P「いいか、大事なのは妥協しないことだ」




175VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:48:34.66 ID:RH1VzN/O0



P「大体大丈夫かなーとか、なんとなくこんな感じ、で覚えた内容はちょっと問題が変わるとすぐに間違える」

P「自信を持って答えて、正解するってのが完璧なんだ」

P「だから、問題を解いている最中に自信を持って答えられなかったところはちゃんとチェックしておく」

P「自信がないところは今回正解だったとしても、次は間違える可能性があるからな」

P「あ、もう一つ」

伊織「まだあるの?」

P「これで最後だ」

P「これからは問題を解くとき直接ワークとかテキストに書き込むんじゃなくノートにやること」

伊織「もう一回問題を解けるようにするため?」

P「正解」

伊織「わかったわ」





176VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:49:23.78 ID:RH1VzN/O0



P「はい、じゃ次」

新しいプリントを渡す。

伊織「はあ~あ」

P「がんばれ」

伊織「……はいはい」

P「伊織」

伊織「なによ?」

P「このやり方でやってれば必ず点数はついてくる」

伊織「わかってるわよ」

伊織「……だから素直に従ってるんでしょ」

P「そうかい」




177VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/22(土) 19:50:21.92 ID:RH1VzN/O0



P「それやり終わったらアイスでも食うか」

伊織「……にひ」

P「もちろん丸付け間違い直し、それから二回目をやった後な」

伊織「……は~い」




つづく




184VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:14:19.75 ID:DX/7LUnE0





P「んじゃもう一回な」

伊織「……」

俺が添削したプリントを受け取ると、無言のまま伊織は自分の自習デスクに戻っていった。

P「……うーむ」

「あの、プロデューサー?」

顔を上げると千早が立っていた。




185VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:14:59.26 ID:DX/7LUnE0



P「ああ、なんだ?」

千早「いえ、ただ難しい顔をしていたので、どうなさったのかと」

P「なんだ、心配してくれたのか?」

千早「いえ…あ、まあそうなりますかね」

P「ありがとな。でもだいじょうぶだよ」

千早「伊織のことですか?」

P「……するどいね」

千早「さっき、同じような顔をした伊織とすれ違いましたから」




186VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:15:33.35 ID:DX/7LUnE0



P「そうか」

P「ん?お前いつから伊織のこと伊織って呼ぶようになったんだ?」

千早「え……い、いつからでしょうか?変ですか?」

千早は少し慌てていた。

P「はは、いいんじゃないか?」

千早「もう……それで、何かあったんですか?」

P「うん……千早はさ」

千早「はい」

P「オーディションに落ちたら、やっぱり落ち込むよな?」




188VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:16:04.07 ID:DX/7LUnE0



千早「……それは、まあ」

P「当然だよな。悔しいもんな」

千早「そうですね」

……もしそれが俺のせいだったら、やっぱり怒るよな。

言いかけて、やめた。
そんなことを言っても、千早が困るだけだ。

P「そういう時ってなんて励ましたらいいのかなあ?」

千早「……」

千早「あの」

P「ん?」




189VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:17:03.14 ID:DX/7LUnE0



千早「私もオーディションが駄目だったときとか、仕事がうまくいかなかったときプロデューサーが励ましてくれるのはすごくありがたいです」

千早「でも、最近は励まされると、その……」

P「え?」

千早にしては珍しく口ごもっていた。
何か言いにくいことなんだろうか?

千早「その……つらい時もあります。たまにですが」

つらい?

P「な、なんでだ?」




190VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:17:46.04 ID:DX/7LUnE0



千早「……最近プロデューサーや律子が仕事を取ってきてくれてることがすごくありがたくて」

千早「というか、今まではそんな当たり前のことに気づく余裕すらなかったんです」

P「……」

千早「だからそのせっかくの仕事やオーディションを失敗してしまうと申し訳なくて、いたたまれなくて」

千早「……声をかけてもらうと、つらいことも」

P「……そうだったのか」

千早「あ、で、でもすごく励まされます!ほとんどはありがたいんですけど!」

慌てて弁解する。
珍しく千早の顔が少し赤くなっていた。




191VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:18:13.72 ID:DX/7LUnE0



P「いや、参考になった。ありがとな」

千早「い、いえ」

千早「……ところで、何の話をしていたんでしたっけ?」

P「ん?千早が俺に励まされるとうれしいって話だろ?」

千早「な……!ち、違いますよ!」

P「なんだ違うのか。あーあ、ショックだなあ」

千早「……もう」

でも、そうか。
伊織もそんなことを考えたりしているんだろうか?




192VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:18:42.10 ID:DX/7LUnE0



P「……」

いや、違うな。
今回悪いのは完全に俺だ。

7月の初め。
伊織は調子が悪かった。
調子が悪いと機嫌も悪い。

原因はわかっている。

中間テストの結果が悪かったせいだ。
……たぶん。




193VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:21:19.04 ID:DX/7LUnE0





テスト対策は約3週間前から始めた。

自分の中では若干早めにスタートを切ったつもりだった。
しかし―

伊織「……わかんない。もう一回」

やはり仕事が増えている影響は大きく、学校の授業内容はほとんど理解できていなかった。
というか、ぶっちゃけ授業自体に出れていないことが多かった。内容が入っていないのは当たり前だ。

気を取り直して一から授業をやった。




194VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:21:55.01 ID:DX/7LUnE0



まず数学。
内容は展開、因数分解、そして平方根のあたりだ。
展開、因数分解の基礎は教えるとすぐにできた。
応用問題は若干苦戦していたが、まあまあ。
平方根は飲み込みがいまいちだった。
どうやら平方根という概念自体、納得がいってないらしかった。
何度も根気強く説明した結果、

伊織「まあ、だいたいおそらく半分くらいはたぶんわかったかも」

とのことだった。

ここまでさらっとやった時点で、テスト2週間前。
学校のテスト範囲が発表される。




195VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:23:41.78 ID:DX/7LUnE0



P「なん……だと……?」

伊織「?」

数学は予想通りだったが、理科のテスト範囲が予想とは全く違っていた。
イオンが丸々と、生殖と遺伝が半分くらい。

理科の場合、最近のカリキュラムの進め方は学校ごとに自由になっている。
よって、どの単元から始めるかは学校の先生次第、ということだ。
それはわかってはいたが、大体の学校はまだそんなにカリキュラムをいじっていないと油断していた。
昔は三年生になると、大抵「物体の運動」か、「生殖と遺伝」から入るのが大多数だった。
しかし、伊織の学校は「イオン」から入っていたらしい。
完全に想定外。




196VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:24:15.86 ID:DX/7LUnE0



一縷の望みをかけて伊織の理解度を確かめてみると、

P「伊織、陰イオンって代表的なのは何がある?」

伊織「陰イオン?なにそれ」

P「陰イオンだよ、マイナスイオンともいうが」

伊織「ああ、エアコンから出るやつね」

P「……」

P「伊織、イオンってなんだ?」

伊織「だから、エアコンから出るやつでしょ。あ、空気清浄器?」

俺は頭を抱えた。
抱えていてもしょうがないことに2秒後気づき、授業をした。




197VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:27:40.25 ID:DX/7LUnE0



しかしもともとイオンは難しい範囲だ。
ゆとり教育でいったんなくなっていたが、指導要領の改訂によって復活した単元。
数学の復習・演習もしつつ進めていたら、イオンを半分くらい教えたところでもう一週間前になっていた。
予定よりも時間を食っていた。

他にも文系の科目だってあるし、理数ばかりやっているわけにもいかない。
仕事もある。伊織もあるが、おれだってある。

時間を見つけて、睡魔と闘いながら伊織はがんばった。

しかし結局、テスト前までに全範囲復習することはできなかった。

ここは塾ではないので過去問題で傾向対策することすらできず、テスト初日を迎えた。




198VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:28:54.43 ID:DX/7LUnE0



甘かった。
甘々だった。

今までだって、ある程度の点数は出してきた伊織だ。
なんだかんだで

伊織「ま、こんなもんよ。伊織ちゃんにかかればね。にひひっ」

と言ってくれるのを期待していたのか。

それとも、甘えではなく自己満足か、ブランクか。

久しぶりに授業をして、ここまでやったんだからという気持ちがあったのか。

ブランクのせいで感覚がずれていたのか。



初日のテスト終了後、伊織は事務所に来なかった。




199VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:29:57.08 ID:DX/7LUnE0



後から聞いた話だと、初日の数学の時点で失敗していたらしい。

そのままずるずると調子を戻せないまま、最終日までのテストを受けた。

そして数日後、すべてのテストが返却された。

英語は問題なかった。98点。

国語は88点。まあ、これもいいだろう。

社会80点。及第点と言ったところか。

理科74点。厳しい。

数学64点。




200VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:31:25.02 ID:DX/7LUnE0



完全に、俺の責任だった。

ちなみに伊織が60点台をマークしたのは中学校に入ってから……いや、生涯初めてのことらしい。
この点数を伊織の父親に見られたら、最悪すぐに芸能活動を休止させられるのではないかとすら思った。

伊織に、

伊織「まあ、しょうがないわね」

と言われたのも堪えた。

俺は伊織にフォローされたのだ。




201VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:32:09.32 ID:DX/7LUnE0



あれだけ伊織に受験について説教を垂れておきながら、どうやら甘かったのは俺の方らしい。
以前の経験を全く生かし切れていなかった。
かといって、「俺が悪かった、許してくれ」と伊織に言うわけにもいかなかった。
そんなことを言われても、伊織も迷惑なだけだろう。

「結果が出たものはしょうがない、切り替えていこう」と言うのが精一杯だった。

……結局切り替えることはできなかった。

なにより、俺自身が引きずっているのが一番の問題だ。




202VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:32:50.38 ID:DX/7LUnE0





千早「……そう」

伊織「……うん」

伊織「……ほんと、合わせる顔がないわ」

千早「プロデューサーはそう思ってないんじゃないかしら?」

伊織「あれだけやってもらったのに、結果が出せなかったのよ?」

伊織「最近口数も少ないし」

伊織「怒ってるし……がっかりしてると思う」

千早「……」




203VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:33:51.88 ID:DX/7LUnE0



伊織「思ったより、できないんだな……って」

千早「……ほんと、似た者同士ね」

伊織「え?」

千早「なんでもないわ」

千早「とにかく、このままじゃいけないって思ってるんでしょう?」

伊織「……それは」

千早「早く解決した方がいいわ」

千早「後になればなるほど……溝を埋めるのは大変になる」

伊織「……」




204VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:34:34.74 ID:DX/7LUnE0



千早「……じゃあ」

千早「あ、これ」

伊織「?」

伊織「……レッド○ル?」

千早「差し入れ」

伊織「あ、ありがとう」

千早「がんばってね」

伊織「……うん」




205VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:35:17.64 ID:DX/7LUnE0



千早「……」

千早(距離が近すぎると、お互いが見えなくなるものなのかしら?)

千早「……私にも、まだチャンスが?」

千早「……なんてね」




つづく




206VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/24(月) 12:35:52.57 ID:DX/7LUnE0



はい、今回は以上。読んでくれた方ありがとうございました。




207VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/24(月) 21:37:42.67 ID:Wgl5GVU6o


ちーちゃん大逆転あるかな





210VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:18:48.64 ID:BhLqzqdM0





P「おおー、やってるやってる」

伊織「すごい人ね」

P「まあな。夏の風物詩だし」

伊織「ね、ねえあれなに?」

P「ん……輪投げじゃないか?」




211VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:19:21.70 ID:BhLqzqdM0



伊織「あれは?」

P「射的。んで隣のが型抜き」

P「なんだ来たことないのか?」

伊織「あ、あるわよ!一応確認しただけ!」

P「さいで」

7月末。
俺と伊織は夏祭りに来ていた。




212VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:21:19.18 ID:BhLqzqdM0





伊織が声をかけてきたのはテストから約2週間後。
まだ若干ぎくしゃくとした雰囲気が残る時期だった。

伊織「暇そうね」

P「……そう見えるか?」

こんなやり取りも久しぶり。
俺としてはとうとう不満を言いに来たかと思っていた。

しかし、テストの結果が悪かったのは俺の責任。
何を言われても甘んじて受け入れ、なんとかやる気を取り戻してもらわなければならない。




213VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:22:06.34 ID:BhLqzqdM0



ところが、伊織が言い出したのは

伊織「夜店、行きたい」

だった。

P「……」

P「なぬ?」

予想外の出来事に一瞬固まる俺。

伊織「7月27日。おごりね」

それだけ言うと、踵を返して立ち去ろうとする。




214VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:22:48.44 ID:BhLqzqdM0



P「お……ちょ、待て!」

伊織「なによ?」

P「夜店?出店?縁日?あの夏祭りの?」

伊織「そう」

って、そんなことを確認したいんじゃない。

P「どうした?急に」

伊織「何よ。いいじゃない、たまには息抜きぐらい」

P「ま、まあそれはいいが……」

伊織「……」




215VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:23:45.72 ID:BhLqzqdM0



確かにこの先は勉強漬けになるだろう。
あまり根詰めてやっても効果は薄いだろうし……

P「……おごり?」

頷く。

P「はあ……」

これで許してやると言うことだろうか?
直接口に出さないあたりはいかにも伊織らしい。

それに、俺としてもそれはありがたかった。

教える側として、自分が失敗した、悪かったと軽々しく言うわけにはいかない。
生徒の方が「この先生本当に大丈夫か?」と不安になるからだ。




216VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:24:12.59 ID:BhLqzqdM0



P「……わかったよ。好きなだけ食えばいいさ」

伊織「にひひっ」

伊織の笑顔を、久々に見た気がした。




217VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:24:57.21 ID:BhLqzqdM0





P「三匹」

伊織「……もう一回!」

……

P「二匹」

伊織「も、もう一回よ!」

……

P「三匹。出目金含」

伊織「きーーーーーーーっ!」




218VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:26:09.34 ID:BhLqzqdM0



店主「お、お嬢さん一匹もってくかい?」

伊織「もう一回よ!」

伊織「アンタ!なんかコツがあるでしょ!?」

P「ん?ああ、まあ……」

伊織「こういう時はふつう優しく教えてくれるもんでしょ!?」

P「いや、下手に手出しすると怒るかな、ってな」

伊織「教えなさい!」

P「はいはい。まず網は垂直に持ち上げるんじゃなくてだな……」




219VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:26:51.34 ID:BhLqzqdM0



……

伊織「や、やったわ!」

一匹ゲット。

店主「おー、やるねえ。ほいよ」

伊織「ふふん、当然ね!」

P「ってか、こんなにどうすんだ?」

ちなみに俺のラストは四匹。
伊織がやるたびに「アンタも付き合いなさいよ!」と言われやった結果、合計10匹以上になっていた。




220VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:27:55.08 ID:BhLqzqdM0



伊織「ふっふーん、名前何にしようかしら?ジュリエッタ?ヘンリー?」

P「聞け」

伊織「うっさいわね、ちゃんと面倒見てあげなさいよ」

P「こんなに飼えるか」

伊織「じゃあ事務所で飼ったら?」

P「学校じゃないんだ。みんな喜ぶかもしれんが、面倒が見きれないだろ」

伊織「あ、やよいにあげるのはどう?兄弟もいるし、喜ぶんじゃない?」

P「やよいか」




221VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:30:04.91 ID:BhLqzqdM0



確かに喜ぶだろう。が。
……経済的なことを考えるとなあ。

伊織「……じゃあ、私のこのかわいいフランソワーズをやよいにあげるわ」

P「え?」

伊織「一匹だけなら世話もそんなに大変じゃないでしょ?」

伊織「ついでに水槽と餌も一年分くらいプレゼントしようかしら」

相変わらず人の気を読むのが早い。

伊織「そのかわり!アンタの取ったその子たち、あたしちょうだいよね!」

P「……ああ。やよいも喜ぶんじゃないか?きっと」

伊織「にひひっ!さあ、次よ次!」





222VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:30:40.80 ID:BhLqzqdM0



……

伊織「きゃ……!」

P「人が増えてきたな。はぐれるなよ」

伊織「……」

伊織「……ちょっと」

P「あん?」

伊織「人が増えてきたわね」

P「……そうだな」




223VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:31:34.09 ID:BhLqzqdM0



伊織「人が増えてきたわね!歩きづらくなってきたわね!」

P「なんだよ!」

伊織「~~!気が利かないわね!手ぐらい引いたらどうなの!?」

P「はいはい」

P「……これでよろしいでしょうか?お嬢様?」

伊織「……フンだ」




224VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:32:12.43 ID:BhLqzqdM0



……

伊織「次はあれ」

P「ま、まだ食うのか?」

伊織「歩いてるからお腹がすくのよ。文句言わない!」

P「……んあー」




225VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:32:45.51 ID:BhLqzqdM0



……

伊織「これかわいいわね」

P「……」

伊織「あ、こっちもいいかも」

P「……」

伊織「うーん、でもやっぱりこっちね」

P「……」

伊織「ね?」

P「……これください」

マイドッ!




226VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:53:37.03 ID:BhLqzqdM0



……

伊織「ふぅ、ちょっと疲れたわね」

P「……ちょっとか」

俺はちょっとではなく疲れていた。
こういう時に歳を感じるようになってきた。最近。

出店の喧騒から少し離れたところに腰を下ろす。




227VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:54:30.15 ID:BhLqzqdM0



伊織「ふう、情けないわねえ」

伊織「アンタ、ここでちゃんと荷物見てなさいよ」

そう言うと、伊織はどこかに走っていった。

P「元気なやつだ」

まあ、普段から歌ったり踊ったりしているんだから当然と言えば当然か。
……久々のオフだしな。スケジュールが半日でも調整できたのは運が良かった。
それに、きっと初めて来たんだろう。
今日は特にはしゃいでいたように思う。

P「……これで、少しは罪滅ぼしになったかな」

しばらくして、伊織が戻ってきた。




228VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:55:04.08 ID:BhLqzqdM0



伊織「アンタ、メロンね」

P「これ、今回の報酬か?」

伊織「ま、そんなとこ」

伊織はいちごだった。

P「うん、うまい」

伊織「そうね」

しばらく無言でかき氷を食べた。

伊織「……」

伊織「……あの」




229VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:55:45.97 ID:BhLqzqdM0



P「んー?」

伊織「その……」

P「なんだ?なんか言いにくいことでもあるのか?」

P「あ、出費のことか。それならこの前給料日だったから別に気にしなくても……」

伊織「……ごめんね」

P「……は?」

伊織「……テスト」

伊織「いい結果出せなかったでしょ?」

P「……」




230VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:56:32.49 ID:BhLqzqdM0



伊織「せっかく教えてもらったのに……」

なんで。

P「……みんな、そうなんだろうな」

伊織「え?」

P「……」

以前教えていた生徒もそうだった。

受験に失敗して、落ちて。

一番つらいのは本人のはずなのに。




231VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:57:02.23 ID:BhLqzqdM0



俺の前に来て言うのだ。

せっかく先生に教えてもらったのに、と。

努力してきた生徒ほど、優しい生徒ほどそうだった。

ごめんなさい、ごめんなさい、と何度も謝る。

P「……」

伊織「……」

お互い横に座っている相手の方は見ない。




232VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:57:41.96 ID:BhLqzqdM0



P「……俺の方こそ、すまん」

伊織「……え?」

P「というか、今回のことは完璧に俺の采配ミスだ」

伊織「……」

P「だから……伊織が怒ってるんじゃないかと思ってたよ」

伊織「……私が教わってる側でしょ」

P「それでも、な」

伊織「……」

自然と自分の中で引っかかっていた言葉を口にしていた。
伊織の気持ちを聞いたからかもしれない。この夏の夜の独特の雰囲気のせいかもしれない。




233VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:58:53.16 ID:BhLqzqdM0



いや違う。元々はそうだったのだ。
お互いに納得するまで話し合い、ぶつかった。一緒にアイドル活動をしていた頃は。
少し離れている間に忘れてしまっていたようだ。

しかし、今日以前のようにはしゃぐ伊織を見て思い出した。
生徒以前に伊織は伊織。
765プロのアイドルで、仲間で。
そして、俺の初めてプロデュースしたアイドル。

そう思うと自然と言いたいことを言っていたのだった。

何を思っているか口に出さなきゃ伝わらない。
伊織のことは大方わかっていると思っていたが、まだまだだったようだ。




234VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 18:59:26.31 ID:BhLqzqdM0



伊織「……ほんと、馬鹿ね」

伊織「……お互い」

P「そうだな」

P「……こっから」

伊織「?」

P「ここからリスタート、だな」

伊織「……ふふ、そうね」

プロデューサーなのだからアイドルを支え続けなくてはならない。
例え、今はメインで担当していないとしても。

……大人の言い訳だろうか?
アイドルだから、プロデューサーだから。
俺は――




235VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 19:00:37.24 ID:BhLqzqdM0



伊織「ところで」

P「ん?」

伊織「……」

伊織「やっぱり、言わない」

P「なんじゃそりゃ」

伊織「何を言おうとしたか当ててみなさいよ」

P「はあ?言わなきゃわからんだろ」

伊織は無言でこちらを見ている。
なんとなく、前にもこんなことがあった。




236VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 19:01:20.10 ID:BhLqzqdM0



言葉にしなければ伝わらない――

が、言葉にしなくてもなんとなくわかることもあるようだ。

P「……浴衣、似合ってるな」

伊織「にひひっ、当然でしょ!」

遠く夏の夜空に花火が打ちあがった。




つづく




237VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 19:28:37.47 ID:BhLqzqdM0



はい、今回は以上。勉強成分がほとんどない回となりました。

読んでくれた方ありがとうございました。




続き→P「受験か」伊織「そうよ」.Part2
転載元:P「受験か」伊織「そうよ」 
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371233865/

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コメント

コメント一覧

    • 1
    • 2013年08月03日 14:07
    • 理科のカリキュラム変更とかに触れてるってことは本業の方かな?
      生々しくてつい読み込んでしまいました
    • 2 名無し春香さん
    • 2013年08月19日 23:17
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