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トップページモバマス > 一ノ瀬志希「美優お姉ちゃんのアロマを売ろうよ♪」三船美優「えっ」

2: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:42:43.03 ID:IrBVRxNKo


●まえがき

※登場キャラ
一ノ瀬志希
icnssk

三船美優
mfnmy1

モバP

※とても短い話です
※志希と美優さんが従姉妹というのは捏造設定です


3: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:43:10.12 ID:IrBVRxNKo





――もしキミが調香師なら、思い出をつづるのに日記もカメラもいらない。




4: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:43:44.94 ID:IrBVRxNKo




晴れた日の昼過ぎ、346プロ事務所併設のカフェテラスに懐かしい人影を見つけると、
あたしは背中から忍び寄って後ろ髪のニオイを嗅いだ。

「美優お姉ちゃーん♪」
「ふぁっ――し、志希ちゃん!?」

美優お姉ちゃんは、いつもはクラリセージやイランイランみたいに、
フェミニンで甘いアロマを愛用している……けど、今日はなんだか事情が違う。
いろんなアロマがごちゃごちゃと混じってる。



「いやー。いつもに増して寂しげな背中だったから、ついがばーっと」
「寂しげ……って、余計なお世話ですっ」

あたしの軽口を聞いて、美優お姉ちゃんはツンと顔をそらしてしまった。
すると、美優お姉ちゃんの向かいの椅子に誰かが座ってて、口をあんぐり開けてるのが見えた。



「あ、いたんだプロデューサー」
「……美優さんと志希って、いつのまにそんな親しくなった……んですか?」
「あたしは、いいニオイがするヒトには初対面でもがばーっと行くけど」
「志希はともかく、美優さんがあしらい慣れてるなぁ、と思って」

美優お姉ちゃんはあたしを振り払うのを早々に諦めたのか、
あたしの腕を巻きつけられたままプロデューサーの方へ顔を戻した。



「志希ちゃんと私は、従姉妹なんです。岩手にいた頃は家が近所で、よく顔を合わせていました」
「問題児だったあたしの世話を押し付けられていたともゆー。美優お姉ちゃん昔から流されやすいし」
「……コーヒーぐらいならおごってあげるから、せめて椅子に座りなさい」
「はーい、美優お姉ちゃん♪」

あたしは美優お姉ちゃんのうなじと髪をたっぷり名残惜しんでから、
美優お姉ちゃんとプロデューサーのいる卓に近くの椅子を持ってきて座った。



「で、美優お姉ちゃんはナニがお悩みなの?」
「う……いや、その……」
「あたしにはお見通し。サンダルウッド、フランキンセンス、ベルガモット、ティトリー、まだほかにも……
 どんだけ一気に濫用してるの。美優お姉ちゃんともあろうものがそんな様だから、
 それだけで相当参ってるんだなぁって分かっちゃうの」

美優お姉ちゃんの顔を見る限り、あたしの推察はだいたい当たっていたようだった。

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5: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:44:17.01 ID:IrBVRxNKo


「――ふーん、美優お姉ちゃんプロデュースのアロマ、ねぇ」

話を聞いてみると、プロデューサーが美優お姉ちゃんに精油メーカーとのタイアップの仕事をとってきて、
それで三船美優モデルのアロマを売り出すので、どんな香りにしようか考えているところらしい。

「それで考えてみたんだけど、なかなかまとまらなくて……」
「まぁ、三船美優モデルのアロマと言われてもねぇ」
「……な、なんだよ」

あたしが露骨に馬鹿にした目線を投げると、さすがのプロデューサーも気づいたらしく、
きまり悪そうな目で見返してきた。



「プロデューサー。アロマを香水かナニかと勘違いしてない?」
「……そういえば、アロマと香水って何が違うんだっけ」
「はぁ」

あたしは美優お姉ちゃんにおごってもらったカプチーノでいったん舌を潤した。

「あのねプロデューサー、アロマセラピーって意味わかる? therapy(療法)だよ?
 香水や洋服みたいに個性・ファッションとして使うものじゃなくて、カラダの状態に合わせて使うものなの」

例えば生理不順ならクラリセージ、むくみ解消ならグレープフルーツ……みたいに、
アロマセラピーではエッセンシャルオイルを、カラダの不調や体質によって使い分ける。
前に美優お姉ちゃんから聞いた話では、本場フランスだと医療行為として保険まで下りるんだと。



「……で、なんとなく読めてきたけど一応聞こうか。
 なんで美優お姉ちゃんは――あ、プロデューサーもだ――こんな妙なニオイさせてるの?」
「妙って……そんなにか?」
「絵でたとえるなら、アクション・ペインティングみたいな感じかな」

プロデューサーは今更になって頭を抱えた。

「……イメージがまとまらないなら、実際に調合しながら考えたらどうか、となって……」

だいたい分かった。
今この二人が疲れた顔でカフェテラスにいるのは、どこか室内でアロマを調合してて、
それで消耗したから外の空気を吸いにやってきたんだろう。



「ダメだよ美優お姉ちゃん、プロデューサーみたいなシロート相手に主導権渡しちゃあ」

鼻は、ちょっと使うだけですぐに疲れてしまう。アロマも、感じているよりずっと体力を消耗させる。
だから調香師やアロマセラピストは、ブレンドするときはまずニオイの記憶に頼る。最初から実物は使わない。

これを美優お姉ちゃんが知らないわけない……から、
プロデューサーのシロート考えでこの有様になっちゃったんだろう。

「……でも、せっかくプロデューサーさんがとってきてくださったお仕事だし……」

まぁ、美優お姉ちゃんがせっかくのお仕事を無下にしたくない、という気持ちも分かる。



美優お姉ちゃんの顔を眺めていると、あたしの打算がひらめきを起こした。

「美優お姉ちゃんの香りを、香料で再現して出せばいいんじゃない?」


6: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:46:27.62 ID:IrBVRxNKo


あたしの提案に、美優お姉ちゃんはすぐ反応した。

「……志希ちゃん、もはやアロマとか関係なくなってるよね?」
「だって、美優お姉ちゃんはいいニオイするじゃない♪
 あたしも、できればいつだって美優お姉ちゃんのニオイを嗅いでいたいと前から思ってるんだよ」

どうしてだか知らないけど、美優お姉ちゃんのニオイは昔から包容力があった。
あたしは美優お姉ちゃんのニオイを嗅いでる間は落ち着いてたし、
今でも仁奈ちゃんあたりがそばにくっついてるのは、きっとそのせい。



「ねー、プロデューサーもいいと思うよねー?」

プロデューサーは絶対に賛同するだろう、とあたしは予想していた。

「……志希、できるのか?」

なぜならこの間、美優お姉ちゃんが仁奈ちゃんを膝枕して寝かしつけている時、
美優お姉ちゃんが立てないのをいいことにハスハスし放題していたあたしを、
プロデューサーが血涙を流してうらやましそうに見ていたからだ。

「できる。あたしなら、ほかの誰よりも美優お姉ちゃんのアコールをうまく作れる」

なぜなら、あたしは世界で一番美優お姉ちゃんのニオイを知ってる調香師だから。



「……でも、それはアロマじゃないでしょう」

なおも美優お姉ちゃんは難色を示す。
美優お姉ちゃんは真面目にアロマをやってるから、抵抗があるようだ。

「確かに、これはアロマじゃなくて香水だよね」

アロマセラピーは植物の香りを使った民間療法が由来だからか、
天然植物由来の精油だけを使い、化学的に合成された人工香料は使わない。

逆に近現代の香水は、よく人工香料を使う。
安くて品質が安定してるし、香りを楽しむためには『毒にも薬にもならない』ほうがいいんだ。



「ただ、そもそもお仕事をとってきたプロデューサーがイメージしているのは、
 アロマセラピーに使う精油じゃなくて、香水の仲間のアロマオイルだと思うけど」
「うっ……そ、そうかも……」

とってきた仕事からして、おそらくプロデューサーは精油とアロマオイルの区別がついていない。

アロマセラピーをやる人が使うのは天然素材の精油が基本。
対してアロマオイルは単なる『匂いつきの油』。
天然素材以外が混じった(つまりアロマセラピーではフツー使わない)雑貨や化粧品扱いのシロモノが日本じゃ大半だ。

美優お姉ちゃんも、このプロデューサーの勘違いに気づいてるんだろうけど、
たぶん気づく前に「うん」って言っちゃって、それに流されてるんだろうなぁ。

こんな調子じゃ、この仕事がうまく行くはずがない。
あたしが一肌脱がなきゃ。



「明日、この志希ちゃんが作った『美優お姉ちゃん』のニオイを持ってきてあげる。それで決めて」


7: ◆Freege5emM 2017/05/30(火) 00:47:50.73 ID:IrBVRxNKo


翌日、あたしはラボから『美優お姉ちゃん』を再現したニオイを持ってきた。

プロデューサーはそれでイチコロだった。

美優お姉ちゃんは『たった一日で……マチュラシオン(熟成)とか、時間が足りないはず……』とか、
釈然としない様子だったけど、プロデューサーに押し切られてあたしの案が採用になった。
実物のチカラは絶大だ。



しばらく経って聞いたところによると、
あたしが提出した美優お姉ちゃんアロマは、それなりに評判が良かったらしい。
プロデューサーも愛用している。

それを知った美優お姉ちゃんは『わ、私のニオイがプロデューサーに嗅がれて……』
と悶絶していたけど、もうファンのみんなだって嗅いでるんだから今更だよねー。



でも開発者のあたしは、美優お姉ちゃんのニオイを直接ハスハスしてばかりだ。
今回の功績で誰かをハスハスする風当たりが減って、とてもやりやすい。
あたしの目論見ずばり的中。

「……も、もう私の匂いを嗅がなくてもいいでしょう?」
「therapyはナマじゃなきゃ♪」

美優お姉ちゃんのニオイを感じるたびに思う。
やっぱり実物のチカラは絶大だ。



(おしまい)


志希と美優さんは同郷で、キーアイテムが香水とアロマで縁があるから、絡みがほしいと思っています
この二人に文香、薫、有香と混ぜて香りつながりのユニットとか組まれたら嬉しいのですが


志希誕生日おめでとう!
みなさんも一言祝ってくだされば幸いです。

(以下ダイマ)
【楽曲試聴】「秘密のトワレ」(歌:一ノ瀬志希)
https://www.youtube.com/watch?v=wD3olymAvN0



【楽曲試聴】「女の子は誰でも」(歌:一ノ瀬志希)
https://www.youtube.com/watch?v=QMtlK6yj5f8


転載元:一ノ瀬志希「美優お姉ちゃんのアロマを売ろうよ♪」三船美優「えっ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496072521/
SS速報VIPのSS紹介です。

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