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トップページモバマス > 【デレマス時代劇】メアリー・コクラン「トゥルーレリジョン」

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 12:56:29.82 ID:1yBFooTu0

※口リと綺麗な東郷さん。 別世界。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 12:57:10.83 ID:1yBFooTu0

メアリー・コクランは忠義を知らぬ。

それは彼女が異邦人だからではない。

そもそも人の情を知らないのだ。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 12:57:50.77 ID:1yBFooTu0

メアリーの両親は傭兵で、かつての南北戦争では

戦況が変わるたびに参加する陣営を変えたとう。

彼女達はメアリーが生まれた時も大して喜ばなかった。

初めて歩いた時も、初めて両親の名前を呼んだ時も、

軽くメアリーを一瞥するだけだった。

そんな両親が喜んだのは、メアリーが初仕事で

家に金を入れた時だった。


前スレ
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5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 12:58:34.82 ID:1yBFooTu0

両親がそのようであったから、

メアリーは人を信じていない。

信じるのは金である。

1人で金を稼ぎ、1人で使う。

そうやって、1人で生きる。

それが神も信じぬメアリーの教義であって、信念でもある。


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 12:59:04.59 ID:1yBFooTu0

そんなメアリーは今、江戸にいる。

倒幕開明派の人間の

警護をすることになったのだ。

メアリーは『黄金の国』に

期待をしていたので、がっかりした。

屋敷は木と紙でできているし、

町の空気は殺伐としている。

人々はメアリーのことをじろじろ、

面白くもなさそうな顔で見る。

金でも貰わなければ、2度と来たくない。

入国初日で、メアリーはそう思った。


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:00:06.48 ID:1yBFooTu0

警護の対象は、東郷あいという女。

“少々”皮肉屋なのと、それを隠せない実直さのせいで

武家社会から孤立したらしい。

それと能を隠せない鷹でもあったから、

倒幕派の中でも人が寄り付かないという。

自分がみじめになるからだ。


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:01:11.36 ID:1yBFooTu0

「アナタ、世渡りが下手っぴネ」

メアリーは、初対面で東郷に言った。

20を過ぎて友達が1人もおらず、

命の危険から守ってくれる仲間もいない。

運が悪ければ、メアリーと出会う前に

とっくに野垂れ死んでいただろう。


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:02:32.81 ID:1yBFooTu0

「お嬢さん。

 生憎だが世渡り上手じゃ、幕府は倒せないよ。

 倒そうとも思わないだろうね」

 特に機嫌を損ねた様子でもなく、東郷はそう返した。

「お嬢さん…?

 失礼ネ。アタシは一人前のレディ。」

 それにアナタ、アタシより弱イんだから、偉そうにしないでクレル?」

 メアリはーは不機嫌になった。
 
 彼女は1人で生きていけない人間が大嫌いだった。

 そういうやつほど、一人前の人間のふりをして、

 メアリーのことを馬鹿にする。


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:03:16.73 ID:1yBFooTu0

だが東郷は、「それもそうだね」と笑って、

それ以上何も言い返さなかった。

不思議な女。メアリーはそう思った。


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:03:57.08 ID:1yBFooTu0

 倒幕派の隠れ家があるわけでもなく、

 メアリーは東郷の住む長屋に同居した。

 部屋は片付いているし、清潔だったが、とにかく狭い。

 メアリーの生家とは大違いだった。

 それに隣の音がやかましく、静かに昼寝もできやしない。


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:04:40.98 ID:1yBFooTu0

「アナタ達って、マゾヒストなの?」
 
「マゾ…嗜虐趣味のことかい?

 ああ、そうかもしれない」

 東郷は、メアリーの質問に頷いた。

「口じゃあ文句を言うがね、

 実は“苦痛に耐える自分”が、皆大好きなのさ。

 だから何も変えようとしない」

 こういうことを素直に言うから、一人ぼっちなんだろうな。

 メアリーはそう考えた。


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:05:07.90 ID:1yBFooTu0

「あいもマゾなノ?」

 サーベルの鞘で東郷をつんつん

 突きながら、またメアリーは尋ねた。

 ちょっとした意地悪のつもりだった。

 自分は周りとはちがう、そんな風に生きている女が、
 
 実のところ、とても寂しそうに見えたのだ。


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:05:37.53 ID:1yBFooTu0

東郷は、少し微笑んで答えた。

「まあ、この状況に

 ワクワクしてるくらいだから、マゾに違いないね」

メアリーは「ぐさあ」と呟いて、鞘を東郷に突き出した。

東郷は「ぐああ」と言って、ぱたりと倒れるふりをした。


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:06:07.86 ID:1yBFooTu0

江戸の食事はメアリーの口に合わなかったで、

2人は亜墨利加の大使館で

食事をすることになった。

「メアリー君はひょっとして、結構偉い人なのかい」

「アタシっていうか、一族がネ。

 仕事で大統領を何回か交代させタワ」

 東郷は初めて大使館を訪れたのだが、割に落ち着いていた。

 さすがに年の功はあるのか、とメアリーは思った。

 しかしその後、フォークを逆さに持った東郷には吹き出した。


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:06:41.25 ID:1yBFooTu0

「牛の肉もなかなか美味いものだね」

「アッチじゃ、みんな四六時中牛の面倒見てるワ」

 微妙に噛み合わない会話をしながら

 帰途につくメアリーと東郷。

 彼女達を、取り囲む3人組がいた。


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:07:28.48 ID:1yBFooTu0

「倒幕派の東郷あいだな」

 護国派達の人間であった。

 皆刀を抜いて、東郷の方を見ている。

「貴様個人に恨みはないが、命をもらうぞ」

「人を斬って国を護る。大した信条だね」

 命を狙われているのにも関わらず、東郷は相手を皮肉った。


18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:07:59.35 ID:1yBFooTu0


「ふん。よく回る口だ!!」

 1人が、東郷に斬りかかった。

 この女は鹿島神道流の使い手で、

 護国派の中では5本の指に入る。

 3人の中では、1番の手練れだった。

 「言い返せナイからって手が出ルのは、大人としてどうなのカシラ」

 その女を、メアリーが斬り捨てた。
 
 ほんの、まばたきする間の早業だった。


19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:08:40.99 ID:1yBFooTu0

「さあいらっシャイ、“お嬢さんタチ”」

 メアリーは手招きをして、残りの2人を挑発した。

 2人は、じっと構えて相手を見た。

 武器はサーベル。

 長さは太刀より少し短く、幅が広い。

 それでいて刃が鋭く、重く、殺傷力に優れる。

 細い日本刀では受け止めることができぬ。

 そして構え。右足を下げ、左足が前に出る。

 そして、サーベルの切っ先が地面に下がっている。

 一見、とても無防備に見えた。


20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:09:31.96 ID:1yBFooTu0

 2人はメアリーを挟むように囲む。

 1人が斬りかかって、相手の様子を見る。

 それで敵わぬなら、もう1人が加勢する。

 そういう算段であった。

「えいやぁっ!!」

 メアリーの左半に回り、初手は

 中段からの振り下ろすような突き。

 メアリーはため息をついて、少し身動いで躱した。

 「そこは袈裟斬りデショ」

 メアリーは逆袈裟で相手の首を刎ねた。


21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:10:12.63 ID:1yBFooTu0

「貴様!」

 残った1人が斬りかかろうとしたが、

 東郷が彼女を刀で刺した。

「東郷…お前…なぜ」

「まさか、卑怯だと言うんじゃないだろうね。

 3人でやってきておいて」

 東郷は冷たい顔で刃を抜き、さらに相手の心臓を突いた。


22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:10:48.32 ID:1yBFooTu0

「フーン、これからは1人で行動スル?」

 その動きを見たメアリーが、

 面白そうな顔で言った。

 実際、東郷の腕前は高かった。

 一撃目は不意打ちだったが、二度目の突きは、

 正確無比に相手の急所を貫いている。
 
 メアリーより弱いというのが、

 かなりの謙遜のように見えた。

「いやいや、君がいないと困るんだ。

 私は寂しがり屋だからね」

 東郷は手をひらひら振って、微笑んだ。


23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:11:19.01 ID:1yBFooTu0

 ある時、2人は外でひどい土砂降りにあった。

 メアリーは雨ぐらいなんてことはなかったが、自分が濡れるのもかまわずに、

 東郷が傘をさしてくれた。

 「アリガト」

 まるで、親みたい。
 
 一瞬そう思った後、メアリーは笑い出した。

「どうしたんだい?」

「なんでもナイ」

 自分の親に、ここまで優しくされたことはなかった。


24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:11:54.60 ID:1yBFooTu0


 それから長屋に戻ると、

 東郷は火鉢を焚いて、メアリーの服を乾かしてくれた。

 そして代わりに、隣の家族から着物を借りてきた。

 「ナンデ、服を貸してくれるノ?」

 メアリーには不思議だった。

 自分が濡れたことと、隣の家族には何の関係もない。

 それなのに何故、服を貸してくれるのか。

 「メアリーが可愛いからだよ」

 東郷は自分が金を払ったことは伝えなかった。

 メアリーは、それもソウネ、と笑った。

 彼女は長屋暮らしに染まりつつあった。


25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:12:35.92 ID:1yBFooTu0

玩具屋などが通ると、

 東郷はメアリーに玩具を買ってくれた。

「一人前のレディは、こんなもので遊ばないワ」

初めはそっぽを向いていたが、東郷が目を離すと、

メアリーは食い入るような目で玩具を見つめていた。

それに気づいた東郷が、すこし外に出ると、

メアリーはきょろきょろした後、吹き戻しを手に取った。


26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:13:05.42 ID:1yBFooTu0

吹くと、ぴゅろーぴゅろーと間の抜けた音がした。

それが面白くて夢中で遊んでいると、

障子の隙間から覗いている東郷と目が合った。
 
「これって、パイプじゃなかったのネ。気づかなかったワ!」

メアリーはそう言って、吹き戻しを放り投げた。

しかし数日もすると、東郷がいる時も吹いて遊んでいた。


27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:13:46.89 ID:1yBFooTu0

 異国の凄腕の剣士。

 この話が護国派の人間の間で広まるのは、

 すぐのことであった。
 
 すでに倒幕派の幹部なりを何人も斬り捨てているなかで、

 東郷あいだけが、どうしても倒せない。

 そばには、いつも吹き戻しを吹いている剣士がいて、

 ぴゅろーと言う音が響くたび、

 護国派の人間の命が消えるという。

 冗談のような話だが、笑い事ではなかった。


28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:14:13.74 ID:1yBFooTu0

 来る日も来る日もやってくる刺客に辟易としながら、

 メアリーは東郷に尋ねた。

「忠義ってナニ?」

 護国派の人間がいつも叫ぶ言葉。

 言葉の意味合いはメアリーにもわかるが、

 命を懸けられるほどのものとは思えなかった。


29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:14:41.91 ID:1yBFooTu0

 「便利な言葉だよ。
  
  それがあれば、

  自分にとって住み心地のいい世界だけを守れるし、

  他人に守らせることだってできる」

  大して怒った様子もなく、東郷は淡々と答えた。
 
  ただそういう事実がある。そんな話し方だった。


30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:15:41.53 ID:1yBFooTu0

「東郷は、忠義アル?」

 メアリーはまた意地悪で、そう尋ねた。

 東郷は、「君にだったら跪いてもいいかな」と答えた。

 彼女の方が一枚上手であった。
 
 悔しくなったメアリーが「靴をお舐め」と、
 
 細くて美しい足を出すと、
 
 東郷は「ありがたや」と言って、ぺろりと舐めた。

 そして、しばらく2人で笑いあった。


31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:16:13.19 ID:1yBFooTu0

 護国派の人間らにとって、いままでさして

 重要でなかった東郷の価値が高まっていた。

 東郷は倒幕派のなかでは大した地位ではないが、

 今まで差し向けた剣客を全て退けた。

 つまるところ、彼女は護国派の

 面目を叩き潰したというわけだった。

 護国派は東郷を始末するために、

 陣営の五本の指、残る四本すべてを投下した


32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:17:00.68 ID:1yBFooTu0

 メアリーは夜、焦げ臭い匂いで目を覚ました。

 長屋が家事が焼けていた。

 一緒の布団で眠っていた東郷を、

 彼女は特に焦らず起こした。
 
「グッモーニンッ♪今日も頑張っていくワヨ~!」



33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:17:26.29 ID:1yBFooTu0

「護国派の連中か」

「ここまでスる、相手も本気ということカシラ」

「いや、ずっと本気だったさ。

実力が伴っていなかっただけで」

 東郷の言葉に肩をすくめながら、メアリーは戸を開いた。

 彼女の頭上を、刃が通過した。


34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:19:21.96 ID:1yBFooTu0


「情報が間違っとるであります…」

 剣を振るった相手は大和亜季。

 彼女は亜墨利加人と聞いて、相手を長身だと思っていた。

 しかしメアリーの身長は五寸ほどであるから、

 江戸の人々とあまり変わらない。

 メアリーはさっとサーベルを抜き、大和の胴を斬り払った。

 重く鋭い頭身が、臓物を通りに撒き散らした。

 それが長屋の火に炙られ、

 なんとも言えない臭いが周囲に広がった。 



35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:19:47.85 ID:1yBFooTu0

「可哀ソウなコト、したカシラ」

「いや、死んだら一緒だよ」

メアリーに答えたのは、敵方の剣士であった。

護国派斬り込み隊長、木場真奈美。

彼女の側には、また2人の剣士がいた。


36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:20:44.94 ID:1yBFooTu0

「おめでとう。その子が私達の中で一番強かった」

「じゃア、モウ帰ってくレル?」

「そうはいかない、我が忠義のために」

 忠義。メアリーは目を細めた。
 
 遅れて、東郷が長屋からでてくる。

「腕利き3人か、メアリー君も分が悪いかな」

 彼女はメアリーを信じているからこそ、

 こういう冗談が言えるようになった。
 
「2人頼んダワ」

「この給料泥棒さんめ」

 


37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:21:58.83 ID:1yBFooTu0

護国派の2人が、東郷とメアリーを挟むように立った。

 「キャシーは餓鬼の方を頼む」

 「りょーかい」

 木場に答えたのは、夕暮れのような髪と碧眼、

 亜墨利加人の女だった。

「まさか、手を緩めると思っているのカナ」

「かもね。馬鹿みたい」

キャシーと呼ばれた女は、癖のある髪をくしゃっと撫でた。


38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:22:44.52 ID:1yBFooTu0

「流派と名前を名乗りなよ。互いの名誉のために」

「独逸流剣術、メアリー・コクラン」

「鹿島神道流、キャシー・グラハム。

 いざ尋常に、参る!!」

 キャシーは刀を抜いた。それはまさしく、侍の姿だった。

 構えは下段。小柄な相手を、無駄なく攻めるつもりのようだ。

 メアリーは、剣を顔の横に寄せ、切っ先を相手に向けた。

 お互いに、相手の攻めを待つ。

 燃え盛る炎が、2人の顔をジリジリと焦がした。


39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:23:12.97 ID:1yBFooTu0

「さて、こちらも始めるとしようじゃないか」

 木場は鞘を逆さにして、刀を落とすように抜刀した。

「君とは、なんだか気が合いそうな気がするんだがな」

 東郷は肩をすくめながら、刀を構えた。

「嬉しいな。地獄で待っていてくれるかい!」

「生きて友人になりたいが、そうもいかないようだね!」


40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:23:42.01 ID:1yBFooTu0

 冗談をかけあいながら、2人は打ち合った。

 ぶつかる刃から、新たな火花が散る。

 残念ながら、相手の力量が上だな。

 鍔競りをしながら、東郷は悟った。

 木場の方が、一瞬だけ彼女よりも速く動いていた。

 一瞬が一生になる。戦いとは、そういう世界である。


41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:24:29.62 ID:1yBFooTu0

 東郷は相手から一旦離れて、

 刀を鞘に納め、居合の構えを取った。

「速さで劣る相手に居合…どこの流派だったかな、東郷」

「中村流だよ」

「そいつは踊りだ」

 木場が東郷と距離を詰める。

 居合の速度を見積もると、誘い、

 躱してからの反撃が望ましいように思われた。


42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:25:01.72 ID:1yBFooTu0

知らぬ相手に先手を狙うのは、

剣士の頂点のような存在か、あるいは愚の骨頂。

木場はどちらか。彼女は先に仕掛けた。
 
大上段で、そのまま叩き斬る。相手が刀を振る前に。

そのつもりだった。

しかし、東郷は木場が間合いに入る前に、手をさっと振った。

刀は抜かれていなかった。


43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:25:31.41 ID:1yBFooTu0

「何を、」

 木場の喉に、小柄が突き刺さっていた。

「自分より強い相手に、居合なんて使うわけないだろう?
 
 読本じゃあるまいし」

 卑怯、と言おうとした木場に東郷が迫った。

「人様の家に火を放っておいて、

 まさか卑怯とか無礼とか言うんじゃないだろうね」

 呼吸を封じられ、動けなくなった木場は、

 あっけなく首を刎ねられた。


45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:26:57.96 ID:1yBFooTu0

 膠着を破ったのは、キャシーの方だった。

 初手は逆袈裟。それを、メアリーはサーベルで受ける。

 キャシーの腕は、冷や汗が出るほど冴えていた。

 加え、彼女は手をひねり峰打ちに切り替えていた。

 受けであるので、メアリーの剣が刀を折ることはない。

 しかしぶつかれば、刃が毀れる。

 だから峰で防ぐ。

 そう考えて、即座にキャシーは実行した。


46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:28:21.10 ID:1yBFooTu0

なんたる早業。

見た目だけで選ばれたわけでないのは、明白であった。
 
 
「アナタ、もっと自信を持った方がいいワ!」

「お前を斬ったら、そうしよう!」

互いの刃が上に弾かれる。

キャシーは、そのまま上段から振り下ろした。

腕力で勝る彼女の方が一手速い。

メアリーは側転でそれを躱す。


47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:29:27.48 ID:1yBFooTu0

「それも“どいっちゅ”の動きか!」

「発音がグッドネ!」

 メアリーを追うように、キャシーが動く。

 それを待ち構えて、メアリーは突きを放つ。

 キャシーは横蹴りで攻撃を、

 そしてサーベルを弾き飛ばした。

 ここでも彼女が一枚上手だった。

 少なくとも、剣術の範疇では。


48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:30:06.22 ID:1yBFooTu0

「勝ッタ、とでモ?」

 次の瞬間にメアリーの右拳が、

 キャシーの顔面にめり込んでいた。

 武器を失えば、柔軟に切り換える。

 傭兵であった両親からの習いである。


49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:31:51.67 ID:1yBFooTu0

 しかしあくまで童の拳、

 致命傷にはいたらなかった。

 なので、メアリーは怯んだキャシーを、

 さらに拾った石で殴りつけた。

 さらにメアリーは、昏倒した相手に馬乗りになり、

 絶命するまで顔面を石で殴打し続けた。
 
 にぶい肉の音が、ながらく周囲に響き渡った。


50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:32:32.14 ID:1yBFooTu0

「さて…」

 相手を片付けたメアリーと東郷は、残る1人を見た。

「アナタはどのくらい強いのカシラ」

 残った1人は、まったく怯えきった顔をして、答えた。

「私は、5番だ・・・」
 
 だが彼女は、刀を抜いて2人の方へ向かってきた。

 それをメアリーは、危なげなく斬り捨てた。


51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:33:01.22 ID:1yBFooTu0

「忠義ゆえに、か」

倒れた女を見て、東郷が言った。

悲しそうな表情であった。 


52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:33:56.46 ID:1yBFooTu0

 それを見たメアリーが尋ねた。

「アタシがアイを守りたいと思うのも、

忠義というやつなのカシラ…」

 東郷は悩ましげな顔をして、

 しばらく考えた後に返事をした。


53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:34:46.33 ID:1yBFooTu0

「申し訳ないが、友情ということにしてくれないか。
 
そちらの方が…その、なんだ…うれしい」

珍しく歯切れの悪い東郷を見て、

メアリーはふっと吹き出した。


54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/06(火) 13:35:14.94 ID:1yBFooTu0

おしまい


転載元:【デレマス時代劇】メアリー・コクラン「トゥルーレリジョン」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496721334/
SS速報VIPのSS紹介です。

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