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トップページモバマス > 凛「レッスンルームにヘレンがいた」【モバマス】

1: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:09:46 ID:hYw

おかしい。
今日のレッスンルームは私一人が使う予定だったはずだ。
一応確認をしてみる。
うん。
間違いない。
やっぱり私一人だ。
なのになんで、この、おかしなダンサーがいるのだろうか。


2: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:10:12 ID:hYw

ヘレンは私を気に留めることもなく踊っている。
無視か。割と傷つく。
ヘレンらしいと言えばヘレンらしいとも言えるかもしれない。
けどレッスンルームを勝手に使っておいて無視するのはいかがなものか。
せめて一言挨拶するとか、それくらいしてもいいんじゃないかな。
…けど、話しかけられたらそれはそれで困るんだけどね。
なぜなら、そもそも私は実はヘレンとはあまり接点が無いからだ。


3: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:10:20 ID:hYw

このヘレンという女。
一体全体正体が掴めない。
とにかく世界と共に踊っている。そういう女なのだ。
別に他アイドルに媚びを売ってるわけではない。
Pのことをいやらしい目で見てるわけでもない。
彼女には踊りと世界しか見えていないのだ。
それ以外の彼女の要素が見当たらない。
ほんと何者なのこの人。

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4: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:10:31 ID:hYw

そもそもなんでこの人はクール部門に配属されているのだろう。
こんなのが私と同じ定義にたっているのはにわかに信じがたい。
この事務所の人事部は無能の集まりでしかないのか。
一度志希を呼んできて、物事の定義付けについてたっぷりと叩き込んでほしいレベルだ。
クールというのは「かっこいい」とか「冷淡な」とか、そういう意味の言葉だろう。
私はgoogleに問いかける。オッケーグーグル。クールの意味。
なるほど、クールとはそういう意味のほかに「名人的な」とか「ずぶとい」とかそういう意味もあるらしい。
ヘレンそのものを象徴する形容語句じゃないの。
私は不服だがヘレンがクールであることに納得してしまった。くそう。


5: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:10:49 ID:hYw

話をレッスンに戻そう。
ヘレンがいるからといって、別にレッスンの邪魔になるという訳ではない。
このダンサーを無視して私はレッスンに集中すればいい。
むしろ普段のレッスンは他のグループと一緒にやるのが当たり前。
今日は私一人だったというのが珍しい。
今日のレッスンは「Trinity Field」の振り付けだ。
本当は奈緒と加蓮とレッスンするはずなんだけど、今日は彼女たちは別の仕事がある。
だから今日は私一人が先にレッスンしておいて、足を引っ張らないように予習をしておく、というのが今日の狙いだ。


6: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:11:03 ID:hYw

ミュージックスタート。
♪~
♪~
リズムに合わせて私は身体を激しく動かす。
トライアドプリズムの熱い思いが込められたこの1曲。
聞くだけで私のマインドは溢れだす。
うん、今日の私のコンディションはなかなか良い。
自分でも驚くほどに身体が動く。
いつもは失敗しやすいステップも今日の練習は上手くいった。
うむむ、これが本番だったらいいのに。


7: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:11:12 ID:hYw

「ヘイ!!!蒼のアイドル!!!」

突如レッスンルームに響く、閃光のような一声。
…声なのに閃光て。私、比喩のセンス零か。
もちろんその声の主は。

「ヘーイ!そんな踊りで満足するなんて…アナタもまだまだ未熟ね」

当然ヘレンだ。てか当たり前のように思考を読むな。怖い


8: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:11:29 ID:hYw

気が付けばラジカセからの音楽は止まっていた。
まさかこの人、声だけでスイッチを…?
いやそんなはずはない。こっそり停止ボタンを押したのだろう。
それはさておき、私の踊りが未熟って…どういうこと?

「偉そうに言うね。ヘレンさん、私たちの曲の何がわかってるって言うの?」

私は負けじと反論する。Trinity Fieldは私たちトライアドプリズムの曲だ。
こんな意味不明なダンサーに何がわかる。

「アナタにも魅せてあげるわ…世界レベルの、ダンスの真髄を!!」

ヘレンはそう言うと、腰をこれでもかというくらい、激しく振り出した。


9: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:11:40 ID:hYw

「…!?」

その直後だ。私が思わず唾を飲み込んだのは。
ヘレンはTrinity Fieldの振り付けを完璧にマスターしていたのだ。
まさか今の私の振り付けを見ていてそれを覚えたの?
それともこの日のために振り付けを覚えてきたというの?
いずれにせよ天才のそれであることには間違いない。
水の様に滑らかでしなやかに、炎のように熱い情熱をぶつけるダンス。
ヘレンが私に魅せたのは、まさに、おそらく私が理想としているTrinity Fieldの振り付けそのものだった。
ただ一つ、腰をこれでもかというくらい激しく振りながら踊っている点を除いては。
いや真面目にどうやってんのそれ。


10: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:11:59 ID:hYw

「ふふ…その若さゆえの探求心・好奇心。素晴らしいわ」

違うこれは疑念だ。てかナチュラルに思考を読むな。

「いいわ。アナタがその気であるなら、私の世界レベルのダンスを伝授してあげるわ」

その気じゃないからいい。一人でやる。
てかこの人なんでこんな偉そうなの。
芸歴的には私の方が先輩だぞ。渋谷凛だぞ。

「反抗期…ね。私にもそんな時期があったわ…」

15歳はもう思春期の時期だろう。
…だめだ私、この人のペースに飲まれてる気がする。

「ならアナタは黙っておくだけでいいわ。私はアナタの隣で踊り続けるから」

ヘレンがそう言い放つと、再びラジカセからTrinity Fieldが流れ出した。
やっぱりこの人再生ボタン押してないじゃん。絶対おかしいって。


11: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:12:28 ID:hYw

ヘレンは無視してダンスレッスンに集中しよう…。
♪~
♪~

「FUN!HA!FUN!HA!」

♪~
♪~

「YEAH!YEAH!OH!YOYOYO!」

♪~
♪~

「SAY!HO!SAY!YAHOO!VERY!VERY!FUNFUNFUN!!」

どうしよう。邪魔だ。


12: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:12:53 ID:hYw

いっそレッスンやめて出て行こうか。
…いやそれはなんかヘレンに負けた気がする。
ラジカセからはTrinity Fieldは流れ続けている。
Trinity Fieldは私たちの曲だ。こんな、よくわからない人に負けるなんて絶対に嫌だ。

私もヘレンに負けず腰を振る。

見て、私のダンスを。アンタなんかに負けないんだから。


13: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:13:05 ID:hYw

しかしヘレンの腰の動きは速い。
しなやかで、美しく、気高く、それでいて熱い。改めて見ると素晴らしい踊りだ。
私の見様見真似の腰の振りでは到底及ばない。
このままではTrinity Fieldはヘレンのダンス曲となってしまう。
諦めてはいけない。何かあるはずだ。
ヘレンのあの動きを支える…根本的な何かが。
思い出せ…ヘレンに対抗できるヒントを…。
ヘレンがいつも口にしている言葉は「世界」
世界とはなんなのか?


14: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:13:26 ID:hYw

「ヘイ!世界というのは…」
「!」
「考えなさい。それは、自分自身よ!」

それはどういうこと?
たぶん間違いなく私に対するヒントなのだろうけど…。
私は精神を集中させる。
聞こえてくるのは、ヘレンの風の切る音と、そして。
私たちの曲「Trinity Field」。
…そうか、わかった。
過去も現在も未来も此処に或る、重なり合う「Trinity Field」
これが…私、渋谷凛に与えられた、かけがえのない世界!
これなら…これがあれば、私はヘレンに勝てる!


15: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:13:42 ID:hYw

私の腰は加速する。
腰で光る螺旋を表現する。心なしか、私の周囲にはスパークが表れていた。

「…!世界のレベルを掴んだわね!私が押されているなんて…!」
「ふーん…この程度が世界レベルの踊り?案外簡単だったよ」
「ふふふ、見くびっては困るわね。私は実力の3%も出し切っていないわ。これについてきてこその、世界レベルよ!」

ヘレンの腰の動きがさらに速くなる。
あの腰に牛乳瓶を取り付けたら一瞬のうちにバターが出来上がるだろう。
しかし私にだってTrinity Fieldが懸かっているんだ。
この程度、普段の辛いレッスンで鍛えている私には造作もない。


16: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:14:22 ID:hYw

「流石シンデレラガールの一人ね!なら50%のダンスよ!LESSON2!ついてきなさい!」

そのままヘレンは風となった。
いやあくまでも比喩表現である。ヘレンのダンスのキレが激しすぎて、風のように姿が捉えられないだけだ。
本当に風になった訳じゃないなら、勝機はある。
私もヘレンと全く同じ動きをする。
そうすれば…見えた。ヘレンの姿が。実体を捉えた。
どう?世界レベルってのはそんなものなの?
ヘレンはまだ余裕そうに笑っている。
どうやらまだまだ楽しめそうだね。私だって、全力で行くよ。


17: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:14:36 ID:hYw

「やるわね!!ならばアナタに世界レベルの頂点に立つヘレンの真骨頂を披露するわ!FINAL LESSONよ!100%、フルパワー中のフルパワーダンス!!」

とうとうレッスンルームを床、壁、天井と縦横無尽に駆け抜けるヘレン。
まさに世界レベルのダンスだ。
こんなことをされてしまえば、アイドルでない者ならば敗北は確定したも同然だろう。万物を魅了する美しいダンスだ。
だけど。
私は負ける訳にはいかないんだ。
私はトライアドプリズムの一人、渋谷凛だ。
Trinity Fieldは私たちの曲なんだ。ヘレンなんかに奪われるのは癪だ。
だから…ヘレンになんか、絶対に負けない!


18: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:14:53 ID:hYw

ダッ!ダッ!ダダンッ!ダンッ!!!

「…!」

どうやら決着はついたみたいだ。
先に膝をついたのは…

「降参よ。まさかアナタがここまでできるなんて、思いもしなかった」

ヘレンだ。
私の勝ちだ。
…だけど。


19: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:15:13 ID:hYw

「ヘレン、私は貴女がヒントをくれなかったら、私は貴女にそのまま負けていたよ」

これは彼女の敗北ではない。
彼女が私に手助けをしたからこそ、私が勝利したのだ。
すなわち私の勝利は、ヘレンの勝利でもある。

「いいえ。違うわ」
「ヘレン?」
「勝利したのはアナタの譲れない【世界】よ。だから誇りなさい。私に勝利したアナタ自身を」

…そうか。
ヘレンは私を倒したいわけじゃなかったんだ。
ヘレンの目的は私を世界レベルへと導くこと。それだけに過ぎなかったんだ。
今なら、ヘレンの思考が手に取るようにわかる。
私はもうさっきまでの私じゃない。私は、世界レベルに立ったんだ。


20: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:15:36 ID:hYw

「ヘレン、握手しよう」
「喜んで受け入れるわ。また一つ生まれた世界に…乾杯ね」

熱い握手をヘレンと交わす。
お互いを高め合う仲間、か。
なんてかけがえのない存在なんだろう。
私はその余韻を味わい、しばらくヘレンの熱い手をぎゅっと握りしめるのだった。


21: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:15:56 ID:hYw

翌日。

ダンスレッスンに奈緒と加蓮はついて来れなかった。


22: 名無しさん@おーぷん 2018/10/08(月)04:16:04 ID:hYw

おわり。
なにこれ。


転載元:凛「レッスンルームにヘレンがいた」【モバマス】
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1538939386/

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コメント

コメント一覧

    • 1 名無し春香さん
    • 2018年10月08日 18:57
    • 5
      なんだこれ
    • 2 名無し春香さん
    • 2018年10月08日 20:20
    • 理解はできないけど面白い
      これが世界...!
    • 3 名無し春香さん
    • 2018年10月08日 21:48
    • こんなの笑わない方がどうかしてる
      二人して世界レベルで腰振ってんでしょ?
    • 4 名無し春香さん
    • 2018年10月08日 23:03
    • 世界レベルってスゲー
    • 5 名無し春香さん
    • 2018年10月09日 11:55
    • タイトルでもう笑う
      ヘレンがいたってだけなのにこのパワーよ
    • 6 名無し春香さん
    • 2018年10月09日 21:11
    • プリムス警察だ!
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