スポンサーリンク

トップページモバマス > 凛「芳乃を怒らせてしまった」【モバマス】

1: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:06:39 ID:Tsx

「…」プンスコ

まいったね。
辞書で言うやらかしとはまさにこのことだ。
渋谷凛、まさかの広辞苑載りだよ。
こんなことでまさか岩〇書店デビューの道が開けちゃうなんて驚きだ。これには文香も真っ青だね。
なんて言ってる場合ではない。なんとかして仲直りしなきゃ。



2: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:07:16 ID:Tsx

「凛、お前何したんだ…?」

喧嘩してる空気を察してくれたのか、私に話しかけてくれたのは私の友人の神谷奈緒。
こういう時にこの気まずい空気を動かそうと引っ張ってくれる存在のなんと頼もしいことか。
やっぱり持つべきものは良い友人だね。さすが私の自慢の奈緒だよ。もう名前を『聖人』に改名したらどうかな。

「いや話しかけただけでそこまで褒めるなよ!てかどうしたんだよ、芳乃が怒るなんてよっぽどだぞ?」

私もそう思う。
芳乃は奈緒も知ってる通り大人しくおっとりした性格でなおかつ友好的であり、非常に優しく温厚な人物だ。
そんな彼女が怒ってるということは、彼女はベリーアングリーということになる。

「お…おう?そうだな?」

まぁ怒らせた原因は完全に私にあるんだけどね。
うん…思い返しても私があんな軽はずみなことを言わなかったら芳乃をあそこまで傷つけることはなかったはずだ。
同じ事務所の仲間とは言っても親しき中にも礼儀あり、だよね。
今回は完全に私が悪い。

「おいおいそこまで思いつめんなよ。事情はよく知らないけど凛はそんな人を傷つけるようなヤツじゃないだろ?」

そうかな。
私、日ごろから言葉にトゲがあるって言われるし目つきも鋭くて割とこれ気にしてるんだけど。

「何言ってんだよ、凛なら大丈夫だって。あたしが仲直りの手助けしてやるからさ、元気出せよ」

ありがとう。奈緒はやっぱり私の自慢の友人だ。

「だからそれはもういいって!ほら、まずは早く何があったのか話せって!」

うん。それは5分前の話なんだけど…。

スポンサーリンク



3: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:07:36 ID:Tsx

【芳乃はちっちゃいね】

【小さくないのでして!!!】



ってやりとりをしたんだ。

「それだけ!?」

うん、完全に私が悪い。


4: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:07:56 ID:Tsx

「いや…手助けするって言った手前悪いんだけどすっごいコメントし辛い…」

さらに続きがあるんだ。

「お!?おぉ、そうだよな、それだけであいつがあんなに怒るわけないよな」



【わたくし小さくても齢は凛さんよりも高くー、16歳でしてー】

【6歳?(難聴)】

【むむむむむーーー!!!】



これがこの事件の全貌だよ。

「やっぱりそれだけ!?」

うん。説明しやすかったね。

「そういう問題じゃなくて!?」


5: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:08:17 ID:Tsx

「どうしよう…想像以上に小学生並みの喧嘩で逆にどうしていいかわからん…」

落ち着いて奈緒。とりあえず私が全部悪いってわかったでしょ。

「なんであたしが諭されてんだよ!?まぁでもそうだよな、しょうもない理由だけど凛が煽って芳乃が怒ったのは間違いなさそうだし」

しょうもないとは失礼な言い方をするね。
芳乃は背が小さいことを非常に気にしていたはずだ。現に彼女はそれで激怒している。
それなのにしょうもないというのは本人が可哀想だろう。

「うっ…それは確かにそうだな…」

はぁ、奈緒は最低だね。こんなことを言う人が私の友人なんて全くもって心外だ。
そんな心の持ちようで私たちを仲直りしようと思っていたなんて信じられない。
何?正義の味方気取りのつもり?ヒーローナオでも目指してるの?
アイドル引退してヒーローに転職。だけどそんなんじゃヒーローで食べていけるとは思えないよ。名前も今すぐ『飢え女』に変えて。

「そこまで言わなくていいだろ!?さっきまでのあたしへの好感度はどこへ行ったんだよ!?」

冗談だよごめん。

「わーってるよ凛だし。けどなんでそれわかってんのに凛は芳乃を煽ったりしたんだ?」

芳乃ってちっこくてかわいいからからかいたくならない?

「男子小学生か!!!」


6: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:08:42 ID:Tsx

…かわいい奈緒をいつもからかってるからそれの癖が芳乃にも出ちゃったのかもしれない。

「あ!なるほどね!いつもお前たちがあたしをからかうのはそういうことだったんだな!いい加減あたしも怒るぞ!?」

ごめん。反省してるから許して。

「あー、話を元に戻そう、芳乃と仲直りするのが目的なんだっけ?とりあえず何か仲直りのモノでも送ればいいんじゃないかな?」

仲直りの物?私いま指輪とか買えるお金持ってないけど…。

「いや彼女と喧嘩した彼氏とかじゃないんだからさ。何かこう甘いものとか色々あるだろ」

べろちゅーとか?

「お前さてはわざと言ってるな?」

ばれた。
とにかく要するに食べ物とかで買収するって訳だね。ありきたりだけど作戦としてはベターかもしれない。

「まぁ芳乃もあれくらいでそこまで怒るわけないし、きっと許してくれるだろ」

よし。善は急げだ。
さっそく何か用意してこよう。


7: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:09:04 ID:Tsx

数分後。
芳乃へ送る食べ物を持ち、私は彼女の前に立つ。
芳乃。こっち向いて。
できるだけ優しく彼女の名前を呼びかける。仲直りに来たんだから、決して敵意を感じさせないように。

「…何でしょー」ムス

ものすごく機嫌が悪そうなオーラを出しながらこっちを振り向く芳乃。
表情こそ普段の彼女と変わりないが口調にやや圧があるのが感じられる。
けどそれもここまでだ。私は芳乃にさっきの悪口を許してもらいに来たんだ。
ほら、仲直りの品を持ってきたよ。

「物で釣ろうとするなんて低俗でして…ですが誠意というものはいかなるものでも受け取るべきものー、何を持ってきたのでしょー」

芳乃の期待に応え包みを彼女の目の前で開けて見せる。
これは事務所にいた杏から珍しいお菓子だって貰ったものなんだけど。
ジンギスカンキャラメルって言うものなんだ。ほら食べて。あーん。

「でしてててててててて!!!???」ムシャムシャ

それを口にした途端、芳乃は右へ左へのたうち回り苦しみだした。
目には涙を浮かべ私を鬼か悪魔を見るような瞳で睨みつけている。正直芳乃の小ささと顔の愛嬌のせいで全然怖くない。
…おかしい。どうしてこうなったの。

「ちょっと待って凛なんでそれ選んだ!?」


8: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:09:21 ID:Tsx

「…」プクー

「ああもうほら芳乃すっごく怒ってるじゃねえか!風船みたいになってるぞ!?」

だって知らなかったもん。私だってこうなるとは思わなかったよ。
そもそもジンギスカンキャラメルってそんなに不味いの。

「ああ…最悪死ぬ」

そんなに。
横着せずに素直にコンビニとかに買いに行っとけばよかったかな…。

「まぁやっちゃったものは仕方ないって。気を取り直して別の方法探してみよう」

こういうバシバシと仕切れるところ、奈緒の凄いところだと思う。

「ちょくちょく褒めてくるのやめてくれ!照れて調子狂うだろ!?」


9: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:09:41 ID:Tsx

「うーん…どうすりゃいいかなぁ…」

いっそ平謝りとかどうかな。土下座とか。何でもするよ私。

「それは逆効果だったりするんだよ。無理に許してもらおうとすると相手もなかなか強情になって許してくれなくなったり…」

だったら押してもダメなら引いてみろ的なことはどう?

「それができりゃあいいんだけどな、難しいところなんだよなぁ…」

てかこの状況で引くってどういうことするの。

「芳乃を余計に怒らせてみるとか…駄目だな」

うむむ…上手い方法思いつかないね。

「大丈夫だ、次のプランはもう考えた。ここまで来たら最後まで凛に付き合ってやるって」

奈緒すき。優しい。


10: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:09:56 ID:Tsx

仲介?

「ああ、お前が行くとなんか火に油を注ぎそうだし、とりあえず他の人に話を聞いてもらう」

どうでもいいけど火に油を注ぐってものすごく大惨事な感じあるね。

「そういう意味で言ってるからな。仲介は芳乃と親密そうな人がいいかな、そういう人の方があいつも話聞くだろ」

できるだけ芳乃が言うこと聞きそうな人を連れて来ればいいんだね。
それにしてもなんだかんだ芳乃もはぶてて子供みたいだ。

「それ芳乃にとってお前から一番言われたくない言葉なんじゃないか?」

ごもっとも。

「とにかくさっそく実行するぞ。あたしはとりあえずさっきのキャラメルの事情を芳乃に話しておくから凛は仲介してくれる人を探して」

わかった。ちょっと待ってて。


11: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:10:33 ID:Tsx

「おお凛…来た…か…?」

再び私は依田芳乃の前に立つ。
彼女は現在怒りのあまりものすごく頬を膨らませており風船のようになっている。てか事実風船みたいに宙に浮いているし。すごい。
私は先ほど彼女の怒りを鎮めることはできなかったが、今回の私は一人ではない。心強い仲間がいる。
芳乃もこちらの様子に気づいたようだ。
さぁ今こそ謝罪を畳みかけるよ。準備はいい?
さぁお願い。私に力を貸して!

仲介者・サバオリくん!!

「ぬいぐるみじゃねーか!!!!!!」

サバオリアタック!とう!

「でしてっ!?」ボフン

「攻撃してんじゃねーよ!?!?!?!?!?」


12: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:11:09 ID:Tsx

「ちょお待て凛!?なんでだよ!?お前のその思考回路を教えろ!!」

本当は肇に頼みたかったけどいなかったんだよ。

「え?うん?どゆこと?」

ここで私は考えたんだ。
肇の姓は藤原。
藤原と言えば蘇我入鹿でしょ?

「待っておかしい」

けどイルカいないから代わりにサバで…。

「なぁお前本当は芳乃のこと嫌いなのか?」

大丈夫、実はここで策があるんだ。

「へ?」


13: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:11:30 ID:Tsx

「…」ユラリ

先ほどのサバオリアタックを喰らって倒れた芳乃が起き上がる。
手にはぶつけられたサバオリくんを抱いており、目には闘志を宿らせているように見えた。

「なぁ、凛…あいつキレて…」

いつもと違う芳乃の雰囲気に押されたのか少し奈緒は怯えているように見える。
けど安心して、これが私の狙いだよ。

「…は?」

芳乃は優しい娘だ。
裏を返せば、それは怒りを溜め込みやすい性質も併せ持ってるってことなんだ。
だから私はあえて芳乃に宣戦布告をする!
さぁ、私に吐き出して!その感情を!

「上等でして…凛さん」

「わたくしとて怒るときは怒るのでして!覚悟は良いのでして!?」

私はさっきの奈緒との会話でヒントを得たんだ!
押して駄目なら引いてみる…つまりわざと怒らせるって!
さぁ芳乃!私もいくよ!
サバオリ君まくらなげ対決!スタートだ!

「おお!?よくわからないけど上手くいきそうだな!頑張れ凛!」


14: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:12:06 ID:Tsx






「…」ボフンボフン

いたい!
芳乃めっちゃ強い!
たすけて!!!

「知らねーよ!!!」


15: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:13:45 ID:Tsx

「やれやれ。芳乃ちゃんもまだまだ子供なんですから…」

「…あれ?肇?さっき凛がお前いなかったって…」

「そうなんですか?私はさっき凛ちゃんに会って事情を…まぁそれよりも。仲直り、上手くいきそうですか?」

「そりゃあ見ての通りだよ。絶賛大ゲンカ中」

「ふふふ。では雨降って地が固まるのを待ちましょうか」

「なんだよー…こっちはすっごい苦労したって言うのに余裕そうだなお前」

「結構芳乃ちゃんとの付き合いは長いので。あなたが凛ちゃんのことよく知ってるのと同じですよ」

「まぁなー。それもそっか。あいつもあいつなりに頑張ってたもんな…頑張ってたか?」

「そこは認めてあげません?」


16: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:14:18 ID:Tsx

燃え尽きた…燃え尽きてしまった…真っ蒼に…

「ふふー。やはりわたくしの方がお姉さんなのでしてー」

身長10cm以上も差がある子にぼこぼこにされた。悔しい。

「芳乃ちゃん?気は済みましたか?」

「おやー…肇さん…いたのですか…」

うつぶせになった私の視界の外から聞こえてくる肇の声。
実は肇とはさっきサバオリ君を拾ってくる前に出会い、芳乃との仲直りのヒントを貰ったんだ。
怒りをコントロールするということは自分の中で押し殺すことじゃない、うまく吐き出すことなんだって。
…現場の様子は恥ずかしいから来なくていいって言ったのに来たみたい。


17: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:14:45 ID:Tsx

「…わたくしも少々幼すぎたのでして…凛さん、あのようなことであそこまで怒ってしまいごめんなのでしてー…」

芳乃もサバオリ君まくらなげ対決で怒りを発散したのかすっかり冷静になっていた。
サバオリ君は戦いの結果引き裂かれ二度と元に戻らないすがたかたちになってしまったが、私と芳乃の仲は対照的にすっかり元に戻ったみたい。
芳乃、私の方こそごめんなさい。あんまり人をからかうのよくないよね。悪かったよ。

「良かったなー凛も芳乃も。これで一件落着って訳だな!」

「ですね。やはり皆さん、仲良しが一番です!」

「仲直りの証にわたくし、こんびにでみなさんにすいーつをご馳走しましょー。皆さんでぱーてぃでしてー」

長く辛かった喧嘩は終わり、あんなに気まずかった事務所に再び優しい空気が流れ出す。
仲良きことは良きこと、とはこの感覚を指すんだろうな。とても心地よい感覚だ。
これからもこの心地よい感覚にずっと包まれていきたい、私は心の底から強くそう思っ


18: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:15:02 ID:Tsx

「…七海のサバオリくん、なくなったと思ったら、こんな…」

「…」

「…」

「…」

…。

その日私たちは、日が暮れるまで必死に七海に平謝りをした。


19: 名無しさん@おーぷん 19/09/12(木)23:15:19 ID:Tsx

おわり。半年ぶりにSS書いた。


転載元:凛「芳乃を怒らせてしまった」【モバマス】
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1568297199/

スポンサーリンク

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
米や※または#の後に数字を入力するとコメント欄へのアンカーが表示できるかも。