ちひろ「もう、二人してどうしたんですか。なんか綺麗な格好してますけど」

ちひろ「あれ？　というかお二人共今日はオフでしたよね？」

心「おう……☆　マリナルとはぁとのね……お友達がね……」

麻理菜「……結婚、したのよ」

ちひろ「あー。なるほど」

麻理菜「で、今日は心と二人で結婚式に出席してきたの」

心「そゆこと☆」

心、麻理菜「「はぁ……」」

ちひろ「出るの嫌だったんですか？」

心「そんなわけないだろ☆　マリナルともはぁととも仲良かった子だし♪」

ちひろ「じゃあなんでそんなため息吐くんですか。あ、もしかしてあんまりよくない式だったとか……？」

心「んや？　式はめっちゃ良かった☆」

麻理菜「えぇ！　私も挙げるならあれくらい良い式にしたいって思ったもの」

心「ウエディングドレスもめちゃくちゃ良かったし、何て言うの？　全体的に上品だったよね」

麻理菜「下品な結婚式があるのかは疑問だけど、心の言う通りね。確かに品のある式だったわよ」

ちひろ「えぇ……。じゃあなんでため息なんか……」

心「いやさ……？　同世代が結婚すると、なんかこう……ヘコまない？」

ちひろ「はい？」

麻理菜「本当は『あぁ私も結婚とかする歳なのね』ってのを意識するとこう精神的にダメージが……」

心「この歳でアイドルとかやっちゃってるとかさ。夢見過ぎなんじゃないかって思っちゃうよね……」

麻理菜「でも、私はアイドルじゃなかったらフリーターよ？　それはそれでどうなのってならない？」

心「あー、なるわー」

ちひろ「えっと、要するにお二人はお友達の結婚式に出て、現実が見えてダメージを受けた、と？」

麻理菜「まとめるとそうなるのかしら」

心「うんうん☆　おおむね合ってる♪」

ちひろ「うわ、アホくさ」

心「んだとゴルァ！？」

ちひろ「やぁん、繊細～♪って言ったんですよ」

麻理菜「言ってないわよ……」

ちひろ「気にしちゃ負けですよ、麻理菜さん」

ちひろ「で、現実を見てダメージを受けたしゅがーはぁとさんとマリナルさん」

心「ちひろちゃんからめちゃくちゃ悪意を感じる」

麻理菜「奇遇ね、私もよ」

ちひろ「大人になると夢を見なくなるものなんですよ」

麻理菜「ん？」

心「あれ、なんか真面目な感じだぞ？」

ちひろ「私はその結婚したお友達よりも、お二人の方がキラキラして見えます」

ちひろ「確かに私も女の子ですから結婚とかにも憧れはあったりしますけど、でも結婚なんてしようと思えば出来るんですよ。多分」

ちひろ「もちろん私だけじゃなくて、心さんも麻理菜さんも結婚しようと思えばすぐに出来ると思います。ある程度の妥協は必要だと思いますけど」

心「え、なにこれ。ちひろちゃんめっちゃ真面目じゃん」

麻理菜「心、茶化さないの」

ちひろ「あとで心さんにはビンタしますね」

心「ひどくない！？」

ちひろ「話を戻しますけど。現実ってのは妥協すれば簡単に手に入るんですよ」

ちひろ「でも夢はそうはいきません。夢は妥協してしまったらもう手が届かなくなっちゃいますから」

ちひろ「だから、私は妥協せずに諦めずに夢を見ているお二人の方が憧れちゃいます」

ちひろ「あ、もちろんそのご結婚されたお友達が妥協したなんて言うつもりはないですよ。そのお友達もきっと満足してご結婚されたんでしょうし」

心「なるほど☆　そういう考え方もあるのかー」

麻理菜「確かにいい歳して『夢追ってます☆』なんて痛いだけと言えば痛いだけよね」

心「おい、どうしてはぁとの真似を挟んだ」

麻理菜「気のせいよ。自意識過剰じゃない？」

心「そんなことないですぅー！　絶対はぁとでした！」

心「ちひろちゃんもそう思うよね！？」

ちひろ「麻理菜さん……」

心「ほら！」

ちひろ「心さんの場合はポーズ決めながら『女の子はいつだって夢を追ってるんだぞ☆』くらいやります」

麻理菜「あ、そうだったわね……！」

心「おい、待て。なんだそのはぁとに対するイメージ☆」

ちひろ「事実なので……」

麻理菜「事実よね……」

心「友達二人が冷たい。心が辛い」

心「でもさぁ、ちひろちゃんも思ったりしない？　『世の中の人はこうやって真面目に生きてるのにどうして私はこんなんなんだろ』って」

ちひろ「まだ私の友達そんなに結婚してないんで何ともですけど、あんまり思った事ないですね」

麻理菜「ちひろさんは周囲に胸張れるくらい立派に人生送ってるからだと思うわ」

心「確かに。はぁと達みたいにアイドルなる前は収入も安定しない根なし草みたいな生き方してないもんね……」

麻理菜「同意したくないけど同意するわ……」

ちひろ「お二人が結婚した友達を羨ましいと思ったように、その結婚されたお友達もお二人に憧れているかもしれませんよ」

ちひろ「さっきも言いましたけど、私もどっちかと言えばお二人の生き方に憧れますし」

麻理菜「自分に無いものって羨ましく見えたりするし、わからなくはないけど」

心「結局、他人を羨んだところで自分は自分だしね☆」

ちひろ「そういう事ですよ。ちゃんと答え出てるじゃないですか」

心「まぁ、マリナルと帰り道話ながらこの結論には至ってた」

麻理菜「えぇ。それも割と早々に」

ちひろ「えぇ……。じゃあなんで私呼んだんですか」

心「暇つぶし？」

ちひろ「グーでいきますね！」

心「ジョーク！　ジョークだから！」

麻理菜「心が寂しがったからなのよ、ちひろさん呼んだの」

心「はぁとだけにすんな☆　マリナルも寂しがってただろ☆」

麻理菜「そうだったかしら？」

心「けっ、いっちょまえに取り繕いやがって☆」

ちひろ「寂しいからって理由で呼び出される私の身になってくれません？」

心「まぁまぁ☆」

麻理菜「まぁまぁ♪」

心「でもさ、こうやってはぁと達のくだらない話を真剣に聞いてくれてるのってちひろちゃんくらいしか思いつかなかったんだ」

ちひろ「美優さんとか留美さんとか瞳子さんとか居るじゃないですか」

麻理菜「ちひろさん、本っ当にその三人に結婚の話題振れる？」

ちひろ「……」

ちひろ「私が適任ですね！」

心「でっしょー！？」

麻理菜「そういうわけでちひろさんに来てもらったのよ。あ、もちろん私は悪いと思ったから一応止めたのよ？」

心「『まぁよくない？』ってはぁとが言ったら一瞬で『それもそうね』って同意したけどね、マリナル」

ちひろ「麻理菜さん……」

麻理菜「し、心！　そういうのは言っちゃダメでしょ！？」

心「マリナルもたまにはちひろちゃんに怒られてしまえ☆」

麻理菜「ち、違うの！　別にちひろさんを軽く見てるわけじゃなくて……」

ちひろ「……わかってます。私を気の置けない友達として見てくれてるって事ですよね」

ちひろ「でもなんかムカつくのでここの支払いはお願いします♪」

麻理菜「はい……」

心「ぷくくっ♪　怒られてやんの☆」

ちひろ「心さんは後でデコピンするんで」

心「はぁとには暴力ってオイ☆」

ちひろ「私と心さんの仲じゃないですか♪」

心「おおぅ……良い笑顔だけど、ちょっと怖いぞ☆」

ちひろ「はぁー……。あー、くだらねぇ……」

心「本音本音☆　ちゃんと隠して☆」

麻理菜「その……ごめんなさい……」

ちひろ「良いですよ。お二人共喋ってるうちに元気になったみたいですし」

心「そう？」

ちひろ「えぇ、いつもの調子ですよ」

麻理菜「確かにそうかも知れないわね。さっきまでよりだいぶ心が軽い気がする」

心「ちひろちゃんパワーって奴かな☆」

ちひろ「はいはい、そうかもですね」

麻理菜「ふぅ。それにしてもなんかお腹空いてきちゃったわね」

心「なんかはぁと達もなんか頼む？　ドリンクバーだけってのもなんかアレだし。はぁともちひろちゃんの見てたら食べたくなってきた」

ちひろ「肥えますよ」

心、麻理菜「「肥えないし！」」

心「ナメないでもらえますぅー！？　これでもはぁと達アイドルなんでぇー！」

麻理菜「少し食べたくらいでそんな簡単に肥えませーん！」

ちひろ「はいはいそうですかそうです。にしてもうっとうしいくらい元気になりましたね……」

心「食ったる。思う存分食ってやる」

麻理菜「肉にしましょう、肉」

心「すみませーん！」

◆

心「ふぃー……食った食った」

麻理菜「さすがにもう入らないわね」

ちひろ「結婚式で食べなかったんですか？」

心「あのさ、ちひろちゃん」

麻理菜「こんなドレスで思う存分食べられると思う？」

ちひろ「今食べてましたよね！？」

麻理菜「まぁ今は今よ」

心「そうだそうだー！　はぁと達は過去を振り返らないぞー！」

ちひろ「たまには振り返って学習してください」

麻理菜「振り返る……」

麻理菜「……結婚って良いかも」

心「だねー……」

ちひろ「直近過ぎません？」

ちひろ「ていうか、心さん。結婚したいなら結婚すればいいじゃないですか」

麻理菜「そうよ、心には相手居るんだしさっさっと結婚すればいいじゃない」

心「アイドルだしぃー……。プロデューサーとは別に付き合ってないし……」

麻理菜「えっ！？　そうなの！？」

ちひろ「こいつらずっとこんなんですよ。もう幼稚園児のおままごとですから」

麻理菜「えぇ……あんたいくつよ……現実見なさいよ……」

心「マリナルには言われたくない☆」

心「んでもさ、結婚ってなってもいざどうすればいいかわかんなくない？」

麻理菜「それはまぁ……確かに」

ちひろ「心さん達はその手前段階ですけどね」

心「やかましい☆」

心「だからさー。なんかアイドル楽しいなーって思ってるとなかなか思い切りがつかないよね☆」

心「歳も歳だし、そろそろ現実も見なきゃなのはわかってるけど」

麻理菜「そうよね……私達もう26歳なのよね……」

ちひろ「昨今は晩婚化進んでますし、お二人もまだまだ若い方だと思いますけど」

麻理菜「それでも同世代が結婚したって事実があると……ね……」

心「そゆこと……☆」

心、麻理菜「「はぁ……」」

ちひろ「ため息吐くと幸せ逃げますよ」

心「幸せかぁ……」

麻理菜「幸せそうだったわね……」

心「だな……」

心、麻理菜「「はぁー……」」

ちひろ「……これは相当重症かな」

ちひろ「大丈夫ですって。お二人なら然る時が来れば結婚できますし、まだまだ若いですから」

心「そう？」

ちひろ「はい！　いつも側で見ている私が言うんですから間違いないです！」

麻理菜「……それも……そうかしら」

ちひろ「それに心さんも麻理菜さんもたくさん『好き』って言ってくれるファンの方々が居るじゃないですか。老若男女問わず好かれるお二人なら絶対に大丈夫です」

麻理菜「そう……よね！　そうよ！　ちひろさんの言う通りだわ！」

心「そうだそうだ！　ちひろちゃんの言う通りだ！　それにはぁと達はまだ若い！　焦る必要はない！」

ちひろ「そうです！　お二人共まだ焦る歳じゃないです！　若いです！　ピチピチ！」

麻理菜「えぇ！　私達はまだ若い！」

心「おうよ！　はぁと達は若い！」

心「よしっ！　じゃあこのままの流れでオールでカラオケ行こうぜ☆　ストレス発散に歌いまくろう！　だってはぁと達は若いからオールしても平気☆」

ちひろ「え、嫌です」

麻理菜「心。さすがに明日仕事なのにオールってほど私達は若くはないわよ」

心「ガーン！」

ちひろ「リアクションも古いですね」

End