2: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:46:03.96 ID:N0hbP1yw0
ブロロロロ……
P「んー……打ち合わせに挨拶に、時間かかったな……」
P「だが、どうにかスケジュールの最終調整も終わった。ずっと前から打診した甲斐があったもんだ」
P「……もうこんな時間か。事務所に着くのは10時頃かな」
prrrr! prrrr!
P「ん、電話だ。どこか路駐できそうなところは……あそこでいいか」
ピッ
P「もしもし」
??『もしもし……Pよ、事務所に戻るまでどれほどかかりそうだ?』
P「ん、晶葉か。着くのはだいたい10時頃じゃないか?」
池袋晶葉『そうか。事務所に着いたら屋上まで来るように』
P「屋上?」
晶葉『ああ、ちひろに頼んで開けてもらった。問題ないぞ』
P「そうか、分かったよ」
晶葉『……運転中にすまなかったな。では、待っているよ』
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3: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:47:29.87 ID:N0hbP1yw0
ブロロロロ……
P「屋上か……何かあったかな?」
P「……まあいいか。面白そうだし、着いてから考えよう」
P「あー、軽く飯食っておくか……丁度いい、そこにコンビニが……」
バタン
P「……にしても」
P「今日はいい天気だな。こんな都会の夜空でも――」
P「――月が、綺麗じゃないか」
4: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:49:09.01 ID:N0hbP1yw0
――事務所
晶葉「……」カチャカチャ
古澤頼子「……」ペラッ
晶葉「……」チラッ
晶葉「むぅ……」ショボン
頼子「……?」ペラッ
頼子「……晶葉ちゃん?」
晶葉「ど、どうした、頼子」
頼子「さっきから……時間、気にしてるのかな、って」
晶葉「そ、そうか……?」
千川ちひろ「そんなに気にしてても、プロデューサーはすぐには帰ってこれませんよ?」
ちひろ「打ち合わせにスケジュール調整で、かなり長引いてるみたいですから」
晶葉「……うむむ……」
5: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:51:23.11 ID:N0hbP1yw0
晶葉「……そうだな。よし、今日のためのロボの様子でも見てこよう」
バタン
ちひろ「気になって仕方がないみたいですね」
頼子「……晶葉ちゃんとPさんは、仲良しですから」ペラッ
ちひろ「ええ、事務所のソファで添い寝するくらいには」
頼子「ふふっ……あれは、微笑ましかったですね……」
ちひろ「でも、私が言ったのは頼子ちゃんのことだったんですけどね」
頼子「えっ……?」
ちひろ「頼子ちゃんもプロデューサーさんや晶葉ちゃんと仲良しですからねぇ」
ちひろ「それくらい、私にだって分かりますよ」
頼子「え、えっと、その……」カァァァ
ちひろ「ふふっ、それでは私はこの辺で。三人で楽しんでくださいね」
頼子「……ちひろさん、いいんですか……?」
ちひろ「ええ。アイドルのために空気を読むのも、事務員の仕事です。戸締まりだけは気を付けてくださいねー」
頼子「……ふふっ、そうですね……」
頼子「楽しい夜に、なりますように……」
6: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:52:18.93 ID:N0hbP1yw0
――事務所研究室
晶葉「……スイッチ、オン」
ガタガタガタ……
ゴゥンゴゥンゴゥン……
晶葉「……ふむ、動作に異常なし」
晶葉「生産も……ばっちりだな」
晶葉「……」
ヒョイッ
パクッ
晶葉「……問題ない。問題ない、けど」
晶葉「あんまり、おいしくない……」
7: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:53:58.16 ID:N0hbP1yw0
――事務所
P「はぁ、やっと着いた……」
P「かなりかっ飛ばしてきたからな、時間は……9時40分か」
ガチャ
P「お疲れ様です、ただいま戻りましたー」
頼子「……お疲れ様です、Pさん。予定より、早かったですね」
P「ああ、なるべく早く帰れるようにかっ飛ばしてきたからな」
頼子「危険な運転は……やめてくださいね?」
P「ははは、気を付けるよ。ちひろさんは?」
頼子「ちひろさんは……私達のために、空気を読むと言って……帰りました」
頼子「そうだ、プロデューサーさん……晶葉ちゃんを、呼んできてください」
P「晶葉?屋上か?」
頼子「いえ……研究室で、ロボの様子を見ているはずです……」
P「そうか、ありがとな。それじゃ、行ってきますかね」
8: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:56:28.41 ID:N0hbP1yw0
――研究室
ガチャッ
P「ただいまー。晶葉、帰ってきたぞー」
晶葉「……んぅ……P、まだ……?」スヤスヤ
P(……また机に突っ伏して寝てるのか)
ペラッ
P「何か落ちた……ん、メモか?」ピラッ
P「ふむ……」
P「なるほどな。よいしょっ」ヒョイッ
P「全く、寝る時は仮眠室に行けって言ってるのにな……」
晶葉「んっ……あれ……?」パチッ
P「ん?起きたか?」
晶葉「あれ、P……はっ!?な、何故君がここに……!?」カァァァ
P「屋上に来いって言っといて、帰ってきたら寝てるもんだからな」
晶葉「おっ、降ろせ!やめろ、恥ずかしいじゃないか!」ジタバタ
P「ほーら、あんまり暴れるなって。コーヒーでも飲むか?」
晶葉「だからっ!降ろせって言ってるじゃないか……!!」アタフタ
9: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 22:59:12.22 ID:N0hbP1yw0
P「一名様ごあんないー」
頼子「……ふふっ。おはよう、晶葉ちゃん」
晶葉「こ、このっ……!!」
P「あーはいはい。悪かった悪かった」
晶葉「馬鹿者っ!!私が寝ているからって、お、お姫様抱っこで運ぶやつがどこにいる!!」
P「ここに」
晶葉「君というやつは……!私の気持ちくらい知りたまえ、どんなに待ちくたびれたことか……!!」
P「へぇ、そんなに待っててくれたのか。ありがとう、晶葉」
晶葉「あ……っ!!」カァァァ
頼子「……微笑ましいです。ふふっ」
晶葉「よ、頼子も笑うんじゃない!」
10: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:01:45.89 ID:N0hbP1yw0
晶葉「ふん……まあいい。君が早く帰って来れたのは嬉しい誤算だ」
P「そうか。屋上って言ってたが……何をするんだ?」
晶葉「なんと。P、君は今日が何の日か知らないのか?」
P「アナスタシアとキャシーの誕生日」
晶葉「……プロデューサーの鑑だな」
P「担当が違うから、軽く挨拶したくらいだけどな」
晶葉「確かにそうだが……そうじゃない」
頼子「あの、Pさん……帰られる途中で、月は見ましたか?」
P「月?見たぞ、今日は満月だったな――ああ、そういうことか」
頼子「ええ……今宵は、仲秋の名月……ですから」
晶葉「そういうことだ。Pよ、先に屋上に向かっていてくれ」
P「了解。ある程度こっちでも準備しとくよ」
晶葉「ああ、頼んだぞ」
頼子「それでは……私達も、準備しましょう」
11: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:03:49.90 ID:N0hbP1yw0
――屋上
P「レジャーシートと、防寒対策くらいかな」
バサッ
P「これでよし、と。あとは……これだな」
P「コップとお茶も用意したし……」
P「んー、二人とも成人ならお神酒と称して持ってきたんだがなぁ……」
ゴロンッ
P「まあいいか。一人お先に、月でも堪能するかな」
P「飲みたくなるが……我慢だな」
P「誰か大人がいれば飲んでただろうが……たまにはこういうのも、乙だろう」
12: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:05:01.96 ID:N0hbP1yw0
――事務所研究室
晶葉「うむ。量もばっちりだ、これならいけるだろう」
晶葉「といっても、こっちは飾るための団子だがな……まあいい」
晶葉「ウサちゃんロボ!これを屋上まで運びたまえ!」バッ
ヒョイッ
ガシャンガシャン……
晶葉「おっと、大事なものを忘れていた……うむ、私にしては上出来だ」
ヒョイッ
パクッ
晶葉「……うむ。おいしい」
晶葉「少し、不格好だがな」
13: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:06:45.49 ID:N0hbP1yw0
晶葉「おや、頼子。それは薄か」
頼子「ええ……懐かしいな、昔はお母さんと一緒に、取りに行ってたの……」
晶葉「そうなのか……」
頼子「晶葉ちゃん……?」
晶葉「……いや、なんでもない。それより急ごう、Pが待っているからな」
頼子「ええ……」
ガシャンガシャン……
頼子(ウサちゃんロボ……晶葉ちゃんのお手伝いをして、偉いなぁ)
ヒョイッ
パクッ
頼子「!?」
晶葉「どうした、頼子?」
頼子「……ウサちゃんロボが、つまみ食いを……?」
晶葉「なんだ、そんなことか。どうだった、ウサちゃんロボ」
ビシッ
晶葉「うむ。ウサちゃんロボお墨付きの味だそうだ」
頼子「……どういうこと、ですか……?」
晶葉「味見機能を搭載したんだが……そんなにおかしかったか?」
14: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:07:59.53 ID:N0hbP1yw0
――屋上
晶葉「待たせたな、P」
頼子「お団子と薄……持ってきました」
ガシャンガシャン……
P「ウサちゃんロボは偉いな。そいつは泳がないのか?」
晶葉「彼は料理担当ウサちゃんロボだからな。泳げないが、ひと通りの料理なら作れるぞ」
P「ははは……ウサちゃんロボは、どれくらいいるんだ?」
晶葉「正確な数は私でも把握していないからな……ざっと数百はいるんじゃないか?」
頼子「……やっぱり晶葉ちゃん、凄いなぁ……」
P「凄いけど、把握していないのは製作者としてどうなんだ」
晶葉「ぱっと閃いたらその場で機能を追加して作っていたからな。思いつきの産物だ、仕方がない」
15: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:10:34.85 ID:N0hbP1yw0
P「二人とも、コップは持ったか?」
晶葉「……ああ。大丈夫だ」
P「それじゃ……って、一体何に乾杯するんだ?そもそも乾杯でいいのか?」
頼子「ふふっ……乾杯、でもいいかもしれませんね……」
頼子「それでは……美しい月に、乾杯」
晶葉「偶にはこういうのも、いいものだな」
P「ああ。大勢でやると、何故だか騒がしくなるからな」
頼子「ふふっ……みんなで楽しむのもいいですが、こうして静かに楽しむのも……素敵です」
P「そうだな。普段はもっと人がいるから、賑やかになるのも仕方ない」
晶葉「ああ、確かにな」
P「『あの月に向かって、ダッシュです!!』とか、『シャドームーン、俺はお前を許さん!!』とか……」
頼子「……誰だか、とても鮮明にわかりますね……ふふっ」
晶葉「そうだな、私にも分かるぞ。そういうのも好きだが……三人だけというのも、私は好きだぞ」
16: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:11:54.00 ID:N0hbP1yw0
晶葉「こうしてお月見をするのは……初めてだな」
P「ん?去年もやっただろう」
晶葉「いや、確かにそうだが……あの時は、私達は仕事で忙しかったからな」
頼子「そうですね……でも、あのお仕事があったからこそ……こうして、晶葉ちゃんと仲良くなれました」
晶葉「ああ、今では頼子は……私の親友だ。欠かせない大切な友人だよ」
晶葉「去年も去年で、楽しい月見だったが……こうして、のんびりと月を見るのも、悪くないな」
P「そうだな」
晶葉「……なあ、P、頼子。聞いてくれるか」
P「ああ、いいぞ」
頼子「……うん」
17: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:13:45.37 ID:N0hbP1yw0
晶葉「……Pは知っているだろうが……私の家は、根っからの研究者の血筋でな」
晶葉「両親も工学者で……毎日、忙しい生活を送っている。今でもだ」
晶葉「だから……去年が、初めてだったんだ。お月見自体が」
晶葉「……今年は、去年とは違う。お月見のLiveも仕事もない」
晶葉「こうして、のんびりと月を見ていられる……なんとも表現しがたいが、ずっとこうしていたいと、私は思うんだ」
頼子「私も……三人で、いつまでも月を見ていたいです……」
頼子「……今宵は、月が綺麗……ですからね」
P「それは、どっちに向かって言ってるんだ?」
頼子「二人とも……です。私だって……ふふっ、偶には欲張りですから」
晶葉「……?」
18: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:15:55.87 ID:N0hbP1yw0
晶葉「確かに月は綺麗だが……どういうことだ?」
頼子「夏目漱石の、逸話です……。"I love you"の、意訳ですよ」
P「本当に言ったかどうかは定かではないが……まあ、そんな話があるって程度に思ってくれ」
晶葉「回りくどいな……単に『私は君を愛している』などでよかったではないか」
P「日本人らしい表現ってことさ。はっきり言わなくても、それだけで伝わるからな」
晶葉「難しいな……いくら聞いても、月の美しさを表現しているようにしか思えん」
頼子「晶葉ちゃんも……いつか、わかるよ」
晶葉「そうか……?言いたいことは、素直に言えばいいと私は思うぞ」
P「お前がそれを言うか、晶葉」
晶葉「な、なんだと!?」
P「はいはい、あーよしよし」ナデナデ
晶葉「だから……!私は子供じゃないぞっ!」
P「14歳は子供だっての」
頼子「……」ジーッ
19: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:18:27.94 ID:N0hbP1yw0
P「ん、どうした頼子」
頼子「……Pさん、私も子供……ですか?」
P「ああ、17歳は子供だな」
頼子「……」ジーッ
P「よしよし」ナデナデ
頼子「ふふっ……ありがとうございます……えへへ」
晶葉「むっ……」
P「んー、どうした晶葉」
晶葉「な、なんでもないぞっ!」プイッ
P「そうか。なんでもないなら、いいんだけどな」
晶葉「むぅ……」ショボン
P「よしよし」ナデナデ
晶葉「あっ……なんだ、その。……ありがとう、P」
晶葉「――っ」カァァァ
P「素直でよろしい」
20: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:19:52.76 ID:N0hbP1yw0
晶葉「なあ……先程、頼子はその、つ、月が綺麗だ……と言ったが」
頼子「……?」
晶葉「そ、それはどういう……」
頼子「……Pさんは、とても大切な人……」
晶葉「……っ」
頼子「まるで私の、お兄さんみたいな……ふふっ」
晶葉「……え?」
P「まあ、兄でいいんなら、それでいいんじゃないか。俺は嬉しいぞ」
晶葉「よ、頼子、それはつまり、どういう……」
頼子「だって……Pさんは、晶葉ちゃんの助手……ですから」
頼子「だから、私は……こうやって、時々外の世界に連れ出してもらえるだけで……十分だよ」
晶葉「むぅ……頼子も冗談を言うようになったのか……」
頼子「……ふふっ」ナデナデ
晶葉「な、撫でるんじゃないっ」アタフタ
21: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:22:14.48 ID:N0hbP1yw0
晶葉「……こうして、三人で月を見られるのもいいものだな」
P「ああ、本当だな」
頼子「ええ……これも、晶葉ちゃんと、Pさんと一緒にいるから……」
P「誰かと一緒にいるってだけで、物の見方も何も、変わってしまうからな」
晶葉「……誰かと一緒、か……」
晶葉「二人とも、これを見てくれないか」
頼子「あら……月見団子?でも、そこにも飾っていますけど……」
P(……ああ、そういうことか)
P「美味そうだな。もらっていいか?」
晶葉「ま、待てP!あっ……」
ヒョイッ
パクッ
P「うん。美味いよ」
晶葉「……!!」
22: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:24:35.18 ID:N0hbP1yw0
P「これ、晶葉の手作りだろ?」
晶葉「そうだが……どうして?」
P「ウサちゃんロボの団子はほぼ完全な球体だからな。というか、あれどうやってんだ」
晶葉「特殊技術だ。なかなか頑張ったぞ。三日はかかった」
頼子「……お団子自身の重さで、変形してしまうはずでは?」
晶葉「特殊技術だからな。食感はそのままに数日は形を保てるぞ」
P「それでだが……まあ、そこにいい例があるからな。見た目に手作りってのはわかるよ」
晶葉「……まあ、上手く丸められなかったのは認めよう」
P「それに、晶葉が寝てた時に、レシピのメモがあったのを見たからな」
晶葉「なっ!?」
頼子「……つまり、最初から知っていたのですね……?」
P「そういうこと。すまなかったな、見るつもりはなかったんだが……」
晶葉「うぅ……まあいい、いいんだ」
23: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:27:02.01 ID:N0hbP1yw0
P「晶葉が料理するのは、珍しいなって思ったんだが」
晶葉「……作ってみたかったんだ。ロボと同じだよ、誰かが喜んでくれたり、誰かの役に立てばと思っただけだ」
頼子「……そのために、事務所の皆さんの元に、レシピを聞きに行っていたんですね」
晶葉「よ、頼子!?見てたのか」
頼子「ふふっ……偶然、ですけどね」
晶葉「……誰かの為に作るのも悪くない、ということだな。ロボも、団子も」
晶葉「皆に聞きに行って……分かったよ」
P「そうか。頑張ったな」
晶葉「ロボと違うのは……Pが最後に締めるためのネジがないことだな」
P「流石にネジ入りは食いたくないぞ」
頼子「そういうことでは……ない、と思いますが」
P「ははは。まあ、料理もそんなに出来ないからな。手伝えることが少ないから、仕方ないさ」
24: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:30:27.25 ID:N0hbP1yw0
頼子「でも……最後のネジがないから、いいんじゃないかな、って……」
晶葉「む?どういうことだ?」
頼子「……晶葉ちゃんが一人で作ったから、その分……思いがこもっているんじゃないかな、って……」
晶葉「なっ……」カァァァ
頼子「非科学的……かな?」
P「いや、いいんじゃないか。この世界は0と1だけじゃないからな」
晶葉「そ、そうだ!さあ、頼子も食べてくれ!」サッ
頼子「……私、少食ですから。ふふっ」
P「おっ、それじゃあ全部もらおうかな」
晶葉「ま、待て!た、確かにPのためだったが……うっ……」カァァァ
頼子「ふふ……冗談、でしたけど……本当に食べていいのかな……?」
P「そうしてやってくれ。その方が、晶葉も気が楽だろう」
晶葉「いざとなると、こんなに恥かしいとはな……」モジモジ
頼子「ふふふ、晶葉ちゃん、かわいいなぁ……」ナデナデ
P「そりゃあ、晶葉だからな」ナデナデ
晶葉「な、撫でるんじゃないっ……うぅ……」カァァァ
25: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:33:10.94 ID:N0hbP1yw0
パクッ
頼子「うん……美味しいね、晶葉ちゃん……」
晶葉「そ、そうか……?」
頼子「これも、みんなで食べるから……かな?」
晶葉「……ああ、そうだな。Pと、頼子がいるからだな……」
晶葉「実感したよ。やはり……一人では美味しいものも美味しいと感じられなくなるのだな」
晶葉「それに……ロボの大量生産よりも、自分で作ったほうが……美味しい、かもしれないしな」
P「……そうか」
晶葉「しかし!手作りのほうが美味しいと思えるのは……工学者として負けた気分だ!」
晶葉「手作りよりも美味しく作れるよう、料理担当のロボは明日からアップデートだ!!」
頼子「……ふふっ」
P「頑張れよー。ネジ締めくらいなら手伝うぞ」
晶葉「ああ、ロボもPも、覚悟したまえ!」
ビシッ
頼子「あら……ウサちゃんロボも、本気なんですね」
26: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:35:50.20 ID:N0hbP1yw0
P「流石に、肌寒くなってきたな……」
晶葉「……ん、そろそろ、12時か……ふぁぁ……」
P「どうした?眠たいか、晶葉?」
晶葉「いや、眠くは……うむ、さすがに、眠たいな……」
頼子「……私達も、Pさんも、明日は早いですから……お開きにしましょう」
P「そうだな。晶葉は事務所でゆっくりしてていいぞ、後は俺と頼子で片付けておくから」
晶葉「それは……さすが、に……んぅ……」ポワー
P「あー、段々まどろんでるな。頼子、先に片付けててくれ。晶葉を寝せてから、俺も手伝う」
頼子「分かりました……ふふっ、お休みなさい、晶葉ちゃん……」
P「よいしょっ」ヒョイッ
頼子「……お姫様抱っこ、ですか」
P「頼子もしてほしいか?」
頼子「今日は……晶葉ちゃんに、譲ります。いつか、その時には……お願いします」
P「分かったよ」
27: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:37:52.61 ID:N0hbP1yw0
――事務所
P「ひとまずソファでいいか……」
晶葉「ん……Pか……?」
P「あー、起こしちゃったか?寝てていいぞ、晶葉」
晶葉「……ここからでも、月、見えるんだな……」
P「……本当だな。丁度、ビルの隙間から見える」
晶葉「ふふふ、なあ、P……」
晶葉「月が……きれい、だな……」
P「……ああ」
P「はっはっは、嬉しいもんだね。プロデューサーとして」
P「……もう少しだけ、待っててくれ。片付けてくるからな」
晶葉「ん……すぅ……」
28: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:39:09.90 ID:N0hbP1yw0
――屋上
P「頼子、遅くなった……あれ?」
頼子「あら、Pさん……」
P「片付け終わってる……どうしたんだ」
頼子「……Pさんが晶葉ちゃんを連れて行った後……ウサちゃんロボが、自分でやる、って……」
P「そうだったのか」
ガシャンガシャン……
P「お、帰ってきた」
ビシッ
頼子「これは……?」
ガシャンガシャンガシャン……
P「……敬礼して、帰って行った」
頼子「ふふっ、素敵な紳士ですね……誰に、似たんでしょう」
P「さあな。ネジを締める程度で親と呼べるかは微妙だ」
29: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:41:12.97 ID:N0hbP1yw0
頼子「……Pさん、もう少しだけ……月を見ていても、いいですか?」
P「ん?いいぞ」
頼子「ありがとうございます……今日は、なんて素敵な日……」
頼子「だって……月がとっても、青いから……ふふっ……」
P「……ありがとな。プロデューサーとして、光栄に思うよ」
頼子「それでは……Pさん、もう少しだけ、こちらへ……」
頼子「これからも、一緒ですよ……もちろん、晶葉ちゃんと……三人で」
P「ああ、そうだな」
頼子「ふふっ……こんなに嬉しいことはありません……もちろん、アイドルとして、ですよ……?」
P「俺だって、プロデューサーとしてな」
頼子「ええ……そろそろ、帰りましょうか。晶葉ちゃんも、待っていますし……」
P「ああ。送っていくから、少し待っていてくれ」
30: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:44:11.32 ID:N0hbP1yw0
P「起きてた大人組に連絡入れたからな。それじゃ、晶葉を頼むぞ」
頼子「ええ……分かりました」
P「想像は付いていたが……女子寮でも月見をしていたらしい」
P「……まあ、なんとなくは分かるよな?」
頼子「そう、ですね……でも、その方が、らしいと思いますよ……?」
P「ああ。レッスンや仕事にさえ響かなければだが」
頼子「ふふっ……想像も、難しくないですね……」
P「……ん、頼子か。ちゃんと部屋まで送ってきたのか?」
頼子「はい……大丈夫です。皆さんにも、手伝ってもらいました」
P「そうか、ありがとな。……で、見てきたのか?」
頼子「……明日のレッスンは、厳しくなりそうですね……ふふっ」
P「ははは、それも仕方ないだろうさ」
頼子「ええ……明日が、楽しみです」
P「俺もだ。……それじゃ、お疲れ様」
頼子「……ええ、おやすみなさい、Pさん……」
P「おやすみ、頼子」
31: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:47:17.91 ID:N0hbP1yw0
――翌日、事務所
ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん……眠そうですね?」
P「いえ、昨日はなんとなく眠れなかったもので……二人を送った後に、月見酒を少々」
ちひろ「大丈夫ですか?無理そうなら仮眠室ですよ」
P「ははは、身から出た錆ですから。お気遣いありがとうございます」
ガチャッ
頼子「おはようございます、Pさん、ちひろさん……」
ちひろ「おはようございます、頼子ちゃん」
P「おはよう、頼子……ふぁぁ……」ノビー
頼子「あら、Pさん……」
32: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:48:47.88 ID:N0hbP1yw0
P「ああ、大丈夫だぞ、頼子。夜更かししただけだ」
ちひろ「プロデューサーさんったら、頼子ちゃんと晶葉ちゃんを送った後、月見酒をしていたそうですよ」
P「なんとなく月を見ていたら……二人のことが浮かんだだけさ」
頼子「……ふふっ」
頼子「――名月や 池をめぐりて 夜もすがら」
頼子「……ですね」
P「ん?どういう意味だ……?」
頼子「池はなくとも、晶葉ちゃんが……ふふっ、まるで、楓さんみたい……」
頼子「それじゃあ……晶葉ちゃんに映る月は……私で、いいのかな……?」
P「おいおい……流石に俳句までは詳しくないぞ?」
頼子「ええ……そうですよね、忘れてください」
ガチャッ
晶葉「おはよう……ん、どうしたんだ?」
頼子「おはよう、晶葉ちゃん……ふふっ、なんでもないよ……?」
P「おはよう、晶葉。なんでもないから忘れてくれ……ああ、それより」
P「今日の夜は空けておくように。仕事もレッスンも、ちゃんと調整済みだからな」
晶葉「……?まあいい、わかった」
33: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:51:45.37 ID:N0hbP1yw0
prrrr! prrrr!
晶葉「む……私の携帯か……っ!」
P「ん、どうしたー?」
晶葉「いや、なんでもない……ちょっと、失礼する」
バタンッ
P「はっはっは、時には俺だって、粋なことをしたいものさ」
頼子「……?」
ちひろ「プロデューサーさん、晶葉ちゃんのご両親のスケジュールまで、上手く調整したそうです」
P「どうにも当日には出来なかったが……一日遅れでも、まあいいだろう」
頼子「なるほど……十六夜もさぞ、素敵でしょう……今宵もちゃんと、晴れるそうですから……」
頼子「流石は……Pさんですね。かっこいい、助手さんです」
P「ははは。出来ると思ったから、やっただけさ」
34: ◆.FkqD6/oh. 2013/09/19(木) 23:57:51.83 ID:N0hbP1yw0
ガチャッ
晶葉「……ふふんっ」ニコッ
頼子「どう……だったの?」
晶葉「積もる話もあるし、見せたいロボも、会わせたい助手もいるからな……」
晶葉「たまには家族で、というのも……悪くない」
晶葉「何よりこれも……また、初めてのお月見だからな……!」
晶葉「P、君ってやつは……本当に、本当に……流石だな」
P「一日遅れでも、趣があっていいんじゃないか?団子はちゃんと手作りするんだぞ」
晶葉「ああ、もちろんだ……ありがとう、P。やはり君は最高の――」
P「なんたって、俺は晶葉の――」
「――助手だからな」
おわり。
転載元:モバP「天才と名月」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379598155/
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