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トップページシャニマス > 円香「タイトルなんて自分で考えて」

1: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:22:29 ID:BuB

 事務所に来ると、プロデューサーしかいなかった。

 定型句の挨拶を交わし、早いな。と言われ、たまたまです。と返す。

 あと三人が来ていないことを怪訝そうにしていたので、小糸と雛菜は学年が違うから別行動になることも珍しくないと言ってやった。

 透は? と聞かれるより先に、浅倉は音信不通です。と付け加えると、プロデューサーは微妙な表情をして「まあ、ちゃんと来てくれるならいいよ」とだけ答えた。

 早く着きすぎてしまったことをさっそく後悔する。レッスンまではまだ随分と時間がある。

 何をして待っていようかと考え、結局目の前の人間と雑談するくらいしかやることがないという事実に行き当たって辟易した。

 まあ仕方がない。選択肢がそれ以外にないのなら。

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2: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:25:15 ID:BuB

「円香」

「……なんですか」

 急に名前を呼ばれて、少し反応が遅れた。

 プロデューサーは片手を軽く挙げて、

「悪い。ちょっとだけ出てきてもいいか。十分くらいで戻るから」

「……どうぞ」

 すまん、助かる。と言ってジャケットも着ずに出ていく後姿を見送る。さすがミスター・馬車馬。お忙しいことだ。

 ――本でも読んで時間をつぶすか。

 不本意な雑談から逃れることに成功した喜びを噛みしめながら適当な雑誌に手を伸ばそうとして、ふいにその手を止めた。

 非常によくない感じの衝動が胸に沸いたのを自覚する。視線が、その衝動の先へ――

 だめだ。見るな。見た。机だ。誰の。あの人の。

 椅子が引いてある。背もたれにはジャケットが掛かっている。ノートパソコンが仮眠していて、ボールペンが転がっている。マグカップにはコーヒーがわずかに――

 円香は動かない。事務所には誰もいない。時間なら、ある。

 無感情に、極めて機械的に、円香はプロデューサーの机の前まで移動し、一度だけ周囲をぐるりと見まわしてみた。

 誰もいなかった。

 誰かいてくれたら良かったのに。と心ではなく頭の片隅で思う。ため息を一つ。

 椅子に、座ってみた。


3: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:28:43 ID:BuB


 サスペンションが乾いた音を立てた。座り心地は、特に良くも悪くもなかった。何の面白味もない、ただの椅子。

 なのに、背中に触れるジャケットの感触だけが、気に入らない。非常に気に入らない。

 軽く触れているだけなのに、円香を包み込もうとするかのような存在感が。

 室温と同程度かそれ以下の熱しか持っていないくせに、不思議と温もりを感じさせる何かが。

 引き裂いてやろうか。いや、無理か。

 ふいに過ぎった暴力的な思考を、「実行不可能」と印字された安全線の内側から見つめるだけで満足させておく。

 観念するかのように大きく息を吐いて、背もたれに身体を預ける。間違ってもジャケットにではない。断じて。

 そのままの姿勢で室内を見渡す。

(……こんな風に見えるんだ)

 座る場所が変わっただけで印象は随分変わるものだ、と感心する。うん、これは悪い気はしない。

 ふと、沈黙を保ったままのパソコンに目が行った。

 省エネモードに移行しているくせに、真っ暗なディスプレイはひとりの女の子を映していた。目が合う。

――何よ。

 お前のやっていることはすべてお見通しだと言わんばかりのそいつに向かって思い切りガンを飛ばしてやる。そして思う。こいつ可愛くねえ。

 キーボードをガチャガチャしてやろうかと思ったのはしかし一瞬だけのことだった。そんな痕跡を残すわけにはいかない。

 代わりに無造作に転がっているボールペンを手に取って、意味もなくノックをカチカチしてみたり、指の上で回してみたりする。すぐに飽きた。

 時計を見る。まだ五分と経っていない。しかし円香はこの辺が引き際だと判断した。

 判断したのだ。なのに。


4: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:31:46 ID:BuB


――マグカップ。

 いやいや、それはないわ私。中学生かよ。バカじゃないの。カップを手に取る。

 てゆうか飲み口がここだけ色変わってるんだけど同じところからばかり飲むからこんな風になるのよちゃんと毎回洗ってんの。顔を近づける。

 大体なんで少し残ってるのよ席を外すにしても最後まで飲んでから行けばいいでしょ行儀悪いんじゃないの。目をつぶって口を――

「あ、あれ? 円香ちゃん?」

 全てが凍り付いた。思考も凍り付いた。本能と手だけが円香を裏切らなかった。コンマ以下のタイムでカップを机に置く。

「お疲れさま。小糸」

 自然な動きで椅子から立ち上がり、ドアの近くで立ち尽くしている小糸の方へ歩み寄る。その後ろで「あは~」とか言ってるなんか大きいのは無視する。

「お、おつかれさま……。ねえ、円香ちゃん。今……」

「まだレッスンまで時間あるじゃない。早く来て、偉いね」

「え、えっと……うん……」

 尚も何かを問いた気な小糸の横をすり抜けて、大きいのが部屋に入ってきた。一瞬だけ目が合う。殺すか。


5: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:34:31 ID:BuB


「プロデューサーいないの~?」

 あは~。が、あは~。以外の言葉をこれ以上口にする前に黙らせよう。非合法的に。

 0℃以下の決意を固める円香をよそに、あは~。は頭の温かそうな足取りでプロデューサーの机の方に寄っていき、

「じゃ~あ~、イタズラするなら今だね~」

 その言葉と共に、あは~。は引っかけてあったジャケットを手に取ると無造作に袖を通して見せた。

「だ、ダメだよ雛菜ちゃん!」

 その無法ぶりを見て、小糸は慌てて注意しに行く。どうやらこれ以上の追求は免れたらしい。雛菜だいすき。

 プロデューサーの机の周りで騒ぎ始めた二人を安堵しながら眺めていると、

「ういー。お疲れ」

「……お疲れ」

 一緒に来てたか。うん、わかってる。大丈夫。雛菜の後ろからなら、良く見えてなかったはず。

 自分にそう言い聞かせて、何事も無かったかのように挨拶を交わす。雛菜、小糸に続いて、横を通り過ぎようとして、

「やるじゃん」

 今度は、凍り付かなかった。

 表情を変えずに肩をぶつけてやると、なぜか嬉しそうに「やめろー」とかほざいたので、もう一発お見舞いしてやった。


6: 名無しさん@おーぷん 20/12/05(土)17:50:26 ID:BuB

誰かが円香の壊れが見たい的なことを言ってたのでたぶんその人のせい


転載元:円香「タイトルなんて自分で考えて」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1607156549/

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コメント

コメント一覧

    • 1 名無し春香さん
    • 2020年12月06日 13:58
    • 下手くそやなぁ
    • 2 名無し春香さん
    • 2020年12月06日 14:30
    • 頑張れ 応援してるぞ
    • 3 名無し春香さん
    • 2020年12月15日 23:03
    • 俺は好き
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