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トップページモバマス > 【モバマスss】「私はママが、大嫌い」

1: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:42:42.00 ID:TMPHh8lf0

※ アイドルの子供視点がメインのお話です。苦手な方は、ご注意を。
===
1.

 突然ですが、私はママが嫌いです。
 だってママは、パパが居なくても平気だから。

 パパのいないお家は、私と、ママの二人だけじゃとっても広くて。
 たまにママのお友達が遊びに来たときだけ、私のお家は、少しだけ、賑やかになるんです。

 ……それ以外は、いつも静か。

「あっ、お帰りなさい」

 学校から私が戻ると、ママはいつも、玄関まで迎えに来ます。
 私は、「ただいま」なんて言ってないのに、ドアの開く音で、きっと私が帰って来たことに気づくんです。

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2: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:44:33.23 ID:TMPHh8lf0


 キッチンからエプロン姿でやって来た、ママの手にはお玉が握られていました。
 多分、お夕飯を作っている途中だったのでしょう。

「あのね、今日のご飯なんだけど、今日はいつもよりもちょっと豪華な――」

「ママ」

 ニコニコと喋り始めたママの言葉を遮ると、私は靴を脱ぎながら言いました。

「私、今から遊びに行く約束してるの。宿題は、帰ってからでもいいよね?」

 じっと見上げたママの顔が、一瞬だけ、ニコニコ笑顔から困ったような顔になる。

 だけど、すぐに元の笑顔に戻ると、

「そう……だね」

 考え込もむような、フリをする。
 でも、私にはママの次の言葉なんて、手に取るようにわかります。


「いいよ。むーちゃん、ママと違ってしっかりしてるし。お勉強は、帰ってからでも」

「……ランドセル置いたら、行ってきます」

「うん……お家に帰る時間は、大丈夫?」

「もう私、五年生だよ? いつまでも、小さいままじゃないんだから……」

「あっ、そ、そうだね」

 私は、「ごめんね」と謝るママの横を通り過ぎると、
 そのまま階段を上って、二階にある自分の部屋にやって来ました。


3: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:46:47.11 ID:TMPHh8lf0


 学習机の上にランドセルを置くと、ふと部屋に置かれた、姿見に映った自分と目が合います。

「むぅ……」

 ……私は、ママが小さい頃にそっくりだと、よく言われて来ました。

 おじいちゃんや、おばあちゃんからもですし、
 その時に見せてもらった子供の頃のママの写真には、確かに自分そっくりの子が写っていて。

「でも……私はママと、違うから」

 そう――私は、ママとは違うんです。


 ママが恥ずかしがるからと、パパにこっそり見せてもらった写真に写っていたママは、
 大人のクセにとってもくしゃくしゃの泣き顔で。

「この写真は、パパが一番大事にしている、とっておきのママを写した写真です」

 そう言って、パパは私の写真と一緒に、ママのその写真をいつも持ち歩いていたみたいです。

 
 ……でも、とっておきの写真が、そんな泣いているところの写真だなんて、と。


 それ以来私は、カメラの前では絶対に泣かないようにしようと決めました。

 だって、泣いているところをカメラに撮られてしまうと、パパはママの分と同じように、
 私の泣き顔写真を持ち歩いてしまいそうだったから。

 きっとパパは、それらの写真をお守り代わりにでもしてたんでしょうけど……
 そんなみっともない写真を、宝物みたいに扱われるなんて……そんなの、私は嫌だと思ってました。


4: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:48:13.37 ID:TMPHh8lf0

===

 遊びに行くための荷物を持って玄関を出ると、私は、家の近くにある公園へ。

 中には、噴水や花壇の他に、ブランコやジャングルジムなんかの遊具がいくつかあって。

 最近では、こうした昔ながらの公園は、中々に珍しいらしいです。


 言われてみれば、この公園の砂場は、ただ囲いの中にサラサラとした砂が敷いてあるだけですし、
 学校みたいに、ウサちゃんロボが定期的なお掃除をしに来るわけでもありません。

(完全な余談ですが、私はお掃除道具片手に町内を徘徊する、あのウサウサ集団が少し好きです)

 それにブランコや滑り台なんかも、
 昔の様子を再現したドラマや漫画に出てくるような、古い形の物ばかり。


5: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:49:58.12 ID:TMPHh8lf0


「あっ、むーちゃんやっと来た!」

 私が、そんな公園の入り口に姿を見せると、既にやって来ていた、
 見知った顔の女の子がそう言って、私においでおいでと手招きしました。

「やっと来た、じゃないですよ。ミヨちゃんの来るのが、早すぎるんです」

「そうかな? 私、普通に家に帰って、そのまま出て来ただけだけど」

「私のお家より、ミヨちゃんのお家の方が、この公園に近いじゃないですか」

「ああ、そう言えば」

 じとっとした目でそう言うと、ミヨちゃん――私の、幼馴染の女の子です――は、悪びれた様子もなく頭に手をやって、

「確かに! 私のマンション、この公園からすぐ近くだもんね! 
 そりゃ、うーちゃんより着くのが早くなるはずだ!」

 ケラケラと、声を上げて笑い出しました。


 その笑顔は、うちのママなんかよりも、よっぽど笑顔らしいと思えて……
 私は、同じ笑顔なら、ママよりもミヨちゃんの笑顔の方が、好きだな……なんて、思ったりします。


6: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:51:22.13 ID:TMPHh8lf0


「ところで、リツ君はまだ来てないんですか?」

「そーなんだよねー、今日こそ絶対に勝ってやる! なんて言ってたのに」

 ミヨちゃんはそう言うと、額に手をかざして、公園の中をキョロキョロ。

「やっぱり、無理だったんだよ。私より先に、この公園に来るなんて!」

「今日で、何敗目でしたっけ?」

「さぁ……いちいち数えてないけどさ。多分、十回は超えてるんじゃない?」

「そんなに負けてねぇよ! 何勝手なこと言ってやがる!」


 すると私たちのいるベンチの近く。

 いくつも穴の開いた、ドームみたいになっている遊具の中から、
 リツ君がその顔をひょっこりと出したんです。

「り、リツ君!」

「あんた、いつからいたの!?」

 驚く私たちに向かって、リツ君は――彼も、ミヨちゃんと同じ、私の幼馴染です――
「今日は、宣言通り俺の方がココに来るのは早かったぜ」と言って、どうだと言わんばかりに胸を張りました。


8: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:53:21.42 ID:TMPHh8lf0


「へへっ、お前らの驚く顔が見たくってさ、こっそり隠れてたんだ! ……参ったか!」

 ……何が、参ったのでしょうか? 

 不思議に思って首を捻る私とは違い、
 ミヨちゃんが、リツ君の背中を指さして言いました。

「ああっ! リツ、あんたランドセルしょったまま……もしや、家に寄らずに来たな!」

「そ、そうだけど……文句は言わせないぞ? 正攻法じゃ、ミヨより家の遠い俺は勝てないからな!」

「そんなのズルい!」

「ズルくない!」

「だったら私だって、家に帰る途中でこの公園の中横切るもん!」

「それは帰り道だろ! ノーカンだよ!」

 ミヨちゃんもリツ君も、お互いに両手を大きく振り上げたり、振り下ろしたり。
 体全体を使って自分の意見を通そうと必死に主張します。


9: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:54:31.85 ID:TMPHh8lf0


「帰り道がダメなら、あんただってやっぱりダメじゃない! そんな、ランドセルなんてしょっちゃって!」

「俺のは、家が遠いってハンデだからいーんだよっ!」

「何よ! だったら私のが年上なんだから、年上の言うこと聞きなさいよ!」

「汚ねぇぞ! またそうやって、すぐ年上だってことを武器にするっ!」

 すると、分が悪いと思ったのか、
 リツ君が私の方を指さして言いました。


「だったら! むつ姉に決めてもらおうぜ? 三人の中で、一番年が上なんだから!」

「え、ええっ! 私ですかっ!?」

「年上ったって、私より誕生日が先ってだけじゃん」

「それでも、年上は年上だろ? ほら、早く!」

 ミヨちゃんとリツ君。二人に「さぁ、どっち?」と決断を迫られる。
 ……あぅ、これは、いつものパターンです。


10: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:55:49.56 ID:TMPHh8lf0


「わ、私としては……そのぉ……」

「勿論、親友の私だよね!」

「いいや違うね! 俺の方だよ!」

「ふ、二人とも、今回はフェアな条件じゃなかったということで……引き分けじゃ……ダメ、かな?」

 言い終わり、ちらりと視線を上げると、
 二人はとっても難しい顔で私のことを見てました。

 ……あぁ、これは上手く、おさめられなかったかな……なんて思っていると、

「まぁ、むーちゃんがそういうなら、仕方ないね」

「確かに俺も……ちょっと強引だったかな」

 お互いに顔を見合わせて、自分たちの悪かったところを認め合う二人。


 私がぽかんとして見ていると、リツ君は照れ臭そうに頬を掻きながら、
「それに、あんまり卑怯な手を使ってたら、母ちゃんに怒られる」なんて言うんです。

「あっ、その手があった……リツのお母さん、怒るとおっかないもんね」

「な、なんだよ。そのニヤニヤ笑い……」

「べっつにー? ただ、今日のことを教えてあげたら、リツがどうなっちゃうのかなー、なんてこと、考えただけだよ」

「や、止めろよな、そういうの! ……この前みたいに、また休みの日に店の手伝いさせられちまう……!」

 リツ君がそう言って、本当に嫌そうな顔をしたものですから。

 その何とも言えない顔が面白くって、思わず私とミヨちゃんは、
 二人揃って顔を見合わせると、そのまま笑い出してしまいました。


11: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:57:12.39 ID:TMPHh8lf0

===
2.

 とにもかくにも、三人が揃ったということで。
 私たちは公園を出ると、目的の場所に向かって街の中をテクテクと歩き出しました。

 途中、ミヨちゃんがポケットの中から、ケースに入った眼鏡型端末機を取り出して、

「それで――二人とも、アレはちゃんと持って来た?」 ……と、並んで歩く私たちに聞いて来たので、

「はい。ちゃんとこの鞄の中に」

「勿論だよ! 今日こそ俺が、アイツを参ったって言わせて見せるぜ!」

 私は手に持っていた鞄を掲げ、リツ君も元気よく答えると、
 背負っていたランドセルの中から、ミヨちゃんとは色違いの眼鏡を取り出しました。


12: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 19:58:19.13 ID:TMPHh8lf0


「あんた、学校に眼鏡持ってってたの?」

 するとミヨちゃんが、顔をしかめ、問い詰めるようにリツ君を見ます。

「なに言ってんだよ。むしろ学校に眼鏡を持ってきてない、ミヨの方がおかしいっての」

「だって、ウチはお母さんがダメって言うんだもん。眼鏡なんて、外遊びにはいりませんー、なんて」

「一応、校則でも禁止されてますもんね」

「なに? ……ってことは、むつ姉も学校に眼鏡持ってきてないんだ」

「実は……そうなんです」

「はぇー……おっくれてるーっ!」


 信じられないといった顔で驚くリツ君に、ミヨちゃんが言います。

「なーにが遅れてる、よ! 生意気言って!」

「なんだよ。遅れてるヤツのこと遅れてるって言って、何が悪いんだよ」

「別に……その程度でいちいち怒ったりするほど、私も子供じゃないし、好きに言えばいいけど」

 けれど、つんと澄ました顔でそう言ったミヨちゃんが、
 次の瞬間、とっても暗い表情になって言いました。


13: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:00:04.70 ID:TMPHh8lf0


「ただ……リツは眼鏡の噂、知らないんだなぁ、と思ってさ」

「め、眼鏡の噂?」

「な、なんです? それ……?」

 急に怖い話をするような雰囲気で喋り始めたミヨちゃんに、
 並んで歩く私たちも、少し、ドキドキしながら聞き返しました。

 するとミヨちゃんは、顔も上げずにゆっくりと、小さな声で、その噂について話し出したのです。


「それが……目も悪くない子が、普段から眼鏡で遊んでばっかりいると……」

「あ、遊んでばっかいると?」

「何処からともなく、声が聞こえて来るようになるんだって」

「こ、声が……ですか?」

「そう……何処からともなく、女の人の声でね」

 ミヨちゃんが、そこでピタリと立ち止まってしまったので、私とリツ君も、同じように立ち止まる。
 するとミヨちゃんは、今度はまるでお化けの真似をするみたいに、両手をプラプラさせながら言うんです。


14: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:01:27.91 ID:TMPHh8lf0


「何処からともなく……『まぁまぁ眼鏡どうぞ』……『まぁまぁ眼鏡どうぞ』……って」

「め、眼鏡どうぞ?」

「も、もしその声に答えると……ど、どうなっちゃうんです?」

 ビクビクと怯えながら私がそう聞くと、
 次の瞬間にミヨちゃんは、持っていた眼鏡をケースの中から取り出して、

「それはね、むーちゃん……こーなっちゃうんだよおぉっ!!」

 そう大声で叫びながら、話を聞いていた私の顔に、勢いよく眼鏡を掛けたんです!

 だから私も、思わず「ひゃああぁっ!!?」なんて声を上げちゃって、

「謎の声に答えると、こんな風に眼鏡を掛けられて、
 一生眼鏡をつけたまま過ごさなくちゃならなくなるんだよっ!」

「あ、あう、あうぅ……!」

「ちなみに要りませんって断っても、無理やり掛けられるらしいよ? 眼鏡」

「きゅ、急に大きな声を出さないでくださいぃ! 
 び、びっくりしちゃったじゃないですかぁ!!」

 余りの驚きに、その場にへたり込んでしまった私を見下ろしながら、
 ミヨちゃんが両腕を組んで、うんうんと頷きます。


15: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:03:12.98 ID:TMPHh8lf0


「――だから、眼鏡は学校に持ち込まない! 外遊びにも使わない! 
 寝る時もお風呂の時も、眼鏡をかけたままになりたくなかったら……私の偉大なるマザーから聞いた話は、これでお終い」

 けれど、一緒に話を聞いていたリツ君は、最初こそビックリしたような顔をしていたのに、

「な、なぁんだ。それって、『眼鏡の上条さん』じゃねぇか」

 今度はキョトンと、表紙抜けたような様子で、ミヨちゃんにそう言い返したんです。


「なに? リツも上条さんの噂、知ってたの?」

「か、上条さんの噂って言うんですか? 私は、初めて聞いたんですけど」

 地面から立ち上がり、ぱっぱっとお尻の汚れを払いながら尋ねると、リツ君が、片手を広げて答えます。

「うん。話の大筋はミヨみたいに、何処からともなく女の人の声が聞こえて来るってヤツだけど」

「だけど……違うの?」

「上条さんってのは、そんな悪霊みたいなのじゃなくてさ。
 むしろまだ眼鏡を持ってない子に、タダで眼鏡を配って回る、サンタクロースみたいな人だって聞いたけどな」


17: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:04:26.10 ID:TMPHh8lf0


 今度は、私とミヨちゃんがキョトンとする番です。

「それ、誰から聞いた噂なんですか?」

「ウチのオヤジ。クリスマスの日にこの眼鏡を貰った時に、お前のところには上条さんが来たんだなぁって」

「え、えぇーっ? だったら、私のお母さんが言ってた上条さんは、どうなっちゃうの?」

「それは……単にミヨの母さんがさ、ミヨに眼鏡でばっか遊ばないようにって、嘘ついたんじゃねぇか?」

 ミヨちゃんに説明を求められたリツ君が、困ったようにそう返すと、
 ミヨちゃんは私の顔に掛かったままの眼鏡を見つめて言いました。


「……そういえば、私の眼鏡もクリスマスプレゼントだった」

「あの、実は……私の持ってる眼鏡もです」

「まさか、むーちゃんのも私のも、上条さんからのプレゼント?」

 そこまで言ってから、見つめ合う私とミヨちゃん。

 すると耳元で、「まぁまぁ眼鏡どうぞ」と、聞いたことのない女性の声がするような――
 そんな感覚を味わって、私たちは揃ってぶるると、寒くもないのに肩を震わせたのでした。


18: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:05:46.64 ID:TMPHh8lf0


 ……そんな風に、謎の上条さんについての噂話で盛り上がりながら歩いていると、
 いつの間にか私たち三人は、当初の目的地へとやって来ていて。

「今日もいるかな?」

「いるんじゃね? むしろアイツが、外出歩いてるのなんて見たことねぇよ」

「あっ、私は見ますよ。たまにですけど、お買い物袋を提げて歩いてるのを」


 そこは、二階建てのアパートの一部屋。

 ウサギのイラストの入った可愛らしい表札の横にある、
 古めかしいインターホンを、ピンポンと一押しすると、

「……出ないね?」

「お留守でしょうか?」

「いやいや、居留守かも」

 ……待つこと数分。

 うんともすんとも言わない扉の前で、ひそひそと囁き合う私達。


19: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:07:16.74 ID:TMPHh8lf0


「……よし! 仕方がないなぁ」

 するとミヨちゃんが、玄関脇に置かれていた牛乳受けを手でずらし、

「――おっとー? こんなところに、宇宙船の鍵はっけーん!」

「白々しいな、おい」

「いいじゃんいいじゃん。菜々さんだって、
 私たちなら勝手に入って待ってても良いよって、この前言ってくれてたし」

 人参のキーホルダーがついた小さな鍵を、玄関の鍵穴へと差し込みます。


 そうして、ガチャリと鍵の開く音を確認してから、ミヨちゃんはドアノブに手をやると、

「……おや?」

「どうしました?」

「何かね……コレ回んない」

 ガチャガチャと、何度かノブを回してみるミヨちゃん。

 けれどドアノブは僅かに動くだけで、
 まるで誰かに押さえつけられているかのようにびくともしません。


20: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:09:29.04 ID:TMPHh8lf0


「こりゃあれだね。居るね、中に」

「よし、だったら俺も手伝おう」

「な、なら、私は二人を応援します!」

 着ていたパーカーの袖をまくって、リツ君がミヨちゃんを手伝い始めます。
 その様子を、私も二人の後ろから、固唾を飲んで見守って。

「んぐぐぐぅ……!!」

「ふぬぬぬぬ……っ!!」

 すると、扉の向こう側からも、微かに聞こえる苦しそうな声。

 それから急に、二人が「うわぁっ!」と声を上げたかとおもうと、
 いきなり後ろに立つ私に向かって、勢いよく倒れ込んで来たんです!


「あ、痛たたた……!」

「お、重い……! ミヨ、お前重てぇよ!」

「じょ、女子に向かって重たいとかいうな! 失礼でしょ!」

「な、何でもいいから……早く、早くどいて下さいぃ……!」

 外開きのアパートの扉は、二人に引っ張られるようにして開け放たれて、
 よろよろと立ち上がった私達と一緒に、ゆっくりと起き上がる人が一人。

「まったく……菜々さんめ。こんな子供にまで合鍵の場所を教えるなんて……防犯意識無さすぎだって」

 小学生の私たちと殆ど変わらない見た目をしたその人は、
 そう言って私たちの顔を見回すと、不機嫌そうに口に入っていた飴玉を噛み砕いたのでした。


21: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:11:21.57 ID:TMPHh8lf0

===

「あの、じゃあお邪魔しますね」

「お邪魔するならさぁ、早めに帰って良いからねぇ」

「なら、お世話になりまーす」

「こっちにはお世話する気がないから、適当にお寛ぎくださーい」

「よいしょっと」

「おい待てそこの。せめて人の家に上がる時は、前二人みたいに何か言うのが礼儀でしょ?」

 私たちより後に玄関を上がろうとしたリツ君を、
 そう言って、先ほどの人――杏さんが呼び止めました。


 だけどリツ君は、口を尖らせるようにして
「だって杏姉ちゃん、何言ったって文句しか言わねぇもん」なんて。

 すると杏さんは、わざとらしく首を振りながら、「はぁー」と深くため息をつくと、

「最近の小学生は、親しき中にも礼儀ありって言葉を知らないのかな?」

 そう言って、リツ君を指さしながら注意しました。
 けど、リツ君もリツ君で、「うん、知らねー」だなんて、しれっとした顔で返すんです。


22: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:12:26.65 ID:TMPHh8lf0


「こ、このガキ……! まったく、こんな風に生意気に育てた、親の顔が見てみたいよ……」

「見たいなら、ウチ来ればいいじゃん。俺の母ちゃん、いつでもいるぜ?」

「……やっぱりやめとく。どうせ会っても碌なこと言われないだろうし、それになにより面倒くさいし」

 すると杏さんは、ニタリと不敵に笑ってそう言うと、部屋の奥へと歩いて行きます。


 ……この二人のやり取りを、私はここに遊びに来るたびに、
 いつリツ君が杏さんに怒られるんじゃないかって、ハラハラしながら見守ってるのですが。

「ちぇー、なんだー。今日も杏ちゃん、怒らなかったかー」

 隣で一緒に見守っていたミヨちゃんは、
 そんな二人のやり取りをどうやら面白がり、ここに来た時の楽しみにしているようでした。


23: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:14:36.63 ID:TMPHh8lf0


「ほんじゃ、好きなように遊びなよ。
 机の上にはいつもみたいに、菜々さんがお菓子も用意してくれてるよ」

「やった! 今日のお菓子ラインナップ、私の好きなやつー!」

「さっすがは、俺たちのウサミン星だぜっ!」

 杏さんの後について行くようにして、私達三人が畳敷きの部屋にやって来ると、
 杏さんはこれまたいつも通りに部屋の隅に鎮座する、使い古された大きなウサギのソファに座り込みました。

「それでー……今日は誰が、私と勝負するのかな?」

 そうしてゴソゴソと取り出した眼鏡を掛けながら、お菓子の山を物色する私たちに声をかけます。


「へへっ! じゃあ、まずは俺からだ!」

 リツ君が、威勢よく答えて立ち上がりました。その顔には、先ほどの眼鏡型端末機。

「レートは?」

「一試合で飴三つ! 今日こそ今まで負けた分、倍にして返してやるっ!」

「グッド!」


 二人の間の畳の上に、それぞれが三つずつ取り出した、
 合計六個の飴玉が、コロコロと並べられました。

 それから二人が眼鏡のヒンジ部分に指をやると、杏さんとリツ君の前に、
 眼鏡のレンズを通して見ることのできる、ホログラフィの『ぷちデレラ』が現れて。

「それじゃあ、ライブバトルを始めようか……!」

「望むところだぁっ!」

 小さなアパートの一室は今まさに、手に汗握り、
 小さなぷちデレラ達が歌って踊って競い合う、バーチャルライブ会場になったのです。


24: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:16:38.89 ID:TMPHh8lf0

===
3.

「それで……今日は皆さん、どれくらい杏ちゃんに絞られたんです?」

 ……私達がウサミン星と呼ぶ、この秘密基地。

 その主でもある菜々さんが帰って来たのは、私とミヨちゃん、
 そしてリツ君合計で、三十個以上の飴を杏さんに対して支払ってから。


「いやぁ、若いってのはいいねえ。向こう見ずで、すーぐ熱くなるからさ。杏も、カモにしやすくってしやすくって」

「何言ってるんですか杏ちゃん。いい歳して、小学生相手に大人げない」

「これでもハンデはあげてるんだよ? 私はほら、相手のレベルに合わせたメンバーしか使ってないし」

「そうじゃなくて、ナナは子供相手にそこまで本気にならなくてもってことをですね」

「菜々さんは、杏に接待プレイをしろって言うの? そんな台詞、紗南が聞いたら怒るよぉ~?」

「ゲームで負かした小学生に、肩を揉ませている大人の言うことですかっ!」

 そう言って私達を見下ろしていた菜々さんは、呆れたように腰に手をやりました。

 その前には、ウサギのソファに座る杏さんと、彼女の肩を揉まされているリツ君。
 それから、杏さんの左右に座り、同じように彼女の足をマッサージする私とミヨちゃん。


 まるで王様と、その召使いのような図を見て、菜々さんが困ったように首を振ります。


25: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:18:40.41 ID:TMPHh8lf0


「いやいやいやこれはね? この子達がさ、自主的にやってくれてることなんだよ」

「よく言いますよ。ナナだって知ってるんですからね? チップ代わりに巻き上げた、飴玉の数に応じて……」

「だって遊びに負けた方にはさ、普通罰ゲームが待ってるもんじゃん。
 だからこれは、この子達の罰ゲーム罰ゲーム……決して強制的な労働なんかじゃ、ないんだなぁ」

「……もう、杏ちゃんったら! 杏ちゃんが小学生相手にこんなことをしてるなんて、もしきらりちゃんが聞いたら、なんて言うか」


 だけど菜々さんの口から、「きらり」という単語が出た途端、杏さんは目に見えてうろたえだして。

「えっ? ……えっ!? き、きらりが来てるの? この近所……近くに?」

「買い物帰りに、たまたま会ったんですよ。向こうはまだ、お仕事中みたいでしたけど。
 ……だけどこんなことなら、少しぐらい、顔を出してもらうんでしたねぇ」

 そうして菜々さんが、杏さんに向けてスマートフォンを構えます。
 するとミヨちゃんが、マッサージしていた手を止めて、コソコソと私に耳打ちしました。


27: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:20:13.37 ID:TMPHh8lf0


「ねぇねぇむーちゃん。菜々さんってさ、まだスマホ使ってるんだね!」

「聞こえてますよ! ミヨちゃん!」

「分かった! 分かったから写真を送るのは止めて! ほら、三人とももうマッサージはいいから!」

 慌てたように杏さんが解散命令を出したことで、ようやくこの重労働から解放される私たち。


「俺、オヤジの肩でもこんなに揉んだことねぇよ」

 手をプラプラさせながらそう言うリツ君の顔は、とってもヘロヘロ。どうやら、よっぽど堪えたようです。

「さぁさぁ、皆さん。暴君から解放されたところで、ジュースなんてどうですか? 
 労働の後の一杯は、そりゃあもう、格別なんですから!」

 するとそんな私たちを元気づけるよう、菜々さんが明るい声で言いながら、
 冷蔵庫から冷えたジュースを持って来てくれます。

 そんな菜々さんの姿を見て、「菜々さんの言い方だと、泡の出るジュースが出てきそうだね」なんて言うのは、杏さん。


28: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:21:22.34 ID:TMPHh8lf0


「フフン。昔の私ならばいざ知らず、クラスチェンジして永遠の二十三歳となった菜々はですね、
 今なら誰の目も気にせずに、お酒だって嗜められるんですよっ!」

「菜々さん、二十三歳なんですか?」

「ええー? ウチのお母さんより断然若ーい!」

「でもよぉ、菜々さんって、俺たちの母ちゃんの同期なんだろ? だったら――」

「あ、あっ! いえね? 二十三歳と言っても、菜々のは、ウサミン星基準の数え年でですね……!」

「……歳はとっても菜々さん、こういうところは変わってないなぁ」


 それから、また数十分程たった頃。
 机の上には菜々さんが買って来た、ケーキが入っていた箱が一つ。

「ふぅ……美味しかった」

「満足だよ……満足……」

「そうですか? お口に合ったようで、なによりです」

 丸まったお腹を撫でながら転がるミヨちゃんとリツ君を、
 机の上の食器を片付けながら、優しい笑顔で眺める菜々さんは、まるでおばあちゃんみたい。


29: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:24:23.82 ID:TMPHh8lf0


 とはいえ私も、今はお腹一杯になったせいか、
 少しだけ重たくなった瞼が閉じないよう、何とか我慢してる状態で。

 そんな私たちの目を、覚まそうと思ったのでしょう。

 菜々さんが、何かを思い出したようにポンと手を打つと、

「そうそう、実はですね……今日は皆さんに、とっても珍しいものをお見せしましょう!」

 そう言って買い物袋の中から、一通の封筒のような物を取り出しました。


「あれ……菜々さん、それって」

「あっ、杏ちゃんは分かりますよね?」

「分かるけど……フィルム写真のネガじゃん。わざわざ現像して来たの?」

「そうなんですよぉ~。杏ちゃんが『匿ってくれって』北海道から転がり込んで来た際に、
 部屋の整理をしたじゃないですか。その時、偶然荷物の中から見つけまして」

「はぁ~、あの時にねぇ。それにしても、今じゃネガを扱ってくれる写真屋さんだって、殆ど無いんじゃあ」

「そこは……昔のツテで。椿ちゃんにお願いして、ちょちょいっと」

 中に入っていたのは、いくつもの写真でした。

 それもデジタルブックのデータじゃない、ちゃんとした紙に印刷された写真です。


30: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:27:04.47 ID:TMPHh8lf0


「これ、全部私たちのなんですよ。ほらっ、中には、皆さんのお母さんの写真もありますよぉ~」

 机の上に広げられた写真を見て、杏さんが「まるでタイムカプセルだね」と呟きます。

 確かに、杏さんの言う通り……そこには私の見覚えのある人の姿がチラホラと。

 だけどどれも、今よりずっと若い時の恰好……
 あっ、それでも杏さんと菜々さんは、すぐに見つけることが出来ました。

「なんて言うかさ……こういうの見ると、ホントにお母さんたち、アイドルだったんだなって思うよね……」

 食い入るように写真を見つめていた、ミヨちゃんが感心したように言った言葉。それには……私も同感です。


 だって小さな頃から、繰り返し聞いたママの歌。
 繰り返し見返した、ママのライブ映像。

 いつだって女の子の憧れ、アイドルというお仕事についていた、
 尊敬するべきママの姿が、その写真の束にはしっかりと写し出されてましたから。


31: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:28:31.46 ID:TMPHh8lf0


 だけど、だからこそ……今の、すっかり輝きを失ってしまった、ママの姿が耐えられなくて。


「そういえばさ、この写真見て思ったんだけど」

 そんな時、ふとリツ君が言った一言。

「むつ姉のお母さんってさ……ほんと、むつ姉そっくりだよな」

 それは、私が小さな頃から、何度も繰り返し言われて来た言葉。

「あれ? 逆か……むつ姉が、むつ姉のお母さんそっくりなんだ」

 そして今の私が……一番、聞きたくない言葉。

「そうですねぇ。特にこの、笑った時の顔なんてママそっくりで――」

 リツ君の持った写真を覗き込んだ、菜々さんがそう言った時でした。


 私は思わずその場から立ち上がると、大声で「違うっ!」なんて、叫んでいて。

 驚いた顔で私を見上げる皆の顔を見て、我に返った私は、
「あ、いえ……違う、違い……ます」と、口の中でもごもご。

 すると杏さんが、そんな私に向けて言ったんです。


32: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:30:02.09 ID:TMPHh8lf0


「……なに? お母さんとそっくりって言われるの、そんなに嫌なワケ?」

 ……それは私が初めて聞いた、杏さんの冷めた声でした。

 まるで、人はここまで冷たくなれるのかという程に、感情の無い、鋭いナイフのような一突き。

 気づけば私は、ポロポロと涙を流して。
 締め付けるような胸の痛みが、その傷口から広がるようで。


 そんな私を、オロオロと見上げるミヨちゃんと、リツ君。
 そして菜々さんが、私と同じように立ち上がり、

「だ、大丈夫……?」

 きゅっ、と。

 引き寄せられるままに、私の顔は、菜々さんの胸の中に収まりました。
 そうしたら、なんだか、涙が止められなくなって。

 だけど、涙を流せば流す程、
 私は、嫌いな、ま、ママと同じ……そっく、りに、なって……!!


33: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:31:08.73 ID:TMPHh8lf0

===

 ――……私は、ママに憧れて。

 だけど私のママは、私の憧れた頃のママじゃ、とっくになくなっていて。

 写真や、映像で見るママは、とっても笑顔がキラキラしてて、いつも、誰よりも明るく笑ってた。

 そしてパパが居た頃のママも、そんな昔のママに負けないぐらいにキラキラしてて。


 だけどパパが居なくなって、それからのママの笑顔は、いつもどこか寂しくて。

 そんなママを、私は元気づけることが出来なくて。
 お家からは、笑顔も、会話も、次第に減って行って。

 夜になると、一人、しくしくと泣いているママの姿も、私は何度となく目にしました。


 だから私は……ママが嫌いです。


 寂しいのに、大人だからって無理に笑う、大丈夫だよって嘘をつくママが嫌い。

 そんなママに似てるって言われる、自分のことも、大嫌い。

 だって、私がママに似てるなら、大きくなった私は、ママみたいに寂しい笑顔の大人になる……
 そう、皆に言われてるみたいじゃ……ないですか。


34: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:33:14.46 ID:TMPHh8lf0

===

「だから……パパが一度だけ見せてくれた、昔のママの泣いてる写真……。それが私は、堪らなく嫌でした」

 夕陽が、ウサミン星の窓から差し込んで、部屋の中を赤く照らしていました。

 ミヨちゃんと、リツ君は、遅くなるといけないからと、一足先に菜々さんのお家を後にして。
 ……ここに残ったのは、ついさっきまで、泣きじゃくりながら胸のうちを吐き出していた、私一人だけ。


「私のママは、いつだってキラキラしてて。笑顔で、優しくて……だけど、今のママは優しいけど……」

 私が話し終えると、それまで黙って聞いていた杏さんが、「……泣き虫なママなんて、ママじゃない……か」と呟きました。


「どう思う? 菜々さん」

「そうですねぇ……」

 杏さんから話を振られた菜々さんが、顎に手を当て、考え込むような仕草を見せます。

「ナナにも、なんとなく覚えがありますよ。子供の頃は、大人って……
 特に親なんて、これ以上ないぐらい、強い存在じゃないですか」

「……まぁ、そうだよね。杏も、未だに親には頭が上がらないし」

「だから彼女は……そんな強いハズのママが急に見せた、弱さに戸惑っちゃったんじゃ、ないですかね」

 そうして菜々さんに、優しく名前を呼ばれ、
 私は泣きはらし、うさぎみたいに真っ赤になった目を上げました。


35: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:34:50.64 ID:TMPHh8lf0


「実はですね……あなたのママには、口止めされてたことなんですけど」

「まさか菜々さん。あのこと……言っちゃうつもり?」

「でも、この子の誤解を解くには、これが一番早いんじゃないかって」

「……知らないよ? 後で文句言われるの、菜々さんの役目だからね」


 杏さんが顔をしかめて、ウサギソファに座ったまま、
 自分の両耳を塞ぎ、その両目を閉じました。

 それは彼女なりの、知らんぷりの表現なんでしょう。

 そんな杏さんを見て、菜々さんはくすりと笑うと、

「……あのね、今日の写真の中に、こんな写真があるんですけど」

「……写真、ですか?」

 首を傾げる私に、机の上の写真の束から幾枚かを抜き出して、広げて見せる。
 それは、どれも私のママが写った写真。

「ママには、内緒ですよ? 私が、後から怒られちゃいますから」

 菜々さんが、写真の中のママの顔を、順番に指さしていく。

 そこには受けているレッスンが辛いのか、汗だくになりながら泣いているママもいれば、
 誰かに驚かされて、びっくりして泣いているママも、何かの罰ゲームなのか、
 泥だらけのジャージ姿で、情けなく涙するママもいて。


36: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:37:24.25 ID:TMPHh8lf0


 それは、ある意味初めてみるママの弱さ。
 だって私のお家のアルバムには、いつも笑顔のママしか、写ってなんていなかったから。

「どうです? 案外ママって、泣き虫さんでしょう?」

「……でも、それがどうしたんですか。……ママが泣き虫なことなら……私はもう、知ってます」

 プイと、顔をそむけるようにそう言うと、菜々さんは、くすくすと可笑しそうに笑い、

「それから、今度はこっちの写真」

 再び、写真の束から何枚か抜き出しました。

 そうして私は、また泣いているママの写真を見せるのか……
 なんて思いながら、菜々さんの持つ写真を覗き込んだんです。


「……えっ?」

 それは予想通り、先ほどの泣いていたママの写真の、すぐ後に撮られたと思える写真たちでした。

 だから当然、ママは涙を流したまま……だけど、さっきの写真と明らかに違っていたのは、

「ママ……泣きながら、笑ってる……」

 どの写真も、直前までは確かに、しくしく泣いていたハズのママ。
 けれど、今菜々さんが見せてくれている写真に写るのは、幾度となく繰り返してみた、あのキラキラした笑顔のママで。


37: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:38:44.07 ID:TMPHh8lf0


「泣いてるのに……こんなに、泣いてるのに……」

「……それから、最後にこの写真」

 菜々さんが、そう言って見せてくれたのは、いつかパパが見せてくれた、あの写真。

 キラキラとしたステージの真ん中で、沢山の仲間たちに囲まれて歌を歌っているママの写真。
 その顔は、見てるこっちが恥ずかしいぐらいにハッキリと、涙の筋が見えているのに。


「……どうです? これが、あなたのママ。この頃は本当に、何度も何度も、彼女の笑顔に元気づけられたものですよ」

「ママの、笑顔に……? こんな、みっともないぐらいに泣いてても……?」

「そうでしょうか? ナナには、どこもみっともなくなんて無い。最高の泣き笑いに見えますけどねぇ?」

「……泣き笑い? 泣いてるのに……笑顔なの?」

「ええ、それが、笑顔の魔法……ナナの覚えている限り、あなたのママは、見た人を勇気づけ、幸せにする……
 そんなキラキラした、魔法みたいな笑顔の持ち主でした」

 懐かしむような、菜々さんの横顔は、とても優しい顔をしていて、

「勿論、普段の笑顔も素敵でしたけど……こんな風に人を温かい気持ちにさせてくれる泣き笑いなんて、
 ナナは、それまで出会ったことがありませんでしたから」


38: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:41:16.17 ID:TMPHh8lf0


 菜々さんの言う通り、古ぼけた記憶なんかじゃなくて、
 こうして鮮明に写し出された思い出の写真のママは、確かに菜々さんが言うように、
 とってもキラキラした笑顔で写っているように見えるけど。

「で、でも……今のママはこんな風に……キラキラなんて、してません……」

「……だから、最近の私たちはさ。ママみたいな笑顔で笑う女の子を見て……
 今度は彼女の代わりに、その子から元気を貰ってるんだよ」


 突然聞こえて来た声に顔を上げると、いつの間にか杏さんもソファから立ち上がり、私たちの傍までやって来ていて。


「多分ママも……そうなんじゃないかな? 笑顔の魔法は、有限だから。
 人生は長いんだしさ、時には、空っぽになっちゃうことだって、あるんだよ」

 私を見下ろす杏さんは、さっきの冷たい印象から、打って変わった優しい顔をしていました。


39: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:43:49.63 ID:TMPHh8lf0


「そんな時には、さ。きっと誰かが、追加で魔法をかけてあげなくちゃ……例えばそう、こんな風にね」

 そうして、杏さんがニタリと笑う。
 それは笑顔というには、とっても怪しいものだったけど。

「杏ちゃん。そんな笑顔じゃ、逆に元気を吸い取っちゃいますよ!」

「でもさぁ、杏は昔っから、時折見せるこの邪心の笑みがセールスポイントだし」

「いいですか? 人を元気づける笑顔って言うのはですね、こ~んな風に……」

 そう言いながら立ち上がった菜々さんが、クルリとその場で一回転。

「ウサミン星からやって来た、歌って踊れる声優アイドル、ウサミンこと安部菜々ですっ! キャハッ☆」


 ポーズを決めた途端に「あぅっ!?」と一声、
 真っ青な顔で腰を押さえて屈みこんだ、そんな菜々さんの姿が可笑しくて。


「あっ! ああっ! こ、これは久々に……ウサミン、引退の危機っ!?」

「今回ので、数日ぶり何回目だっけ?」

「れ、冷静に数えてないで良いですから……! は、早く! 早く救助を……!」

「はいはい、菜々さん湿布どこー……って」


 そんな中、私の顔を見た杏さんが、うんうんと頷きます。
 すると杏さんに釣られるようにして、私の顔を見た菜々さんも、痛みに強張りながらも浮かべた笑顔で言いました。


「そ、そうですよ! その、笑顔です!」

「血筋かなぁ……ホント、そっくりだよ」

「ですね! ナナも、何だか急に元気が湧いて来たような……とぅっ!!」

 無理やり立ち上がった菜々さんが、再び「はぅっ!!?」と声を上げて、その場にくしゃりと沈み込む。
 そんな彼女を見て、私と杏さんは、お腹を抱えて笑い転げて。

 そしてそのうちに、菜々さんも一緒になって笑い始め、
 たちまちアパートの中は、三人分の笑い声に包み込まれたのでした。


40: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:45:46.48 ID:TMPHh8lf0

===
4.

 菜々さんのアパートからの帰り道。

 私の足は軽く、自然と鼻歌なんかも口ずさんだりなんかして。
 曲は……勿論、ママの曲。小学校に上がる前から、何度も、何度も、繰り返し練習し、初めて覚えた、思い出の曲。


「ずっと、すまいりんぐ……しんぎんぐ……♪」

 何だか、今まで胸の中につっかえていた沢山のもやもやが、
 歌うたびに、口ずさむたびに、星の見え始めた空へと溶けていくようでした。

 けれど、お家が見えて来るにつれて、少しずつ、私の足取りは重くなって。


 ……その理由は、すぐに分かりました。

 最近の私は、パパが家を出て行ってからの私は、いつもママに素っ気ない態度ばかり。

 ……今日だって、そうです。

 私は、学校から帰るなり、ろくにママとお話もせず、そのまま外に遊びに行って。

 ドアノブに、かけた手が石のように固く。
 私は、そのままの恰好で長い間――本当は、たったの数秒だったかもしれないけれど――その場に、じっと立ち尽くしていました。


41: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:48:14.25 ID:TMPHh8lf0


 ……ママに会って、どうしよう? 
 なんて言えばいい? ごめんなさいと、謝るのが先? 

 それとも、いつものように素っ気ない態度で……ああ、ダメ。
 それは、もうしないって、二人にも約束したのに……。

 そんなことを、グルグルと考えていた時です。

 突然、私の握っていたドアノブが、ガチャリと音を立てて回ったかと思うと、

「あれ……?」

 ぐぐいと、外へ押し出された扉の隙間から、ひょっこりと顔を出したのはリツ君のお母さん。

「おやおや? 小っちゃなしまむーのお帰りじゃない」

 それから、リツ君のお母さんと一緒に外に出てきたのは、ミヨちゃんのお母さんでした。


「卯月……むっちゃん、帰って来たよ」

「だからさ、むっちゃんだと語呂が悪いから、小さなしまむーで、ちまむーにしようって」

「未央……そうやって人の所の子供に、妙なあだ名つける癖、そろそろ直した方が良いと思うよ?」

「妙なあだ名だなんて……失礼だなぁ! しぶりんは!」

「だから、私ももう渋谷じゃないんだからしぶりんってのはさ……」

 二人の言い合いを、ポカンと見上げている間に、
 玄関の奥からパタパタと、電話を握ったママが、私のところへ駆けて来ます。


42: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:50:25.95 ID:TMPHh8lf0


 その顔は今にも泣きだしそうで、困ったような、辛いような、そんな顔にも見えて。

「あ、ま、ママ……!」

 言いたいことが、頭の中でまとまらない。口が、思うように動かない。
 だけど、ママはどんどん、私との距離を縮めていきます。

 言わなくちゃ、言わなくちゃと思えば思う程、私の口は、貝みたいに固く閉じてしまい。

 ……玄関マットの上までやって来て、ママはようやく立ち止まりました。

 すると私の背中を優しく押すようにして、リツ君のお母さんが、私を玄関の中に招き入れます。


「た……ただい、ま……」


 それは――ゆうに一ヶ月ぶりに口にした、「ただいま」でした。

 それも顔は伏せたまま、たどたどしく、相手に届くかどうかもわからない程に小さな、「ただいま」


「……お帰り、なさい」


 だけどママは、ちゃんと私にお帰りを返してくれて。

 トンと肩を叩かれて顔を上げると、ミヨちゃんのお母さんが、ニコニコしながら前を指さします。

 その、指の先には……いつもと変わらない、寂しそうなママの笑顔。
 だけど、本当はそうじゃないことを、今の私は……知っているんです。


43: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:52:04.44 ID:TMPHh8lf0


「た……」


 ママの笑顔は、私そっくり。私の笑顔も、ママそっくり。
 なら、私の笑顔も……誰かに魔法を、掛けられるハズだから。


「た……ただいま……ただいまっ、ママっ!」


 精一杯の、とびっきりの、私らしい、私だけの笑顔。

 思い出すのは、今日あった楽しいこと。ママに伝えたい、私が笑顔になれたこと。
 ママも笑顔になれるような、私が幸せに思ったこと。それを、全部、全部この笑顔に乗せて……――。


 すると最初はビックリしてたママの顔が、また、さっきみたいに泣き出しそうになって……だけど、今度は違ったんです。


「うん……お帰りっ」


 大人が泣くなんて、みっともないと思ってた。大人が寂しがるなんて、カッコ悪いと思ってた。

 ……だけど今のママは、全然みっともなくも、カッコ悪くも無くて。


 だって、今のママの顔はね? 

 菜々さんが言ってたみたいに最高の……最高の、最高の、とびっきりの、『泣き笑い』だったから!


44: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:52:40.65 ID:TMPHh8lf0


※ 以下、エピローグと言う名の蛇足


45: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:55:04.60 ID:TMPHh8lf0

===
 エピローグ
「少女の知らない、舞台裏」

 すぴすぴと、可愛い寝息を立てる我が子の寝顔を覗き込み、卯月はくすくすと微笑みながら呟く。

「ご飯を食べたら、すぐに寝ちゃって……よっぽど、遊び疲れてたのかな?」

 すると、彼女と一緒にソファに横たわる少女の顔を覗き込んでいた凛が、
「どうかな? 緊張してたのもあると思うよ」と言うと、

「だね。何せこの子にとっては、初めての経験だったろうし」と、
 少女にタオルケットを掛けていた、未央がくっくと可笑しそうに笑いながら頷いた。



 すると未央の言葉を聞いた卯月が、よく分からないといった風に眉をひそめて尋ねる。

「初めての経験って……未央ちゃん、それ、どういう意味ですか?」

「だからさ、反抗期って言うか、そんな感じの。ほら、ちまむーちゃんって、この年にしちゃ落ち着いてて、ソツがないじゃん?」

「未央、ちまむーじゃなくてむっちゃんだよ」

「今まであんまりワガママを言ったり……面と向かって親に、
 自分の気持ちを打ち明けるようなこと、無かったんじゃないかなー……なんて」

「それは……言われてみると、そうですね。ウチの子は、ミヨちゃんと比べると確かに大人しめで。
 私も、手が掛からないからって、甘えてたところ……あったかも」

「いや……ウチのミヨは、あれはあれで騒がしすぎるだけっていうか。
 今日だってしぶりんのとこの子と一緒に戻って来たと思ったら、泣きながら大声でむーちゃんが、むーちゃんがって」


46: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:56:50.65 ID:TMPHh8lf0


 そうして「まいったまいった」と両手を広げる未央に続いて、凛が言う。

「だね。その後、未央がすぐ私のところまで飛んできて」

「そのまま、ココに直行だもん。もうね、私はとうとうミヨが、ちまむーに怪我でもさせたんじゃないかって大慌てでさぁ」

「……だけど話を聞けば、どうもウチのリツが原因作ったみたいで」

「そ、そんなことないですよ! 電話をくれた菜々さんの話だと、この子が悩んでた原因は……私自身に、あったんですから」


 三人のいるリビングが、少しだけ暗い雰囲気に包まれた。
 だが、そんな雰囲気を変えようと、未央が明るい口調で話し出す。

「で、でもでも! そんなしまむーが落ち込んでた原因もさ、今日で解消されるんだよね? 
 確か聞いてた話だと、あの人が帰って来るの、今日の予定だって言ってたし!」

「そういえば、そうだね。今回は、何処に行ってたんだっけ? 南米? シベリア? ヨーロッパ……はこの前か」


47: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 20:59:40.15 ID:TMPHh8lf0


 未央と凛の二人が、そうして「エジプトかな?」「アフリカも、行ったんだっけ?」
 などとあちこちの地名を上げる中、おずおずと卯月が口にしたのは、

「うう……今回は、国じゃないんです」

「国じゃない?」

「じゃあ、どこさ」

「あの、船に乗って……新規事業の、宇宙漁業の体験を三ヶ月。それも、連絡も取れないような場所にです」

「三ヶ月のうえに、今回の行き先は宇宙ですかぁ……」

「卯月、結婚してからそんなに離れてたのって、久しぶりだったでしょ?」

「そうなんですよぉ……だからもう、毎日寂しくて寂しくてぇ……!」

 ポロポロと泣き出してしまった卯月の姿を見て、やれやれとため息をつく凛と未央。


「こりゃあ……ちまむーも心配するワケですよ」

「卯月は、ちゃんと説明してたの? お父さんは、お仕事で家を空けてるんだって」

「も、もちろんですよ! だけど、私がこんな調子だから……この子、パパが家を出て行ったと、勘違いを……」

「あー、もー……久々に当てられてるよ。忘れてた、この感覚」

「……だね。昔はもっと頻繁だったし、泣いてる卯月を慰めるのもしょっちゅうだったし」

「ち、ちひろさんも意地悪なんです! 
 もうそろそろ子供も落ち着いた頃でしょうからって、半ば無理やり、嫌がるあの人を連れ出して!」

「その隣には、やっぱりあの子も?」

「うぅ、ぐすっ……幸子ちゃん、ですか?」

「いたんだ。やっぱり」


48: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 21:02:25.99 ID:TMPHh8lf0


 三人が思い出すのは、チャームポイントの外ハネが愛らしく、
 可愛らしくも逞しい、アイドル界きっての冒険家。凛が、肩をすくめて言葉を続ける。

「幸子も、今じゃベテランもいいとこなのに……未だに世界中を飛び回されて……大変だよね」

「だからって、それに人の家の旦那さんを、付き合わせることなんてないじゃないですかぁっ!」

「しょうがないよ。しまむーの旦那、昔っからさっちーも担当してたし」

「……幸子が出てる番組の方でも、半ば名物キャラクター化してたもんね。
 どんな無茶振りにも、幸子と一緒に対応するっていうさ」

「そうです! それも悪いんですっ! あの子ったら、パパが家を出て行ったのは、幸子ちゃんのところに行ったからだって!」

「ひぇっ……修羅場」

「それは、お仕事が大事なのも分かりますけど……だけど今までは、
 どんなに長くても一週間で帰って来たのに……それがいきなり、三ヶ月ですもん、三ヶ月ぅ……。
 まだ小学生のウチの子が誤解したって、おかしくもなんともないですってばぁ……!」


49: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 21:03:53.38 ID:TMPHh8lf0


 そうして再び、泣き出してしまった卯月を見て、未央は降参するように両手を上げると、

「あー、もー、分かった! 分かったから! しまむーの日頃の鬱憤は、私たちがちゃんと聞いてあげるから!」

「まったく、むっちゃんは大人に一歩近づいたのに、卯月は年々幼くなってる気がするよ」

 凛もそんな未央に同意して、うんうんと頷きながらそう言うのだった。


 ――こうして旧友三人で飲み明かし、語り明かす夜は更けて。
 件の旦那さんが家に戻って来たのは、その日の日付が変わろうかという直前であったらしい。


 ちなみにこれは完全なる余談だが、ようやくの思いで我が家に戻った彼のことを、卯月はとびっきりの笑顔で出迎えたという。
「笑顔の奥に、修羅がいた。寂しんぼになっていたママを慰めるために、パパは物凄く頑張りました」とは、後に彼が病室で、長女にこぼした一言だ。


50: ◆Xz5sQ/W/66 2016/10/08(土) 21:06:34.85 ID:TMPHh8lf0

===

 以上、おしまいです。

 卯月と、彼女の笑顔をメインにしたネタっていうのは、前々から書いてみたかったんだけど……
 気づけば話の語り手が、彼女の子供になっていて。

 流石に子供が三人も出て来るし、皆「pちゃん」もどうだろうと思い、それぞれの母親に関連した名前を用意したりもしました。
 卯月の娘は、彼女に関連する駆逐艦から拝借。語感も、大体一緒ですし。

 本当に旦那は出て行ったとか、実はニュージェネ三人の旦那は同一人物で、数ヶ月ごとに持ち回りで家族してるとか、
 そういうろくでもない考えもあったんですが、やっぱり物語はハッピーエンドだろうと。

 旦那さんには(ついでに幸子にも)宇宙漁業とかいう、
 何やら怪しげな体験に出掛けてもらうことにしたのが、今回のエピローグになります。

 後、作中に出て来る眼鏡型端末は電脳コイルの眼鏡。
 ぷちデレラバトルは、メダロットみたいなイメージでした。


 それではここまで長々と、お読みいただきありがとうございました。





転載元:【モバマスss】「私はママが、大嫌い」


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コメント

コメント一覧

    • 1 名無し春香さん
    • 2021年04月23日 09:36
    • 初めて読むSSだったわ。
    • 2 名無し春香さん
    • 2023年07月27日 01:35
    • 独特な世界観と設定で読んでいて面白かった
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