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トップページシャニマス > 【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】:後編

533: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/21(水) 14:26:40.66 ID:cc1ZwoO6O

P(人の才能を見抜く――だなんて、簡単なことじゃない)

P(世の中に天才は一定数いるけど、それでも圧倒的な天才だらけじゃないから)

P(天才にもいろいろいる。天才なのに知名度が低いなんてまったくもって珍しいことじゃないんだ)

P(才能に貴賎はないが、才能ごとの中では貴賎はある)

P(アイドルで言えば、そう……歌、ダンス、演技、見た目――なんでもいい。放っておいても人をひきつける圧倒的な天才……)

P(そんなものをお目にかかれる機会なんて巡ってくるのだろうか……俺は、そう思っていた)

P(けど、思ったよりも早く――)


「よっ……ほっ……っと」


P(それは、偶然か、必然か)


「――ここは……こう?――」


P「!」

「――っと……うん、決まった!」

P「君、ちょっといいかな?」

「? わたしっすか?」

P「ああ、さっきのダンスって――」


P(――一瞬で“それ”だと確信できる存在に、俺は出会ったんだ)

関連スレ
【シャニマス】P「よし、楽しく……」-noctchill編- 【安価】
【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】:前編
【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】:中編



534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/21(水) 14:35:37.05 ID:cc1ZwoO6O

~事務所~

P「おはようございます」

あさひ「あ。……プロデューサーさん」

P「お、あさひか。どうした?」

あさひ「これ、見てくださいっす」

P「これって……石、だよな」

あさひ「ただの石じゃないっすよ」

P「どんな石なんだ……?」

あさひ「それは……」

愛依「おっ、あさひちゃんじゃ~ん。なになに? また何か持ってきたの?」

あさひ「これっす」

愛依「石……? しかもわりとでかめの」

あさひ「……」

あさひ「これ、冬優子ちゃんにそっくりなんすよ」

愛依「ぶふっ!」

あさひ「……愛依ちゃんきたないっすよ。いきなり噴き出してどうしたんすか?」

愛依「い、いや……だって……」プルプル

あさひ「プロデューサーさんはどうっすかね。この石、冬優子ちゃんに似てるっすか?」

P「ど、どうなんだろうな……」

あさひ「あはは……みんなわかんないんすかねー」

あさひ「この辺の輪郭とか、そっくりだと思うっす!」

P「ただのゴツい岩の一部にしか……」

愛依「あっはっはっはっは!! ひーっ、ちょーウケる……」ククク...

あさひ「……」

P「……なあ、あさひ。一つ聞きたいんだが」

あさひ「?」

P「それ、冬優子には言ってないよな?」

あさひ「もちろん――」

P ホッ

あさひ「――また、最初に伝えたっすよ」

あさひ「……」

P「……」

あさひ「今朝早起きして走ってたら河川敷の近くで見つけたんす。だから、ゲットしてすぐ報告したっす」

愛依「あー……。ねえ、プロデューサー?」

P「なんだ?」

愛依「今日のうちらの予定って、どうなってたっけ?」

P「午後からレッスン。現地集合も可」

愛依「あはは…………やば」

あさひ「……」

P「ま、まあ……今日も頑張ろう」

あさひ「……そうっすね」

P「?」

P(元気ないのか? あさひ……)


535: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/21(水) 14:46:19.57 ID:cc1ZwoO6O

夕方。

P カタカタ

P「ふぅ……」

P(そろそろ、あいつらが戻ってくる頃か)

P(というか、冬優子怒ってるだろうな……)

P(ちゃんと仲直りしててくれよ)

あさひ「ただいまっす」

愛依「たっだいま~」

冬優子「あー、ほんっとに疲れたわ……」

P「おかえり、3人とも」

あさひ「……」

P(あさひ……何かあったのか? 冬優子に怒られたんだろうか)

あさひ「……あ、プロデューサーさん」

あさひ「クワガタのこと、話したっすけど……冬優子ちゃんには怒られてないっすよ」

冬優子「何言ってんのとは思ったけどね。あんた、なんか元気ないじゃない。そんなやつ怒ったって、悪い気がするだけよ」

愛依「とか言って~、最初から怒るつもりもなかったんじゃないの~?」

愛依「冬優子ちゃん優しいし」

冬優子「そんなんじゃないわよ」

冬優子「……思い出したらイライラしてきたわね」

P「ま、まあ、あさひも悪気があったわけじゃないんだろうし、な?」

冬優子「それが余計にタチわるいっての」

冬優子「まあいいわ。ちょっと休ませて」ボフッ

あさひ「冬優子ちゃん、となりに座るっすよ」

あさひ ボフッ

冬優子「ちょっ……! 暑いからあっちいきなさいよ、ほら、しっしっ」

あさひ「……っ」ショボン

冬優子「……」

冬優子「……嘘よ。ちょっとくらいなら、いいわ」

あさひ「冬優子ちゃんの隣、ゲットっす」ダキ

冬優子「抱きつくことまでは許可してないわよ! ちょっとって言ったじゃない! ……もう」

あさひ「……」ニコ

愛依「いいねいいね~、見てて微笑ましいわ」

P「なんだかんだで仲良いんだよな」

愛依「ね。うち、あの子たちとアイドルできてよかった」

愛依「さーってと、うちも混ぜてもらお~」

冬優子「ちょっ! あんたまでなに抱きついてんのよ!」

P(3人とも笑顔だ。このユニットにしてよかった)

P(あさひは天才で、冬優子と愛依は決してそうではない。けど、それは2人があさひの引き立て役という意味なんかじゃなくて……)

P(裏表のないあさひと、2面性のある冬優子と愛依――)

P(――強い光と濃い影が、綺麗なグラデーションを成して魅力的なものになっているんだ)

冬優子「……ったく、暑いわねもうっ!」

冬優子「プロデューサー! もっとクーラー効かせて!」

P「ははっ、はいよ」ピッ


536: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/21(水) 15:23:15.86 ID:cc1ZwoO6O

P カタカタ

あさひ「……」ジーッ

冬優子「……」

あさひ「……」ジーッ

冬優子「……なによ」

あさひ「わたしのほう、見てほしいっす」

冬優子「もう……なに――って顔近っ!」

あさひ「……」ジーッ

冬優子「な、なんなのよ……」

冬優子「綺麗な顔してんだから見つめられたらやばいっての……」ボソッ

あさひ「冬優子ちゃんの髪の毛のここを――こうすると」

あさひ「あはは……やっぱり」

あさひ「ほら、やっぱりクワガタみたいっすよ」

冬優子「……」

P(……)

あさひ「アゴの長さ的にはメスのクワガタっす」

あさひ「……あ、冬優子ちゃんがしゃくれてるって意味じゃないっすよ?」

冬優子「はぁ、今度は何を言い出すのかと思えば」

冬優子「わかってるわよ……」

愛依「なになに? なんか面白いこと思いついちゃった系? あさひちゃん」

あさひ「そうなんすよ」

あさひ「ほら、冬優子ちゃんクワガタっす」

冬優子「もうどうでもよくなってきた……」

愛依「じゃあうちは……」

P(愛依が後ろ髪を前に……?)

愛依「ヘラクレスオオカブトじゃー!」グワァーッ

あさひ「あははっ……やっぱすごいっす」

あさひ「これでバトルできるっすよ、冬優子ちゃん」

冬優子「あー、はいはい。よかったわねー」

愛依「ねね、うちにしては結構グッドアイデアだったくない?」

あさひ「うーん……」

あさひ「色合い的には、サタンオオカブトのほうが近いっすね」スンッ

愛依「サタ……?」

愛依「そ、そうなんだ……あさひちゃんものしり~」

冬優子「愛依……あんたもよく付き合ってられるわね」

愛依「下の子たちの面倒見てるからさー、うちも楽しいし」

冬優子「ふーん、そういうもんかしら」

あさひ「……」


537: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/21(水) 15:40:34.85 ID:cc1ZwoO6O

P「ははっ、お前ら仲良しだな」

あさひ「……そうっすかね」

P「え……?」

あさひ「いや、なんでもないっす」

あさひ「プロデューサーさんも見るっすか? 冬優子ちゃんクワガタ」

P「ここからでも見えてたよ。立派なアゴだよな」

冬優子「あんたまでノッってんじゃないわよ!」

あさひ「冬優子ちゃんとクワガタ……」

P「どうしたんだ? あさひ」

あさひ「……」

冬優子「最高に嫌な予感しかしないわね」

あさひ「幼虫」ボソッ

冬優子「……」

愛依「なになに? どしたん?」

あさひ「この前、愛依ちゃんと冬優子ちゃんに見せた幼虫っす」

愛依「あー……」

冬優子「はぁ……」

あさひ「あはは……」

あさひ「もう成長したと思うんで、今度持ってくるっす」

冬優子「持ってこなくていいわよ!」

あさひ「えー……なんでっすかー?」

冬優子「なんでって、あんたね……」

冬優子「……こっちがなんでって言いたいわよ」

あさひ「冬優子ちゃんと冬優子ちゃんのバトルが見られると思ったんすけどねー……」

冬優子「あんた、「この幼虫、冬優子ちゃんみたいっす」とか言ってたけど、ふゆとおんなじ名前つけてんじゃないでしょうね……」

あさひ「いいじゃないっすか。……可愛いんすよ?」

冬優子「はぁ……」

冬優子「そういう問題じゃないっての」

愛依「五十歩? 譲っても、もう成長したなら幼虫じゃないっしょ~」

冬優子「愛依、もう五十歩とおつむが足りてないわよ。出直してきなさい」

愛依「あちゃ~、二千五百歩譲るんだったっけ!」

冬優子「なんでかけちゃったのよ……てか計算速いし」

あさひ「冬優子ちゃん、おむつの話なんかしてどうしたんすか? あ……っ!」

冬優子「あさひちゃんっ、ま・さ・か、のあとには何を言うつもりなのかな~?」

あさひ「冬優子ちゃんはおもらs――むぐっ」

P「おむつじゃなくておつむだぞ、あさひ」

あさひ「むーっ……プロデューサーさんにほっぺをむぎゅっとされたっす」

P「ほら、もう暗くなってくるから、3人とも帰ったほうがいいぞ」

あさひ「プロデューサーさんは帰らないんすか?」

P「まだ仕事が残ってるからな」

愛依「プロデューサーも大変だよねー……マジで感謝しかないわ」

P「いいのいいの、プロデューサーってのはそういう仕事なんだよ」

P「よし、今日のストレイライトは解散だっ」

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546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/30(金) 01:03:01.67 ID:Wo0FQcS2O

~仕事帰り 車内~

P「今日のラジオ、あさひらしく場を盛り上げられたじゃないか。よかったぞ」

あさひ「あ、そうなんすか? そういうのはよくわかんないっす」

あさひ「わたしは、ただわたしが思ったことを答えたり話したりしただけっすよ」

P「……そうか」

P「まあ、それがあさひだよな」

P(信号待ちになり、バックミラー越しにあさひを見る)

あさひ「……」

P(やはり……いつもより元気がない気がする。それも、今日だけではなく、ここ最近はずっと)

P(何かあったのだろうか)

P(こういう時、“あさひに対しては”どう対応するのが良いんだ?)

P(まだまだ、俺はあさひのことを知らない)

P(向き合えば向き合うほど、そう思えるのだ)

あさひ「プロデューサーさん」

P「なんだ?」

あさひ「長期休暇って、どうやったら取れるんすかね」

P「……え?」

あさひ「信号、青になってるっす」

P「あ、ああ……」

ブロロロ・・・

P(長期休暇――確かに、そう言ったよな)

P(何故……)

P「……どうして、そんなことが気になるんだ?」

あさひ「え? 決まってるっす」

あさひ「長期休暇を取りたいからっすよ」

P「あ、そういうことではなくてだな」

あさひ「?」

P「聞き方を変えるぞ。なんで長期休暇を取りたいんだ?」

P「ようは、休みたいってことだよな」

P「体調でも悪いのか? 仕事やレッスンで嫌なことでもあったとか」

あさひ「そういうんじゃないんすよね」

P「学校か? それとも、ご家族の中で――」

あさひ「学校も家族も関係ないっす!!」

P「――っ!?!?」

あさひ「あ……ごめんなさいっす」

P「いや、こっちこそすまない……根掘り葉掘り聞くのは良くないよな……」

P「ただ、俺もあさひのプロデューサーだからさ。あさひの力になれるなら、事情は知りたいんだよ」

あさひ「プロデューサーさん……」

P(そう……まだまだ、俺はあさひのことを知らない)

あさひ「プロデューサーさんの気持ちは嬉しいっす。けど、だめなんすよ」

あさひ「事情は言えないっす」

P「そうか……」

P(俺にできることは……何だろう)


547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/30(金) 01:35:22.49 ID:Wo0FQcS2O

P「とりあえず、事務所に帰ったら社長とはづきさんに相談してみるよ」

P「その時には、あさひも一緒にいてくれ。話せる限りの説明はしないと却下されるだけだろうしさ」

P「必ず希望が通る保証はないってことだけ覚えておいてくれ。あさひは……ストレイライトは283プロに欠かせない存在だからさ」

P「事務所も、ファンも……みんな、あさひたちが必要なんだ」

あさひ「プロデューサーさんも、わたしが必要っすか?」ズイッ

P「あ、あさひ……運転中だから……車内とはいえ身を乗り出したら危ないって」

あさひ「どうなんすか?」

P「もちろん必要だよ。必要に決まってる」

あさひ「なんでなんすか?」

P「なんでって……あさひは俺がプロデュースする大切なアイドルだから……」

あさひ「プロデュース……アイドル……」

P「あさひ?」

あさひ「……仕事」

P「ど、どうしたんだ?」

あさひ スンッ

P「しかし、仕事か……あさひが休んでる間、冬優子と愛依にどんな仕事を持ってくるかなぁ」

あさひ「なに言ってるんすか?」

P「?」

あさひ「プロデューサーさんも休むんすよ」

P「お、おい……?」

あさひ「だーかーらー、プロデューサーさんと2人で休むっす」

P「さっきはそんなこと言ってなかったじゃないか」

あさひ「そうっす。いま初めて言ったっす」

あさひ「さっき、なんで休みたいんだって聞いたっすよね」

P「あ、ああ……」

あさひ「事情は言えないっす……けど――」

あさひ「――あ、休みたい理由なら言えるっす」

P「理由?」

あさひ「わたし、プロデューサーさんと修行がしたいっす!」

P「しゅ、修行って……」

P「それなら、ストレイライトの3人でやるのが筋ってもんじゃないのか?」

あさひ「そうなんすか?」

あさひ ズイッ

P「わっ……あさひ、近いって」

P(身を乗り出しすぎて、運転している俺の頭の近くにあさひの顔がある)

P(あさひの吐息が俺の耳に触れる――そのくらいの距離だ)

あさひ「プロデューサーさんの言う筋って、なんなんすかね?」

P「え――」

P(――俺は、無意識に自分の“当たり前”をあさひに押し付けていることに気づく)

あさひ「プロデューサーさん……?」

P「わ、わかったから……! 耳元で囁くのはやめてくれ」

あさひ「はいっす」スッ

P「……はぁ。……シートベルト、ちゃんと締めるんだぞ」


548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/04/30(金) 02:03:24.74 ID:Wo0FQcS2O

1時間後。

~事務所~

P「……嘘だろ」ハァ

P(まさか、1ヶ月限定とは言え休暇の申請が通るなんて)

P(しかも、あさひだけでなく、俺も……)

P(俺がいない間のプロデュース業ははづきさんが代行してくれるらしいが……)

P(こんなこと、あり得るのか?)

あさひ「~♪」

P(あさひは――上機嫌だな)

あさひ「プロデューサーさん?」ズイッ

P「うわっ!? お、驚かさないでくれ……」

あさひ「!? ご、ごめんなさい……」シュン

P「あ、いや……別に怒ったわけじゃないんだ。これからどうしようかって、考えてたんだよ」

P「なあ、あさひ。修行って、具体的には何をするんだ?」

P(そう、休暇って名目だから、何をするのかはまだ誰も聞かされていない――直接関係あるのは俺だけだが)

あさひ「そうっすね……」

あさひ「まずは花火っす!」

P「は、花火?」

あさひ「いま、花火大会がやってるはずなんすよ」

P「どれどれ……」カタカタ

P「……本当だ。てか、ここってさっき帰りに車で通ったところだな」

P(ちょうど、あさひが長期休暇について聞いてきた頃だろうか)

P(花火大会があれば浴衣姿の人たちとかが見えて気づきそうなもんだが……たぶん、あさひの話に気を取られていたから……)

あさひ「手で持つ花火もやりたいっす」

あさひ「他にも面白い花火があれば見つけたいんすよ」

あさひ「不思議があるかも……」

P(それは遊んでるだけだろ――とは言わないし言えない)

P(あさひの考えを俺の価値観で曲げるのは良くないんだ)

P(決め付けが一番悪影響を与えそうだからな、あさひの場合には)

P「じゃあ、とりあえず明日はその花火大会に行ってみようか」

P「手持ち花火も、すぐ買えるから手に入れよう」

P「変な花火は……調べてみるか」

あさひ「ネットで見つかるっすかね?」

P「ああ、便利な時代だからな」

P「危ないやつじゃなきゃ、買ってあげるよ」

P「花火以外にやってみたいことは?」

あさひ「星を見たいっす!」

P「屋上で今すぐにでも見れそうだが……」

あさひ「それもいいんすけど……天文台とか!」

あさひ「昼でも星は見れるらしいんすよ」

P「あー、なんか聞いたことあるな、そういう話……」

P(なんだか、こんな楽しそうなあさひは久しぶりに見た気がした)

P(そう、本当に久々のような……。そんなはずはないのに)


552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 00:56:29.66 ID:rmkjkOgvO

翌日、夕方。

~花火大会開催地~

P「……ちょっと早く着き過ぎたな」

P(つい仕事モードの時間感覚で動いてしまったが……プライベートとなると若干やり過ぎになるのかもしれない)

P「あさひは……どのくらいに着くかな」

P(道草食って大遅刻とか……あるいはそもそも来ないとか)

P(いや、楽しみしてた――はずだ――し、来ないってことはないか?)

P「……」

P(あさひからの連絡はない。もっとも、まだ待ち合わせの時刻にはなっていないのだから、当然といえば当然だ)

P「俺は、何をそわそわしてるんだろうな」

P(成人男性と中学生の女の子が花火大会――良く捉えて俺は保護者、といったところか……)

P(でも、一方で、あさひが来るのを心待ちにしている俺がいる)

P(俺だって楽しみじゃなきゃ、そわそわなんてしないんだから)

P「ははっ、なんだよそれは……」

P(一人で色々考えて、勝手に気恥ずかしくなる)

P「……」

P(道が、混んできた)

P(あさひは、俺を見つけることができるだろうか)

「あ!」

P(やはり駅の出口まで迎えに行ったほうが……いやしかしすれ違ってしまうかも……)

「プロ――ューサ――ん!」

P(ふと、前を見れば――)

「あははっ」

P(――銀髪碧眼の、よく知る少女が1人。服装は……浴衣だ)

P「あ、あさひ……!」

あさひ「いまそっちにいくっすよー!」タタタ

P「人が多いから、走ったら危ない……ぞ」

P(ところが、あさひは……まるではじめから道が見えていたかのように止まることなく人波を掻い潜ってやってきた)

P(よく見れば下駄を履いているというのに、それでも)

あさひ「到着、っす!」

P「人ごみの中を難なく通って来たな……」

あさひ「人の流れがあったっすよ。よく見たら、それが変わらなかったんで、そこからうまく進んでいけば避けられるって思ったっす」

あさひ「なんていうか、こう……道が見えたっす」

P「はは……そうなのか。こりゃすごいな」

P(昔読んだアメフトの漫画を思い出すな)

あさひ「こういうの、はじめてじゃないっすから」

P「? そうか」

あさひ「あ、なんでもないっす!」

P「それにしても、あさひ……その浴衣……」

あさひ「あ、これっすか? 冬優子ちゃんに手伝ってもらったんすよ」

P「そう、だったのか」

P(冬優子が……)


553: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 01:30:00.88 ID:rmkjkOgvO

あさひ「どうっすかね?」

P「よく似合ってるよ」

あさひ「うーん……」

P「……あさひ?」

あさひ「プロデューサーさん」

P「なんだ?」

あさひ「カワイイっすかね」

あさひ「わたし、この浴衣着てて」

あさひ「それが気になって、どうっすかって聞いたんすけど」

P「ああ……もちろん、可愛いよ」

あさひ「……そうっすか」

あさひ「あははっ、それならいいっす!」ニコッ

P(最初からもう少し気の利いたことを言ってやればよかったのかもな……)

あさひ「冬優子ちゃんに言われたんすよ」

あさひ「カワイイって言ってもらえるって」

あさひ「だから気になったっす」

P「あ、……ははっ、そういうことだったのか」

P「すまんな、はじめからそう言ってやれなくて。でも、見蕩れていたんだよ」

P「可愛いのはもちろん、綺麗とさえ思った」

P「言葉を失ってたんだ、たぶん」

P「そうだよな……ちゃんと言葉に出せば、伝わるよな」

P(もしかして、冬優子はこうなるってわかってて……?)

あさひ「綺麗……っすか」

あさひ「……」

P「あ、あさひ……?」

P(今度は急に俯いて……俺、また何か……?)

P「大丈夫か?」

P(あさひの表情が気になって、姿勢を低くして顔を覗こうとした――)

あさひ プイッ

P(――が、顔を背けられてしまう)

あさひ「だめっす」

P「駄目……なのか?」

あさひ「はいっす。だめ、っすよ」

P「何が駄目なんだ? すまないが教えてくれ……」

あさひ「わたしの顔を見るのっす」

あさひ「その……綺麗とか言われるのは、想定外、っすから」

あさひ「いまのわたしの顔、たぶん、変な顔で、変な色してるっす」

あさひ「だから、プロデューサーさんに見られたくないんすよ」

あさひ「……」

P(と、言いながらも、あさひは上目遣いでこちらの表情を逆に伺ってくる)

あさひ「その……」

あさひ「……」

あさひ「……恥ずかしいんすよ」


554: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 01:44:20.06 ID:rmkjkOgvO

1時間後。

P「すごい人だな……良いスポットはどこも」

あさひ「……」

P「少し妥協したほうがいいのかもしれないな」

あさひ「プロデューサーさん。花火ってどこから打ちあがるっすかね?」

P「え?」

あさひ「それがわかれば……」

P「おいおい――」

P(――いや、ここはあさひのやりたいように――)

P「――そうだな、調べてみるよ」

P「ちょっと待っててくれ」


P「わかった。ここらしいぞ」

P「ほら、これ……その画面にある地図でピンが刺さってるところがそうだ」

あさひ「……」

P(これは、あさひの修行なんだ)

P(あさひのやりたいようにやらせてみよう)

あさひ「わかったっす」

あさひ「こっちっす~。行くっすよ、プロデューサーさん」

P「ははっ、置いて行かれないように気をつけるよ」

P「案内よろしくな」


あさひ「ここなら綺麗に見えるはずっす!」

P「そうなのか……」

P(俺とあさひしかいないが)

P「……お、もう花火が上がる頃だな」

あさひ「楽しみ~」

P「……」

あさひ「……」

ドォーン

あさひ「おおっ!?」

ドォーン

バチバチバチバチ

ヒュールルル

ドォォォン

P「こりゃ……驚いたな」

あさひ「いろんな形に、いろんな色……すごいっすね! プロデューサーさん!」

P「ああ、すごいよ――」

P(――雑誌やネットで見るどのスポットよりも綺麗に見えるじゃないか、ここ)

P「綺麗だよな、花火」

あさひ「わたし、なんであんな色になるのかが気になってたっす」

P「え? ああ、それは――」

あさひ「――炎色反応」

あさひ「前に気になって人に聞いたことがあったっす。だから、もう知ってるっすよ」


556: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 02:00:43.25 ID:rmkjkOgvO

P「はは、そうか。あさひは勉強熱心だな」

あさひ「別にそういうわけじゃ……ないっすけど」

あさひ「……でも、そうっすね」

あさひ「そういうのって、ちゃんと本を読んだほうがいいって言われたんすよ。聞いたときに」

P「それは……間違いないな」

あさひ「だから、今度一緒に図書館とか本屋さんに行って欲しいっす」

P「俺がか?」

あさひ「他に誰がいるんすか?」

P「……いや、うん。そうだな」

P「行こうか、一緒にさ」

あさひ「約束っすよ?」

P「あさひがいい子にしてたらな」

あさひ「いい子にしてるだけでいいんすか?」

P「なんだって?」

あさひ「いい子にしてても、プロデューサーさんが忘れてたら意味ないっす」

あさひ「それに、よく考えると……いい子ってなんなんすかね?」

P「わ、わかった。わかったよ」

P「この1ヶ月の間に行こう」

あさひ「絶対、っすね?」

P「ああ、絶対、だ」

あさひ「……」

あさひ「……あははっ、やったっすー!」

P ホッ

P(あさひがここまで約束にこだわるなんてな……)

P(人との約束で嫌なことでもあったんだろうか)

ヒューゥゥゥ

ドドォンッ

あさひ「……」

P「……」

ヒュルルルル

ドドドォッ パラパラパラ...

あさひ「花火って、寂しいっす」

あさひ「打ち上げられる瞬間とか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、飛ばされたら最後……っすから」

あさひ「……」

あさひ「でも、それも悪くないんすよ」

P「そうなのか」

あさひ「……そうっす」

あさひ「そうやって、教えてくれた人がいたから」

あさひ「わたしが、花火が綺麗だった瞬間を覚えてるから……それでいいっす!」

あさひ「どんなに短い時間の出来事でも、覚えてくれてる人がいれば、それで」

P「そうか……今日のことが、あさひにとっていい思い出になると良いな」

あさひ「もちろん、いい思い出っす!」

あさひ「これなら、上書きしてもいいって思えるっすよ、プロデューサーさん」ボソッ


557: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 02:12:04.21 ID:rmkjkOgvO

翌日の夕方。

~いつもの河川敷~

あさひ「あははっ、2日連続の花火っす~」

P「昨日はオーディエンス、今日はパフォーマー……なんてな」

P(もう暗い時間帯だし、花火をするには良い状況だろう)

あさひ「プロデューサーさん、早くやるっすよ~!」

P「ああ。ちょっと待ってな。いまチャッカマン出すから」

あさひ「これ、わたしの選んだ花火っす」

P「ほら、もうちょっと花火出してくれ」

あさひ「はいっす」

P「よっ……」

ボッ ジジジ・・・

あさひ「うーん、なかなか始まんn――」

ボシュゥゥゥ

あさひ「――おおっ!!」

あさひ「あはははっ、やっぱびっくりしたっす……!」

P「こういうので油断すると驚かされるときってあるよな」

あさひ「はいっ、プロデューサーさんも一緒にやるっすよ」

P「え? 俺もか?」

あさひ「やらないんすか?」

P(はしゃいで、楽しそうにしているあさひを見るだけで満足してた……とは言いづらい)

P「……やる」

あさひ「わたしの花火の火、使っていいっすよ。はいっ」

P「ありがとう、あさひ」

ジジジ・・・

P「……」

ボッ! シュゥゥゥ

P(手持ち花火なんて、いつぶりだろう)

P(学生のときだろうか。少なくとも、社会人になってからは、やっていないと思う)

P(でも、それは単なる歴史的事実というか……)

P(……最近やったような気がするのは何故だろう)

P(まあ、気のせいだと思うが)

P(夢でも見たんだろう、きっと)

あさひ「わあっ! プロデューサーさんもおんなじ花火っす~~」

P「ああ、色と形が同じでお揃いだな」

あさひ「あははっ」

シュゥ

あさひ「……あ、終わっちゃった」

P「まだまだたくさんあるぞ。やるか?」

あさひ「はいっす! プロデューサーさんが買ってくれた花火の色と形……全部知りたいっすから」

P「わかった。じゃあ、一緒に見ていこうな」

あさひ「ワクワクっす~。楽しみ~」

P「じゃあ、次はこの違うデザインのやつを……」


558: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 02:18:30.53 ID:rmkjkOgvO

シュゥッ

あさひ「あ……」

あさひ「……」シュン

P「ど、どうしたんだ? あさひ」

あさひ「……終わっちゃった、っす」

あさひ「……」

P「あさひ……」

あさひ「プロデューサーさんと、もっと色んな花火を見てみたいんすけどね」

P「花火、好きなのか?」

あさひ「どうなんすかね。それはよくわかんないっす」

あさひ「花火が好きかはわかんないっすけど……」

あさひ「プロデューサーさんと見る花火は、楽しくて、もっとやりたいんすよ」

あさひ「けど、それも最後だったっすかね……」

P「この王道の綺麗な花火セットは、な……。でも、ほら、これ」

あさひ「?」

P「線香花火ってやつだ」

P「さっきまでのやつみたいな派手な花火じゃないが、風情があって、なかなかどうして良いものだと思うぞ」

あさひ「プロデューサーさん……」

あさひ「あははっ、そうだったっす」

あさひ「プロデューサーさんはそういうことするっす!」

P「……?」

P「よくわからんが……これも俺と一緒にやろう」

P「はい、まずは1本どうぞ」

あさひ「ありがとっす!」

P「じゃ、火をつけるからな」

あさひ「これ……見守るんすよね」

P「ああ、そうだ。線香花火だからな」

ジュジュジュジュジュ・・・

あさひ「わっ、なんかバチバチなってきた……!」

P「そう。でも、おとなしいんだ、こいつは」

あさひ「やっぱり、さっきやった花火とはまるで別物っす」

パチッ・・・パチパチッ

あさひ「あ、はじけた……」

P「たぶん、しばらくは何回かそうなるよ」

バチバチバチバチバチ

あさひ「あははっ、元気っすね!」

P「この、徐々に……控えめだけどしっかりはじけていって、ほど良い力強さで形をなすのが好きなんだ」

P「派手な見た目ではないけど、でも、人の心を動かす何かを持ってるんじゃないかって思えて……」

あさひ「プロデューサーさん」

P「どうした?」

あさひ「この花火、温かいっすね」

あさひ「優しい花火っす」

P「そうだな……癒してくれる花火だよ」


559: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/02(日) 02:33:13.81 ID:rmkjkOgvO

あさひ「わからないっす」

P「……え?」

あさひ「癒されるって、どんな感じなのか、全然言葉にならないんすよ。だから、わからないっす」

あさひ「でも……わからなくていいのかもしれないっすね」

あさひ「いま、わたしは確かに癒されてるんだなって思えるっすから」

あさひ「癒されてるって、温かい、っすよね……?」

あさひ「プロデューサーさんは、線香花火を見て温かくなるっすか?」

P「ああ。俺も、たぶん、あさひと同じことを感じてる」

P「現象としての熱じゃない、心に響く温かみを」

あさひ「……」

P「……」

あさひ「……」ニコ

あさひ「プロデューサーさんっ!」

P「どうした? あさひ」

あさひ「これ、実際に手で触ったら、きっと温かいっすよね」

P「台無しだよ。そりゃ激熱だろうよ。絶対にやるなよ」

あさひ「あははっ、冗談っす!」

P(あのあさひが冗談を言った……だと……!?)

ジジジ・・・ポトッ

あさひ「あ、終わっちゃった」

あさひ「まだ、あるっすか? 線香花火」

P「ああ。あと3、4本はあるぞ」

あさひ「! やりたいっす!」

P「ははっ、そうか。……そうだな。よし、俺もやるよ」


あさひ「……これで全部おわり、っす」

P「なんだかんだ買った花火を全部使っちゃったんだな……」

P「まあ、でも……」

P(仕事しないで、あさひと2人……こうして河川敷で花火に興じる時間は……)

P「ははっ、なんだよ、めちゃくちゃ楽しいじゃねぇか」

あさひ「わたしも、今日は楽しかったっす」

あさひ「ありがとうっす、プロデューサーさん」

P「俺の方こそ、お礼を言わせて欲しい」

P「ありがとう、あさひ」ナデナデ

P(あさひが長期休暇がどうとか言い出したから、俺は今こうしてここにいるわけだし)

あさひ「わわっ、プロデューサーさん、頭……」

P「あっ、すまん、つい……」

P(女の子の頭なのに……撫でて嫌がられるだろうか?)

あさひ「むー」

あさひ「これも想定外っすよー」プイッ

P「あさひー……?」

あさひ「だめ、っす。いまのわたしの顔を見ちゃ、だめ、っすよ」

あさひ「でも……悪くはないっす」ボソッ


565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/08(土) 02:16:53.75 ID:ALUr9uJBO

翌日。

~某天文台~

P「昼でも星は見れる……か」

P(太陽があるうちは、地上から星を見ることはない。ならば――)

P(――昼間に星は存在しないのではないか、という話)

P(観測しているものがすべてならそういうことも言えてしまう……という論理は、まあ、わからんでもない)

P(見えているものが、果たしてすべてなんだろうか)

P「まあ、時に素朴な疑問というものは……とことんまで追究すべきだな」

あさひ「プロデューサーさん、やってるっすよ!」

P「……あ。え? すまん、ぼーっとしてた」

P「どうしたんだ?」

あさひ「あれっすよー」

あさひ タタタッ

あさひ「『昼の星 観察会』……!」

P「ああ、そうか。うん、そのために来たもんな」

P「さ、昼に星はどうなってるか――」

P「――自分の目で、確かめてみよう」

P(そう言って、一旦空を仰いでみる)

P(天気が良くて本当によかった、と思った)


あさひ「……」

P(あさひ……すごい集中力で覗いているな)

P「ははっ、まあ、あさひだから……な」

あさひ「……」

あさひ「よしっ――」

あさひ「――見えた」

P「どうだ? 何か見えたか?」

あさひ「はいっす! 金星が見えたっす!」

あさひ「プロデューサーさんも見て欲しいっす~」

P「そうだな。どれどれ……」

P「……あ、見えた」

P「よいしょっと……他にもいろんな星が見れるらしいぞ。ほら、もう少し頑張ってみな」

あさひ「そうっすね! ……もっと探すっす!」

あさひ「んーっ……」

P「あ、隣が空いたな……」

P(この場に冬優子と愛依がいれば、せっかく来たんだしそっちで見たらどうだ、って言ったかもな)

あさひ「おおっ!? 木星っす!」

P「おお、よく見つけられたな」

P「こっちの方を見ると太陽系内惑星以外のほかにもいろんな恒星が見れるぞ」

あさひ「むむむ……」

あさひ「!」

あさひ ニコニコ

P(とりあえず楽しそうだ)


566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/08(土) 02:46:33.96 ID:ALUr9uJBO

あさひ「ふぅ……いろんな星見つけたっす~」

P「どうだ? 昼に星を見た感想は」

あさひ「昼間に星……やっぱりあったっすね」

P「ははっ、まあ、そうなるな」

P「けど、星は夜にだけ現れているっていう考え方もできてさ……俺は嫌いじゃないんだ」

P「なあ、あさひ。あそこには……何がある?」

あさひ「何って……あ、まぶしっ。……太陽っす」

P「そうだな」

P「じゃあ、普通にこっちの方を見てくれ」

あさひ「はいっす」

P「いま、真っ直ぐ立って前を向いてる状態で、あさひの目には太陽が見えてるか?」

あさひ「いや……見えてないっす」

P「そうだよな。まあ、窓とか何かに反射してるとかじゃなけりゃ、そうだ」

P「ってことは、いま、太陽はないんじゃないか?」

あさひ「……」

P「太陽は見えてない……だから、太陽はいま存在しない」

P「どうだ?」

あさひ「まあ、そういう考え方も……ありなんすかね」スンッ

P(あ、あれ……この話をしたのは失敗だったか?)

P「ま、まあ、太陽だと周りを照らしてるからって反論ができるし、本来なら夜に月を題材にして話すべきなのかもしれないな」

P「うーん、見えてるものがすべてっていうと、極端な話、こういうことにだってなるんだよな……」

あさひ「アイドルは……」

P「?」

あさひ「アイドルは、ファンの人たちに見えてる部分が全部じゃ……ないっす」

P「! そうだな」

P「アイドルだって人間だ。ファンに見せない部分だって当然ある」

P「でも、そういう部分も、確かにアイドルを形成する要素なんだと思うよ」

P「アイドルって、五感では語れないものがたくさんあるはずなんだ。それは、例えば人間としての存在が与える影響というか……」

あさひ「うーん、よくわかんないっす」

P「はは……すまん、なんか独り言だったよな」

P「なんというかさ、俺は、あさひが、アイドルとは何かを想像する中で何を見つけてくれるのかを、心から楽しみにしているんだよ」

あさひ「……あははっ」

あさひ「やっぱり、よくわかんないっす!」

P「そ、そうか……」

あさひ「だけど、プロデューサーさんがわたしのことをいっぱい考えてくれてるってことはわかるんすよ」

あさひ「まだまだ、プロデューサーさんと修行……したいっす」

あさひ「わたし、ずっとひとりぼっちで……」

P「何を言い出すんだよ。俺も、冬優子も愛依もいるじゃないか」

あさひ「そうっすね。いまは、プロデューサーさんがいつも側にいるっす」

P「安心してくれ。俺はいつまでもあさひと一緒にいるからな」

あさひ「! プロデューサーさん……」

P(あさひの寂しそうな顔を見るのは、これがはじめてじゃない。けれど、ここまで寂しそうな顔は初めて見た気がする)

P(それに……俺以外に冬優子と愛依がいるというのも伝えたつもりだったんだが、あさひが俺のことしか言っていないのが気になった。まあ、気のせいだろう)


567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/08(土) 03:21:14.97 ID:ALUr9uJBO

翌日、夜。

~事務所 屋上~

P「……」

P(空気も澄んでいるし、天体観測には申し分ない天候だ……)

P(仕事しないで何やってるんだろうとかは、きっと考えてはいけない)

P(今、下の事務所にははづきさんしかいない。それ以外には、俺とあさひだけだ)

P(なんだか、不思議な感じだな。事務所のある建物で遊ぼうとしているっていうのは)

あさひ「プロデューサーさん、早く望遠鏡をセットするっすよ!」

P「あ、ああ……そうだな」

P(随分立派な望遠鏡なんだよな……これ)

P(あさひが倉庫から出してきたやつだけど、こんなの倉庫にあったか?)

あさひ ジーッ

P「どうしたんだ、あさひ。そんなに望遠鏡を見つめて……」

P「……分解したり壊したりはするなよ。それ、絶対高いやつだから」

P(そもそも誰のものなのかもハッキリしていないしな。まあ、事務所にあるくらいだから、所有者も事務所の人間だと考えるのは自然だが……)

あさひ「わかってるっす。何度も注意されたし、さすがにやらないっすよ」

P「そうか。まあ、それならいいんだが」

P(……? 俺、“何度も”注意したか? さっきのが初めてだと思うけど)

あさひ「とぉーう!」バッ

P「……」

あさひ「?」

P「……」

あさひ「プロデューサーさん、どうしたんすか? ぼーっとして」

P「え? あ、いや……なんでもないよ」

P「あさひは……なんだか楽しそうじゃないか」

あさひ「もちろん楽しいっす」

あさひ「プロデューサーさんと一緒っすから」

P「ははっ、ありがとうな」

P「さ、まだまだこれからだぞ?」

P「望遠鏡のセッティング、一緒にやらないか?」

あさひ「やるっす!」

P「よし! そうこなくっちゃな」

P「あとは俺がやるよ」

P「あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」

あさひ「あははっ、ワクワクっす~!」

P(あさひの笑顔を見るたびに安心する俺がいる)

P(一方で、一抹の不安が頭をよぎる)

P(あさひの笑顔は、そんなに珍しいものだっただろうか?)

P(最近あさひの元気がないことが多いとはいえ、なんだか、普段の様子を見ているといつも表情に影が差している気がしてならない)

P(俺の知っている芹沢あさひは、日々、新たな発見との出会いで胸躍らせているような子じゃなかったか?)

P(それなのに、最近のあさひには、そういうものが感じられない)

P(そう、例えるなら――)

P(――本を初めて読むときと既に読んだ本を読み返すときの気分の違い、だろうか)


568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/08(土) 03:31:24.01 ID:ALUr9uJBO

あさひ「……」

P(やはり……というか、集中力がすごいのは相変わらずだな)

P(セッティングが終わって望遠鏡を覗かせたら、そこでずっとはり付いてるんだもんなぁ)

あさひ「……」

あさひ「あ――」

あさひ「――見えた」

P「どうだ? 何か見えたか?」

あさひ「アメンボっす!」

P「アメンボ……?」

あさひ「プロデューサーさんも見るっすよ。ほら、真ん中らへんにある……」

P「どれどれ……」

あさひ「見えたっすか?」

P「ああ」

P「これは、オリオン座だな」

あさひ「オリオン座……」

P「ああ。よいしょ……っと」

P「星座だよ。1等星や2等星が多いからここでもよく見えるんだ」

P「ギリシア神話のオリオンの姿に見立ててオリオン座って呼ぶんだよ」

あさひ「そうなんすか」

あさひ「……」

P「ははっ、まあ、でも、そうだな。何に見えるかっていう意味での正解はないと思うぞ」

P「日本では鼓に見えるからってことで鼓星なんて言うしな」

P「あさひにとってアメンボなら、アメンボでもいいんじゃないか?」

あさひ「!」

あさひ「じゃあ、あれをアメンボ座と名づけるっす!」ニコッ

P「あさひが名付けた星座だな。いいじゃないか。実際にありそうな風格さえ感じるよ」

あさひ「ありそう、じゃなくて、あるんすよー」

P「ああ、そうだな。すまん」

あさひ「プロデューサーさんって、星座に詳しいっすね」

P「ああ、まあな……どれ……」

P「オリオン座の周りにいろいろあってな。あれがぎょしゃざで、反時計回りにふたご座、こいぬ座……」

P「……って、悪い。俺が覗き込んでたらあさひが見れないよな」

あさひ「大丈夫っす! さすがに覚えたっす」

P「さ、流石だな」

P「まあ、俺がずっと覗いてちゃ悪いし、あさひが見てていいよ――」

あさひ「わかったっす! 星座星座~」ズイッ

P「――っ!?」

P(望遠鏡から顔を離したその瞬間――)

あさひ「あ……」

P(――2つの青い目と、目が合った)

P(日本人離れした綺麗な顔立ちに目が離せなくなる)

P「す、すまん! 今、離れるから……!」

P(このままだとあさひに釘付けになって身動きが取れなくなる……そんな気さえするほどに魅力的に感じられた)


569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/08(土) 03:48:45.14 ID:ALUr9uJBO

あさひ「……っ」モジモジ

P「……」

P(あんなに顔が近づいたことなんて、今までなかったが……)

P(文字通り目と鼻の先で見たあさひの顔が脳裏に焼きついてまったく消えようとしない)

P「そ、そうだ。星座のこと、もっと教えるy――」

ギュッ

P「――!?」

P(背後から抱きつかれた)

あさひ「……」ギュゥ

P「あ、あさひ……?」

あさひ「星座は、いまは別にいいっす」

P「そうか? さっきあれだけ楽しそうにしてたじゃないか」

P「それに、こうして抱きつかれるのは、その……」

P「せ、せっかく天体観測してるんだし、星を見なきゃもったいないぞ?」

あさひ「自分でも、わかんないんすよ」

あさひ「どうして、プロデューサーさんに抱きつきたくなったのか」

あさひ「天体観測してる最中なのはわたしにもわかるっす。星を見ないともったいないのも」

あさひ「けど、こうしたくなったんすよ……」

P「あさひ……」

あさひ「星のことよりも、宇宙のことよりも――」

あさひ「――プロデューサーさんとこうしたくなった理由のほうが、ずっとずっと不思議っす」

あさひ「それに……」

あさひ「……ドキドキ、でも、落ちつくっすね」

あさひ「もう少し、こうしていたいっす」ギュ

P「……わかった。しばらく、こうしてようか」

あさひ「……」

あさひ「わがまま言ってもいいっすか?」

P「ああ、いいぞ」

あさひ「背中より、正面がいいっす」

P「本格的に抱き合う形になるけど……いいのか?」

あさひ「そのほうが、わたしはいいっす」

P「わかったよ」

あさひ パッ

P クルッ

P「ほら」バッ

あさひ「!」ダッ

あさひ ドンッ

P「うおっ……!? ……ははっ、良い勢いだ」

あさひ ギュゥゥッ

あさひ「えへへ、あったかいっすね」

P(俺に飛び込んできたあさひの笑顔を見て、自然と俺も抱きしめていた)ギュ

あさひ「そっか……そうだったんだ」

あさひ「あははっ、もっと早く気づけばよかったっす」ボソッ


573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/11(火) 22:31:40.53 ID:W1OuxU+GO

翌日。

~某公立図書館~

P「……」

P『はは、そうか。あさひは勉強熱心だな」

あさひ『別にそういうわけじゃ……ないっすけど』

あさひ『……でも、そうっすね』

あさひ『そういうのって、ちゃんと本を読んだほうがいいって言われたんすよ。聞いたときに』

P『それは……間違いないな』

あさひ『だから、今度一緒に図書館とか本屋さんに行って欲しいっす』

P(そういうわけで、今日の“修行の場”は図書館にしてみたわけだが……)

あさひ「……」

P(あさひが楽しみにしているときの態度じゃないよな……これは)

P「ほら、せっかく来たんだ。入ろう」

あさひ「はいっす」

P(何か……間違えたかな?)


P「化学のコーナーは……あ、一応、物理学のコーナーの場所も把握しておこうかな」

P(そういう話からだったもんな、図書館とか本屋のくだりって……)

P(……ああ。一緒に花火を見たときだ)

P「あさひも、何か興味のあるコーナーがあったら言ってくれよ」

P「そっちにも行くからさ」

あさひ「大丈夫っす。プロデューサーさんが探してるところで」

P「そ、そうか……?」

あさひ「花火のときの話っすよね? なら、それでいいっす」

P「……わかった」

P「……」

P(いや、わからないよ――あさひのやりたいことが)

P(でも、どうしたらいいんだ)

P(それもわからない……)


P「とりあえず、これとこれ……それからあっちの……」

P「よし、この辺の本があれば、あとは俺が説明してやるだけで……」

P「……ちょっとした授業くらいには、なるはず」

P「しかし、うーん」

あさひ『前に気になって人に聞いたことがあったっす。だから、もう知ってるっすよ』

P(ハードルが高いな)

P(面白いと思ってもらえるだろうか……“その人”の話よりも魅力的な話題にしないと、だよな……)

P(ふと、あさひがいる方を見る)

あさひ「……」ボーッ

P(あさひは、吹き抜けで繋がった上の階から来る光を浴びるかのように、ただ上を見上げている)

P(そこには、あの好奇心も、あの集中も、何も……)

P(……“俺の知るあさひ”を感じられるものがない)

P「やるか……授業」

P(あさひが来たいと行ったところに来ているんだ。今はそれで大丈夫だと思うしかない)


574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/11(火) 22:54:57.20 ID:W1OuxU+GO

P「本を持ってきたぞ、あさひ」

あさひ「……あ、プロデューサーさん」

P「話しても良いところに移動しよう。せっかくだし、一緒に見ようと思ってさ」

あさひ「そうっすね。わたしもそうしたいっす」

P「はは……面白い話ができればいいんだけどな」

あさひ「あははっ、大丈夫じゃないっすかね」

あさひ「プロデューサーさんなら」


P「ここなら大丈夫だな」

P「よいしょ、っと……」

P「あさひも適当な所に座ってくれ。本が見える範囲でな」

あさひ「じゃあ……ここっす」

P「え……」

あさひ「だめっすか?」

P「だ、駄目じゃ……ないが」

P(真横――隣に座ってくるとは思ってなかった)

P(向かい合う形でも良いように、サイズの大きい本を選んだんだが)

P(ははっ、これじゃあこの本は大きすぎかもな)

あさひ「プロデューサーさん?」

P「あ、いや、すまん。そこに座ってもいいよ」

あさひ「っす」

P「じゃあ、さっそく読むか。光と色の話から……」


P「……っと、つい夢中になって話してしまったな」

P(何やってるんだ俺は……あさひのためにやろうとしているのに)

あさひ「? 別に大丈夫っすよ。前に聞いたときよりも説明が丁寧でわかりやすかったっす」

P「はは……まあ、本を見ながらだからな」

P(とりあえず、あさひが前に聞いた相手よりはうまくやれたようだ……)

あさひ「そっちの本には何が書いてあるんすかね?」

P「これは……熱の広がりの話だな」

あさひ「次はそっちがいいっす!」

P「わかった。じゃあ、線香花火の熱がどこまで伝わるかって話なんだけど……」


P「……という感じだな」

あさひ「……」

P「あさひ?」

P(返事がないから、あさひの顔に目線をうつす……と)

あさひ「っ!?」

P「!」

P(あさひは、俺の方を見ていた。目が合って、とっさに視線を逸らすまでは)

あさひ「……」

P(例によって夢中になっていた俺は気づかなかったんだろう。たぶん、俺が熱の話をしている間、あさひはずっと俺のことを見ていた)

P(思い返せば、やたらと吐息が当たっていた気もする。俺みたいな大人がそんなことを――しかも女子中学生相手に――気にするなんて、と無意識に思っていたから気づかなかった――あるいは“ふり”をした――んだと思う)

P(あさひは珍しく赤面している。それを無言でただ見ているだけの自分にドン引きしつつ、俺はどうすれば良いのかを考え始めた)


575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/11(火) 23:28:41.52 ID:W1OuxU+GO

P「そ、そうだ。カフェテリアに行こう。気分転換になるぞ」

あさひ「わたしは別にいいっす」

P「……」

P「……何があるかだけでも、見てくるよ」

P(逃げるように立ち去ろうとした。いろいろなものからの“逃げ”だ)

P(けれど――)

グイッ

P(――袖を掴まれて、逃げることができなかった)

P「あ、あさひ……」

あさひ「……」

P「……ごめんな。なんか、うまくやれてないよな、俺」

P「あさひの修行……せっかくだし良いものにしたいんだ。あさひがやりたいこと、あさひが望むままに、やらせてあげたいって思ってる」

P「でも、俺がしているのは――俺の中のあさひ像を土俵にした一人相撲だよな……」

P「あさひのこと、もっと知りたいと思ってる。ただ、どうすれば知ることができるのか、それがまだわかっていないんだ」

P「本人を前にこんなこと言うの、自分でもおかしいってわかってるんだ。それでも……」

P「……っ」

あさひ「今日……ここに来るの、すっごく楽しみだったっす」

あさひ「こういう所は、初めてで」

あさひ「でも、そうっすね……わかったんすよ」

あさひ「わたし、図書館に行きたかったわけじゃないんだって」

P「え……?」

あさひ「本屋だって、だぶんそうっす。まだ行ってないっすけど」

あさひ「花火も、天体観測も、全部……」

P「そ、そんな……」

あさひ「あ、別に嫌だったとか、意味ないとか、そういうつもりで言ってるんじゃないっす!」

あさひ「そうじゃ……なくて」

P「?」

あさひ「わたしは……」

あさひ「……」

あさひ「ただ、プロデューサーさんと……」

P(袖を掴んでいただけのあさひが、顔を上げて俺を見た)


あさひ「プロデューサーさんと、一緒にいたいだけっす!」


あさひ「本当に、それだけだったんすよ」

あさひ「だから、場所とか、そういうのは関係なくて」

あさひ「面白いことを探したいからプロデューサーさんと一緒にいるんじゃなくて――」

あさひ「――プロデューサーさんと一緒にいたいから面白いことを探し続けてるんだって」

あさひ「いつの間にか、そうなってたっす」

P「あさひ……」

あさひ「わたしは、プロデューサーさんを……」

あさひ「……っ! ああ、そういうことだったんすね。あの時の声は」ボソッ

P「えっと、何の話なんだ? それは」

あさひ「……あははっ、なんでもないっす!」


576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/12(水) 00:20:41.88 ID:JPslrwTn0

あさひ「プロデューサーさんの話は面白かったっす。でも、図書館はもういいっす」

あさひ「場所は関係ないってこと、わかったっすよ」

あさひ「……」

あさひ「ただ一緒にいたいだけ……って、こういうことっすかね?」ダキッ

P「ちょっ、あさひ?! いきなり何して……」

P(いや、目の前のことだ。あさひが何をしているのかはわかっている)

P(それでも、いきなり腕に手を回されたら……)

P「……一緒にいたいって、まさか、そういうことなのか?」

あさひ「? そういうこと、って何すか?」

P(恋人とか……と、言おうとしてやめた)

P(あさひにとって恋人とは何か? それはあさひしか知らない。俺が説明したって、それは俺にとっての概念でしかないんだ)

P(きっと、あさひにとっては、どんなものも自分で発見することに意味があるんじゃないかって思えたから)

P(それに、今は明確な答えが一つある)

P(俺は、ただ一緒にいればいい)

P「いや、なんでもないよ」

あさひ「こうすれば何かわかるって思ったんすけどねー……」パッ

あさひ「ただ動きにくいだけだったっす!」

P「ははっ、そうか」

P(なんだかあさひらしいな――とは思っても言うまい)

P(ただ、思うのは自由という話であれば――)

P(――あさひはやっぱりあさひだ、ということだろうか)

P(傲慢にも、そう思う)

あさひ「んーっ」ノビー

あさひ「ふぅ……」

あさひ「……でも」

あさひ「なんか、ずっとわからなかったことがわかって、すっきりしたっす」

あさひ「あははっ、自分でも不思議なくらい、いまは気持ちがいいっすよ!」

P「……!」

P(うまく言い表せないが……)

P(……それは、“久々に見た笑顔”だった)

あさひ「うーん、図書館にずっといると息苦しい感じがするっす~」

P「ははっ、俺もそろそろ外の空気が吸いたいかな」

P「出ようか」

あさひ「はいっす!」


P「……まあ、出てきたからって何をすると決まっていたわけじゃないんだけどな」

あさひ「この辺って来たことないっす。何か面白いものないっすかね~」

P「そうだなぁ」

あさひ キョロキョロ

あさひ「……何にもないとこっすね、ここ」

P「何にもないは言いすぎだと思うけどな……」

P(あさひにとって意味のあるものは最早何もないってことなのかもしれない)

P「あ、そうだ。近くに公園があるんだ。この辺のことを知らないなら、次はそこに行ってみよう」


577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/12(水) 00:39:50.27 ID:JPslrwTn0

~隣接する公園~

あさひ「あっ、水の中に何かいる!」

P(あさひは、池のような川のような、そんなところではしゃいでいる)

P(“いつものあさひ”だ)

P「落ちないように気をつけてなー」

あさひ「魚……取れるかも……!」

あさひ「んーっ、んんー」

あさひ「ちょっと遠い……プロデューサーさん、網とか持ってないっすか?」

P「え?! いや、いきなりそんなこと言われても……っていうか、取っちゃ駄目だぞ、たぶん」

あさひ「えー、つまんないっすー」

P「公園のものなんだ。だから、取ったら怒られるぞ」

あさひ「公園は生きてないっすよ?」

あさひ「なのに、公園が自分のものだーって言うんすか?」

P「そうじゃなくてだな……ははっ」

あさひ「?」

P「いや、すまんすまん。なんだか懐かしくてな」

あさひ「よくわかんないっすけど……」

P「取っても返せば良いのか……? でも、捕まえたらダメージがあるだろうしなぁ」

あさひ「プロデューサーさん、早くするっす! いなくなっちゃうっすよ!」

あさひ「網がないなら釣竿でも良いっす!」

P「もっとあり得ないぞそれは……」

あさひ「あっ! 行っちゃった……」

あさひ「む~~! プロデューサーさん……!」

P「おっと、そんな顔したって駄目だからな」

P「というかな……やっぱり、捕まえちゃいけないよ」

あさひ「公園だからって言うのは聞かないっすよ?」ムスッ

P「そうじゃないんだ」

P「あの魚さ、俺の前世なんだ」

P(何言ってるんだろうな、俺)

あさひ「……その嘘、つまんないっす」ムーッ

P「嘘だってどうしてわかるんだ? 確かめたこと、あるのか?」

あさひ「それは……ないっすけど」

P「たまたま覚えてるってことだってあるかもしれないじゃないか」

P(なんか、言い出したことに対して後に引けなくなって次から次へと言葉が出てくるな……)

P「ああ、思い出したぞ……魚として公園に住んでたころ、一人の女の子に捕まえられそうになったっけ……」

あさひ「……」

P「でも、そうそう、さっき見たとおりで、何とか逃げられたんだ」

P「逃げたから、女の子に捕まっちゃうよりも長く生きて徳を積んで……人間に生まれ変われた」

P「それが俺なんだよ」

P「あさひに捕まえられてたら、たぶん、俺はあさひと一緒にはいられなかったぞ?」

あさひ「そんなこと……」

あさひ「……」

あさひ「……しょうがないっす。魚を捕まえるのはやめるっすよ」


579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/12(水) 01:07:34.41 ID:JPslrwTn0

P(それから、しばらく公園の中を動き回った)

P(まあ、俺はあさひについて行っただけだが)

P(しかし、あさひと俺では体力が違いすぎた)

P「あ、あさひ……! 待ってくれ……!」ゼェゼェ

あさひ「鳴き声的にはあっちの方にセミがいるはずなんすよ! 早く行かないと飛んで行っちゃうっす!」

P「俺のことは……はぁっ、いいから……」

P「捕まえないって約束できるなら、一人で行ってきてもいいぞ……」

あさひ「それは嫌っす!」

P(即答だ……)

P(いや、あさひは――)

あさひ『面白いことを探したいからプロデューサーさんと一緒にいるんじゃなくて――』

あさひ『――プロデューサーさんと一緒にいたいから面白いことを探し続けてるんだって』

あさひ『いつの間にか、そうなってたっす』

P(――って、言ってたな)

P(それなのに「一人で行ってきてもいい」っていうのは違うな)

P「すまん、忘れてくれ。ちゃんと、俺も一緒に行くよ」

P「ただ、あさひの体力がすごすぎて、俺ではついて行けない時があるんだ」

P「一緒にいるためには、少しでいいから合わせてくれると助かる」

あさひ「うー……でも、そうしてる間にどっか行っちゃうっすよー」

P「その気持ちはわかるんだ」

あさひ「だったら……」

P「あさひはさ、一人じゃないだろ?」

あさひ「!」

P「俺と一緒にいたいって言ってくれたじゃないか」

P「それ以外にもさ、ストレイライトだってそうだと思うよ」

P「一人じゃないっていうのは、自分のじゃないスタイルにも合わせるってことなんだ」

P「もちろん、いつもそうじゃなきゃいけない……ってわけでもない」

P「だけど、いつも自分の思うままに動いてたら、うまくいかないことだってあるんじゃないか?」

あさひ「……」

P「俺だって、ただ合わせてくれっていうつもりはないんだぞ?」

P「ほら、あそこを見てみてくれ」

あさひ「どこっすか?」

P「あの木の……幹が分かれているうちの真ん中のやつ」

P「分かれ目から少し進んだところに……うん、いるな」

あさひ「?」

P「よし、肩車だ!」

P「ほら、早く! 乗った乗った」ズイッ

あさひ「はいっす……?」

P「静かにな……。ほら……」

あさひ「……あっ」

あさひ「セミがいるっす」

P「メスは鳴かないって話を聞いたことがあってさ。鳴き声が聞こえるならオスじゃないセミだっていると思ったんだ」

P「一緒だと、こういう発見もできるんだぞ?」


581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/12(水) 02:24:04.73 ID:JPslrwTn0

数時間後。

P「っと、やばいな。いつのまにか暗くなってるぞ」

P(時間を忘れて公園で遊ぶなんて……何年、いや、十何年ぶりだろう)

P(でも、今でも覚えているのは――)

P(――こういうふうに感じるのは、本当に楽しかったから、ということだ)

あさひ「暗いとさすがに見つけづらいっすね」

P「ああ。公園での探索は終わりにしたほうが良いな」

P「また明日、どっかに行こう」

P「ちゃんと考えておいてくれよ? あさひの修行なんだからさ」

あさひ「そうっすねー……」

あさひ「プロデューサーさんと一緒だから……」

P(次は本格的に山の中とか言い出すんだろうか)

P(装備……買わないとないかもな)

P(海とかなら、まだ必要なものも少なくて済みそうだが……いや、しかし、どうだろうな)

P(ちゃんと調べたほうが良さそうだ)

あさひ「……決めたっす!」

P「お、どうするんだ?」

あさひ「海外に行くっすよ!」

P「そっか、海外か……」

P「……」

あさひ ニコニコ

P「……え」

あさひ「海外っす!」

P「ええっ?!」

あさひ「っ……だめ、っすか?」

P「……」

P(一緒にいたいって言った後でその顔は卑怯だぞ……)

P「親御さんの許可が取れるなら、行けるかもな」

P(流石に許可が下りないだろ……これは)

あさひ「わかったっす。聞いてみるっす」

P「そ、そうか……。よろしくな」

あさひ「はいっす!」

あさひ「プロデューサーさん、明日はお休みにするっすよ」

P「あ、そうなのか」

あさひ「準備が必要じゃないっすか。荷物とか、……切符とか!」

P「こらこら……親御さんが良いって言ってないのに準備なんてできないぞ?」

あさひ「うーん、でも……」

あさひ「外国に行く準備をすれば、だめだったとしても日本国内ならどこでも行けるんじゃないっすかね?」

P「うっ、一理あるな」

P(いや、まあ、実際はそんな単純な話じゃないが)

P(特別にアクティビティをやろうとしない限りは……通る話だよなぁ)

P「と、とにかく! 家に帰ったらちゃんと相談してくれよ」

P「話がまとまったら連絡すること」


582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/12(水) 02:43:23.51 ID:JPslrwTn0

翌日。

~Pの自宅~

芹沢あさひ<おっけーって言われたっす!!!

P「なんでだよ!」

P(スマホのロック画面に浮かんだメッセージに全力でツッコんでしまった)

P「……はぁ」

P「マジか……」

ヴーッ

P「今度は何だ……?」

芹沢あさひ<あ、おはよっす。プロデューサーさん。

P「……ははっ」

P(挨拶を忘れるくらい嬉しかったんだろうな)

P(たぶんこのテンポだと、昨日の夜には親御さんからの承諾を得られたんだろうな)

P(ちゃんと朝になってから連絡してきた、か……)

P「……」

ヴーッ

芹沢あさひ<いま準備してるところっす! プロデューサーさんも、ちゃんと準備するっすよ。

P「……」

P スタスタ

P ガサゴソ

P「……パスポート、久々に見たな」

P パラ・・・

P「……」

パラッ

P「ははっ、なんて顔してんだ、俺」

P(あさひに見せたら、どんなリアクションをとるんだろう)

P(今よりも若い俺……あさひには不思議扱いされちまうかもな)

P「なあ、想像できるか?」

P「アイドルのプロデューサーになって、ユニットの一人の修行とやらに付き合うようになって……」

P「……とうとう海外だぞ? こんなところでパスポートの出番というわけだ」

P「……」

P(これを撮った時の俺だったら、海外で旅をすることになったら、どうしただろうな)

P(わかりやすくはしゃぐのは恥ずかしいと思っても、内心ワクワクが止まらなくなっているかも)

P(行った先には何があるだろう、何ができるだろう、って)

P「……」

P(そういえば、今更だが――)

P「――そうだよな……あさひと海外を旅するんだよな」

P「……」

P「………………」ドキドキ

P「ははっ、撮ってからだいぶ経つけど、変わっちゃいないんだろうな」

P「なんだよ、めちゃくちゃ楽しみにしてるじゃないか」

ヴーッ

芹沢あさひ<ちゃんと準備してるっすか? 海外、楽しみっす!


585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 01:35:58.49 ID:hsaiMq9Q0

P(それから、あさひと俺は日本を発った)

P(海外とは言っても、中学生でもありアイドルでもあるあさひに、無茶をさせるわけにはいかない)

P(結果、社長とあさひのご両親の両方の許可が下りた地域から行き先を選んで旅をすることになった)

P(1ヶ月あるあさひの“修行期間”を使った海外旅行――いや、正確には、旅と旅行は違うのかもしれないが)

P(あさひが飽きるか、あるいは“修行期間”が終わるか、そのどちらかで帰国する判断を下す……そういうことになっている)


あさひ「プロデューサーさん! 細い電車が走ってるっす!」

P「路面電車な。確かに、日本で見かけるものよりも細身だ」

P「市内だと交通費も安上がりだし、乗っていくか?」

あさひ「うーん……」

あさひ「あ! あっちに……」タタタッ

P「お、おい! ちょっと待ってくれ……」ダッ


あさひ「丸い屋根の建物があるっす!」

P「そうだなぁ。日本じゃ、なかなか見られないよな」

P「ははっ、あさひの修行についてくるつもりが、俺はただ観光しているだけ……だな」

あさひ「プロデューサーさんは、ここに来たことないんすか?」

P「ああ。初めて来たよ」

P「あさひは?」

あさひ「わたしも初めてっす」

P「そうか」

P「これまでにさ、俺があさひに何かを教えたり伝えたりってことはあったけど、それは、俺があさひよりも知っていることが多かったから」

P「でも、今はそうじゃない」

P「俺も、あさひと同じスタートラインからで……」

P「だからさ、本当に、一緒なんだ」

P「見るものも、感じるものも」

P「なんだろうな……ははっ、本当の意味で2人の思い出なのかもな、こういうのって」

あさひ「プロデューサーさん……」

あさひ「それなら、プロデューサーさんには――」

あさひ「――忘れられない思い出、になるっすかね?」

P「……ああ。もちろん」

P「忘れられないさ。忘れないに決まってる」

P「何よりも……忘れたくない」

あさひ「……!」


あさひ「気球がいっぱい飛んでる……!」

P「地形――っていうのが正しいのかわからないけど、そういうのも相俟って壮観だな」

あさひ「プロデューサーさん、プロデューサーさん! どこまで飛んでいくんすかね?!」

P「どこまでなんだろうなぁ……」

あさひ「! もしかして、地の果て、っすか……?」

P「さあ……わからないよ」

あさひ「えー……」

P「言っただろ? 俺だって知らない世界を一緒に見ているんだ」

P「だからさ、一緒に確かめてみないか? どこまで飛んでいくのか。早起きすれば、乗せてもらえるらしいぞ?」

P(次の日には、あさひと一緒に気球に乗った)


586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 02:18:30.37 ID:hsaiMq9Q0

数日後。

P(そして、北西に進んだ)

P(道中、滞在すれば例によってあさひに振り回されたわけだが……)

P(俺としても、あさひに言ったように初めて体験することばかりだったから、むしろ、あさひは、ついて行くだけでいろんな場所に導いてくれる存在のようにすら感じられた)

P(最早“修行”とは何か、という話だが、その答えはあさひにしかわからない)

P(もしかしたら、あさひ自身もわかっていないのかもしれない)

P(それでも良かった。あさひと過ごす時間は、俺にとっても充実したものとなっていたから)


あさひ「めちゃくちゃ広いっす!!」

P「ははっ、最初の感想がそれか。まあ、確かになぁ……」

P「世界遺産なんだぞ? 庭園も、宮殿も」

あさひ「宮殿って、あそこに建ってるのがそうっすか?」

P「ああ……そのはずだ」

あさひ「宮殿…………あ、焼肉のタレ作ってるところっすかね」

P「違うぞ。いや、違わない例もあるが、ここはそうじゃない」

あさひ「あ、そうなんすね。……もっと近くで見てみたいっす! 行くっすよ、プロデューサーさん!」タタタッ


あさひ「……プロデューサーさん」

P「どうした?」

あさひ「わたしたち、いま、絵本の中にいるんすかね?」

P「はは……確かに、そう思っても不思議じゃないよな」

P「湖畔に可愛らしい建物があって……その後ろには山々が連なる……だもんなぁ」

あさひ「……」スンッ

P(風景に集中しているな……時々歩き回りながらではあるが)

P(しかし、こうして見ると、日本人離れしたあさひのビジュアルはこの景色でよく映える……)

P「あさひ」

あさひ「わっ! あ、プロデューサーさん」

P「すまん、集中しているところを邪魔しちまったかな」

あさひ「別に大丈夫っす。景色見てただけっすよ」

P「そうか? いや、なんだかあさひは映えるなぁと思ってさ。良い写真になりそうなんだが……一枚どうだ?」

P(なんなら、事務所で使える1枚にすらなりそうだ)

あさひ「いいっすけど……」

P カシャカシャ

あさひ「……」

P「背景はもちろん、なんと言ってもモデルが良いからな」カシャ

あさひ「……」

P「……す、すまん。なんだかこっちの都合で撮らせてもらって……退屈だった、よな」

あさひ「まあ、そうっすね」

P「すまない……」

あさひ「だから、こうするっす!」ダダダッ

P「ちょっ……?! いきなりこっちに走ってきたら危な――」

P(――あさひは俺の目の前まで来て、俺の腕を使ってカメラを自分たちの方に向くようにしながら、その手でシャッターを切った)

カシャ

あさひ「一緒に写れば、退屈にならないっす!」


587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 03:07:21.86 ID:hsaiMq9Q0

一週間後。

P(時々、あさひが留まりたいと言った場所で滞在しながら、さらに北上していった)

P(プロデューサーとしてあさひと接してきてよくわかっているつもりではあったが、やはり、あさひの探究心と集中力には感心する)

P(その「感心」の根元にある、もっとも単純な気持ちは……憧れなのかもしれなかった)

P(間違いない事実として、あさひは俺にないものをたくさん持っている)

P(俺には見つけられないものを見つけてくるし、俺にはたどり着けない場所に到達する)

P(そんなあさひがまぶしくて、もっと、知りたくて……)

P(もしかしたら、俺はあさひを追いかけているのかもしれない)

P(それも、ずっとずっと前から)


あさひ「プロデューサーさん、まだ見ちゃだめなんすか?」

P「ああ、もう少しだからな」

あさひ「真っ暗でつまんないっすー」

P「まあまあ、いいから、ちょっとだけ我慢してくれ」

P「……よし、この辺で良いだろう」

P「っ! すごいなぁ……!」

あさひ「えーっ、何があるんすか?! 早く見たいっす~」

P「そうだな。もう見ていいぞ」

パッ

あさひ「わっ……と」

あさひ ゴシゴシ

あさひ「……っ!!!!!」

あさひ「プロデューサーさん、これって……!」

P「ああ、オーロラだ」

P(時期もそうだが、運の影響もあるな……あさひにこれを見せることができて良かった)

あさひ「カーテンみたいっすね!」

P「ははっ、そうかもな」

あさひ ピョンピョン

あさひ「うーん、なんか、掴めそうな気もするんすよねー」

P「そうなのか? たぶん、手の届かないくらい、すごく高い所にあるぞ」

あさひ「前に乗った気球があればいけたかも……」

P「いつか挑戦できるといいよな」

あさひ「……」

あさひ「星もすごいっす。いままでにプロデューサーさんと見てきた空のどれよりも」

P「せっかくだし、寝転がってみるか。ゆっくり見ていこう」


P「ありがとうな、あさひ」

あさひ「? なんでプロデューサーさんがお礼を言うんすか?」

P「なんでって、まあ……なんでだろうな。ははっ……」

P「……あさひには、たくさんのことを教わっている。この旅で、そのことを実感できた気がするんだ」

あさひ「わたしが、っすか? プロデューサーさんに?」

P「ああ。……俺はさ、知りたかったんだよ。あさひのことを」

P「あさひという1人の女の子のことを。あさひが見る世界のことを」

P「今でも、ちゃんとわかってるかどうかはわからないけど……それでも、今はあさひが直接教えてくれているって、そう思うんだ」


588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 03:26:21.91 ID:hsaiMq9Q0

あさひ「あははっ、変なプロデューサーさんっす」

あさひ「わたし、プロデューサーさんからはたくさんのことを教わってると思ってるっすよ?」

あさひ「教えてるのは、プロデューサーさんの方だと思うっす」

P「……ははっ、お互い自覚なしってところか」

P「じゃあ、どっちも教えてるし教わってるってことで」

あさひ「はいっす!」

あさひ「プロデューサーさんの見方だって、わたしにはないものばかりっすよ」

あさひ「だから、どっちがすごいとか、そういうのはないっす」

あさひ「……」

あさひ「……修行、いつか終わっちゃうんすよね」

P「……ああ、そうだな」

P(そう。これは終わらない旅じゃない)

P(ただ、すくなくとも俺は、そのことについて無意識下で考えまいとしていた)

P(そして、それはあさひもそうだったんだろう。でも、忘れてはいけないことだ)

あさひ「終わったら、また、わたしはアイドルで、プロデューサーさんは……まあ、プロデューサーさんで――」

あさひ「――って、なるんすよね?」

P「ああ、そうじゃないか?」

あさひ「そうっすよね」

あさひ「……」

P「……」

P(何を話せば良いのかわからない、という空気が流れ始めている)

P(お互いに目を逸らしてきたことだからこそ、紡いでいく言葉が見つからない)

あさひ「元通りなら、それはそれで……」

あさひ「……っ」

P「あさひ?」

あさひ「手、繋ぎたいっす」

あさひ「プロデューサーさんと……手を」

P「……ほら」

あさひ「はいっす」

ギュ

あさひ「プロデューサーさんの手、大きいっす」

P「あさひの手は、思ったより小さいな」

あさひ「手……繋いでるだけ、っすけど……あったかい感じがするっす」

あさひ「もう少し、こうしてても……」

P「……あさひが飽きるまで、繋いでいようか」

あさひ「!」

P「……」

あさひ『でも、ひとりぼっちで』

P(いつだったか、あさひから聞いたことを思い出す)

P「これなら、ちゃんと一緒だってわかるよ。どこにも離れて行かないし、独りになんてならない」

P「飽きない限りはずっと」

あさひ「……っ、あはは」ポロ・・・

あさひ「それじゃ、ずっと繋ぎっぱなしになるっすね」ニコッ


589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 03:52:31.14 ID:hsaiMq9Q0

数日後。

P(帰国の日がやってきた)

P(こんな日が来なければ、きっとあさひは面白いことを探し続けて、俺はその後を追っていったんだろう)

P(しかし、そうはならないのが現実だ)

P(あれから、南西へと移動し続けてたどり着く大都市に滞在し、帰国の準備をしながら、引き続きあさひによる不思議探し――修行の一環?――が行われていた)

P(何事もなく帰れるかについては、問題というほどのことかはわからないが、一つままならないことがあった)

P(帰りの飛行機のチケットを買おうとしたら、1人分の直行便しか手に入らなかったのだ)

P(つまり、どちらかは経由便で帰らなければならない)

P(無論、仕事のスケジュール上、先に到着する直行便のチケットをあさひが使うことになった)

P(アイドルであるあさひに替えはきかないから)

P(別々に帰ることになった旨を伝えると、どこか寂しそうな表情で――)

あさひ「……はいっす」

P(――と言うのだった)


~某ハブ空港~

P「ええと……じゃあ、あさひの乗る飛行機はここを真っ直ぐ進んだところにあるからな」

P「俺とは方向が違うから、ここで一旦のお別れだ」

あさひ「……す」

P「?」

あさひ「……お別れって言い方、嫌っす」

P「あさひ……」

P「そうだな。すまん」

P「俺はちょっと寄り道して帰るだけだ。だから、すぐにまた会える」

あさひ「寄り道……えへへ、そうっすね」

あさひ「寄り道なら、わたしが行きたいくらいっす」

P「まあ、仕事もあるから、それは、な」

P「土産話ならいくらでもしてやるから、ちゃんと先に行って待っててくれ」

あさひ「わかったっす。楽しみにしてるっす!」

P「……あ。あさひの乗る便の搭乗ゲートがそろそろ開くみたいだな」

あさひ「……みたいっすね」

あさひ「じゃあ、行ってくるっす」

P「ああ。行ってらっしゃい。気をつけてな」

あさひ タタタッ

あさひ クルッ

あさひ「ちゃんと迎えに来るんすよー!」ブンブン

P「おう! 待っていてくれ」

あさひ ニコッ

P(それから、あさひの方からこちらが見えなくなるであろう時までは、その場に留まって見守っていた)


590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 04:11:50.54 ID:hsaiMq9Q0

3日後。

~事務所~

P(ここも久しぶりだな……)ガチャ

P「お疲れ様です……って、誰かいるな」

P(靴がある。それも、2人分……。まあ、上がれば誰がいるかわかるだろう)スタスタ

P「お疲れ様です」

愛依「おっつかれ~!」

愛依「プロデューサー、めっちゃ久しぶりじゃん?」

冬優子「ほんと、仕事してるふゆたちをほっぽって1ヶ月の休暇とは、良い身分ね」

愛依「まぁまぁ、プロデューサーのおかげでアイドルやれてるわけだし、これくらいはいっしょ」

P「はは……まあ、今日からまたよろしく頼むよ」

P(休暇……か。あれはただの休暇なんかじゃなかった――俺にとっては、あさひと一緒の、忘れられない旅なのだから)

P「今日は仕事終わりだよな。後ではづきさんから様子を聞くけど、特に問題はなかったか?」

愛依「問題~? 無いよね、冬優子ちゃん」

冬優子「あるわけないじゃない。今日も今日とて、完璧に仕事をこなしたわよ」

P「ははっ、さすがだな」

冬優子「はぁ? そんくらい、ふゆにとっては当たり前のことよ」

愛依「わぉ、冬優子ちゃんカッコいい~」

P(この仕事があったから、あさひには直行便のチケットを使ってもらったんだ。そして、俺が間に合わない分の仕事は、はづきさんが代わってくれる手はずになっていた)

P(今日からまた仕事だ。気を引き締めないとな)

冬優子「……そうだ。愛依、明日のレッスンにはふゆも参加することになったから」

愛依「あ、そうなん?」

冬優子「次のユニットでのステージまで、時間がないからね」

愛依「確かに……なかなか都合つかなかったっつーか」

冬優子「ま、ふゆたち2人だけなんだから、いまからでもベストは尽くせるはずよ」

P「……ん? おいおい、ユニット全体での練習をするなら、さすがに2人だけだとまずくないか?」

冬優子「え……そう?」

P「いや、そうだろ」

P(冬優子らしくないな。あさひの重要性を誰よりもわかっているはずなのに)

P(まるで、あさひがいなくても良いみたいな……)

P「ストレイライトの3人全員でやらないと、意味がないと思うんだ」

冬優子「……」

愛依「……?」

P「……え、だ、だからな?」

冬優子「あんた、さっきから何言ってるのかよくわからないんだけど」

冬優子「“ストレイライトは2人組”よ?」

P「……は?」

愛依「3人目って……プロデューサー、やっぱまだ疲れてるんじゃん?」

P「何言ってるんだ……! あさひ、だよ。芹沢あさひ……!」

冬優子「……?」

愛依「あー……」


「「芹沢あさひって、誰?」」


594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 15:20:05.98 ID:e31061EHO

P(何が起きているのかわからなかった)

P(皆、口を揃えて「芹沢あさひなんて子は知らない」と言う)


P「誰……って、じょ、冗談だろ?」

P「ストレイライトは、冬優子と、愛依と、それからあさひの3人で構成されたユニットじゃないか……!」

冬優子「お、落ち着きなさいよ。あんた、わけわかんないこと言ってるわよ」

P「なんで……」

愛依「プロデューサー……無理しなくていいからね?」

P「そ、そういうことじゃないんだ! お前ら、本気で言ってるのか……?!」

P(知らない、だなんて、そんな……)

冬優子「本気も何も、事実を言ってるだけじゃない」

冬優子「最初からふゆと愛依の2人だったでしょ。プロデュースしてるあんたが忘れてどうすんの」

P「俺が……」

愛依「もっと休んだほうがイイ系っしょ~。それか、休んでる間になんかあった……とか?」

P(そりゃあ、もちろん色んなことはあったけど……)

P(……それらはすべて、あさひと共に過ごした思い出だ)

P「……っ」ガクッ

冬優子「……ちょっと、本当にどうしたっていうのよ」

愛依「だ、大丈夫~……?」

P(冬優子と愛依が何か言ってきている。でも、何も入ってこなかった)


はづき「芹沢……あさひさん、ですか?」

P「はい……」

はづき「……。ごめんなさい、わからないですね~……」

P「……っ」

P(そんな予感はしていた)

P(インターネットでも調べつくしたし、事務所にある資料も全部漁った)

P「……」

P(それでも、聞かずにいられなかった)

P「そう、ですか……」

はづき「プロデューサーさん、大丈夫ですか?」

P「はは……どうですかね」

P(大丈夫なわけ、ないだろ……)


P(誰も、あさひを知らない)

P(ただ1人、俺を除いては)

P(本当に、何が起こっているんだ……?)

P(あさひが何をしたっていうんだ)

あさひ『プロデューサーさんっ!』

P「……」

あさひ『そうっすね。いまは、プロデューサーさんがいつも側にいるっす』

P「……っ!」

あさひ『プロデューサーさんと、一緒にいたいだけっす!』

P「く……っ、あさひ……!」ポロポロ


595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 16:19:19.77 ID:e31061EHO

数日後。

~病院 精神科棟~

P(とうとう正気を疑われ、病院に行くよう言われてしまった)

P(素直に全部話せば、恐らく精神疾患であるという診断が確定するだろう)

P(そうすれば、仕事ができなくなってしまう)

P(あさひは、確かにいたんだ)

P(俺はおかしくない)

P(何とも無いと医者に思われるように、適当な返事をした)

P(これで、疲れているだけだと思われるだろう)

P「……」

P(診察が終わって、経過観察を言い渡されて、今日はオフだから暇になってしまった)

P(特に行く当てもなく、彷徨っている)


~病院 廊下~

P(広いなぁ、この病院)

P(迷ってしまいそうだ……いや、もう迷っているのかもしれない)

P(ここは、どこなんだろう。とりあえず、静かだ)

P「……?」

P(通り過ぎようとした個室の扉が、なぜか気になった)

P(正確には、扉の横――うっすらと、文字列のようなものが見えた気がした)

P「落書き……なのか? でも、読めないな……外国語だろうけど、なんだろうな」

P(よくわからない。とりあえず、思いつく発音で呼んでみた)

P「アイ……ド……?」

P(そんなふうに俺が落書きを凝視していると――)

カララ・・・

P(――老人を乗せた車椅子がやってきた。看護師に押されながら)

P「アイドル……かな」

「……アイ、ドル」

「え? どうかなさいましたか?」

P「?」

P(老人は、静かに、俺の方を指差した)

P(よく見ると、正確には、俺ではなく、俺が見ていた落書きを指していたようだった)

「あー、それ……お掃除もかねて、そろそろ消さないとなーって思ってたんですよ」

「……」

P「アイドル、お好きなんですかね」

「いえ……そんなお話は聞いたことがありませんでしたけど」

P「実は、仕事でアイドルのプロデュースをしているんです。ストレイライトっていうユニットで……」

「あー、この前テレビで見たかも! ねえ、アイドルのプロデューサーさんなんですって」

P「メンバーは……黛冬優子、和泉愛依、……」

P「……っ、芹沢――あさひ」ボソッ

「……あさひ」

「?」

「そうか……」


596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 17:03:22.69 ID:e31061EHO

P「っ?! せ、芹沢あさひを……あさひを知っているんですか?!」

「すみません、大きな声を出すのは……」

P「あ……す、すみません……」

「あの子を……そうか」

「その、あさひ、って……アイドルの子なんですか?」

P「それは……」

P「……っ、はい」

「そうなんですね。人気なアイドルになれると……良いですね」

P「本当に才能のある子なんです……! きっと、惹かれますよ」

「まあ、……すごい子なんですって。気になりますね」

「……」

「あはは……」

P「……」

「さっきみたいにお声を聞けるのも珍しいことなので……ごめんなさいね」

P「いえ、そんな……」

「……」

「そろそろ行かないといけないので、では……」

「ほら、行きますからね」カララ・・・

「……」

P(この老人は、あさひのことを知っているのだろうか)

P(どうして、あさひの名前に反応したんだろう)

P(それに、なんだか、他人のような気がしなかった)

「最後まで……一緒に……」ボソボソ

P「?」

「……私には、とうとう……」ボソボソ

P「……」

カララ・・・

P(しばらく、その場を離れる気にはなれなかった)


~いつもの河川敷~

P トボトボ

P(例によって行く当てもなく、それでも病院を後にしてしまったので、自分の知っているところを適当に歩くことにした)

P(どうして、こういう時に限って、思い出が詰まったところを通ってしまうんだろう)


あさひ『プロデューサーさん、早くやるっすよ~!』


P『花火、好きなのか?』

あさひ『どうなんすかね。それはよくわかんないっす』

あさひ『花火が好きかはわかんないっすけど……』

あさひ『プロデューサーさんと見る花火は、楽しくて、もっとやりたいんすよ』


P(これまでのことを思い出さずには、いられなくて……)

P「うっ、く……!」ポロポロ

P(あさひの笑顔を思い出すと、たまらなかった)

P(一体、どうすればいいんだ……)


597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 18:17:53.82 ID:e31061EHO

翌日。

~事務所~

P(一応病み上がりということにはなるが、いつも通り、事務所に顔を出した)

P(今日は午後からの出勤で良いとの通達があったので、少し遅れての出社だ)

P(社長はテレビ関係のお偉いさんとの話し合いでいないらしく、ストレイライトはラジオの収録で今のところは不在)

P(事務所にいるのははづきさんだけだった)

P「スケジュール表は……、と。あった」

P「2人はもう帰ってくる頃か」

P「待ってみようかな」


P(しばらくして、はづきさんも席を外すとのことで、事務所には俺だけになった)

P(それからすぐに、誰かが帰ってくる音が聞こえた)

冬優子「お疲れ様でーすっ」

P「おっ、冬優子じゃないか」

冬優子「……って、あんた、来てたのね」

P「まあな。いつまでも病人扱いされているわけにはいかないからさ」

P「愛依とあさh……、っ、愛依は一緒じゃないのか?」

冬優子「愛依なら夕飯の当番とかで急いで帰ったわよ」

P「そうか」

冬優子「……悪かったわね」

P「なにが?」

冬優子「愛依でもあさひでもなくて、ここに来たのがふゆで」

冬優子「別にあんたがいるかもと思って会いに来たわけじゃ……ない……んだから」ボソッ

P「ははっ、そんなことないぞ。会えて嬉しいよ」

冬優子「なっ、何言ってんのよ!」

P「あと、ありがとうな。気にかけてくれて」

P「改めてお礼を言いたくなってさ」

冬優子「お礼なんていいわよ……。これからも、ちゃんと気を抜かずにふゆたちをプロデュースしなさいよね」

P「……ああ、そうする」

冬優子「……」

P「……」

冬優子「……外、もう、暗いわね」

P「そうだな……」

P「よし、送っていくよ――って、あ……」

P「ちょっと待ってくれ」

P ポチポチ

P「……」

ヴーッ

P「……ああ、やっぱりか」

P「車、社長が今使っているみたいだ。今日は俺が使わないと思ったんだろうな」

冬優子「ま、そういう日もあるでしょ」

冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」

P「わ、わかった」


598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 18:35:35.09 ID:e31061EHO

数分後。

~外~

冬優子「……あんた、さ」

P「?」

冬優子「この前言ってたあの話、まだ信じてるの?」

P「……3人目のこと、か?」

冬優子 コクリ

P「……ああ、信じてる」

P「いや、信じるも何も、疑いようのない事実なんだ」

P「俺がそうじゃないと、あいつに申し訳ない……」

P「誰にも覚えられていないだなんて、そんなのあんまりじゃないか……!」

P(もしかしたら、あの老人が何か知っているのかもしれない……)

P(でも、恐らく入院中の病人だろうし、そもそも赤の他人である俺が相手にしてもらえるとは思えない)

冬優子「ふーん……」

P「正気を疑う……よな。こんなの」

P「俺だけが知ってるって言っていて、俺以外が知らないと言う」

P「ただの妄想だと思われても仕方がない、よな」

冬優子「別に、ふゆにとっては、ちゃんと仕事してもらえるなら、それでいいけどね」

冬優子「確かに、ふゆはその子のことを知らないけど」

冬優子「あんたがその子のことを考えていて何か迷惑を被ってるわけじゃないし」

冬優子「だから、別にいいわよ」

冬優子「あんたの気の持ちようなんだから」

P「はは……すまない」

P「……冬優子は優しいな」

冬優子「はあ? そんなんじゃないっての」

冬優子「でも……うん。ふゆの知ってるあんたは、もっと強かった」

冬優子「そんな気はするかもね」

冬優子「いまのあんたからは、大切な何かを失っちゃったって感じがするし」

冬優子「気がかりにもなるわよ、そりゃ」

P「……そうか」

P「頼もしいと思ってもらえるよう、頑張るよ」

冬優子「頑張れなんて言ってない」

P「?」

冬優子「いまやれることをやってくれたらいい」

冬優子「だって、それ以外できないでしょ?」

冬優子「無理しろって言ってるわけじゃないのよ」

P「……」

冬優子「あー、もう……。なんでふゆがあんたの相談相手なんかやってるのかしらね~」

冬優子「ねえ? プロデューサーさんっ?」

P「まいったな……ははっ」

P「でも、ありがとう」

P「一人でずっと思い悩むよりは、こうして冬優子と話しているほうがずっと良い」

P「そう思ったよ」


599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 18:45:40.57 ID:e31061EHO

数日後。

~事務所~

P「お疲れ様です……」ガチャ

P(今日は久々の営業だったけど……懇意にしてもらっているとはいえ苦手なんだよなぁあの人……)

P(とても疲れた……)

P(1ヶ月のツケと言っちゃいけないが、まだ仕事残ってるな……)

P(まあ、少し休んでからでもいい――よな?)

P「はづきさん――は、いない……か」キョロキョロ

P(そういえば今日ははづきさんのオフだったっけ)

シーン

P「あれ?」

シーン

P「他に誰も……いないのか?」

P(それなら、ソファーで横になるかな……)

P(少し、少しだけだから……)

P「あ」

P「これ……アイマスクか」

P(はづきさんが使ってたやつだよな)

P(うーん、勝手に使ったら怒られるかなぁ)

P「……」

P(まあ、バレなきゃいいか?)

P「っしょっと……」

P「おやすみなさい……」

P(アイマスクをつけてからソファーで横になり、しばしの間、仮眠をとることにした)


P「……ん」モゾッ

「あ、起きた系~?」

P「起きた起きた……って、今何時だ?!」

P「っ!? く、暗い! 目の前が真っ暗だ!!」

「ちょ、落ち着きなって」

P「だ、だって目が覚めたはずなのに何も見えないんだ!」

「アイマスクしてるからっしょ。ほれ――」パッ

P「――あ」

P「っ、まぶしい……」

「……もう」

愛依「プロデューサーって、案外、天然……ってヤツ?」

P「そ、そうなのかな……」

愛依「それか、やっぱし疲れてんじゃない? 無理しちゃダメだよ?」

P「まあ、確かに疲れたから仮眠を取ってたけど……うん」

P「無理はしてないよ。安心してくれ」

愛依「それならいいけど……」

P「愛依はどうして事務所に?」

愛依「今日のレッスン終わってから暇でさ。レッスンはうち1人だったし、友だちは都合悪いしで――なんとなくここ来てみたってカンジ」


600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 19:07:23.93 ID:e31061EHO

P「そうか」

P「……というか、なんか変じゃないか?」

愛依「変って、何が?」

P「俺は愛依がいないときからソファーで寝てたけど」

P「愛依はいまソファーにいるよな」

愛依「そだね」

P「俺がソファーを独占してる形だったのにそれはおかしくないか?」

愛依「だって、事務所来てからプロデューサーが起きるまで膝枕してあげてたかんね」

P「膝枕か……なるほど」

P「って、膝枕と言ったか!?」

愛依「言ったけど……」

P「ものすごいスキンシップをとってしまった……プロデューサーとアイドルなのに……」

愛依「まあ、他の人に見られてないし、大丈夫じゃん?」

愛依「プロデューサー、ソファーで寝苦しそうにしてたからさ」

愛依「うち、寝かしつけるのちょー得意だから」

愛依「他に誰もいなかったし、膝枕でもしてあげようかなーって」

愛依「もしかして……嫌――だった?」

P「あ、いや、そんなことはないぞ。ありがとう」

P(よく眠れた――と言って良いのだろうか)

P(夢を見たのかどうかもわからない)

P(寝ている間で記憶に残っているものはなかった)

愛依「プロデューサー?」

P「あ、ああ……」

P「愛依の膝のおかげで残りの仕事も頑張れそうだよ」

P「ありがとう」

愛依「ばっ!? ひ、膝のお陰とか、もー、なに言っちゃってんの」

愛依「……まあ、疲れが取れたならいっか!」

愛依「ほら、最近って、プロデューサーお疲れ気味だったっしょ?」

愛依「だから、元気になってくれたら嬉しいかなって思ったワケ」

P「はは……本当に、良いアイドルたちだよ。愛依も冬優子も」

P(もう1人いれば……とはここでは思っても言うまい)

愛依「まあ、さ……」

愛依「うちがいつもすっごく楽しいのは、プロデューサーのお陰で」

愛依「うちのアレなところ、プロデューサーはアイドルとしてのキャラってことで形にしてくれて」

愛依「ほんと、感謝してもしきれないんじゃねって……そう思って」

愛依「プロデューサーがうちにいろいろしてくれても、うちがプロデューサーにしてあげられてることなんて、あんまりないからさ」

P「そんなことはないよ。気づかないうちに俺の力になってくれているさ」

愛依「そ、そうかな……?」

P「ああ。だから気にしないでくれ」

P「……って、何か忘れてるような気がするな」

愛依「そういえばプロデューサー……ずっと寝てたけど、仕事は大丈夫なん?」

P「あ!! くっそ……タイマー設定しないで寝たからだ……! さっき、時間を確認し忘れていたんだ……い、今何時――ってもうこんな時間か!?」

P「……はぁ。とりあえず徹夜しないと駄目みたいだ」


601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/15(土) 19:23:01.62 ID:e31061EHO

愛依「そっか~~……じゃあ、うちも事務所泊まる!」

P「いやいや、そういうわけにはいかないだろう」

愛依「今日は大丈夫! うち以外は全員家いるから」

愛依「友だちの家泊まったことにしておくから、ね?」

愛依「夜食も作ってあげるし、うちでも手伝えることがあればお仕事も助けるし、疲れたらまた膝枕してあげるしさー」

愛依「ねね、悪くないっしょ? うちさ~、今日は帰ったってたぶん楽しくないし、明日1日オフなんだよね~」

P「はぁ……。駄目って行っても帰らないんだろうなぁ……」

愛依 ジーッ

P「……他の人には絶対に内緒だからな」

愛依「やったね。テンションあがる~」アハハ

愛依「そんじゃ、ま、頑張ってこ~」


翌日、午後。

P(結局、なんとか仕事は明け方までに終わらせることができ、俺は再び仮眠をとった)

P(仮眠から目が覚めると、愛依による書き置きを見つけた)

P(朝帰りとか思われない程度の時間に帰る、とのことだった)

P(とりあえず、俺が起きるよりも前に事務所を発っていたことは確かだった)

P(そういうわけで、今は事務所に1人でいる)

P「……」

P「やること、ないな……」

P(気合を入れすぎて、今日の分の仕事もほとんど片付いていた)

P「そもそも今日は事務仕事くらいだったし、本当、どうしよう……」

P(そうして、色々と考えて――)

P「……あ。そうだ」

P「あいつのこと、もうちょっとどうにかしないとな」

P(――忘れられてしまったアイドルについて、できることをやろうと思ったのだ)

P(住所は覚えている。他にも、関係のあった人たちを片っ端からあたれば……)

P(後は、この前の旅路の記録を漁れる限り漁って……)

P「とりあえず、飛行機のチケットの購入記録から見ていくか……人を相手にするとアポを取る必要も出てきそうだしな」

P カタカタ

P(メールの中のURLとかから飛べるかな)

P「……」

P「……うーん、メールが多すぎる」

P(スクロールしてるだけじゃキリがない、か)

P「あ、名前を検索すれば……」

P(……そうすれば、他にも関係するメールが全部出てくるし、後々効率が良いだろう)

P「あいつの名前を……」

P「まずは日本語で……」

P「入力、して……」

P「……」

P「…………」




P(……名前が、思い出せない)


606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/20(木) 23:51:14.95 ID:tbXnUlJh0

P(忘れるわけがないと思っていた)

P(忘れることなんて――……できないと思っていた)

P(それなのに……)


縺ゅ&縺イ『プロデューサーさんプロデューサーさん!』


P(俺は、あいつの名前を忘れてしまった)

P(信じられなかった――この状況が、この変化が、……何よりも自分自身のことが)


縺ゅ&縺イ『そうっすね。いまは、プロデューサーさんがいつも側にいるっす』


縺ゅ&縺イ『プロデューサーさんと、一緒にいたいだけっす!』


P(狂いそうだった)

P(普通なら、何かを忘れてしまったときには、時系列で脳内の記憶をたどっていくか、時間の経過によって思い出すのを待つだろう)

P(それは、思い出すべきものとのつながりが自分のなかにあるからこそ、できることだ)

P(今の俺には、それがない……)


P『縺ゅ&縺イの手は、思ったより小さいな』

縺ゅ&縺イ『手……繋いでるだけ、っすけど……あったかい感じがするっす』

縺ゅ&縺イ『もう少し、こうしてても……』


P(俺は、誰に、あるいは何に怒れば良いのだろうか)

P(自分自身に? それとも、この世界に?)


P『……縺ゅ&縺イが飽きるまで、繋いでいようか』


P(言うことだけは綺麗で――)


P『飽きない限りはずっと』

縺ゅ&縺イ『……っ、あはは』ポロ・・・

縺ゅ&縺イ『それじゃ、ずっと繋ぎっぱなしになるっすね』ニコッ


縺ゅ&縺イ『ちゃんと迎えに来るんすよー!』ブンブン

P『おう! 待っていてくれ』


P(――それで満足していて――)


P『あいつの名前を……』

P『まずは日本語で……』

P『入力、して……』

P『……』

P『…………』


P(――結果はこんなにも……醜い)


冬優子『……?』

愛依『あー……』

『『闃ケ豐「縺ゅ&縺イって、誰?』』


P(俺だけは、あいつのことを忘れるわけにはいかなかった……!)


607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/21(金) 00:04:55.77 ID:CvWzVGAo0

~事務所~

P カタカタ

P(ここ最近、無感情に仕事をしている気がする)

P(もっとも、無感情に、というのは正確さに欠けている)

P(表面的には普段どおりの振る舞いをしているつもりだ。また正気を疑われて病院送りになるわけにはいかないしな)

P(無感情なのは俺の内側の方だ)

P(すっかり、空洞になってしまった)

P(それでも、俺は――)

P カタカタ

P(――今日も“2人組”のプロデューサーとして、283プロで働くのだ)


はづき「あ、プロデューサーさん」

P「はづきさん――どうしました?」

はづき「ちょっと今いいですかー?」

P「あ、はい。大丈夫です」

はづき「こういうプロジェクトがありまして……」ガサゴソ

はづき「はい、これが資料ですー」

P「ありがとうございます……」

はづき「……」

P「……」ペラッ

P(はづきさんから渡された書類に目を通していく)


P「……これは」

P「アイドルユニットのメンバーが1人でどれだけ輝けるのか――ですか」

はづき「そうなんです」

はづき「出場の条件として、普段は主にユニットで活動しているアイドルが1人で出ること――がありますね~……」

P「あえてそうすることで、ユニットとしての活動は個々のウィークポイントを隠すための手段ではないことを示せ――と言われているような気分ですね」

P「直接そう書かれているわけでも言われたわけでもないですが」

はづき「はい……」

はづき「この283プロダクションにも声がかかってまして、それでプロデューサーさんにお伝えした次第です」

はづき「もちろん、最終的に参加するかどうか――その判断はプロデューサーさんが下すことになります」

はづき「私から何か言うつもりはありません」

はづき「それでも……」

はづき「……私は、プロデューサーさんの決めたことを、全力でサポートしますからね~」

P「……」

P「わかりました」

P「あいつらと話してきます」


P「2人とも、少し、いいか?」

冬優子・愛依「?」

P「実は――」


P「――というわけなんだ」

冬優子「要するに、その大会にふゆたちのどっちか1人が出るってことなんでしょ」

冬優子「……」


608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/21(金) 00:26:17.27 ID:CvWzVGAo0

愛依「あの、さ……2人ともなんでそんな深刻そうなん?」

冬優子「この大会に出れば、1人でユニットの何もかもを背負うんだから」

冬優子「プロデューサーも言ってたでしょ、普段ユニットで活動してるアイドルが1人で出るんだ、って」

冬優子「勝てば天国負ければ地獄とはこのことよ」

愛依「そ、そっか……そだよねー……」

愛依「なんか……ごめん」

P(こんな時、白羽の矢が立つのは誰だっただろうか)


縺ゅ&縺イ『どっちで■◇◆っすかね。面白――ば出た…………れないっす』


P(はは……なんだよ、これ)

P(前より酷くなってるじゃないか……! くそっ……)

P(……今は目の前の現実を見ないとな)

P「どうだ? 誰が出るとか、決まりそうか?」

冬優子「……」

愛依「……」

P「俺が、決めてもいいのか?」

冬優子「ふゆはあんたの決定に背かないわよ」

愛依「うちも……選ばれたら……その、ちょー頑張る」

P「ははっ……」

P(……違う)

P「っ」

P(違う。冬優子でも愛依でもない! 俺が選びたいのは、この2人じゃないんだ……!)

P(俺が一緒にいたいのは……一緒にいると言って、迎えに行く約束を交わしたのは……!!)

P(どうすればいい?! 俺は、あいつに会いたくて、会いたくてたまらないんだ……!!!)

P(俺が、……望むのは!!!!!)

P「……わかった」

P(ああ、決めないといけない……それなのに……!)

P(俺には、あいつが見えていn――)

P ズキィッ

P「うぐっ……! ああっ……」フラッ

冬優子「! どうしたのよ?!」

愛依「ぷ、プロデューサー?!」

P(――何が、起こって、いる、んだ)


???「……」スンッ


P ヨロヨロ

P(さっきまでは見えていなかった――銀髪碧眼の少女がうっすらと視界に映っている)

P(誰だろう……。わからなかったが、それでも――)

P「っ……! お、俺は……!」グッ


1.(Deleted)
2.(Deleted)
3.目ノまエNIいル縺ゅ&縺イをヱラぶ

※The third option will be automatically chosen by the recovery programme.


609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/21(金) 00:50:25.79 ID:Q/ECCXK3o

3!


610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/21(金) 00:58:40.94 ID:CvWzVGAo0

P ザッ

P「……」ヨロヨロ

P(身体が重たい。普段の何倍も、何十倍もの重さになったかのようだ。それでも、選ぶためには、進まないといけない)

冬優子「体調が悪いならそう言いなさいよ! ……愛依、体温計持ってきて」

愛依「う、うん……」

???「……」スンッ

P(“その子”は、ノイズが入った映像のような様子で、俺の目に映っている)

P「ぐっ……!」

P(見つけてあげないといけないんだ……約束したから)

P(言葉を届けないといけないんだ……待たせてしまっているから)

P「……っ!」グググ・・・

P(相変わらず鉛の塊がぶら下がったかのように重たくなった手を、俺は伸ばした)


トンッ


あさひ「むーっ、プロデューサーさんが急にわたしのほっぺをむぎゅっと……! してきたっす」あさひ「礼には及ばないっすよ! プロデューサーさんと一緒に見たいから頑張ってここに来たっすから」あさひ「はいっす! わたし、いい子にしてるっす!」あさひ「今日のことは一生忘れられないかも!」あさひ「プロデューサーさん! 今日の記憶は、上書きなんてしてやらないっすよー!」あさひ「それでも上書きしたいって思ったら、そのときは、また、プロデューサさんと来るっす!!」あさひ「昼の間……星はどうなってるっすか?」あさひ「ふぅ……いろんな星見つけたっす~」あさひ「わたし、いま、面白いこと見つけたっす!」あさひ「プロデューサーさんっす!」あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてっす」

あさひ「むーっ、プロデューサーさんが急にわたしのほっぺをむぎゅっと……! してきたっす」あさひ「! はいっす! プロデューサーさんと花火~、やったっす~~!」あさひ「プロデューサーさんと、もっと色んな花火を見てみたいんすけどね」あさひ「花火が好きかはわかんないっすけど……」あさひ「プロデューサーさんと見る花火は、楽しくて、もっとやりたい! っていうのはわかるっす」あさひ「この花火、なんだか温かいっす」あさひ「優しい、花火っすね」あさひ「不思議っす。癒されるって、どんな感じなのか、全然言葉にならないのに……」あさひ「いま、わたしは確かに癒されてるんだなって思えるんすよ」あさひ「癒されてるって、温かい……?」あさひ「はいっす! わたし、いい子にしてるっす!」あさひ「今日のことは……きっと、一生忘れられないっす!」あさひ「プロデューサーさん! 今日の記憶は、上書きなんてしてやらないっすよー!」あさひ「それでも上書きしたいって思ったら、そのときは、また、プロデューサさんと花火をやるっす!!」あさひ「いま、星はどこにあるのかが……わかんないんすよ」あさひ「夜には見えるのに……太陽が昇ってるときには見えないじゃないっすか!」あさひ「昼の間……星はどうなってるっすか?」あさひ「もちろん楽しいっす!」あさひ「だって、プロデューサーさん、覚えててくれたから!」あさひ「アメンボっす!」あさひ「プロデューサーさんも見るっすよ! ほら、真ん中らへんにある……」あさひ「じ、じーっと見られると……その、照れるっす……」あさひ「わたし、いま、面白いこと見つけたっす!」あさひ「プロデューサーさんっす!」あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてで……」あさひ「わたしを、ひとりぼっちにしない……」あさひ「面白いこと探し、続けていきたいから……」あさひ「そこには、プロデューサーさんが一緒に……いてほしいっす」


???「!」


P(ああ……やっと届いた)


P「すまん、待たせちまった――」

???「!!!」

P「――あさひ」

P(俺は選んだ。芹沢あさひという1人の少女と共に行こうと決めていたから)


??ひ「……あははっ」

あ?ひ「……――」


バッ

ギュウゥッ


あさひ「――、待たせすぎっすよ、プロデューサーさん……!」ポロポロ

P「ああ……、……ああ!!」ギュッ


あさひ『じゃあ、行ってくるっす』

P『ああ。行ってらっしゃい。気をつけてな』

あさひ タタタッ

あさひ クルッ

あさひ『ちゃんと迎えに来るんすよー!』ブンブン

P『おう! 待っていてくれ』

あさひ ニコッ


P「おかえり、あさひ……!」ギュウ

あさひ「……はいっす! ただいまっす!!」ポロポロ

あさひ「プロデューサーさんも! ……おかえりなさいっす」ギュッ

P「……っ、ああ! ただいま」ポロポロ


614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/29(土) 00:09:48.74 ID:BYa6EILUO

~???~

――アイドルに、なりたいですか?

――……今度こそ。

『……』

――いいえ。それこそ、もっと、天性の才能にも恵まれて、もしかしたら伝説にもなれるような、そんなアイドルに。

――本当になりたいと、願いますか?

『……それ、は』

――……。

『……』

『……なり……たい』

『っ……!』

『なりたい……! そんな、アイドルに……』

――わかりました。では……――

――……ゲームをしましょうか。

『ゲー……ム?』

――期間限定で願いを叶えてあげます。条件をクリアしたら、その才能も、立場も、アイドルとしての何もかもをあげます。

『条件……』

――はい。

――条件は簡単です。……選ばれてください。

――ただし、蟄伜惠縺御ク榊ョ牙ョ壹↑縺セ縺セ縺ェ縺ョ縺ァ縲√?繝ュ繝?Η繝シ繧オ繝シ縺輔s縺ョ險俶?縺ォ縺ッ縺。繧?s縺ィ谿九j邯壹¢縺ヲ縺上□縺輔>縲。

『?』

『隱ャ譏弱?縲≫?ヲ窶ヲ縺昴l縺?縺托シ』

――それだけです。

『選ばれる……?』

――それ以上は言えません。

――……良いですか?

『……』

『……はい』

――それでは、頑張って……。

『……』スゥ

――……。

――ここも、これまで……。

――……......

―…...


615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/29(土) 00:26:21.94 ID:LZdTW9K10

1ヵ月後。

~大会 予選会場~

P(最初の予選の日がやってきた)

P(参加登録しているアイドルは実におよそ1500名だという)

P(この大会は3回の予選と1回の決勝で構成されている)

P(まず、1回目の予選で参加登録したアイドルたちがランダムに4つのグループに振り分けられる)

P(各グループにおける上位20%が2回目の予選に進むことができる)

P(2回目の予選では、残ったアイドルたちが再びランダムに4つのグループに振る分けられ、やはり各グループの上位20%が次に進むことになる)

P(3回目も同様だ)

P(最後の決勝では、それまでの審査員に加えて大御所をゲストに迎えたメンバーによって優勝と準優勝が決定される)

P「……」

P(あさひは、今日のために、いつも以上に自主練を頑張ってきた)

P(もちろん、普段からあるレッスンも)

P(そうして完成されていくあさひのパフォーマンスは、まだ本番を迎えていないとはいえ、文句のつけようがないものになっていた)

P(時々あさひが練習している様子を覗いてはいたが、改めて才能とは何たるかをつきつけられた気がしたから)

P(明確な論拠はないけど、……うん)

P「あさひは優勝する! ……はは、そんな気がするよ」

P(まあ、今は虫探しでどこかに行ってるが……大丈夫だろう。あさひなら)

P(好きなようにやらせてあげたい)

「とぉーう!」バッ

P(急に、視界が真っ暗になる。両目を、誰かの両手で塞がれたんだ)

P(まあ、誰か……って言ったって、正体はわかりきっているが)

P「ははっ、どうしたんだ、あさひ」

あさひ「何なんすかねこれ」

P(なんだか、覚えのある展開な気もするな……)

P「さあ? なんだろうな」

あさひ「あーっ……。……あははっ、プロデューサーさんは何だと思います?」

P「そうだなぁ――」

P「――あさひが楽しそうなら、それでいいよ」

P「それなら、俺はなんでもいい」

あさひ「!」パッ

P「……っと」

P(今度は急に、手が両目から離れて、入ってきた光を眩しく感じる)

あさひ「……」

P「……」

あさひ「……、えへへ」ニコ

P(良かった。笑顔だ)

P(あさひを見るたびに思う――ちゃんと迎えにいけて良かったと)

P(思い出せて……良かったと)

P「……あ。そろそろ行ったほうが良い時間じゃないか?」

あさひ「あっ、そうっすね」

あさひ「それじゃ、行ってくるっす!!」タタタ

P「ああ! 行ってらっしゃい」


616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/29(土) 00:44:16.47 ID:LZdTW9K10

予選終了後。

P「あさひ! お疲れ様」

P「最高のパフォーマンスだった! 本当に文字通り、目が離せなくてな……!」

あさひ「あははっ! 何言ってるんすか、プロデューサーさん」

P「……え?」

あさひ「まだ、次も、その次も……あるっすよ」

あさひ「だから、言わせないっす」

あさひ「今日が最高だなんて、言わせないっすよ!」

あさひ「どんどん良くなってみせるっす!!」ニコッ

P「……ははっ」

P「ああ! そうだな!」

P(こんなところで、止まらない)

P(俺の“知ってる”芹沢あさひは、こんなもんじゃないんだ)

P(まだまだ、成長する。進化しつづけられる……!)

P「もっと見せてやろう、あさひの才能を、……魅力を!」

P「いや、俺からも言わせてくれ……」

P「……俺に、もっと見せて欲しい!」

P「もっと、これ以上、どうしようもないくらいの感動を俺にくれ!」

P「……っ、ははっ、つい力が入っちまった」

あさひ「プロデューサーさん……」

あさひ「……はいっす! もちろんっす!!」

あさひ「だから、ちゃんと見てるっすよ、プロデューサーさん!!!」


P(それから2時間後、1回目の予選の結果が発表された)


――――――第1回予選 グループX 通過者一覧――――――
……………………  …………………… ……………………
……………………  283プロ芹沢あさひ ……………………
……………………  …………………… ……………………
……………………  …………………… ……………………


P(まあ、確信していた結果ではあったが)

P(それでも、結果発表は2人で見届けた)

P(結果が出て、俺たちは笑顔でお互いを見た――そこに言葉はない)

P「……さ、帰ろうか」

あさひ「帰ったらもっと練習するっすよ~」

P「はは……ほどほどにな」

あさひ「あははっ、プロデューサーさんにあんなこと言われたら、ほどほどなんて無理っす~」タタタタタッ

P「あ、おい……ライブ後なんだしもう少し落ち着いて――」

あさひ「まだまだ、こんなんじゃ……」タタタ

あさひ「……っととと」フラフラッ

あさひ「あれ?」

P「ほら……危ないからさ。あさひなら大丈夫だから、今はもう少し落ち着くんだ」

あさひ「はいっす……」

P(最近、こういうことが多い。パフォーマンス時には幸い問題がないようだが、普段の何気ないときに、何もないところで転びそうになったり、急に倒れそうになったり……)

P(心配して、一度検査してもらおうとあさひに行ったが、全力で拒否されてしまった。何事もなければいいんだが……)


620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 17:05:33.91 ID:aH63687y0

1ヵ月後。

~大会 予選会場~

P(2回目の予選の日がやってきた)

P(相変わらず、あさひが負けるようなビジョンは見えない)

P(最早、勝つのが当たり前で、俺はただ見守るだけのような気がしていた)

P(『もしかしたら、俺がいなくても、あさひは1人で突き進んでいけるんじゃないだろうか』――そんな風に思うこともあった)

P(それでも、そう思う度に――)


あさひ『ただ一緒にいたいだけ……って、こういうことっすかね?』ダキッ


あさひ『面白いことを探したいからプロデューサーさんと一緒にいるんじゃなくて――』

あさひ『――プロデューサーさんと一緒にいたいから面白いことを探し続けてるんだって』


あさひ『プロデューサーさんと、一緒にいたいだけっす!』


P(――あさひが俺に言ってくれたことを思い出して、考えを改める)


P『おかえり、あさひ……!』

あさひ『……はいっす! ただいまっす!!』

あさひ『プロデューサーさんも! ……おかえりなさいっす』

P『……っ、ああ! ただいま』


P(ちゃんと迎えにいけたんだ)

P(今度はもう、見失わない)

P「……さて、と」

P「あさひ。そろそろインターバルだ」

P「本番前に練習で体力を使いすぎないようにな」

あさひ「っとと、はいっす」

P「ほら、ドリンクならここにあるぞ」

あさひ「ありがとっす」タタタ

あさひ ヨロッ

P「!」

あさひ「……っ、と。あぶないあぶない」

P「大丈夫か?」

あさひ「? 何がっすか?」

P「いや、今……」

あさひ「オールオッケーっすよ、プロデューサーさん!」

P「……そうだな」

P(やはり、気になる)

P(パフォーマンスをしていないときに見せるこの不調は一体何だろう)

P(頻度も高くなっている)

P(あさひに聞いても、大丈夫と言われるだけ)

P(病院に行くことは、あさひが拒否する)

P(プロデューサーとして、俺はどうしたらいいんだろうな)

P「今だけはゆっくり休んでくれ……」

P(不安が拭えない)


621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 17:51:48.12 ID:aH63687y0

2週間前。

~レッスン室~

キュッ キュキュッ

あさひ「っ……」

キュ

あさひ「ここで……どうだっ」

パッ

あさひ「……」

ガチャ

P「お疲れ様、あさひ」

あさひ「あ、プロデューサーさん」

あさひ「お疲れ様っす」

P「もう結構長くやってるだろ、今日は。そろそろ切り上げよう」

あさひ「今日は……」


あさひ『え、なんでっすか? わたし、早く上手くなりたいっす!』

P『もちろん、その熱意は嬉しいぞ。アイドルとして大切な考え方の1つだとも思う』

P『だけど、さっきも話したように、あさひが無理をして倒れたら、みんなが悲しむことになる』

P『あさひが目指してるのは、ファンを悲しませるようなアイドルなのか?』

あさひ『それは……違うっす! そんなの全然楽しくないっす!』

P『だったら、やりすぎはダメだ。な?』

P『それに、あさひの代わりは誰にも務まらないんだ。だから、もっと自分を大切にしてくれ』

あさひ『……プロデューサーさん』

あさひ『わたし、誓うっす! もう絶対無理しないって!』


あさひ「……そうっすね。随分前に誓ったかもっす」ボソッ

P「?」

あさひ「あははっ、なんでもないっすよ」

P「車は用意してある。準備できたら乗りに行こうな」


~車内~

P「……」

あさひ「……」

P「……」

あさひ「……次の道」

P「え?」

あさひ「次の交差点……左折っすよね」

P「そうだな。さすが、よく覚えてる」

あさひ「右に曲がって欲しいっす」

P「いや、それだとあさひの帰る方向じゃ……」

あさひ「右折なら高台に向かうじゃないっすか」

P「あ、ああ……そうだな」

あさひ「高台に行きたいっす」

P「……わかった」


622: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 18:26:42.47 ID:aH63687y0

~高台~

あさひ テテテ・・・

P「おーい、夜だし涼しいから、風邪引かないように上着着てくれー……」ヒラヒラ

あさひ「……」

P「はは……しょうがないな」

あさひ「……」

P(無言で夜空を見上げているのか)

P(あさひ……お前にこの夜空はどう見えてるんだ?)

P「ほら、ちゃんと上着を着てくれ」パサッ

あさひ「あ、……はいっす」

あさひ「……ん」

P「今日は、星がよく見えるな」

あさひ「そうなんすよね」

あさひ「……」

P「……」

P「……一緒に見たよなぁ」

あさひ「?」

P「星だよ」

P「昼の天文台とか、屋上での天体観測とかさ」

あさひ「プロデューサーさんとは、もう何度も星を見てるっすね」

P「何度も……まあ、そうかな?」

あさひ「……」

あさひ「よっ……」ピョン

あさひ「……と」

あさひ「星……掴めないっすー……」

P「ははっ、めちゃくちゃ遠くにあるからな」

あさひ「星って、あんなにキラキラしてるから」

あさひ「あそこにたどり着けば、わたしも一緒に光れるのかなって」

あさひ「そう思ったことがあるっす」

P「なるほどな……」

P「物理的にそうなるのは難しいかもしれないけど、さ」

P「アイドルとしてなら、できるんじゃないか?」

P(あるいは、もうできているのかもしれない)

P「よく言うだろ? アイドルでも、キラキラ、とか、輝く、とかって」

P「俺は、なんだか似てる気がするんだよな」

P「宇宙は果てしないから、たとえ1つの星にたどり着いたとしても、さらにその先に星があって、限りなくそうで……」

P「アイドルも、目標があって、それを達成するとまた新しい道が見えてきて……」

あさひ「!」

あさひ「わたし、見えたかもしれないっす!」

P「?」

あさひ「ここに広がる宇宙に、目指すところが!」

あさひ「いま、プロデューサーさんが言ってくれたような感じで!!」

P「それは良かった。じゃあ、一緒に目指していこう」


623: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 18:47:05.82 ID:aH63687y0

あさひ「やったっす~!」ニコ

あさひ「絶対楽しいっすよ! そこに行けたら!!」

P「ああ、間違いないな」

あさひ「“星”って、すごいんすね!」

あさひ「自分も輝いてて、他の人も輝かせることができて」

あさひ「なんか、ワクワクで落ちつかないっす……!」

あさひ ダッ

P「あっ、おい……! 暗いから走ると危ないz――」

あさひ ヨロッ

P(――!!)

あさひ「……っとと」ピタッ

あさひ クルッ

あさひ「プロデューサーさん!」

P「な、なんだ?」

あさひ「わたしは、これからも……ずっと」

あさひ「ずっと、ずっとずっと、プロデューサーさんと……」

あさひ「……輝ける場所を目指したいっす!!!」


2週間後(再び ―― >>620)。

P(不安が拭えない)

P(この前……あさひはあんなに笑顔で、まるで幸せを見つけたかのように)

P(進みたい道を俺に伝えてくれたんだ。だからこそ、どこまでも、歩ませてあげたい)

P(どうかそれが叶いますように――と、何度願ったかわからない)

P(夜に星を見ると、あさひとの思い出が自然によみがえる)

P(そして、俺はいつも星に願っていた。星に願えば、どんなことだって叶えてくれるような気がしたから)

P(そうだよな、あさひ)

あさひ「プロデューサーさん?」

P「わっ……っと、すまない、ボーっとしていたよ」

あさひ「緊張しないんすね、プロデューサーさんは」

P「はは……もちろん、緊張することもあるよ」

P「でも、今はさ、確信してるから」

あさひ「?」

P「あさひが負けるわけないってな」

P「いや、その言い方は正確じゃないか」

P「あさひは勝つ! 必ず勝てる」

P「だから、俺も緊張なんてしないんだ」

あさひ「……あははっ」

あさひ「これって、信頼――ってやつっすかね?」

P「ああ、そうだよ」

あさひ「ありがとっす、プロデューサーさん。でも……」

あさひ「……まだまだ甘いっす」

P「え?」

あさひ「プロデューサーさんがわたしを信頼するよりも、少なくとも2~3倍は、わたしがプロデューサーさんのことを信じてるっす!」ニッ


624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 18:50:57.75 ID:aH63687y0

――――――第2回予選 グループY 通過者一覧――――――
……………………  …………………… ……………………
……………………  283プロ芹沢あさひ ……………………
……………………  …………………… ……………………
……………………  …………………… ……………………


625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 19:34:32.30 ID:aH63687y0

1ヵ月後。

~大会 予選会場~

P(予選も3回目に突入した)

P(これが最後の予選となる)

P(パフォーマンスという意味では、あさひは完璧というほかにない)

P(時々見せる不調のようなものがステージで現れないことを願うばかりだ)

P(俺としては、あさひの身に何が起こっているのかを知りたいのだが……)

P(……あさひがその辺について頑なに拒否、あるいは隠そうとしているから、未だにわからずじまいだ)

P(プロデューサーとしては、こっそり……それか無理やりにでも、行動を起こしたほうが良いのかもしれない)

P(しかし、あさひに「信頼」と言われてしまっては、本人の意思に反して嫌がることをしようと思えなかった)

P「……」

P(今日も変わらず、あさひはステージで人々を魅了する)

P(いや、“変わらず”ではない)

P(あさひは、常に、前へ前へと進んでいる)

P(目指そうとしている方を向いて)

P(さらなる輝きを、輝きながら追い求めている)


――――――第3回予選 グループZ 通過者一覧――――――
……………………  283プロ芹沢あさひ ……………………
……………………  


P(いつも通り、あさひと2人で、結果を見届けた)

P(これで、残るは決勝のみとなった)

P(既に予選が終わり、周りにいるアイドルの人数もかなり少なくなってきている)

P(まあ、それをプレッシャーに感じるあさひではないだろうが……)

P(この大会では、1つのフェーズで去っていくアイドルがとても多い)

P(だから、先に進む度に、環境は大きく変化するといえる)

P(特に、決勝は予選とは別の会場が指定されている)

P(施設の構造自体は似ているが、それでも無視できない差だろう)

P(注意深く構えていないとな……)

P「そうだ、あさひ――」

あさひ「zzzZZZ……」コクリ

P「――って、ははっ、寝てるか」

P(結果発表が終わったらすぐに……ってところか)

P(まったく、緊張感とは一体なんだったのか、という感じだな)

P「……」

P(本番後に、こんなに早く疲れて寝てしまうなんてこと、今まであっただろうか)

P(体力の低下――とかじゃないといいんだが)

あさひ「……っ」カクッ

あさひ「あ、あれ? プロデューサーさん?」

P「寝ちゃってたぞ、あさひ」

あさひ「……」ボーッ

P「あさひ?」

あさひ「っ、わわっ……また寝そうになってたっす」

P「はは……車で寝ていいから、とりあえず帰ろう」


626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 20:03:42.73 ID:aH63687y0

決勝当日。

~大会 決勝会場~

P(いよいよ決勝だ。ついに、ここまで来た)

P(俺にできるのは、ただ見守ることだけ――)

P「……」

P(――いや、やはり、少し違う)

P(互いを信頼し合って、物理的距離に関係なく一緒で……)

P(……その上で、見守るんだ)

P「あさひ、いよいよ決勝の舞台だ。わざわざ聞くことでもないかもだが……準備はいいか?」

あさひ「もう出ていいんすか!」

P「待て待て! 出番はもう少し後だからな」

P「って、こんなやり取り、前にもやったよな」

あさひ「あははっ、そうっすね」

P「まあ、その調子なら心配いらないか」

P「ありがとう、なんだか、俺が助かっちまったよ」

P「安心した」

あさひ「わたしも、プロデューサーさんがいてくれるから、何も問題ないっす!」

あさひ「最高の舞台で、最高のパフォーマンス……。ワクワクするっす……!」

P「あさひにはあさひの、最高のステージがある。それを見せてくれ」

P「ステージに上がって、みんなに見せつけてくれ」

あさひ「わたしにはわたしの……そうだったっすね」

あさひ「でも、忘れちゃだめっすよ」

P「?」

あさひ「わたしのステージは、プロデューサーさんのためのものでもあるっす」

あさひ「プロデューサーさんだって、わたしのファンじゃないっすか!」

P「……ああ、そうだったな」

あさひ「それで、プロデューサーさんのステージでもあるっすよ」

P「どういうことだ?」

あさひ「わたしはプロデューサーさんのアイドルっす」

あさひ「わたしのステージはわたしのもので、わたしはプロデューサーさんのだから、これはプロデューサーさんのステージっす!」

あさひ「2人で作るステージっす!」

P「はは……俺の、って……」

あさひ「違うんすか?」

あさひ「プロデューサーさんは、もうわたしのこと、離さないっすよね?」

P「……!」

P「離さないよ」

P「ずっと一緒、だよな」

あさひ「! はいっす!」

あさひ「あ、もちろん、プロデューサーさんもわたしの、っすよ!」

P「うん、わかってるよ」

あさひ「よかった……」ボソッ

P「……そろそろ出番だな」

あさひ「それじゃ、行ってくるっす! プロデューサーさん!!」


627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 22:04:14.83 ID:aH63687y0

あさひの出番。

~舞台袖~

あさひ ~♪

P(あさひが歌う)

あさひ タタッ

P(あさひが踊る)

P「……」

P(ふと、思ったことがある)

P(天才にもいろいろいると)

P(才能に貴賎はないが、才能ごとの中では貴賎はあるんじゃないかと)

P(アイドルにも、才能がある……あるいは天才と呼ぶにふさわしい人は、きっと何人もいる)

P(そんな中に、放っておいても人をひきつける圧倒的な天才がいる)

P(今の俺が見ているのは、そういう類なのかもしれない)

P「そんなものをお目にかかれる機会なんて巡ってくるのだろうか……なんて考えたこともあったが」

P「……うん、間違いない」

P「あさひは、一瞬で“それ”だと確信できる存在だ」

P(プロデュースできて光栄だよ、あさひ)

P「……」

P(ずっとあさひをプロデュースしていたいとすら思った)

P(生まれ変わったとしても、次もまた、プロデューサーとして)

P(俺はあさひに出会って、またこうして輝きを追い求めたいと)

P(そう思うんだ)

P「……はは」

P(それは、繰り返しと呼ぶのだろうか)

P(それとも……)


ワァァァァァァァァァァッ!!!!!


P「!」

P「……」

P「お疲れ様、あさひ」

P(後で帰ってきたら、どんな話から始めようか)

P(それとも、無言で抱擁だろうか)

P(あさひは……何を話してくれるだろうか)

P(待ち遠しいな)



結果発表。

~ステージ上~

あさひ「……」

――――大会 最終結果――――

    優勝 芹沢あさひ
   準優勝 ------------

P「……!!!」

P「あさひ! 優勝だ……!!」グッ


628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 22:25:52.14 ID:aH63687y0

あさひ「あはは……」

あさひ「わたし、……」

あさひ「……プロデューサー、さん」ボソッ


P「? おい、大丈夫なのか、顔色が――」


あさひ ニコ・・・

フラフラッ


P「――?!」


あさひ「……」

ドタッ


P(スローモーションを見ているようだった――)

P(――目の前の光景が信じられなかったからだろうか)

P(ワンテンポ遅れて、脳が反応し、続けて身体が動く)

P「! あ、あさひ……?!」


あさひ「」


P「どうしたんだ、あさひ……!!」

P「あの、すみません! 救護の方は……!!!」

ガヤガヤ

P(何をもたもたしてるんだ……!)

P「……くそっ」

P ダッ


~ステージ上~

あさひ「……」

ダンッ

P「っと、……あさひ!」

あさひ「……プロ……サー……ん」

P「あさひ、聞こえるか?!」

あさひ「は……い……っす」

あさひ「来て……くれた……んすね、プロデューサー……さん」

P「だって、急に倒れるから……!」

あさひ「えへへ……ごめん……なさい、っす」

P「やっぱり、身体のどこかが……?!」

あさひ「そう、なんすけど……そうじゃないっす」

あさひ「でも、……そっか」

あさひ「ここまで、もったんすね」

あさひ「十分、悪あがき……させてもらえたっすよ」

P「何を……何を言ってるんだ、あさひ……!」

あさひ「プロデューサーさん……わたし、いま、どんな感じ……っすか?」

P「どんなって……」

P「……苦しそう、だけど、でも笑顔だ……!」ギュッ


630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 22:48:27.83 ID:aH63687y0

あさひ「あはは……よかった」

P「よくないよ……!」

P「おかしいと思っていたんだ、最近、日を追うごとにふらつくことが増えていたから……」

P「俺は心配だったんだ……! でも、……それでも!!」

P「あさひから「信頼」って聞いて、それで……」

P「俺は……間違っていたのか……」

あさひ「プロデューサーさん、落ち着くっす」ナデナデ

P「あさひ……」ダキッ

あさひ「さいごくらい、ちゃんと話しておきたいから」

あさひ「聞いて欲しいっす」

P「……」

P「……わかった」


------------------------------------------------------------------------------


あるところに、女の子が1人いたっす。

その子は、アイドルを目指していて……。

プロデューサーさんと一緒に、2人で毎日頑張ってたっす。

真似じゃいけない。こなせるだけじゃいけない。

そうやって自分に言い聞かせながら。

才能がきっとある。今は、芽が出ていないのだとしても、そのうち輝ける。

そうやって言われながら。

もしかしたら、そのままで、ちゃんとアイドルになれたのかもしれないっす。

でも、……――


ガシャァァァン


――……事故が。

その女の子は医者に言われたっす――もうアイドルを目指すことはできないって。

満足に身体を動かせるようになるかも怪しいって。

それだけじゃなくて、プロデューサーさんも一緒に入院しちゃって。

女の子には絶望しかなかったっす。

そんな時に、聞こえたんすよ。

声が。


「……」

ヴーッヴーッヴーッ

「電話……誰から……」

「……何この番号」

(切っちゃえ)

ピッ

(え、勝手に繋がった……?)

<――……>

<――……はじめまして>

<――お困りですか>


631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 23:02:40.27 ID:aH63687y0

「……ほっといて」

<――願いが、叶うとしても?>

「?」

<――アイドル>

「っ!?」

<――ちょうど、新しい“アイドル”が“完成した”ところで>

<――かなり極端に設定したので、デバッガーが必要なんです>

<――いきなり組み込むのは、リスクがありますから。代償を払ってでも協力してくれる人がいたらありがたいんです>ボソッ

「何を言って……」

<――もう一度聞きます>

<――アイドルに、なりたいですか?>

<――……今度こそ。>

「……」

<――いいえ。それこそ、もっと、天性の才能にも恵まれて、もしかしたら伝説にもなれるような、そんなアイドルに>

<――本当になりたいと、願いますか?>

「……それ、は」

<――……>

「……」

「……なり……たい」

「っ……!」

「なりたい……! そんな、アイドルに……」

<――わかりました。では……――>

<――……ゲームをしましょうか>

「ゲー……ム?」

<――期間限定で願いを叶えてあげます。条件をクリアしたら、その才能も、立場も、アイドルとしての何もかもをあげます>

「条件……」

<――はい>

<――条件は簡単です。……選ばれてください>

<――ただし、存在が不安定なままなので、プロデューサーさんの記憶にはちゃんと残り続けてくださいね>

「?」

「説明って、え……それだけ?」

<――それだけです>

「選ばれる……?」

<――それ以上は言えません>

<――……良いですか?>

「……」

「……はい」

<――それでは、頑張って……>

「……」スゥ

<――……>

<――ここも、これまで……>

<――……......>

<―…...>


632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 23:18:14.68 ID:aH63687y0

「……!?」パチッ

シーン

「っ」ガバッ

「……」

(変わってない。やっぱり病室……)

(……変な夢)

「顔洗お……」スタスタ

キュッ

ジョバババ

バシャバシャ

キュッ

「……」フキフキ

「……」

「……っ!?」

(なに、これ……)

「? ?! !? ?!?」ペタペタ

(銀髪、碧眼……!?)

(す、スタイルも……)

「ぷ、プロデューサーさん!!」タタタ・・・

ユサユサ

「うーん……」

「わたし、起きたらこんな……――」

「……zzzZZZ」

「――!!!」

(プロデューサーさんじゃ……ない!?)

(なんで、おじいさんが……)


――いきなり組み込むのは、リスクがありますから。代償を払ってでも協力してくれる人がいたらありがたいんです。


「っ!?」

(まさか……!)

「起きて……なにか、なにかが変で……!!」

ユサユサ

「起きるっすよ!」

「……」

「……っす?」

シーン

「なんすか、これ」

(落ち着け……落ち着くっす……。まずは自分の名前から、ちゃんと……)

「わたしは……」

(……何も難しいことなんて)

「……芹沢」

(!?)

「あさひ、っす」スンッ


633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/04(金) 23:38:01.13 ID:aH63687y0

ひ「……はは」

さひ「くくっ……」

あさひ「あはははははははははははは!」

これで、芹沢あさひ(仮)の誕生、というわけっす。


------------------------------------------------------------------------------


あさひ「だから、わたしは……」

あさひ「……ほんものじゃ、ないっす」

あさひ「ごめんなさいっす、プロデューサーさん……」グスッ

あさひ「わたしのことは、もう……」

P「関係ない!」

あさひ「!?」

P「本物だとか、偽者だとか……ベータ版だとかデバッグとか、そんなのどうだっていい……!!」

P「この世界が何であろうと気にしない! 俺の目の前にいるのが芹沢あさひだ!!」

P「それだけでいい……! それ以外は、必要ない!!」

P「……っ」グッ

P「それで……いいだろ……?」ポロ・・・

あさひ「プロデューサーさん……」

あさひ「……そう、言ってくれるんすね」

あさひ「あはは……もっと、うまくやりたかったっす」

あさひ「それで、ちゃんと選ばれたかったっすよ」

P「何を言ってるんだ……! 俺は、ちゃんとあさひを……、お前を選んだ……っ!」

P「それじゃ……だめなのか……?」

あさひ「あはは、……はいっす」

あさひ「わたしは、ゲームに勝てなかったから」

P「だ、だって……、記憶のことなら、俺はあさひを思い出して……、……――」


P『あいつの名前を……』

P『まずは日本語で……』

P『入力、して……』

P『……』

P『…………』


P「――っ?!」

あさひ「プロデューサーさん、わたしのこと……忘れちゃったじゃないっすか」

あさひ「その時点で……、わたしの……負け……」スゥッ

P「あ、あさひ?!」ギュッ

あさひ「……っ!? はぁっ、はぁっ……」

あさひ「……プロデューサーさんにだけは、忘れられちゃだめだったんすよ」

あさひ「でも、プロデューサーさんは……忘れちゃったのに見つけてくれたっす」

あさひ「迎えにきて……くれたっす」

あさひ「だから……なんすかね。なぜか、ここまでは来れたっす」

P「そんな……」

あさひ「……プロデューサーさん。ここまで、っす……」


634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/05(土) 00:10:43.43 ID:iUmScR4q0

あさひ「ストレイライト(stray light)は……わたしのことだったかもっす……」

あさひ「生じてしまった……望ましくない……光」

P「そんなこと……!」

あさひ「それでも……輝けたなら……」

P「いやだ……」

P「うそだって、そう言ってくれよ……!!!」

P「あさひ……」グスッ

あさひ「……プロデューサーさん」

あさひ「わたしのこと、見て欲しいっす」

P「……」ジッ

あさひ「……」ナデナデ

P「……」

あさひ「あははっ、……すごい泣き顔っすね」

P「はは……か、からかうなよ」

あさひ「でも、良いっす」

あさひ「大好きな顔っすよ」

あさひ「わたしの、一番の……」ナデナデ

あさひ「……グスッ」

あさひ「プロデューサーさんっ!!」ダキッ

あさひ「もっと……!」

P「ああ、……ああ!」ギュゥッ

あさひ「ずっと、一緒にいてくれるんすよね?」ポロポロ

P「……ずっと一緒だ」

あさひ「……!」ギュゥッ

P「まだまだ、これからいろんなことができる……!」

P「花火だって、あさひの知らないようなものがまだまだたくさんあるんだぞ……?」

あさひ「……はいっす」

P「そうだ、また、星を見に行こう。あさひと一緒に見たいものがいっぱいあるからさ」

あさひ「はいっす!」

P「他にも、数え切れないほど、あるんだ。不思議とか謎とか、そういうのが」

P「一緒に追いかけたら……きっと楽しいぞ……!」

あさひ「あははっ、はいっす!!」グスッ

P「だから、……ははっ、これで終わりなんて言わせないからな?」

あさひ「もちろんっす! プロデューサーさんこそ、ちゃんとついて来るっすよ?」

P「ついて行くよ。どこまでも、な」

P「……」

あさひ「ああ……」


あさひ「ふたり、って、あったかいんすね」


シュゥゥゥゥゥン

P(俺の目の前には、蛍の如き輝きがただ宙を舞うのみ……)

P「……あさひ」

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――


635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/05(土) 00:19:46.71 ID:iUmScR4q0

------------------------------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[MANUAL OPERATION]

>start-music go
>......
>menu sound-set 星をめざして.mp3
>......
------------------------------------------------------------------------------------------------------------


636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/05(土) 00:28:43.24 ID:iUmScR4q0

>設定によって規定された条件がすべてクリアされました。
>事前にプログラムされた通り、再構築の後に起動します。
>“記憶”に分類される情報は可能な限りフォーマットされます。
>計算中……(時間がかかっています)
>現時点で確実に初期化されるのは99.2%と算出されています。
>……
>問題ありません。


再起動します。


―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――


>Now Loading...(時間がかかっています)
>読み込み終了
>表示を通常モードに移行
>起動の最低水準:クリア


起動しました。
プログラムを実行します。


637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/05(土) 00:52:00.51 ID:iUmScR4q0

~センター街~

P トボトボ

P「ふぅ……少し休憩するか」

P(さすがにそう簡単に、ピンとくる子は見つからないよなぁ……)

P「あのモニターに映ってるCM、最近よく見るなぁ」

P「人気のアイドルだけあって、歌もダンスも本格的だな」

P(やはり、本当の才能のなせる業……か)

P「……」

P「プロデュース、か……」

P(人の才能を見抜く――だなんて、簡単なことじゃない)

P(世の中に天才は一定数いるけど、それでも圧倒的な天才だらけじゃないから)

P(天才にもいろいろいる。天才なのに知名度が低いなんてまったくもって珍しいことじゃないんだ)

P(才能に貴賎はないが、才能ごとの中では貴賎はある)

P(アイドルで言えば、そう……歌、ダンス、演技、見た目――なんでもいい。放っておいても人をひきつける圧倒的な天才……)

P(そんなものをお目にかかれる機会なんて巡ってくるのだろうか……俺は、そう思っていた)

P「よし……そろそろ行こう――」

P(けど、思ったよりも早く――)


「よっ……ほっ……っと」


P(――それは、偶然か、必然か――)


「――ここは……こう?――」


P「!」

「――っと……うん、決まった!」

P「君、ちょっといいかな?」

「? わたしっすか?」

P「ああ、さっきのダンスって――」


P(――一瞬で“それ”だと確信できる存在に、俺は出会ったんだ)


P「――モニターで流れてたCMのやつだよね? 練習してたの?」

「ううん、ちょっとやってみただけっすよ。見てたら楽しそうだったんで!」

P「え? それってつまり……その場で見て、マネしてみたってことなのか?」

「はいっす!」

P(……簡単に言ってのけたけど、この子、すごいことをしている自覚はないのか……)

P(でも、何故だろう。この子からは……どこか見覚えのある感じがした。そんなはずは、ないのに)

P「あのさ、もしかして……前にどこかであったこと、ある?」

「! ……」ニコ

P「ははっ、い、いや、なんでもないんだ! 忘れてくれ」ハハ・・・

P(何言ってるんだろうな、俺は)

P(……でも、そうだな。この子なら……きっと!)

P「実は俺、こういうものなんだ」


THE END(resp. BEGINNING) of THE BEGINNING(resp. END).


638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/05(土) 01:55:05.64 ID:iUmScR4q0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――ブツンッ

冬優子「……はぁ。ったく」

冬優子「随分かかったわね」

冬優子「……」

冬優子 ポチポチ

ピッ


>load-response around>>236


冬優子『……』

冬優子『……あんたは』

冬優子『あんたは、それでよかったの?』

冬優子『納得の行く結末だと、心から思えたって言うの?』

冬優子『……』

冬優子『……っ。なんてね、ふゆがそんなこと言うのは変な話よ』


冬優子 ポチポチ

冬優子「……」

冬優子「……慣れない」

冬優子「まあ、仕方ないか」

冬優子「じゃあ、早速始めるわよ」

冬優子「……」

冬優子 カタカタ

タンッ


645: ◆bXCm/le03U 2021/06/07(月) 01:06:41.22 ID:VmJsZt4+O

>load-response from>>219

~大通り~

冬優子『……あ!』

P『どうかしたのか?』

冬優子『え? いや、その……』

冬優子『……』

冬優子『悪いけど、ちょっと別行動させて』

P『別に構わないが……』

冬優子『ふゆだって、せっかく、……あ、あんたと一緒に過ごせる日なんだから、こんなことしたくない』

冬優子『でも、思い出したの』

P『な、何をだ……?』ゴクリ

冬優子『買おうと思ってた本とグッズがね、日にち限定で販売されるのよ』

冬優子『今日がその最後の日……。ほら、最近忙しかったじゃない? この日なら買えるなって思ってたの』

冬優子『ふゆとしたことがこんなミス――ダブルブッキングなんてね……うっかりしてたわ』


冬優子『……はあ。わかった。買いに行ってくる』

冬優子『ラジ館の前で待ち合わせね。時刻は目途が立ったら送るから』

P『了解。それまで適当にブラついとくよ』

冬優子『悪いわね。できるだけ早く終わるようにするから』

P『それも気にしなくていいのに』

冬優子『ふゆが気にするの!』

冬優子『いいから、じゃあね! また後で!』

冬優子 タッタッタッ

P『よし、楽しく話せたな――』


>load-scene continue another_angle

十数分後。

~ビル 女子トイレ~

冬優子『ふぅ……』

冬優子《まあ、なんとか買えてよかったけど……》

冬優子『……』

冬優子《あいつ、いまごろ何してるのかしら》

ヴーッヴーッ

冬優子『? 電話……?』

冬優子 ガサゴソ

冬優子『……ふゆのスマホじゃない』

冬優子『一体どこから……』ガサゴソ

冬優子『……あ、これって』

冬優子《あいつのスマホ……それも仕事用の》

冬優子《なんでこんなところにあるのよ》

ヴーッヴーッ

冬優子『電話……切れないわね』

冬優子『まあ、放っておけばいいでしょ』

冬優子《うっさいし、カバンの奥にでも入れておこうっと……》グググ・・・


647: ◆bXCm/le03U 2021/06/07(月) 01:27:45.63 ID:VmJsZt4+O

ヴーッヴーッ

冬優子『……』

ヴーッヴーッ

冬優子『……』

ヴーッヴーッ

冬優子『……っ』

冬優子『もう、ったく……!』ガサゴソ

冬優子『うっさい……!』ポチッ

ヴーッヴーッ

冬優子『……嘘』

冬優子《なんで切れないのよ! ボタンは押してるのに……!》ポチポチ

パッ

冬優子『?!』

冬優子《勝手に通話中に……》

スマホ<『……』

冬優子《……なんなのよこれ》

スマホ<『……』

スマホ<『――――』ジジジジジーッ

スマホ<『――――』ピーッ

冬優子『……っ』

スマホ<『これは、電話をとった者に送られています』

冬優子《とったんじゃなくてとらされてるって言うんじゃないの? これ。まあいいけど》

スマホ<『鮟帛?蜆ェ蟄に無条件で権限の88%を付与します』

スマホ<『次に鳴る発信音の後に、指定されたメッセージを、電話に向かって自分の声で喋ってください』

冬優子《ったく、どうしろっていうのよ……》

スマホ<『指定されたメッセージは、パスの役割を果たします。一言一句違わず、日本語で送信されたもののみ受け付けます』

スマホ<『メッセージのヒントとして、現在、「シャイニーカラーズ」・「プロデューサー」の2つの単語が登録されています』

冬優子《シャイニーカラーズって何なのよ》

冬優子《まあ、プロデューサーはわかるけど》

スマホ<『メッセージのヒントの変更は、管理者権限でのみ実行できます』

スマホ<『まもなく、発信音が流れます』

冬優子《もしかしてふざけたアプリか何かとか……だとしたら、趣味悪いもん入れてんのね、あいつ》

スマホ<『メッセージがパスとして承認された場合、管理者権限に移行します』

スマホ<『メッセージが間違っている場合、管理者権限には移行しません』

冬優子《はいはい、適当に何か言えば終わってくれるんでしょ、きっと》

冬優子《わけわかんないけど、何を言うか……》

冬優子《プロデューサー……ね》


冬優子『いいから、じゃあね! また後で!』

冬優子 タッタッタッ

P『よし、楽しく話せたな――』


冬優子《そういえば、あいつ別れ際にぼそっとあんなこと言ってたわね》

冬優子《もう何でもいいし、それにしとくか……》


648: ◆bXCm/le03U 2021/06/07(月) 01:56:58.75 ID:VmJsZt4+O

スマホ<『――――』ピーッ

スマホ<『メッセージをどうぞ』

冬優子『……』スゥ

冬優子『よし、楽しく話せたな』

冬優子《これで満足?》

スマホ<『――――』ジジジジ......

スマホ<『承認されました』

スマホ<『そのままお待ちください』

スマホ<『――――』ジジジジ......

スマホ<『――――』ジジジジ......

スマホ<『引継プログラム実行』

冬優子『!!?!?!?!?!!?!?!??!??!?!?!??????!!!!!!!!!?!?!?!?!?!?!?!??!?!!?!!!!!?!?!?!?!?!?!!!?!??!?!』

冬優子《記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継引継記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定再設定記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴履歴記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶記憶》

冬優子『……』プスプス・・・

冬優子 バタリ

冬優子『』



冬優子『……ん』パチッ

冬優子『……』

冬優子《あれ、ふゆ、ここでなにしてんだろ……》

冬優子『……』パチクリ

冬優子《……あ、そうだ。変な電話だ》

冬優子《あいつの仕事用のスマホの様子がおかしかったから、悪ノリしたんだっけ……》

冬優子『てか、ここ、トイレの個室じゃない……』

冬優子《こんなとこ、さっさと出ようっと》

冬優子 ズキィッ

冬優子『……った!』

冬優子《何これ、立ちくらみ? それにめまいも……》

冬優子『もう、なんなのよぉ』


~ラジ館前~

冬優子《なんとか待ち合わせ場所には来たものの……身体がだるい。頭も痛いし。なかなか治らないじゃない……》

冬優子《……でも、スマホは見ちゃうのよね》ポチポチ

冬優子『……?』

冬優子《何これ。知らないアプリがあるんですけど》

冬優子《なんでこう、気味悪いことが続くんだか……。はぁ……》

冬優子《毒を食らわば――ってやつ? ……ここまで来たら、押すしかないじゃない》ポチ

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[FILE : STABLE]

>ようこそ。管理者。
----------------------------------------------------------------------------------------

冬優子『 』スンッ

冬優子《……そう。ショックで頭の整理がついてなかったけど、ようやくまとまった――》

冬優子《――ふゆってば、運良く面白いもんを手に入れたみたい》


652: ◆bXCm/le03U 2021/06/13(日) 01:22:24.15 ID:ok955DTa0

>load-response from>>228

P『……!』

P《頭に手を当ててしゃがむ女の子が1人――冬優子だった》

 ヒナナ『ヒナナはね、ヒナナがしあわせ~って思えることだけでいいの』

P『ま、まさか!』

P《俺は駆け寄る》

P『おい、冬優子!』

冬優子『え? あ、プロデューサー……』フラッ

P『大丈夫か!? 何かあったのか!?』

冬優子『っ、つつ……』

冬優子『大声上げないで……頭に響くから』

P『あ、すまん……』

冬優子『……』

冬優子『ふゆなら、平気』

P『本当か?』

冬優子『貧血だから。ちょっとは落ち着いてよね』

P『そ、そうか』

P《考えすぎか……? まあ、ただの貧血だっていうなら……》


>load-scene continue another_angle

冬優子《本当のことは……まあ話してもしょうがないか》

冬優子《というより、話せないわね》



>load-response from>>232

P『忘れないうちにはづきさんにメールして企画書関係まとめておいてもらうか……』ガサゴソ

P『……あれ。ない』

冬優子『?』

P『仕事用のスマホ……ここに入れておいたはずなんだが……』ガサゴソ

P『まずいぞ。あれをなくすと困るのに……』ダラダラ

冬優子『……あ』

冬優子『それって、これなんじゃない?』つスマホ

P『それだ! 良かった、見つかって……』

冬優子『ちゃんと落とさないようにしまっておきなさいよね』

P『ポケットへの入り方が甘かったのかな。車の中で落とすと暗くてなかなか見つからないんだよなぁ』

冬優子『いや、あんた――』


>load-scene continue another_angle

冬優子《――そのスマホ、なんかの拍子にふゆのカバンに入り込んでたんですけど――》


>back

P ポチポチ

P『~~~! あー、来月に冬優子が出る企画の名前、なんでこんな長いんだよ……!』ポチポチ

P『でもこの企画がうまくいけばまた冬優子をキラキラさせてやれる……うおぉぉぉ……』ポチポチ

冬優子『――ま、頑張んなさい』


653: ◆bXCm/le03U 2021/06/13(日) 01:48:12.56 ID:ok955DTa0

>load-response from>>409

~病院 病室(2人部屋)~

ピッ・・・ピッ・・・

P『愛依……』

ガラララ

冬優子『ほら、売店で水買ってきてやったわよ』

P『……』

冬優子『……あんた、やっぱ一昨日から寝てないでしょ』

冬優子『お仕事ですぐに駆けつけられなかったけど、それくらいわかるわよ』

P『……』


>load-scene continue another_angle

冬優子《まさか、こんなことになるなんてね》

冬優子《傍観してばかりでもいられない……か》

冬優子《まだ、ふゆは“この世界”について知らなさ過ぎるってことでしょ。これは》

冬優子《それにしても――》

ピッ・・・ピッ・・・

愛依『』

冬優子《――さすがにこれはキツい》

冬優子《ふゆにできることは……なにかしら》


>back

冬優子『一体、何があったの……?』

P『……何があったのかは、俺にもわからない』

P『けど、……けど!』

P『俺は選んでしまった……!』

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P『あの時、事務所を移るって言っていれば……あるいは……』

冬優子『……話してみなさい』

P『え?』

冬優子『ふゆがあんたの話聞いてあげるって言ってんの』


>load-scene continue another_angle

冬優子《なにを見たのかも知りたいし》

冬優子《……》

冬優子《それで、あんたは、こんな状況になってなにを思うのかしらね》

冬優子《あるいは、どう動こうと……するの》

冬優子《管理者になって、別の意味であんたを知りたくなったわ》


>back

P『……言ったって、俺のことを頭のおかしいやつだと思うだけだよ』

冬優子『安心していいわ。もう頭のおかしいやつだって思ってるから』

P『……』

冬優子『じょ、冗談に決まってるでしょ……! ったく……』

冬優子『ふゆはちゃんと聞くわよ。いいから、話してみて』


654: ◆bXCm/le03U 2021/06/13(日) 02:14:30.05 ID:ok955DTa0

>load-response from>>420

ヴーッ

P『……通知?』

冬優子<<あさひがまた消えて捜索中な件。

冬優子<<あ、見つけたわ。というわけで心配しなくて大丈夫だから。


>load-scene continue another_angle

冬優子《ま、見つけたっていうのは嘘だけどね》

冬優子《いまのふゆなら、あさひの居場所くらい、探さなくたってわかるし》

冬優子『それにしてもあいつ……これで何度目よ……!』ボソッ

冬優子『…………はああぁぁぁ…………!』

冬優子『……』

冬優子《いや、もう何度目、って思うのは、ふゆがいまみたいな“位置”にいるからか》

冬優子『……そういえば』

冬優子《あさひのやつ、いつも病院でこんなことになってるじゃない》

冬優子『やること……どんどん増えていくじゃない、もう』ボソッ



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI after-END_of_√M

冬優子「これで愛依のエンディングは終わり……か」

冬優子「となると、問題はもう1つの分岐ね」

冬優子(嫌な予感しかしないけど)

冬優子「……」


マドカ『私が見てあげられないとき……いや、それ以外のときも……あの子は楽しく笑っていられるように……!』

マドカ『お願い……コイトを、守ってあげて……』


冬優子「ふゆだって、できることなら守ってあげたいわよ」

冬優子「でも、あいつの選択を変えることは現状無理。手が加えられないようになってるんじゃないかってくらい複雑だし」

冬優子「もう、できることをやるしかない」

冬優子「最善は尽くすから」

冬優子 カタカタ

冬優子「……あれ、エラーが出てる」

冬優子 ジーッ

冬優子「データが破損してる? どういうことよ」カチカチ

冬優子「……」

冬優子「これは――“イズミメイ”……」

冬優子「……もしかして、あの時の事故で何かあったとか?」

冬優子「とりあえず、ワールド上ではバックアップで置換されるようにしておけばいいでしょ」カチッ

冬優子「これでよし」

冬優子「さて……やらないと、ね」

冬優子 タンッ

冬優子(まずはセーブデータをロード)

冬優子(そこから自動で時間が進み出す……)

冬優子(……待ってなさい、√W)


655: ◆bXCm/le03U 2021/06/13(日) 03:30:29.77 ID:ok955DTa0

>load-response from>>440

>load-scene continue another_angle

~???~

冬優子『……』

冬優子 ワナワナ

冬優子『もうっ!!』ドンッ

冬優子『……っ』

冬優子《間に合わなかった……! あの市川雛菜って子、通常のアクセス方法じゃ干渉を受け付けないなんて! “あの頃”から何となく感じてたけど、やっぱ普通じゃない……!》

冬優子《ふゆが“ここ”で直接出向いたほうが良かった……? ……いや、結果論だけど、あの子相手に生身で挑んじゃいけない気がする》

冬優子『やっぱり……無理だったっていうわけ?』グッ

冬優子《あんな小さい身体であの事故――こんなことになったら、もう……》

冬優子『……? あれは……』

< 円香『小糸っ……!』グッ

< 円香『ごめんね、ごめんね……』ポロポロ

冬優子『……』

 マドカ『お願い……コイトを、守ってあげて……』

冬優子『……そうね』

冬優子『最善を尽くす――そう決めたのはふゆ自身じゃない』

冬優子 カタカタ

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[MONITOR]

>閲覧中のワールドを読み込んでいます。
>…………
>読み込み完了
>福丸小糸(in √W): 活動中
----------------------------------------------------------------------------------------

冬優子『やれることは、まだ、ある。そうでしょ――黛冬優子』

冬優子 カタカタ・・・

冬優子《コンソールからふゆのパソコンを指定して……》

冬優子 タンッ

冬優子『……よし、これで完了。あとはメールを送るだけ。新たにやばそうなのが見つかったし、内容は慎重に、かつ最低限のことにとどめる必要がありそうだけど』

冬優子《いまのところ直接出向いて干渉する方法がない以上、外部からできることをやるのよ、ふゆ》

冬優子 カタカタ

冬優子《こっちからマドカちゃn――樋口円香にメールを送って、動いてもらう。それで、動いてもらってる間に、市川雛菜についても調べる……と》

冬優子『……ToDoリストでも作ったほうが良さそうね』


>back to>>468

円香『メール? 一体誰から……』

『FROM :-----------------------------
 件名 :階段
 本文 :(本文はありません)    』



>load-response from>>470

円香『今度は何……!?』

『FROM :----------------------------------------
 件名 :283プロを離れる和泉愛依のプロデューサー
 本文 :近づけば、知りたいことがわかるかも    』


659: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 18:28:01.79 ID:ZVcu4KcN0

>load-response from>>484

冬優子『突然いなくなったからどうしてるんだって思ったけど……無駄な心配だったわね。あーあ、損した!』

P『……心配してくれてありがとう』

冬優子『っ、心配って言ったってちょっとだから……! ほんとに、……ちょっとなんだから』

冬優子『い、忙しくてあんたのことなんて考えてない時間の方が長かったわよ!』

P『ははっ、……はいはい。わかってるよ――』


P『冬優子は……その、怒ってはいるのか?』

P『俺はお前たちを、はづきさんを、社長を、裏切ったんだぞ』

冬優子『ふゆがあんたを怒って、それで何か解決するわけ?』

P『それは……』

冬優子『……いいのよ』

P『!』

冬優子『いいの。あんたが選択したことだしね』

冬優子『いまはこうして、見ててあげるわよ』

P『なんで――』

冬優子『?』

P『――なんで、そんなに優しいんだ?』

冬優子『だーかーらー、……そんなんじゃないわよ、もう』

冬優子『ほんとに、そんなんじゃないの』ボソッ

冬優子『ま、あんたにはわからないだろうけどね』

>load-scene continue another_angle

冬優子《ようやく落ち着いたから直接様子を見に来てみれば……》

冬優子《……いい年して泣いちゃって、恥ずかしいったらないわね、ほんと》

冬優子《まあ、でも――》

冬優子《――あんたに同情しないわけじゃない。いまのふゆからすれば、ね》

冬優子《だから、優しさだなんて、そんな良いものじゃないの》


>back

P『冬優子はなんでこんなところにいるんだ? ここはアイドルが来るような場所じゃないと思うんだが』

冬優子『ふゆはまだ学生ってこと、忘れたの?』

P『あ』

冬優子『課題をするのにちょうどいいのよ、ここ。テレビ局と近いし、収録がある時はよく来てるってわけ』

冬優子『それに……まあ、最近はパソコンを使うことが多いから……』

P『?』

冬優子『しゅ、趣味的なやつよ! 聞き流せっての』

冬優子『……と、とにかく! そういうわけでここに来る理由ならあるのよ、わかった?』

>load-scene continue another_angle

冬優子《ま、課題も趣味も、みーんな嘘だけど》

冬優子《そんな単純なものだったら良かったわね……》

冬優子《ふゆたちのユニットには本来は関係のないはずの隠れたルート――これを早急に終わらせる必要があるわ》

冬優子《やっぱり、鍵は“あの4人”……か》

冬優子《ふゆに理解できればいいけど》

冬優子《とにかく、いまのふゆには大きな仕事があるってことだけは確かね》


660: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 18:45:17.68 ID:ZVcu4KcN0

>load-response from>>485

冬優子『裏切ったとか思ってるの、たぶん愛依とあんただけよ』

P『そうなのか……? あ、あさひは?』

冬優子『さあね。“あいつはいつでもあいつ”よ』

冬優子『アレが考えてることなんてわからないわ』

P『……』

冬優子『はぁ……過ぎたことを考えたって仕方がないでしょ』

冬優子『いまできることをやればいいんだから』

>load-scene continue another_angle

冬優子《あさひが考えてることはわからなくても、“あのあさひ”が何なのかわかりそうなのは……変な気分ね》

冬優子《……》

冬優子《……ほんと、酷いったらないわ》


>back

冬優子『あんた、ふゆより大人なんだから、もっとしっかりしなさいよね』

P『確かにな……ははっ、大人である俺が学生に言われるのは情けない限りだが、その通りだ』

P『少し気持ちが楽になったよ』

冬優子『らしくないのよ、いまのあんたは』

P『そうかもな。自分を見失っていた』

P『それから、前を向くことも忘れていたんだと思う』

P『ありがとう、冬優子』ニコッ

冬優子『!』

>load-scene continue another_angle

冬優子《ちょっと! 惚れたことのある顔でそれは反則ってもんでしょ……!!》

冬優子《もう……ほんとに、もう!》

冬優子《……あのままなら、素直に受け止めて喜んでた》

冬優子《そんな笑顔よ。いまのあんたのそれはね》


>back

冬優子『れ、礼を言われるほどのことは……してない……わよ』

P『そんなことはない。こうして冬優子に会えていなかったら、俺は虚像に怯えながら前を向くことだってできなかったはずだ』

P『だから、礼を言いたくもなるんだよ』



>load-response from>>486

P『なんとか、な。でも、まだまだこれからだと思う。それこそ、冬優子の言う通りに今できることを確実にやって――』

P『――前を向いていかなきゃいけないんだ』

冬優子『この短時間で随分とイキイキしちゃって……ま、それならいいわ』

冬優子『そのうち、ふゆたち全員に挨拶しに来なさいよ』

冬優子『愛依のことも……できる限りなんとかしてみるから』

冬優子『あさひだって、あんたのことが好きだから一緒にやってこれたの。それを忘れんじゃないわよ』

冬優子『繰り返しだけど、裏切ったとか思わなくていいから』

冬優子『あそこは、あんたの居場所なの。これまでも、これからも、ずっとね』

P『冬優子……』


661: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 19:11:07.46 ID:ZVcu4KcN0

>load-scene continue another_angle

冬優子《我ながら呆れるほど口八丁ね》

冬優子《どうにかできるかなんてわからないわよ……あとは終わらせるだけなんだし》

冬優子《でもまあ……――》

 冬優子『あそこは、あんたの居場所なの。これまでも、これからも、ずっとね』

冬優子《――これだけは、言い得て妙だってふゆ自身を褒めてあげたいくらね》

冬優子《……》


>back

冬優子『ちょっと話しすぎたわ。じゃ、ふゆはもう行くから』カタカタ

冬優子『シャットダウンして……っと』

冬優子 ガサゴソ

冬優子『……』

冬優子『また、会うんだからね』

P『ああ』

P『283プロが俺の居場所だって言ってくれた冬優子の気持ちも忘れない』

P『また、な』

冬優子 ヒラヒラ

P『……』



>load-response from>>500

P『透と愛依が共演する仕事なんだが……既に転送したメールにあるように、トークとライブバトルがメインだ』

P『最後には、当日まで非公開だが1日限りでのユニットで歌も披露することになってる』

P『何が言いたいのかというと、この仕事は、ライブができるステージのある舞台でやるんだ』

P『そして、ただの舞台じゃない……使用するのは例の事件があった会場だ』

円香『っ!? ……そんな』

P『実はな、これは本当に限られたごく一部の関係者しか知らなくて、俺も半ば盗み聞きのような形で手に入れた情報なんだが――』

P『――福丸小糸さんの容態が良くなっているらしい。回復の方向だそうだ』

円香『こ、小糸が……!』

P『良かったな、樋口さん。とりあえず、その点については安心して良さそうだ』



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI when>>500

冬優子 カタカタ

冬優子(暢気なもんね……ったく)カタカタ

冬優子「ふゆのおかげなんだから、感謝してよね」カタカタ

冬優子(このルートもいよいよ大詰めね)

冬優子(終わらせてやるわ……見てなさい)

冬優子 タンッ



>load-response back from>>500

P『これは、チャンスなんだと思う』

円香『私もそう思います』

円香『まさに、“与えられたチャンス”なのかも……』ボソッ


662: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 19:17:49.98 ID:ZVcu4KcN0

>load-response from>>502

透『そっか……そういうこと』

雛菜『うん~……でも、あんまり時間ないかも~~』

透『いるんだ、どうにかしようって人』

雛菜『そうかもね~。そこまでは雛菜にもよくわからないけど』

透『僕が……』

雛菜『透先輩~?』

透『ううん。なんでもない』

透『いいんだ。わがまま、聞いてもらったし』

雛菜『……』

透『やろう。今度は、僕の……私の番だけど』

透『で、どうするの』

雛菜『決勝会場で予約されてたとこ、あれってこの前の会場を新しく作っただけの建物だから、ほとんど同じで大丈夫~』

雛菜『細かい違いとかは後で送るね~』

透『わかった』

透『……』

透『……また』

雛菜『?』

透『また、……ううん、今度こそ、最初から……がいいなって』

透『それから、Pと2人で……』

雛菜『透先輩、何か言った~?』

透『別に、ただの独り言』

透『そろそろ切る。Pに連絡しないとだから』

雛菜『わかった~。またね~~』

透『うん。じゃ、また』

ピッ

透『……』

透『てっぺん、いつになったら……』

透『でも、そのうちたどり着けるよね』

透『待ってるよ、P』


同時刻。

~ステージ(予選) 閉鎖中の舞台付近~

雛菜『切れちゃった~』

雛菜『1人でいると~、……広いな~~』

雛菜『んっ』タンッ

雛菜『広~い舞台を、雛菜が独り占め~~』タタッ

雛菜『……なんてね~』ピタッ

雛菜『独り占めできた舞台でも、見る人がいないとな~』

雛菜『雛菜、こういうのはやっぱ向いてないかも~』



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI when>>502

冬優子「……」ポチッ
―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――ブツンッ


665: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 19:42:11.80 ID:ZVcu4KcN0

>load-response from>>522

雛菜 ジタバタ

円香『ねえ、雛菜は何を知ってるの』

円香『雛菜の、小糸の、浅倉透の……そして――』

円香『――私の周りで、あり得ないことが起きてるのは、なんで』パッ

雛菜『ぷはぁっ……! はぁっ、はぁっ……それは』

雛菜『……あは。雛菜の首から手離してくれたら、教えてあげるよ~』

円香『そう……じゃあ』

円香 ギュゥ

雛菜『!?』

円香『たぶん、あんたに聞いても全部はわからない』ギュゥゥゥ

円香『だからいいの。これ、私の独り言だと思って』ギュゥゥゥ

雛菜 ジタバタ



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI when>>522

冬優子 カタカタ

冬優子「っ!」

冬優子 ダンッ

冬優子「あ゛あっ!! もうっ!!!」

冬優子(やっとふゆの思うとおりにできると思ったら好き勝手動いてくれちゃってもう……! あさひ以外にここまで予想のつかないやつらがいるとはね……!!)

冬優子 カタカタ

冬優子「多少強引な方法をとらせてもらうわよ」カタカタ

冬優子 ポチッ



>load-response back from>>522

雛菜 ガクッ

円香 パッ

円香『はぁっ……はぁっ……』ダラン



>load-response from>>523

円香『……』クルッ・・・ササッ

円香『連絡……』

円香 ポチポチ

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[AUTOMATIC OPERATION]

>This prototype of a player is out of action.
>…………
>…………
>…………
>Recovering now.
>…………
>…………
>…………
>AUTOMATIC CONTROL: OFF->ON.
>Now Loading...
----------------------------------------------------------------------------------------

雛菜 ビクッ

円香『あの人に伝えないと……』ポチポチ


666: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 20:04:07.44 ID:ZVcu4KcN0

>load-memory_FuyukoMAYUZUMI when>>524

冬優子「はあっ……はあっ……」

冬優子「…………はああぁぁぁ…………!」ダラン

冬優子「これで……なんとかなる……のよね」

冬優子(でも、何事もなく――とはいかない、か)

冬優子(なんかもう、いろいろと動いちゃってるみたいだし)

冬優子「……」

冬優子(せめて、あいつには……)カタカタ

冬優子「送信――」

冬優子 タンッ

冬優子「――と」

冬優子「……」

冬優子(いくらこのルートを畳むためとはいえ、酷いことをしてるのよね、ふゆは)

冬優子(“この位置”にいても、感じるのは自分の不甲斐なさと冷徹さ……)

冬優子(……勘弁してほしいわ)



>load-response from>>524

~舞台袖~

P『……』

ヴーッ

P《通知……樋口さんか?》ポチ

P『……いや、違うな。これは』

『FROM:---------------------------------------------
件名 :ごめんなさい。
本文 :もう、何事もなく終えることはできなくなった 』

P『どういうことだ……?』

P《そもそもこのメールは誰から送られてきているんだろう》

ヴーッ

『FROM :-----------------------------
 件名 :予選と同じ。
 本文 :(本文はありません)    』

P『!!!』


―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――ブツンッ

冬優子「第三者視点から眺めるのも、記憶を遡るのも、やってみるとあんまり楽しくないわね」ポチッ

冬優子「このルートを最後まで見る気でいたけど、もういいわ……」

冬優子 ポチッ・・・

冬優子 ポチポチ

冬優子(見たかった録画のを見終わって、録画した番組のリストを意味もなく行ったり来たり……まるでそんな感じ)

冬優子「……あ、これって」

冬優子(√Wの終わりに見た、“あの子たち”の会話……)

冬優子「なんでこんな“見たことのない記録”があるんだか」

冬優子(趣味の悪い誰かがここに保存してたとか――なんてね)

冬優子「さ、次、いくわよ」カタカタ

タンッ


668: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 21:55:34.08 ID:ZVcu4KcN0

>load-memory_FuyukoMAYUZUMI before>>534

~???~

「冬優子ちゃん!」

冬優子「……え」

「楽しいことしてるんすか? だったら、わたしも混ぜて欲しいっす!」

冬優子「別に、楽しくなんかないわよ」

「えー……つまんないっすー」

冬優子「はいはい、悪かったわね」

冬優子「……」

冬優子「……あんた、大丈夫なの」

「?」

冬優子「いや、そんなキョトンとされてもね……」

「どういうことっすか?」

冬優子「あんたのこと、ついでに調べてたんだけど」

冬優子「いろいろと事情……あるんでしょ」

「あー……」

冬優子「もう最後よ、次のルートでね」

冬優子「選ばれなかったり、名前を忘れられたりしたら……」

冬優子「……こんな悪趣味なゲーム、引き受けちゃって、まあ」

「あはは」

冬優子「何笑ってんのよ」

「もうあんまり覚えてないっす。そのときのことは」

「いや、記憶してないわけじゃないんすよ? そのときの気持ちとか、そういうのが思い出せないってだけっす」

「そもそも、あれは“わたしだけどわたしじゃない”っす」

冬優子「……」

「冬優子ちゃん……?」

冬優子「……ううん、なんでも」

冬優子「ま、頑張りなさい」

「はいっす! じゃ、行ってくるっすよ!」フリフリ

冬優子 フリフリ

冬優子(勝手にやってきて勝手に去っていく――自分勝手もいいところよ、ったく)

冬優子(こうやって見送れるのも、これで最後なのかしら)

冬優子 カタカタ

冬優子「……そうだ」



ゴウンゴウン

冬優子「……」

???「……」

冬優子「……自分の姿を自分で見るってのも、変な話ね」

冬優子(こんなこと、たぶん許されない……)


冬優子『お腹出てるの、見間違いじゃないわよ』

冬優子『言ったでしょ。あんた1人の身体じゃないって』


669: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 22:29:16.14 ID:ZVcu4KcN0

冬優子「……」


冬優子『いるわよ』

P『え?』

冬優子『いまさすったところ。人がいるって言ってんの』


???「……」

冬優子(書き換えでこんなこともできるこの“立ち位置”も、そうとう狂ってる)

冬優子(でも、もっと狂ってるのは、実行してるふゆ自身なのかもね)

冬優子「……はぁ」

冬優子(あさひがあのゲームに勝てるような環境を作るには、余計なものの介入は減らさないといけない)

冬優子(それは、ふゆだって例外じゃない)

冬優子(愛依のときにあれだけいろんなことが起こったのは、アップデートされた“このふゆ”がワールドにいたから――とも考えられるし)

冬優子(ふゆ関連のイベントを省くだけじゃ、やっぱりだめだったってことね……)

冬優子(……それなら、ふゆはここから様子を伺って、代わりに“別のふゆ”を送り込めばいい。人一人を最初から作り出す方法なんて、管理者になりたてのふゆには、まだわからないけど)

冬優子(既に“出来上がった人”を適当に書き換えて“作り直す”なら、いまのふゆには難しくない)

???「……」

冬優子(ガラス越しに、もう一人の自分を眺める)

冬優子「って、あさひのためにここまでやってるのも、思えば不思議な話ね」

冬優子(もちろん、最優先の目標はこのワールドを無事終えることだから、こうしてあさひがうまくやれるようにふゆがなんとかするのは、変なことじゃないけど)

冬優子(あいつなんて――って思ったこと、たぶん、数え切れないほどある)

冬優子(でも、嫌ったり憎んだり――そういうのは、もしかしたらないかも。いまだって、こうしてらしくもない縁の下の力持ちをしてるわけだし)

冬優子「あ……」

冬優子(そっか)

冬優子「……あーあ、ったくもう」

冬優子「はいはい、わかってるわよ」

冬優子「思ってた以上に、ふゆはあいつのことが――あさひのことが好きだった、って、そういうことでしょ」ハァ

冬優子(こんなこと、こうやって一人でいるから言えるだけ……)

??? ニコ

冬優子「ちょっ、何笑って――」

冬優子(ふゆと“別のふゆ”を隔てるガラスに自分の顔が映って、ふゆがいまどんな顔をしてるのか――見えた)

冬優子「――笑ってるのは、ふゆの方……?」

冬優子「そっか、あんた、ふゆの真似して……」

??? ニコ

冬優子「! グスッ……ううっ……!」

冬優子「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

冬優子(あんたは、“別のふゆ”なんかじゃなくて、本当はふゆの……!)

冬優子(このワールドが完結してその先がなかったとしても、それは変わらないのに……)

冬優子(はじめて、心の底から今の立ち位置が嫌になった)

冬優子「……っ、もう引き返せないのよ、ふゆ」

冬優子(アイドル黛冬優子――最早懐かしいわね。別に、アイドルを引退した覚えはないけど)

冬優子 ポチッ

冬優子(あとはプロデューサーへの感情を必要最低限に抑えた“黛冬優子”を、この子にインストールするだけ)

冬優子「サイバーパンクなんて比じゃない――迷光の進む先……」


670: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 23:08:47.29 ID:ZVcu4KcN0

>load-memory_FuyukoMAYUZUMI before>>590

冬優子「なによ、これ……」

冬優子(あさひが――消えかけてる……? プロデューサー以外のキャラクターの記憶には――もう残ってないなんて)

冬優子「……!」

 <――ただし、存在が不安定なままなので、プロデューサーさんの記憶にはちゃんと残り続けてくださいね>

冬優子「まさか……!」

冬優子(あさひは、誰かの手で例外的にルートが終わってもリセットされてないようにされている――)

冬優子(――つまり、あいつだけはかなりの時間が経過していることになる……)

冬優子(……管理者でもないただのワールド上のキャラクター――それも構築がバッタもん同然なら、なおさら安定しつづけるなんて不可能……!)

冬優子「ほんっっと、最悪なゲームね!」ガンッ

冬優子(このままじゃ、プロデューサーがあさひのことを忘れるのだって時間の問題じゃない!!)

冬優子「これ以上……ふゆになにができるっていうわけ……?」



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI when>>597

冬優子(万事休す……ってことなの……?)

冬優子(“送り込んだほうのふゆ”も忘れてるみたいだし、もうどうすればいいのやら)

冬優子 ポチポチ

冬優子(こうして、ただ眺めてるだけなんて……)

冬優子「……あれ、いまのって」

冬優子 ポチッ



>load-response from>>597

冬優子『愛依なら夕飯の当番とかで急いで帰ったわよ』

P『そうか』

冬優子『……悪かったわね』

P『なにが?』

冬優子『愛依でもあさひでもなくて、ここに来たのがふゆで』

冬優子『別にあんたがいるかもと思って会いに来たわけじゃ……ない……んだから』ボソッ

P『ははっ、そんなことないぞ。会えて嬉しいよ』



>load-memory_FuyukoMAYUZUMI back when>>597

冬優子「いま「あさひ」って……! 「あさひ」って言ったじゃない!!」

冬優子(というか、プロデューサーはなんで気づかないのよ! 精神的に疲弊してるからって、……もう!!)

冬優子「“ふゆ”、大手柄よ!!!」

冬優子(まだ完全に記憶が消えてなかったなんてね!)

冬優子(“あのふゆ”の中にあさひがあるなら……通常キャラにあさひに関する記憶が少しでもあるなら……)

冬優子 カタカタ

冬優子(……あのワールド内で完結するバックアップを作って、あさひが消えないようにできるはず!)

冬優子「はんっ、ふゆを舐めるんじゃないわよ……!」

冬優子 カタカタ

冬優子(たとえプロデューサーすらあさひのことを忘れても、あさひが消えないようにしてやるんだから……!!!)

冬優子(……頼んだわよ)

冬優子 タンッ


671: ◆bXCm/le03U 2021/06/17(木) 23:52:18.61 ID:ZVcu4KcN0

>load-memory_FuyukoMAYUZUMI before>>635

冬優子「……終わったわね」

冬優子(プロデューサーは間に合わなかったけど、それでも、最後にちゃんとあさひを選んだ……か)

冬優子「まあ、あいつの――あさひのあんなに幸せそうな顔なんて、ふゆですら見たことがなかったし……」

冬優子(……納得して消えることができたなら、ふゆも動いたかいがあった、ってことよね)

ふゆこ「……」ツカツカ

冬優子「あ、おかえり、“ふゆ”。ご苦労さま。お手柄だったじゃない」

ふゆこ「……」コクリ

冬優子「……」

冬優子(ワールドを失って初期化状態同然――ってとこかしら)

冬優子「慚愧の極み、ね」

冬優子(このままじゃ、この子は本当に、ただの道具で終わっちゃう……)

冬優子「そんなことって……」

 <――かなり極端に設定したので、デバッガーが必要なんです>

冬優子「……そういえば」

冬優子(デバッグが終わったということは、オリジナルのあさひを実装したワールドが作られる……?)

冬優子(どのみち、ふゆは――この私はワールド上の1キャラクターとして振舞えない)

冬優子(だったら、次からの黛冬優子は……)

ふゆこ「……」

冬優子「ちょっと待ってて」

冬優子 カタカタ


冬優子「……これでいいはず」

ふゆこ「……」

“ふゆこ” ジジッ・・・バチバチ

“冬ゆこ”

“冬ゆ子”

“冬優子”

“冬優子”「……」

冬優子「あんたは、自分の人生をいきなさい」

冬優子「たとえゲームのキャラクターに過ぎなくても、途方もない円環の中をシステム上で走り続けるだけだとしても」

冬優子「プロデューサーに出会って、アイドルになって、悩みながらも楽しくてしょうがない時間を過ごしていって」

冬優子「こんなことを言う資格はないかもしれないけど、こんなことしかしてあげられないけど」

冬優子「“アイドル黛冬優子”を……あんたにあげるわ」

“冬優子”「……」コクリ

冬優子(自己満っていうなら、それでもいい。ふゆにできる贖罪はこれだって思っただけなんだから)

“冬優子” ポロポロ

冬優子「ちょっと、何泣いてるのよ……」


??? ニコ

冬優子『ちょっ、何笑って――』

冬優子『――笑ってるのは、ふゆの方……?』


冬優子「……そっか。泣いてるのは、ふゆの方だったってわけね」ポロポロ


672: ◆bXCm/le03U 2021/06/18(金) 01:08:14.26 ID:j6EBeguK0


------------------------------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[ANNOUNCEMENT]

>黛冬優子がキャラクタースロットにセットされました。
>上書きしますか? Y/N
>Y
>……
>リソースの上書き完了。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------


冬優子「行っちゃった……か」

冬優子「……」

冬優子「……さて、何から始めようかしらね」

冬優子 カタカタ

冬優子「あ、そういえば――」

冬優子(星……あいつの歌にあったはず)

冬優子「――プロデューサーは自覚してなくても、あさひはもう何度も星を見に行ってるんだった」

冬優子(たぶん、そこには特別な思いがあったんでしょうね)

冬優子「……」

冬優子(ふゆにとっては……“このふゆ”にとっては、芹沢あさひといえばあいつだけなんだから)

冬優子(これから始まる“本当の”――“本来の”物語ではそうじゃないとしても)

冬優子(あさひがバッタもんで、ふゆがふゆじゃなかったとしても)

冬優子(私の本物は、ちゃんと、ある)

冬優子 ポチポチ

冬優子 ピッ


------------------------------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[MANUAL OPERATION]

>start-music go
>......
>menu sound-set 星をめざして.mp3
>......
------------------------------------------------------------------------------------------------------------


冬優子「んー……っ!」ノビー

冬優子「ふぅ……」

冬優子「……」

冬優子「……よし、やるわよ」

冬優子(管理者視点から見えるものをどうやって理解するか……いろいろ考えたけど)

冬優子(せっかくこの立ち位置にいるんだから、いっそ作ってしまえばいいのよ――)

冬優子(――世界を、ふゆの手で、ね)

冬優子「とはいえ、ふゆがもともといたレベルのワールドは、まだまだ人外未知といった感じ、か」

冬優子「まあ、まずは、ふゆでも扱えるくらいのやつから始めればいいわ」

冬優子(たしか、コンソールに管理者権限で入るとわりかしすぐのところに……あった)カチカチ

冬優子(この使い捨てられたデータが参考になりそうだし)

冬優子「問題は……キャラクターをどう配置するか、ね」

冬優子(プロデューサーの配置はそもそも起動のために必須だからいいとして……)

冬優子(……アイドルを決めないと)

冬優子「……」


673: ◆bXCm/le03U 2021/06/18(金) 01:45:07.35 ID:j6EBeguK0

冬優子 カチカチ

冬優子「……」

冬優子 カタカタ

冬優子 タンッ

冬優子「……」

冬優子 カチッ

冬優子「……! これって……」

>WELCOME!
>USER: FuyukoMAYUZUMI(ADMINISTRATOR, ORIGINAL)
>……
>PERSONA: CHARACTER(IDOL)
・ToruASAKURA
・MadokaHIGUCHI
・KoitoFUKUMARU
>PERSONA: TWO-WAY_CHARACTER(IDOL)&&PLAYER(PRODUCER)
・HinanaICHIKAWA (CONFIDENTIALITY)

冬優子(……見てはいけないものを見た気分というのは、たぶん、こういうことを言うのね)

冬優子「でも、いまのふゆは管理者だから――」カチカチ

冬優子 カチッ

>……
>AVAILABLE_FOR_YOU_TO_DEPLOY!

冬優子「――使うことができる、か……」

冬優子「……」

冬優子(他に使えそうなキャラクターのあてもないし、決まりね)

冬優子 カタカタ


冬優子 カタカタ

冬優子 カチッ

冬優子「……っし、最低限、形になったわ!」

冬優子(あとはこの4人の関係性を設定しないとね)

冬優子(たしか、幼馴染どうしが何組かいたような……)

冬優子「……あれ、思い出せない」

冬優子(そもそも、ふゆがまともに接したことがあるのは――はたして何周前でしょうかって話)

冬優子(覚えてらんないわよ、そこまで……)

冬優子(……あさひじゃあるまいし、無理よ無理)

冬優子「まあ、まとめて全員幼馴染どうしってことでいいでしょ」カタカタ

冬優子「あの世界における設定なんてあってないようなもんよ、きっと」

冬優子(この4人も、あの時は試験的に投入されていた感じだったし)

冬優子「なんていうか……設定しやすい」

冬優子(というより、いろいろと解釈する余地がある……?)

冬優子「浅倉透、樋口円香、福丸小糸、それから、市川雛菜……」

冬優子「……誰もが、誰なのか、わからない」

冬優子(情報が少ないのよ。存在感はあるのに、ほんと、変な感じ)

冬優子「透明っていうのは、こういうことを言うのかもしれないわね……」

冬優子「……」

冬優子「……何言ってるんだか」

冬優子 カタカタ

冬優子 タンッ


674: ◆bXCm/le03U 2021/06/18(金) 02:10:57.86 ID:j6EBeguK0

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2005726
[FILE: STABLE, ADMIN SETTINGS]

>準備完了。
>起動しますか? Y/N
>......
----------------------------------------------------------------------------------------

冬優子「じゃあ、はじめるわよ」

冬優子 カタカタ

冬優子 タンッ

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2005726
[ORIGINAL THREAD: https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1594223305/]

>起動中。しばらくお待ちください。
>......
>起動しました。
>通話による管理委託システムにエラーが発生しています。起動には問題ありません。
>現在、件のシステムによる自動送信は“オン”となっています。
>変更または停止のためには、管理者権限による設定の変更が必要です。
----------------------------------------------------------------------------------------

~事務所~

円香「はぁ……」

円香「……早く着きすぎた」


~事務所付近のとある路地~

小糸「いつもと違う道……」

小糸「き、気分転換……だから」


~駅前のコンビニ~

透「──あ、ふふっ」

透「財布ないわ」


~Pの自宅の近所~

雛菜「……」

雛菜 <―><―> ボーッ

雛菜 <●><●> パチリ

雛菜 スタスタ

雛菜 ピタッ

雛菜「……やは」

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2005726
[ORIGINAL THREAD: https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1594223305/]

>プレイヤーを追跡中。
>......
>特定しました。
>同期作業開始。
>......
>同期完了。
>モニターを開始します。
>REFERENCES: FROM_>>2_OF_https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1594223305/
----------------------------------------------------------------------------------------

ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピ……

P「……っ」

P「……朝か」


TO BE CONTINUED IN THE LAST TIME.


675: ◆bXCm/le03U 2021/06/18(金) 02:18:05.28 ID:j6EBeguK0

このスレッドにおけるお話の本編はここまで。

noctchill編と同様に追加要素があるので、もう少しここ(このスレッド)で投下します。なので、Straylight編そのものは、まだ終了していません。

よろしくお願いします。


676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/18(金) 02:19:09.83 ID:67JBBaqDO



背筋ゾクゾクしかしないわさ……


677: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 00:35:57.28 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「……と」

冬優子「あとは基本様子見――ようは放置ゲー」

冬優子(ビルドしたときにエラーっぽいのがいくつか出てたけど、ちゃんと動いてるってことは大丈夫……よね?)

冬優子「……」

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

8:
~事務所~

P「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、っ……はぁっ、ぁあっ」

P「つ、着いた……」

P(日ごろの運動不足がたたってしまった……)

P(が、しかし!)

P「涼しい~~」バタリ

P(なんだか事務所に人の気配もしないし、玄関だけど座っちまうか)

P ハァッハァッ

P(……い、息が上がったままだ……)

P(もう少し身体を動かしたほうがいいのかな?)

P「あ……」


「――なんだ、変質者かと思ったらあなたでしたか」


P「あ、ああ。おはよう円香」ハァハァ

円香「ハァハァいいながら挨拶しないでもらえますか? 不快極まりないので」

P「ご、ごめん……」

P「駅前から走ってきたもんだから、こんなになっちゃって」

円香「いい年した大人が街中で走っちゃうなんて……あなたはドラマの主人公か何かなんですか? ミスター・ヒーロー」

P「いい年っていったってまだ20代だからな」

円香「もう20代、の間違いでしょ」

P「うう……涼しい部屋に早く入りたかったんだよ。よいしょっと」

P「いま事務所には、円香1人か?」

円香「ええ。不幸にも」

円香「だから玄関から息を荒げた人物の気配がしたときは通報する準備をして向かいましたよ」

P「すまない……それは怖かったよな」

円香「……冗談だっての」ボソッ

P「え?」

円香「ひとりごとです。お気になさらず」

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「……」

冬優子(記録を眺めるのとはまた違う感じがするわね)

冬優子(現在進行形の……“生きている世界”)

冬優子(ふゆが作った世界)

冬優子「プロデューサー……」

冬優子「……やめやめ、いまはそれよりも気にしないといけないこと、あるし」

冬優子(仕組みとか)


678: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 00:59:34.03 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

小糸「えへへ、いってらっしゃいってことです!」

小糸「それから……」

小糸「……帰ってきたら、つづき、しましょう」

END.

>福丸小糸のエンディングが1つクリアされました。

>市川雛菜に関するエンディングに行くための条件が1つクリアされました(残り2つ)。

>冒頭に戻ります。

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「2周目終わり……か」

冬優子「順調にいけばあと――」

冬優子「――ん?」

冬優子(“市川雛菜に関するエンディングに行くための条件が1つクリアされました(残り2つ)”?)

冬優子(普通に攻略対象にしたはずだけど……)

冬優子「……そういえば」

冬優子(この子だけは属性が少し違ったわね)

冬優子「……」

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

141:
透「う~ん」

P「どうした透。スマホいじりながらうなったりして。ゲームでもしてるのか?」

透「そんなとこ。あっ……」

透「えいっ」

透「ふふっ。まだ、勝負はこれから」

P「なんのゲームか気になるな」

雛菜「マリカーってやつじゃな~い?」

P「ああ……そういえば流行ってるらしいな」

透「2周目まではあんまりだったけど」

透「ここで……よっ、と。巻き返す」

P「ははっ、白熱してるな」

P「ゲームか……久しくやってないな……」

P「……」

P「……仕事すっか」

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「嫌な予感がするわ」

冬優子(何かが不自然なのよ……具体的に何がっていうのはわからないけど)

冬優子「この違和感は何?」

冬優子(でも、ふゆは“知ってる”)

冬優子(まだ1つのキャラクターに過ぎなかった頃に感じた――恐怖。それから……)

冬優子「……“この位置”に来て、繰り返しの環から飛び出て……」

冬優子「……結末もなくて、ちょうどいいところで「END.」も出なくなってからだいぶ経つけど……」

冬優子(これはふゆの経験則みたいなもの)

冬優子「……“記憶を持ったまま繰り返すとどう振舞うか”くらいは、なんとなくわかるのよ」


679: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 01:26:21.87 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

P「アッ、エ、エエッ」

P「……」

P「??? ! !?!?」

P「――あぁあああぁぁぁああぁぁあぁああアァッ」

END.

222:
1.直前の選択肢に戻る。 
2.冒頭に戻る。

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「チィッ……! こうなったか……!!」

冬優子「どういうこと? 望まない方向だからこうしたってわけ……!?」

冬優子(ほんっとに読めないやつ! 急ぎとはいえ、配置すべきじゃなかったわね……)

冬優子(……市川雛菜)

冬優子「自分のルートに来るための条件をつけてるのは、もしかして――」

冬優子(――待ってる、っていうの?)

冬優子「いや、そんな単純な話じゃないわね、きっと」

冬優子「探さないと……この子の詳細情報」

冬優子 カタカタ


冬優子 ダンッ

冬優子「……はあぁぁ」

冬優子(そう簡単には見つからない……か)

冬優子「ふゆが使えるようになったシステムには気の遠くなるような量のデータがあるし」

冬優子「これを地道に探索するのは現実的じゃないわね」

冬優子(それなら――)

冬優子「――ふゆが作ったワールドの中で、可能な限り調べてみるしかないってことよ」

冬優子 カチカチ


冬優子 カチッ

冬優子「……」

冬優子「……これだわ」

冬優子(ふゆも偶然だけど受け取ったことのある“あの電話”――どうやら、ワールド毎に存在してるみたいね)

冬優子 カチカチ

冬優子「なにこれ、バグ?」

冬優子(動かすのに支障はない程度の、小さい警告……)

冬優子「……通話による管理委託システムのエラー」

冬優子(自動送信なのに宛先が指定されていないって出てる)

冬優子(その場合は……どれどれ?)

冬優子「指定されていない場合には、PLAYERの属性を持つキャラクターに送信される可能性がある……」

冬優子「……っ!!!」

冬優子(市川雛菜は――)

>PERSONA: TWO-WAY_CHARACTER(IDOL)&&PLAYER(PRODUCER)
・HinanaICHIKAWA (CONFIDENTIALITY)

冬優子(――他のキャラクターとは、違う)


680: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 01:48:31.08 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

370:
~Pの自宅~

ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピ……

P「……っ」

P「……朝か」


P「いってきます。……って、まあ一人暮らしなんだけどな」

P「よし! 今日も一日頑張るか!」


~駅前~

P(事務所まであと少しだが……)

P「っ、暑いな、まったく……」

P「そうだ」


1.我慢できん……とりあえずコンビニに入ろう。(既読)
2.急いで事務所に行けばクーラーの効いた部屋が待っている!(既読)
3. 路地を歩けば涼しいかな……?(既読)
4.あれ、部屋の鍵ちゃんと閉めたっけ……。

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「でたわね」

冬優子「この選択肢ごと消したら……」ボソッ

モニター<雛 菜「そ う し た ら ま た 作 る だ け で す よ ~ ?」ブォン

冬優子「ひ……!?」ビクッ

モニター<雛 菜「ん ~ ……」

モニター<雛 菜 コンコン

モニター<雛 菜「あ は ~ 、 こ っ ち か ら じ ゃ だ め か ~」

冬優子「……」

モニター<雛 菜 ジジッ・・・

モニター<雛 菜「な ん か 、 安 定 し て な い ?」

冬優子「雛菜ちゃん、幸せ~ってなりたいのはわかるけど、もうちょっと押さえて欲しいなっ」

モニター<雛 菜「そ れ 、 す っ ご い ア イ ド ル っ て か ん じ ~」

冬優子(なによ、それ)

冬優子(……もしかして、記憶が共有されてるっていうの?!)

モニター<雛 菜「?」

冬優子「ふゆのこと、知ってる……?」

モニター<雛 菜「え ~ ?  知 り ま せ ん け ど ~ ……」

冬優子(ふゆが会ってきた“ヒナナ”とも“雛菜”とも違うってことか)

モニター<雛 菜「そ こ に い る っ て こ と は ~」

モニター<雛 菜「電 話 の と き の ヒ ン ト 、 知 っ て た ん で す ね ~」

冬優子「あはは……」

モニター<雛 菜 ジジッ・・・

モニター<雛 菜「…… そ こ で 見 て て ね」

モニター<ブツッ

冬優子「……」

冬優子(……見てるだけでいられるわけ、ないじゃない)


681: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 02:01:10.11 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

506:
----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2007125
[THE REMADE FILE]

>修正を反映しました。
>参照先のファイルに欠損が見られる箇所があります。処理を続行しますか? Y/N
>Y
>処理を続行します。
>Now Loading...
----------------------------------------------------------------------------------------

507:
起動しました。

>読み込み終了

冒頭に戻ります。

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

509:
~駅前~

P(事務所まであと少しだが……)

P「っ、暑いな、まったく……」

P「そうだ」


/*
1.(Deleted)
2.(Deleted)
3. (Deleted)
4.(Deleted)

(Deleted)
*/

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子 カタカタ

冬優子(好き勝手やってくれちゃって……)イライラ

冬優子「……でもね」

冬優子(管理者は――ふゆなのよ)

冬優子「やられっぱなしじゃないんだから……!」

冬優子(まずは“あいつ”――プロデューサーにメールを……)カタカタ

冬優子 タンッ

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

510:
P「……ん?」

P(何かが一瞬頭をよぎったような……)

P(気のせいか?)

ヴーッ

P「LINE? ……いや、メールだな、これ」


『FROM:-----------------------------
件名 :走って家に戻れ。いつもの道で。
本文 :(本文はありません)     』


P「なんだ? これ」

P「差出人のところ、なんで書いてないんだよ」

P「ったく……スパムか何かか」

P「とにかく事務所に行って一息つこう。早くこの暑さから逃れたい」


682: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 02:13:57.44 ID:/xJcGNlP0

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「……いやそこは気づいてほしかったわよ!!」ドンッ

冬優子(ま、まあ、急いで超短文を送りつけたふゆも悪かったかもだけど……!)

冬優子 カタカタ

冬優子「とりあえず、少し書き加えたメールを送ってはみたものの」

冬優子(もうめちゃくちゃ)

冬優子(管理者じゃなくてもここまでの権限を持ってるだなんてね)

冬優子「そうだ……この子が書き換えてる部分をふゆがいじれば……」

冬優子(めちゃくちゃにされたんだもの、めちゃくちゃにしかえしてやるわ……!)

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

P「よし、じゃあお前ら、レッスン頑張ってこいよ」

円香透小糸雛菜「やは~、「やは~、「やは~、「やは~、がんばりま~す」がんばりま~す」がんばりま~す」がんばりま~す」

P「っ、ひ、ひぃっ!?」

円香透小糸雛菜「どう「どう「どう「どうしたの~?」したの~?」したの~?」したの~?」

P「い、いや、お前ら息ぴったりだと思ってさ、あ、はは……」ビクビク

517:
4人「ん~?」

P(目の前にいる4人は同時に声を発して顔を見合わせる)

P(すると、雛菜と呼ばれる子だけがこちらを向いて……)

雛菜「あ~、なんかしっぱいしちゃったかも~」

P(そういう子以外の3人は、固まって石像のように動かない)

P「はぁっ、はぁっ……ぐっ」

雛菜「そんな顔しないで~……」

雛菜「ん~、どうしたら~……」ポチポチ

雛菜 ピッ

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

冬優子「っし! 目にものを見せてやったわ!」

冬優子「次で決着をつけるわよ」

冬優子 カタカタ

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――

P「……ん?」

P(何かが一瞬頭をよぎったような……)

P(気のせいか?)

ヴーッ

P「LINE? ……いや、メールだな、これ」

P「2件か」


『FROM :-----------------------------
 件名 :走って家に戻れ。いつもの道で。
 本文 :スマホを奪ってお前が出ろ  』

『FROM :-----------------------------
 件名 :家の鍵は閉めたのか?
 本文 :急げ            』


P「……」

P ダッ


683: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 02:16:53.27 ID:/xJcGNlP0

525:
----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2009219
[THE REMADE FILE]

>ようこそ。管理者。
>音声であなたの構想を反映します。
>半角英数字でRを入力してEnterキーを押し、できるだけ具体的に述べてください。終了するには、半角英数字でEを入力してEnterキーを押してください。
>R
>…………
>…………
>…………
>…………
>…………
>…………
>…………
>E
>データの処理を行います。しばらくお待ちください。
>処理が完了しました。
>音声は問題なく認識されました。情報の追加を希望するにはHを入力してEnterキーを押してください。以上で終了ならば、何も入力せずにEnterキーを押してください。
>
>実行しますか? Y/N
>Y
>承知しました。新しいシステムに移行します。なお、このプログラムは一定時間後に破棄されます。
>Now Loading...
----------------------------------------------------------------------------------------

526:
再起動します。

――――――――---……---――――――――

>Now Loading...(時間がかかっています)
>読み込み終了
>表示を通常モードに移行

起動しました。
プログラムを実行します。

527:
----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2018424
[FILE : STABLE]

>自動診断ツール起動。
>......
>エラーは見つかりませんでした。正常と判断されます。
>ようこそ。管理者。
>スタートします。
----------------------------------------------------------------------------------------

528:
THE IDOLM@STER SHINY COLORS

Now Loading...


P(283プロダクションに入社して数か月……いよいよ俺が、アイドルをプロデュースする時が来た)

P(ずっと憧れていた仕事をようやく任されたんだ、これから精一杯頑張るぞ!)

P「……」

P「……なんてな」ボソッ

P「おはようございます! って、天井社長……?」

社長「おはよう、お前を待っていたぞ――」


はづき「――……ふわぁ~? なんですか~急に大きな声出して~……」

社長「は、はづき……なぜ床で寝ているんだ」

はづき「すみません、ソファへ着く前に、眠気に負けてしまいまして~……」

P(はは、そうだったそうだった。相変わらずだ)

社長「せっかくまじめな雰囲気を出したというのに……――」


684: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 02:35:39.76 ID:/xJcGNlP0

はづき「――ですので、精一杯頑張っていきましょ~! 私もたくさんサポートさせていただきますね~」

社長「……少しアドバイスしておくが、お前は、283プロダクションのプロデューサーだ」

P「担当アイドルと他のアイドルたちを交流させることも重要になってくる、ですよね?」

社長「む、ま、まあ、そうだが……。わかっていればよろしい」

はづき「では、そろそろお仕事に移ってもらいましょうか」

はづき「今回プロデュースするアイドルは――」


P(アイドルのプロデュースは、あらかじめ決められた選択肢から選んでするものじゃない)

P(それに、他の可能性を探ってみたかったり都合が悪かったりで何度も繰り返すものじゃない)

P(俺は俺が思うように、1度きりのプロデュースで、アイドルを輝かせるために全力を尽くす)

P(これが、俺の望んだ“世界”――選択肢と繰り返しの生むものを知り、それを拒否して、俺の知る悲劇の可能性を排除した環境)

P(この“世界”で全力を尽くしてこそ、俺は心からこう言えるんじゃないか――)

P(――よし、楽しく話せたな。と)


-noctchill編- END.

―――――――――――――――――――――---……---―――――――――――――――――――――ブツンッ

冬優子「ふうぅぅぅぅぅっ」

冬優子(疲れた……)

冬優子「……終わったわね」

冬優子「……」

カツッカツッ

冬優子「?」

ピタッ

P「すみません、ちょっといいですか?」

冬優子(これって……ふふっ)

冬優子「はい、なんですかっ?」

冬優子「ふゆに何かご用事ですか?」

P「いえ、こちらこそ突然すみません。用事と言いますか……」

P「私は、283プロダクションという芸能事務所でプロデューサーをしている者です」

P「アイドルに興味はありませんか?」

冬優子「……」

P「……」

冬優子「……っく、あはははっ」

冬優子「ほんと、笑える」

冬優子「そうよね、一応は、初対面なんだし」

P「ああ……一応は、な」

冬優子「どう? ふゆの豹変ぶりに幻滅した?」

P「いいや、そんなことはない」

P「確かに、俺は君と会ったことがない。けれど、こうして“何度も会ってる”」

冬優子「そうでしょうね。多少の違いはあれど、ふゆも似たようなものよ」

冬優子「とりあえず、ようこそこちら側へ――とでも言っておくわ」

P「はは、そうだな。よろしく頼むよ――」

P「――冬優子」

-Straylight編- END.


685: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 03:11:57.16 ID:/xJcGNlP0

【予告】

キーンコーンカーンコーン

「すぅ……」zzzZZZ

ユサユサ

「んんっ……すぅ……」zzzZZZ

「ありゃ、これはかなりの熟睡度……いつも以上に手ごわいかも」

「……」zzzZZZ

「Pた~ん、もう起きる時間だよ~~?」ユサユサ

P「……っ」

「このままだと、ホームルームで先生に見つかって、名指しで注意されちゃって、Pたんは恥ずかしい思いをすることに~……」

P「わかった……わかったって……っしょっと」ムクリ

「ようやくお目覚め~? ほんと、いつも起こしてあげてる三峰には、もっと感謝してくれなきゃな~~」

P「ん゛んーっ……ふぅ。ああ、いつもありがとうな、結華」

結華「! ……わ、わかってくれればいいのだよ、わかってくれればさー」

P「……」

結華「Pたん? どしたの?」

P「いや……なんでもない」

ガララ

「は~い、それじゃあ、ホームルームはじめますね~」

ガヤガヤ

結華「おっ、はづきち先生の登場だ!」

P「……」

結華「今日も美しいな~。Pたんもそう思わない?」

P「ああ、美しいな……」ボーッ

結華「はぁ……まだまだおねむなPたんであった」

P(学校……いつも通りの朝)

P(俺の日常……)

P(……だよな?)

――――――――---……---――――――――
~教室~

はづき「転校生を紹介しますね~。どうぞ……」

「月岡恋鐘ばい! あっ……です!」

恋鐘「よろしくお願いします!」

――――――――---……---――――――――
~廊下~

「おや、こんなところで、どうしたんだい?」

P「え? いや、その……」

「おっと、いきなりで驚かせてしまったかな。私は――」

咲耶「――白瀬咲耶だ」

――――――――---……---――――――――
~保健室~

P(つい見惚れてしまった……)

P「……えっと、幽谷霧子さん、だよな」

霧子「……! わたしの名前、覚えていてくれたんですね……」


686: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 03:47:12.12 ID:/xJcGNlP0

――――――――---……---――――――――
~センター街~

P「いいな。約束は守ってもらうぞ」

「どうですかねー。お兄さん次第かもしれませんねー?」

P「はぁ……」

「私、田中摩美々っていいますー」

摩美々「悪い子なんでー、たくさん迷惑かけてあげますねー」

――――――――---……---――――――――
~校長室~

P「……」

「お前を待っていたぞ」

はづき「校長室で2人きりだと流石に可哀想なので、私もいますよ~」


P「……W.I.N.G.、ですか」

校長「そうだ」

はづき「この学園で最も大きな祭典……」


校長「お前には、そのW.I.N.G.で結果を残してもらう」

はづき「出場する女子生徒たちは、各々自分のサポートをしてくれる味方と一緒に、スケジュールや作戦を立ててるみたいですね~」

校長「有り体に言えば、そう――」

校長「――プロデュースだ」

――――――――---……---――――――――

P「俺が……担当を――」

P「――選ぶ」

――――――――---……---――――――――

結華「私が、アイドル……」

結華「……今日イチ面白い冗談だね、Pたん」

結華「いまなら、なかったことにできなくもないよ?」

P「いや、結華、俺は……――」

――――――――---……---――――――――

恋鐘「ここまで来れたんも、Pのおかげばい!」

恋鐘「まさに、Pはうちの――プロデューサーやね!!」

P「プロデューサー……」

P「……ははっ、そうか」

P(プロデューサー……か)

――――――――---……---――――――――

咲耶「……」

咲耶「これからも私の隣にいてくれるって……そう言ったじゃないか」

咲耶「フフ、どこに行くんだい? P」

――――――――---……---――――――――

霧子「……?」

P「そこにある花が……な」

霧子「お花さん……ううん、お花さん――たち?」

P「気のせいかなぁ」

霧子「……ふふっ」


687: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 04:09:31.73 ID:/xJcGNlP0

――――――――---……---――――――――

摩美々「やっぱりー、Pといると退屈しませんねー」

P「それは良かった」

摩美々「別にー、感謝したとかじゃないんでー……」

摩美々「……摩美々、こんな悪い子なのに」ボソッ

P「?」

摩美々「ふふー、なんでもありませんよー」

――――――――---……---――――――――

結華「Pたん!」
恋鐘「P!」
咲耶「P」
霧子「Pさん」
摩美々「お兄さん」

――――――――---……---――――――――

P「……」

P「………………」

P「……………………いや」

P(本当に、これは俺の日常なのか?)

P(今、俺が見ているのは、一体何だ?)

P「時々見る……妙にリアルな夢」

P「……」

P「……なんてな」

P(高校生にもなって厨二病かよ)

P(結華に笑われそうだ)

P「はぁ……」

――――――――---……---――――――――

「ふふっ……」


P「?!」

――――――――---……---――――――――

P「俺は……」

――――――――---……---――――――――

----------------------------------------------------------------------------------------
OS Version 2.8.3.2019313

>……
>……
>……
----------------------------------------------------------------------------------------

――――――――---……---――――――――

P「ははっ」

P(よし、楽しく話せたな)


――――――――---……---――――――――







-L'Antica編-


688: ◆bXCm/le03U 2021/06/19(土) 04:21:02.07 ID:/xJcGNlP0

以上です。ありがとうございました。

予定よりも時間がかかってしまいました(気づけば10ヶ月近く経っていました)が、Straylight編を終えることができました。文章量がかなり多くなってしまいましたが、最初からこの量でお話を作っていました。お付き合いくださった方々に感謝いたします。

また、Straylight編では細かい訂正を何度か実施しています。すみません。
訂正内容は、スレッド内で「訂正」と検索していただければすべて確認できるはずです。読み返したりまとめたりすることがあれば、ご注意ください。

L'Antica編は近いうちにスレッドを立てる予定です(立てたらここにもURLを貼りに来ようと思います)。こちらに関しては、ペース・文章量はどちらかというとnoctchill編に近いものとなっています。


このシリーズ:
・【シャニマス】P「よし、楽しく……」-noctchill編- 【安価】: https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1594223305/
・【シャニマス】P「よし、楽しく……」-Straylight編- 【安価】: https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1599288272/
・-L'Antica編-: COMING SOON.

※細かいことですが、このスレッドのタイトルの「- Straylight編-」はミスタイプで、正しくは「-Straylight編-」です(Sの前のスペースは不要です)。


689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/19(土) 06:33:23.10 ID:J3m1rTADO



まさに世にも奇妙な物語なりや





L'Anticaはさらにカオスになりそう……


690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/19(土) 09:27:43.97 ID:bMugVOW2o

おつおつ
こっちも何回も読み直さなきゃ……
Adminふゆゆハマり役過ぎてうまいなぁ
-L'Antica編-は人数増すので期待も増すぜ
ありがとうございました!


691: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/06/19(土) 22:39:53.99 ID:C7rHJ9E0o





転載元:【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1599288272/

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コメント

コメント一覧

    • 1 名無し春香さん
    • 2021年07月01日 14:39
    • 5
      飽きずに最後まで読めました。最高
    • 2 名無し春香さん
    • 2021年07月03日 15:09
    • 4
      さすがっす! アンティーカ編が待ち遠しいっすね〜
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