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トップページ音無小鳥 > 小鳥「君の幸せ」

2: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:24:21.63 ID:8vzJLoLuo


プロデューサーさんが、退職するそうです。


3: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:24:48.50 ID:8vzJLoLuo

小鳥「今日の夜、空いてますか?」


4: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:25:59.34 ID:8vzJLoLuo

いつもより早めに仕事を切り上げて一旦家に戻り、とある人に電話をかけます。
急な願いにも関わらず、快く承諾してくれました。
さっと着替えて家を出ます。

予め呼んでおいたタクシーに乗り込み、約束した場所へ。

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5: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:27:49.41 ID:8vzJLoLuo

カラン

ドアベルの音色。
この音を聞くたび、懐かしい気持ちになるのはなぜでしょうか。


マスター「いらっしゃい」


マスターの落ち着いた、低い、それでいて暖かい声。


マスター「まだ何人か居られるけど、じきお帰りになるから」

小鳥「ありがとうございます」


6: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:31:57.91 ID:8vzJLoLuo

カウンターか、テーブルか。
テーブルはステージが見やすいけれど、二人で使うには大きい。
カウンターの距離感はいいけれど、今度はステージが見えない。

どうしようかと迷っているところで、ドアベルが鳴る。
振り返ると、事務所と違い、かっちりしたスーツのプロデューサーさん。

そういえば、こういうところに来るのは初めてだって言ってたわね。
そんなに気張らなくてもいいのに。


7: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:35:44.19 ID:8vzJLoLuo

笑みが漏れていたのか、プロデューサーさんがあたふたしています。


小鳥「ふふっ、大丈夫ですよ、似合ってます。…カウンターとテーブル、どっちにします?」


プロデューサーさんの要望で、カウンターに座ります。


マスター「何に致しましょう」


プロデューサーさんは軽めのカクテル、私はノンアルコールカクテルを頼みました。


8: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:38:57.15 ID:8vzJLoLuo


他愛もない話。


近所の花屋がどう。

住み着いた野良猫がどう。

長年使っている眼鏡がどう。


9: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:41:38.88 ID:8vzJLoLuo

プロデューサーさんは最初は流暢に話していたものの、アルコールが回ってきたのか、瞼を重そうにしています。

店内を見渡すと、既に他のお客さんは全員帰っていたようです。
それを私が確認したと見るや、マスターは静かにカウンターを離れ、お店のドアにClosedを掛けました。

私も、プロデューサーさんに気付かれないようそっと立ち上がり、ステージ裏へ向かいます。


10: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 09:44:11.44 ID:8vzJLoLuo

ふっ、と店内が暗くなる。
そこだけが照らされた、ステージの中央。
マイクから少し引いた位置に立ち、プロデューサーさんの方を見ます。


先程まで、ふとした拍子に寝そうだったプロデューサーさんが、口をぽかんと開けてこちらを見つめていました。

暗くなったのが逆に目を覚ましたのだろうか。
…それとも、私が一人でステージに立っているからだろうか?


15: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 11:12:38.36 ID:8vzJLoLuo

ピアノ奏者と一瞬だけ目線を交わし、正面を見据える。
柔らかい音色が私を心地よく包んで行く。

アレンジされたイントロに合わせ、息を吸い、一歩前へ。


小鳥「君が遠い街へ…旅立つこと、知った日は」


16: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 11:19:00.75 ID:8vzJLoLuo

プロデューサーさんが765プロに来てからのことを思い出す。

事務所は絶えず笑顔で溢れていて、事務所の子たちのワガママにも、困ったように笑いながら相手をしていた。

仕事をしている姿。
事務所の子たちと会話している姿。

何度も見ていたその背中は、何度だって、この胸に思い描ける。

でも、事務所での笑顔の裏には途方もない苦労があること、ちゃんと知ってますよ。


小鳥「夜空から舞い降りた幸を、今。君に伝えたいよ…」


20: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 11:26:11.78 ID:8vzJLoLuo

話している相手が私じゃなくても、見ているだけで自然と笑顔がこぼれて。

誰かと話している姿を、見ることしかできなかったけれど。


小鳥「行かないでって、言えないよ」


でも、私はあなたのことが好きだから。


21: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 11:27:52.24 ID:8vzJLoLuo

小鳥「君の幸せ願ってるよ」


プロデューサーさんなら、きっと大丈夫だって、信じてますから。


23: ◆km.GW4AuOk 2014/07/10(木) 11:31:04.98 ID:8vzJLoLuo

ピアノの音が消える。

静かな店内で、一人の拍手だけが響いた。







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