38 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:25:52.95 ID:y4Q3BJqeo
第四十一夜 四階
ほたる「それではそろそろ次のコーナーへと……」

茄子「次はアイドル百物語ですね。今日はどのような?」

小梅「今日は……怪談としては、正統派」

ほたる「ありそうな……ということでしょうか?」
小梅「ううん。人づての話……だから」
茄子「ああ、なるほど。体験談ではなく、人の間を伝わってきた話なんですね」
小梅「……うん。今回は体験談は、難しいと思う」
ほたる「え? それはなんででしょうか?」
小梅「こ、今回は、安部菜々さんに、お話聞いてきたから……」
茄子「ふむ。たしかに、菜々さんはウサミン星人ですからね」
小梅「そう。ウサミン星人と、ち、地球人は常識が違う……から」
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小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season 4 第四十夜
シリーズスレ
白坂小梅のラジオ百物語
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39 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:26:35.36 ID:y4Q3BJqeo
ほたる「……そ、そういうものですかね?」
小梅「うん。た、たとえば、ウサミン星人はテレパシーが使えるから、化かされるようなことはないって言ってたし……」
ほたる「……そうなんですか」
小梅「あ、あと宝石みたいな……きらきら光る結晶で出来た猫がいて、みんなの悪夢を食べてくれるらしい……」
茄子「さすがですね、ウサミン星」
小梅「う、うん。すごい……」
ほたる「ええと……。ともあれ、今日はウサミン星の特集ではないので、そのあたりにして、菜々さんのお話へと参りましょうか」
小梅「うん。では……聞いてください」
40 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:27:04.45 ID:y4Q3BJqeo
41 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:28:06.96 ID:y4Q3BJqeo
……えーっと、ウサミン星の話で盛り上がっちゃいましたけど、そろそろ始めましょうか。
はい。
みなさん、こんばんは!
ナナです!!
今日は、よろしくお願いしますね。
それで、さっきも小梅ちゃんと話していたんですけど、ウサミン星人の怪談はきっとこの番組の趣旨にはあいません。
だから、人から聞いた話になるんですが、なんだか忘れられない、不思議な話をしようと思います。
これは、ナナが高校生の頃……じゃなかった、高校一年の時に学校の先生に聞いた話です。
その先生が高校生だった頃に経験したと言ってましたから……。
実際に起きたのは、結構前のことになりますね。
42 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:29:38.59 ID:y4Q3BJqeo
さて、当時高校男子だった先生は修学旅行に行きました。
みんなでいろんなところを回って、そして、旅館に入ってわいわい騒いで……。
このあたりまでは当たり前の光景ですね。
事が起きたのは、さすがの高校生も眠くなり始める真夜中近く。
消灯時間もとっくに過ぎ、布団に入って語り合ったりするものの、だんだんと脱落者が出て静かになる時間。
先生の部屋では、昼間にはしゃぎすぎたのか、みんなして結構あっさりと眠りに落ちてしまったそうです。
ただ一人、先生を除いて。
先生は慣れない環境故にか目がさえてしまい、しかたなく、飲み物でも買おうと廊下に出たそうです。
ただ、廊下に出てみて思い出したのですが、その旅館には、各階に自動販売機があったりはしなかったんです。
43 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:31:38.05 ID:y4Q3BJqeo
自販機コーナーがあるのは、先生たちの部屋がある新館からだと地下でしかつながっていない、旧館のロビー部分。
引率の教師の目を盗んで買いに行くには遠い距離です。
泊まってる部屋のそばの廊下に出てるだけならまだしも、そんな遠くまでいってるのが見つかれば、怒られるのは確実ですからね。
まあ、いまどきは、そんな一部にしか自販機がない旅館なんて、ほとんどないでしょうけど……。
なにしろ、昔の話ですし。
ともあれ、どうしようかと考えていると、ふと上の階への階段が見えました。
そちらへと目をやってから、先生は首を傾げたそうです。
あれ、おかしいな、と。
その旅館の新館部分は、先生たちがいまいる三階が最上階のはずでした。
それなのに、階段の向こうには、自分がいまいるのと同じような廊下があるように見えます。
なによりも、そこには自販機がぴかぴかと光を放ちながら鎮座していたのです!
44 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:32:40.06 ID:y4Q3BJqeo
不思議に思いながらも、先生は喜んで階段を上り、お金を投入。
いそいそとジュースを買いました。
ジュースを飲み干しながらその階を眺めたかぎりでは、普通に客室もあるようでした。
『うちの学校が使う部分が三階までってことだったのかな?』
先生は、そう考え、初めて飲んだジュースに満足しながら、部屋に戻ったとか。
ところが。
翌朝、朝食を食べに部屋を出てみると、夜中に見た、そして、上ったはずの階段がありません。
教師や友達に確認してみても、宿の人に聞いてみても、上への階段なんてあるはずがないと言われます。
三階が最上階なのに、上の階があるわけがない、と。
45 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:34:04.06 ID:y4Q3BJqeo
しかし、先生は上ったんです。
ジュースを買って飲んだんです。
あまりにしつこく食い下がったからでしょうか。
宿の人は、従業員スペースの奥にある、外階段を見せてくれたそうです。
それは保守点検用に作られた、屋上へとつながる短く狭い階段で……。
もちろん、四階なんかそこにはありませんでした。
『思い返してみると、見たことないジュースばかり並んでいたよ。でも、別の地方だし、そんなものかと思っていたしなあ……』
先生はそんな風に言って残念がっていました。
『あの自販機に並んだものを買い込んでおけばよかったよ。証拠にもなったし……』
なによりも、そのとき飲んだものは、実に美味しかったそうですよ。
大人になっても、それに匹敵するものが見つからないくらいに。
46 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:35:01.88 ID:y4Q3BJqeo
先生はその夜、どこへ行ったんでしょうね。
もしかしたら、不思議な場所っていうのは、本当に身近なところにあるのかもしれません。
ウサミン星と同じくらい……身近に。
47 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:35:46.85 ID:y4Q3BJqeo
茄子「どんな味だったんでしょうねぇ」
ほたる「でも、別の時空の……飲み物ですよね? たぶん……」
小梅「うん……」
茄子「神話や伝説だと、違う世界の飲み物や食べ物を摂取すると、人の世界へ戻って来られないというのがありますよね?」
小梅「……うん。イザナミとかペルセポネーとか……」
ほたる「そういうものなんですか……」
小梅「うん……。その土地のものを凝縮した象徴的なものが、食べ物や飲み物だって意識があるから……」
ほたる「なるほど……」
茄子「この先生はするっと戻ってこられたということは、そこまで違う世界でもない、本当に近い場所だったのかもしれません」
ほたる「というと?」
48 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:37:12.30 ID:y4Q3BJqeo
茄子「たとえば、その時だけ、十何年後かにつながっていたとか……。今頃は増築されて四階があるとか」
小梅「……タイムスリップ……」
茄子「……まあ、これはたとえばですけど。そんな風に考えると楽しくなってきますよね」
ほたる「たしかに……」
小梅「ただ……この先生は素直に飲み物を買っただけだからよかったけど……」
ほたる「けど?」
小梅「余計なことをしたら……戻ってこられなくなる、ってお話もたくさんある」
茄子「あるはずのない四階を探検してみたりしたら……とりのこされてしまっていたかもしれませんね」
ほたる「そうなったら……神隠しですね」
小梅「うん……」
茄子「あまり不思議なことに深入りしすぎても……ということでしょうかね」
小梅「そうかも……しれない」
ほたる「うむぅ……」
茄子「なにごとも程々がよいということでしょうか。それでは次のコーナーですが、今日は、『場違いな存在』、いわゆるオーパーツについて……」
第四十一夜 終
49 : ◆E31EyGNamM [saga] :2013/10/13(日) 21:38:13.27 ID:y4Q3BJqeo
本日は以上です。
ウサミン星はふしぎがいっぱい。
転載元:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1381326554/
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コメント
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何の意思も介在せず、ただただ”運良く助かった”らしいっていうのが嫌だ
異世界への扉は身近にあって、ほんの偶然で迷いこんでしまうのかも。
#26855
ウルトラQのそれも覚えてるなぁ…
泊まった宿が曰く付きだったのを後日知ったとか、そういう話は多いし
それと… この『先生』って実は安部さんの同級生…(ここで通信が途切れる)
・・・ああ、ナチュラルに地雷をw
ウサミンの先生が高校1年の頃なんだから昔の話で問題ないだろ(棒
ほら、あなたの隣にも…
悪意も別次元も隔絶した話ではなく、
実際は自身と身近な地続きなものなんだな
少なくとも、当時の硬貨が使用可能だった点からして
現代よりもちょっと昔かなぁ?
その点からすると、並行世界がリンク先だった
…の方がしっくり来るかもね