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トップページモバマス > 【デレマス時代劇】大原みちる「麦餅の母」

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:21:21.59 ID:sXCZ/6N50

大原みちるは、幕府付きの料理人であった。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:22:01.78 ID:sXCZ/6N50

彼女は幼い頃、

故郷から遠い仙台藩の『佐久間屋』に奉公に出た。

老舗の料理屋でいつも繁盛していた。

みちるは顔が愛らしいのと、

何を出されても美味しそうに平らげるので、

店の皆に愛された。

みちるの食事は結構に凝ったものがつくられ、おやつも出された。




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4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:22:56.41 ID:sXCZ/6N50


そんな周囲に応えようとしたのか、

彼女は懸命に修行をした。

そして才能が開花した。

他人の思いついた料理でも、

一口食べれば作り方がわかる。

まったく同じものを再現できる。

また、いままで誰も思いつかなかった工夫を

料理に加えることもあった。

その工夫を広める前に、

自分で料理を全て平らげてしまうことも多かったが…。


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:23:44.62 ID:sXCZ/6N50

みちるのいる佐久間屋は、

以前にも増して盛況になった。

美少女の料理人と美味い飯。

評判にならぬはずはない。

幕府がみちるに目をつけるのはすぐのことであった。


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:24:28.90 ID:sXCZ/6N50

当時藩の料理人の禄は8石程度であったが、

彼女には異例の15石が給われた。

実家の大原家は仰天し、狂喜した。

可愛い我が子の大出世である。

親馬鹿子煩悩が悪化してもしょうがない。



7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:25:05.79 ID:sXCZ/6N50

みちるは鳴り物入りで出仕した。

だがここで天狗にならず、

仕事に真摯に取り組んだので、

みちるの名前は更に広まることになった。

あいかわらず、食いっ気は張っていたけれども。


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:25:36.28 ID:sXCZ/6N50

ある時みちるは、

蘭国の『麦餅(パン)』を作る様に命じられた。

聞くところによれば、幕府は蘭国使節のために

『蒸餅(清の蒸しパン)』を振る舞ったのだが、

「これは麦餅ではない」と指摘され、大恥をかいたらしい。

そこで、飛ぶ鳥落とす勢いのみちるに、白羽の矢が立ったと言うわけだ。


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:26:19.45 ID:sXCZ/6N50

みちるのために、

蘭国船で焼かれた麦餅が彼女に与えられた。

みちるは初めて麦餅を食べたのが、これが美味い。

材料には小麦と水(もしくは乳)と塩しか用いていないのに、ほんのり甘い。

砂糖ほど露骨ではなく、奥深く上品な甘さである。



10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:27:07.95 ID:sXCZ/6N50

頬張ると、遠い異国の小麦畑が、

太陽に照らされ風に揺れる様が、ありありと想像できた。

これが食えなかったのであれば、

使節団が文句を言ったのにも納得ができる。

与えられた麦餅を、みちるは結局全て平らげてしまった。



11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:27:47.62 ID:sXCZ/6N50

麦餅作りのために、みちるの工房が建てられた。

意味もなく西洋風だった。

内装は畳であったが、麦餅を焼くための石窯と、

生地の発酵室は、蘭国人の職人が作ってくれた。

これから自分で焼いた麦餅がたらふく食えると思うと、

みちるの胸は躍った。

幕府からの恩賞などよりも、よほど嬉しい。



12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:28:22.73 ID:sXCZ/6N50

しかし麦餅作りはまったく

上手くいかなかった。

材料は単純であるから困らない。

それに蘭国から手順も教えられている。

だが、発酵の過程が再現できない。

出来上がるのは、塩ぱくて薄っぺらいなにかである。


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:29:01.65 ID:sXCZ/6N50

みちるは、何度も製法を確認した。

『麦餅 

 挽いた小麦 塩 水』

これが材料書きである。

発酵の手順には『材料を混ぜて発酵室で寝かせる』、そう書いてある。

難しいことはなにもない。だが上手くいかない。


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:29:36.57 ID:sXCZ/6N50

みちるは大きな誤解をしていた。

ただの名前と思っていた『麦餅』は、

なんとそれ自体の材料であったのだ。


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:30:09.38 ID:sXCZ/6N50

通常、小麦と塩水を混ぜるだけでは生地は発酵しない。

発酵室で酵母の力を借りる必要がある。


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:30:36.85 ID:sXCZ/6N50

酵母は古代伊及(エジプト)で偶然発見されたのだが、

無論当時の幕府は知らないし、みちるも知らない。

日本にいるのかも定かでない。


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:31:05.64 ID:sXCZ/6N50

なので、蘭国の麦餅の欠片を材料に加えなければ、

発酵はできない。

しかしみちるは、それを全て平らげてしまった。

彼女は、初手から詰んでいたのであった。



18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:31:49.98 ID:sXCZ/6N50

麦餅作りは一向にうまくいかない。

幕府からの催促はうるさい。

そして何より、美味い麦餅が食べれられない。

みちるはやけっぱちになって酒を大量に煽った。

工房中に吐瀉物を撒き散らした。

そして、さめざめと涙を流しながら眠りについた。


19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:32:29.58 ID:sXCZ/6N50

翌日目を覚ましたみちるは、

憂鬱な気分であった。

工房中にへばりつく吐瀉物を

綺麗にしなければならなかった。

自分のものとはいえ気分が沈む。

畳などはすべて取っ替えた。

無論みちるの過失であるから、自腹を切る羽目になった。



20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:32:59.95 ID:sXCZ/6N50

発酵室の中もだいぶひどかった。

麦餅つくりがうまくいかない鬱憤のせいか、

ここが一番汚れていた。

やれやれと部屋を掃除していると、

以前作った生地が置いてあった。

みちるが気づかずに、焼かれないままになっていらしい。

もちろんこれらにも、あまねく吐瀉物が降りかかっている。


21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:33:25.59 ID:sXCZ/6N50

みちるは、その生地を目にすると、吃驚した。

平べったかったはずの生地が、

「ムクムクムク…」と膨らんでいたのだ。


22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:34:07.88 ID:sXCZ/6N50

さすがにそれを焼くわけにはいかなかったので、

一旦酵母室は綺麗にした。

そしてまた生地を作って寝かせてみると、今度はうまくいった。

みちるの胃の中で、

酵母が奇跡的に生き残っていたのであった。

そしてそれが発酵室に居着いて、

生地を「ムクムクムク…」と大きくさせたのである。


23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:35:18.64 ID:sXCZ/6N50

出来上がった生地を焼いてみた。

そして食すと、ほんのり甘かった。

酵母が小麦の澱粉を分解して、糖をつくっているのだ。

なぜ上手くいったのかは全くわからなかったが、

みちるは麦餅をせっせと焼き、

それを片っ端から平らげた。望外の幸福である。




24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:35:45.02 ID:sXCZ/6N50

幕府の人間は、報告もせず

麦餅を食い続けるみちるを見て、呆れた。

だが、美味そうに

ふごふごと麦餅を頬張る彼女に、そのうち頰を緩めた。



25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:36:16.85 ID:sXCZ/6N50

その後、使節団によって正しい製法と、

酵母の存在が伝えられた。

みちるの吐瀉物を浴びた麦餅は株分けされ、

全国の料理屋菓子屋に与えられた。

そして日本に麦餅食文化が広まったのである。


26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:36:46.70 ID:sXCZ/6N50

大原みちるは「日本麦餅の母」と呼ばれ、後世まで語り継がれた。


27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:37:59.77 ID:sXCZ/6N50

そして現在。

みちるの子孫が始めた『おおはらベーカリー』、発酵室。

そこでは、かつてみちるの吐瀉物を浴びたパンの一部が、

いまでもせっせと酵母を放出しているそうな。



28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:38:26.92 ID:sXCZ/6N50

おしまい


29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/04(日) 08:39:32.50 ID:sXCZ/6N50

まえがき

アイドルのゲロが日本を変える。


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