2: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:06:12 ID:pRI
【第1問】
この湯気の出てる珈琲を飲み干せ。
ただしこの珈琲は志希が淹れたものとする。
3: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:06:35 ID:pRI
==========
──キミとあたしの日々は、それはそれは刺激的な日々だった。
でもそれは決して壮大な物語だったわけではなく、平和で小さな楽しみが沢山続いてく物語だった──
──キミの些細な言動がとても愛おしい。
こんな日々がずっと続けばいいのに──
==========
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4: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:07:08 ID:pRI
◆◇◆
「ねーねー、プラシーボ効果って知ってる?」
珍しくみんな出払い、他に誰もいない昼間の事務所。
仕事に夢中であたしに背を向けているキミ。
そんなキミに出し抜けに問いかける。
「ん?知ってるぞ。本当は何でもないのに『効果がある』と信じると効果が出ることだろ?」
キミはこちらを見向きもせずにそう答える。
ちょっとは大事なアイドルに構ってくれてもいいんじゃないかなー?
「そーそー、日本語で言うと偽薬効果ってやつ」
「その後に偽物だと知らされても効果が続くんだろ?すごいよな人体の神秘って」
「よく知ってるじゃ~ん!」
「まあお前と一緒にいるとな。そういう方面にも興味が出てきて勉強したりするんだよ」
「へー。じゃあ、そんな殊勝気なキミには一ノ瀬教授の授業を受けさせてあげよ~。ノセボ効果って知ってる?」
「ノセボ効果……?」
5: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:07:45 ID:pRI
そこでやっと興味を示してくれたのか、キミはこっちを向いてくれる。
それとも志希ちゃんの話が長くなりそうだから、仕方がなく向いてくれたのかな~?
まあ、あたしにとっては構ってくれるなら、理由なんてどっちでもいいんだけど。
「それってどういう効果なんだ?」
「プラシーボ効果の反対みたいな感じかな。有害だって思いこんじゃうと、ホントは何でもないものなのに有害な効果が出ちゃうこと」
「ふーん、なるほどな。逆もまた然りってことか……」
「そーそー。思い込みによって良い効果が出るのがプラシーボ、悪い効果が出るのがノセボってとこかな~」
「思い込みにも良い場合と悪い場合があるってことだな」
「それだけ人の気持ちは強いってことかもね」
そんなもんかね?とキミは分かったような分かってないような口ぶりでそう呟く。
そう言っているキミは、この話題に関してあまり強い気持ちを持ってないのかもしれない。
まぁ、本題の前の他愛もない話なんてそんなもんでも充分なのかも?
6: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:08:13 ID:pRI
「それで?一体、何の用で話かけたんだ?」
さて本題がきた。こっちから振ろうと思ったところだから丁度いい。
あたしは後ろ手で持ってたものをキミの目の前に差し出す。
「じゃーん!オシゴト頑張ってるキミに志希ちゃんからコーヒーのプレゼントだよ~!」
「お?気が利くじゃないか!」
「さー、このコーヒーには一体何がはいっているでしょーか?!」
「おい待て。さっきの話からすると嫌な予感しかしないぞ」
「まーまー!グイっといって男らしいトコを見せてよ~」
煽り出したあたしを見て、キミは逃げられないと悟ったようだった。
ひとしきりため息をついた後、まるで哀れな実験の被験者のように恐る恐るコーヒーに口をつける。
最初は唇を濡らす程度、次は口に含む程度、三度目にやっと普通に啜りだす。
7: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:08:28 ID:pRI
「……これ、普通に美味しいコーヒーみたいなんだけど……」
「なーんてね!実は何にも入れてないよーだ!どう?びっくりした?!」
「お前なぁ……!」
「タイクツな日々にちょっとした刺激をアレンジ!」
「お前なぁ……」
そのままガックリ肩を落としたキミ
でも直ぐに立ち直って、またコーヒーに口を付ける。美味しいっていう満足そうなキミの言葉が聞け、あたしも満足する。
さっき何も入れてないって言ったけどあれは嘘。愛情という名のクスリがたっぷり入ったコーヒーを美味しそうに啜るキミを見る。
そのクスリは偽薬なんかじゃないよ。だから効果があると良いな。
そんな些細な実験をした昼下がり。
平和で小さなことだけど、キミさえいれば刺激的で幸せな日々。
こんな日々がずっと続けばいいと思った。
8: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:24:26 ID:pRI
【第2問】
志希が持っている薬品を飲み干せ
ただし全てではなく、どちらかのみ飲み干せば良いものとする
9: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:24:41 ID:pRI
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──ずっと続けばいいと思っていたのに
どうしてあんなことしてしまったんだろう──
──結末がない物語なんてない
だからこそ、あたしはこの物語の結末が心配で心配で仕方がなかったんだと思う──
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10: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:25:15 ID:pRI
「ねーねー」
みんなが帰路につき、他に誰もいない深夜の事務所。
仕事に夢中であたしに背を向けているキミ。
そんなキミに出し抜けに問いかける。
「当事者からすれば幸せだけど第三者から見たら不幸な結末と、第三者から見たら幸せだけど当事者からすれば不幸な結末、どっちの方が良いと思う?」
「なんだそりゃ?」
以前と違い、変な質問だったからかキミはすぐこちらを向いてくれた。
「べつにー……ただの思考実験だよー」
こんな変な質問にも関わらず、なんじゃそりゃ……と呟きながら、キミはすぐに返答してくれた。
11: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:25:28 ID:pRI
「いわゆるメリーバッドエンドってやつか……」
「なにそれ?」
「さっきお前が言った通りの話だよ。そういう結末のことをメリーバッドエンドって言うらしい」
まあ造語というかネット発の言葉らしいけどな、とキミは言葉を続ける。
「ふーん、そうなんだ」
「ギフテッドの志希でも知らないことがあるんだな。何でも知っているかと思ってた」
「あたしだって何でもは知らないよ、知ってることだけ。にゃ~んてね♪」
そんな風におどけてみるとキミにも笑顔がこぼれる。まあ、ギフテッドが何でも知っているわけじゃないのは本当のことだしね。
例えばキミの心の内とか。
12: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:25:42 ID:pRI
「で、結局どっちが好きなの?」
ん?と首を傾げるキミにあたしは、さっきの質問のこと、と追い打ちをかける。
「あいにく俺はハッピーエンド好きでな。そんな結末、どっちにしろクソくらえって感じだよ」
「なにそれ、狡いよ」
「狡くて結構」
「ふーん……。じゃあ、そんな狡いキミにはご褒美にこれあげる!」
そういってあたしは後ろ手で隠し持っていた2つの試験管を差し出す。
左手には脳が溶ろけるような真っ赤な液体入りのものを。
右手には心が冷え込むような真っ青な液体入りのものを。
13: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:26:16 ID:pRI
「…………なんだ……そりゃ……?」
「志希ちゃん特製のおクスリだよ~!キミにはどっちかの被験体になってもらうのだ~♪にゃはは♪」
「被験体にって……そのクスリのか…?」
キミの息を飲む音が聞こえる。
「『アイドルとプロデューサーの関係だから』とかそんな言い訳、聞き飽きちゃった」
そう前置きして、真面目な口調に切り替えて、あたしはおクスリの説明を続ける。
14: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:26:30 ID:pRI
「赤い液体は理性を溶かして感情を爆発させるおクスリ──」
「──こっちを飲めば、あたし達二人は結ばれる。職業倫理なんて何処かに吹き飛ばしちゃってね。当事者二人はハッピー♪」
祝福されぬ恋なら二人で逃避行でもする?
あたし失踪するのは好きだし、キミと一緒ならどこに行ったって構わないよ。
15: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:26:45 ID:pRI
「青い液体は感情を消して理性的になるおクスリ──」
「──こっちを飲めば、あたし達は理想的なビジネスパートナーになれる。好きって気持ちを彼方に消し去ってね。第三者のファンも事務所もハッピー♪」
ギフテッドなアイドルとそれを支える敏腕プロデューサー。
その仕事っぷりが高じてビジネス紙とかにも取材されちゃったりするかもねー?
16: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:27:03 ID:pRI
「いい加減あたしも待ち疲れちゃったよ」
「でももういいでしょ?飽き症の志希ちゃんにしては随分と堪えたほうだよ」
「だから、今日、この場で、今すぐ、どっちを飲むか決めて」
17: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:35:49 ID:pRI
あたしはキミを追い詰める。
急に追い詰められたキミは苦渋の表情を浮かべ、どう切り抜けるか考えているようだった。
でもそんな生半可な逃げは許さない。ここで答えを出してほしい。
そのためにあたしは更にキミを追い詰める。
「あー、もしキミが答えを出せないっていうなら、それはそれでもいいよ。」
「……いいのか?」
一瞬救われたような顔をするキミ
でも待つのは救いではなく地獄かもよ?
「うん。そん時はあたしが赤い液体を飲んで、『好き』っていう感情を爆発させちゃうだけだから」
今夜は誰もいないことを確認済みだしねー。
爆発させちゃったら一体何が起きるのか?
聡明なキミならすぐわかるかなー?
18: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:36:04 ID:pRI
「…………わかった……」
苦虫を噛みしめたような表情でキミはおクスリに手を伸ばす。
さてキミはどっちを選ぶのかな?
……。
……。
……。そっか……。キミはやっぱそっちを選ぶに決まってるよね……。
もしかしたら、私の予想を裏切ってくれるじゃないかって、浮かれてたアタシがバカみたいだったよ。
あたしは項垂れながら選ばれなかった赤い液体を引っ込める。
「……んぐっ……んぐっ……。ふぅ……」
キミは一気に青い液体を飲み干して、なんだか満足そうな顔を浮かべる。
コーヒーを飲む時はあんなに警戒したっていうのにね。酷い人だよ。
19: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:36:23 ID:pRI
「……なんか頭がスッキリ冴えてきたな」
そんなことあるわけないじゃん。
だって『感情を消す』だなんて、そんな危ないおクスリ作れるわけないじゃん。偽薬に決まってるでしょ?
あーダメだダメ。赤いおクスリを飲んだわけじゃないのに、この感情と涙が溢れるのが止まらない。
意思に反してポロポロ涙を零すあたしに、キミは優しい声色で声をかけてくる。
「志希は、選択肢が『当事者だけが幸せになる』、『第三者だけが幸せになる』の2つだって言ってたよな?」
言ったよ。そう言ったじゃん。
で、キミはあたしにとって残酷な選択肢を選んだじゃん。
20: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:41:58 ID:pRI
「……その2つだけじゃ不十分だ」
どういうこと?どっちかしか選べないんじゃないの?だって、あたしとキミの関係の答えは。アイドルとプロデューサーの関係答えは。
「冷静になるクスリのおかげで考えてみたんだけどな──」
「──その二つ以外に、他の選択肢として『両方が幸せになる』っていうのも用意するべきだろ」
そうじゃないと理不尽じゃないか、とキミは何気なくそんな答えを出す。
ギフテッドのあたしが思いもつかなかった、そんな答えを。
「だから、志希、もう少し待ってろ。プロデューサーとしてお前をトップアイドルにしてから、個人的にも幸せにしてやるからよ」
……なにそれずるいよ……。
そんなこと言われたら、あんな選択迫ったあたしがバカみたいじゃん……。
そんな憎まれ口を叩きながらも頬が緩んでいくのを止められない。
21: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:42:08 ID:pRI
「……言っただろ?俺はハッピーエンドが好きなんだって」
そんなことを言うキミの顔は真っ赤っか。
冷静になるクスリを飲んだはずなのにそんな顔をしているからか、キミはバツが悪そうな表情をしだす。
全くそんな顔してたら締まらないじゃん。
ここは志希ちゃんの優しさを見せる場面かにゃ?
そう思いながら、緩みが止まらない自分の顔を自覚しつつあたしはキミに問う。
「ねえ?プラシーボって知ってる?」
「ん?この前聞いたばかりじゃないか……。知ってるって……」
それがどうしたとキミは戸惑いながら問う。
「ふふっ……。つまり、あたしが言いたいことはね?」
22: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:42:23 ID:pRI
あたしが『幸せだなぁ』と思ったらキミのどんな言葉であっても幸せになれるっていうこと!
願わくばキミの方も同じであってほしいな。
一ノ瀬志希というクスリがキミの幸せに寄与しますように。
23: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:49:24 ID:pRI
【第3問】
志希が幸せになる条件を答えよ。
ただし回答の中に「プロデューサー」という言葉を必ず用いること。
24: ◆ukgSfceGys 2018/11/24(土)18:52:39 ID:pRI
以上です。ありがとうございました。
乙女志希ちゃんかつご都合主義でしたが楽しんでいただけたなら幸いです。
問いには各々の回答をしていただけたら幸いです。
めんどくさい志希にゃんとイチャイチャしたい人生だった……。
乙女志希ちゃんかつご都合主義でしたが楽しんでいただけたなら幸いです。
問いには各々の回答をしていただけたら幸いです。
めんどくさい志希にゃんとイチャイチャしたい人生だった……。
転載元:一ノ瀬志希「一ノ瀬志希という偽薬」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1543050313/
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1543050313/
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