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トップページモバマス > 【ミリデレ越境】春菜と紗代子と眼鏡と眼鏡

1: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:52:16 ID:VKu

高山紗代子ちゃんと上条春菜ちゃんの話を書きます。
越境ネタ注意。



2: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:53:17 ID:VKu

上条春菜「プロデューサーさん、見てくださいあの子!」

モバP「え、どれ?」

春菜「あの子ですよあの子! ほら、眼鏡をかけたおさげの!」

モバP「えーっと……。ああ、高山紗代子か」

春菜「プロデューサーさん、知ってるんですか!?」

モバP「ああ。今日の相手だよ。ライブバトルの」

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3: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:53:49 ID:VKu

春菜「だ、誰が?」

モバP「高山紗代子が」

春菜「だ、誰の?」

モバP「お前の」

春菜「ということは、あの子はアイドル……?」

モバP「そうだ」

春菜「そ、そんな……!」ガックシ

モバP「急にどうした春菜」


4: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:54:31 ID:VKu

春菜「あんな、あんなにも眼鏡が似合うアイドルのことを知らなかったなんて……! この上条春菜、一生の不覚です……っ!」

モバP「そんなに落ち込むようなことか?」

春菜「そんなにです! 紗代子ちゃんこそ眼鏡アイドル界に舞い降りた新星! きっと私の良き同志となってくれるはずです!」

モバP「…………」

春菜「こうしてはいられません! プロデューサーさん、さっそくご挨拶に伺いましょう!」

モバP「まあ待て待て。とりあえず準備をしてから──」

春菜「何してるんですかプロデューサーさん! 早く行きますよ!」

モバP「……春菜、765プロの控え室は左だ」


5: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:54:58 ID:VKu

~~


高山紗代子「……」

ミリP「紗代子、大丈夫か?」

紗代子「……緊張はしてます。でも、この日のために一生懸命レッスンをしてきました! だから、きっと……」

ミリP「そうだな、紗代子は頑張ってる。相手はアイドルとしては先輩だけど、その努力は絶対に無駄にはならないよ。全力でぶつかってこい!」

紗代子「っ……はい! 今の私の全力、見ていてください!」


6: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:55:45 ID:VKu

コンコン

ミリP「あれ、誰だろう?」

紗代子「スタッフさんかもしれませんね。私、出ます」

紗代子「はーい」ガチャ 


春菜「失礼します!」


紗代子「!?」

ミリP「!?」


7: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:56:40 ID:VKu

春菜「はじめまして、346プロの上条春菜です! 今日はよろしくお願いします!」

紗代子「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……」

モバP「おい春菜! 廊下を走るな!」

モバP「……ああ、765さんすみません。ウチの上条が挨拶をすると言って聞かなくて……」

ミリP「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそすみません。我々から伺おうと思っていたんですけど……な、紗代子?」


春菜「素敵な眼鏡ですね! それを選んだポイントとかありますか?」

紗代子「えっと、形と色が好みだったので……」


ミリP「ははは、すっかり話し込んでますね」
 
モバP「すみません本当に。おい春菜! もう戻るぞ!」


8: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:57:23 ID:VKu

春菜「ええっ!? 眼鏡トークはまだまだこれからですよ!?」

モバP「高山さん引いてるだろ! 迷惑かけんな! もし集中乱してたらどうするつもりだ?」

紗代子「い、いえ! 私は大丈夫です」

モバP「ほら気ぃ遣わせてる。帰るぞ。こっちにも準備があるんだから」ズルズル

春菜「うう……紗代子ちゃん、ライブバトルの後、じっくりお話しましょうねー!」ズルズル

モバP「お前な、かけるなら眼鏡だけにしとけって俺は何度も──」

バタン


9: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:57:54 ID:VKu

紗代子「す、すごい人でしたね……」

ミリP「ああ、噂通りの眼鏡ストだ」

紗代子「め、眼鏡スト……?」

ミリP「そうだ。眼鏡をこよなく愛する眼鏡アイドル、それが上条春菜ちゃんだよ」

紗代子「……そう、なんですね」

ミリP「もちろん油断しちゃ駄目だ。普段とステージでは別人だなんて、よくあることだからな」

紗代子(普段とステージが別人……)ホワンホワンホワン

???『わーいわーい!』

紗代子「……大丈夫です。油断なんてできません」

ミリP「よし、その意気だ!」

???『紗代子ちゃん、がんばってね♪』


10: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:58:27 ID:VKu

~~


モバP「もう一回確認するぞ。今日のライブバトルは『デュオ』。お前と高山が同時にステージに立ち、2曲連続でパフォーマンスする」

春菜「はい。1曲目が『Snow Wings』。そして2曲目が、765プロの『brave HARMONY』ですよね」

モバP「そうだ。いいか春菜、油断はするな。客の印象に残りやすい2曲目は相手の持ち歌だ」

春菜「油断なんてしません。ステージに立つときはいつも真剣です。そうでないとファンの皆さんと眼鏡に失礼ですから」

モバP「それならいい。場数ではお前が勝っているが相手は765だ。新人かどうかは関係ないからな」


11: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:58:57 ID:VKu

春菜「はい。……でもプロデューサーさん。私、楽しみなんです」

モバP「楽しみ、か」

春菜「い、いえ! もちろん気を抜いているわけではなくって……」

モバP「わかってる。眼鏡アイドル2人でどんなステージになるのか、それが楽しみなんだろ?」

春菜「はい。それも、あの偉大な先輩眼鏡アイドルがいる765プロですから! さすがはプロデューサーさん、お見通しですね!」

モバP「お前がわかりやすいだけだ」

春菜「そうですか?」

モバP「……おっと、そうだ春菜。アドバイスをしておこう」

春菜「アドバイスですか? ぜひお願いします!」


12: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)16:59:21 ID:VKu

モバP「相手を見るな」

春菜「え?」

モバP「高山紗代子を見るな。視界に入れるな。意識を割くな」

春菜「ど、どういうことですか?」

モバP「そして、ステージが終わったらまっすぐ控え室に戻れ。わかったな?」

春菜「そんな、いきなり言われても……」

モバP「……まあ、お前にできるとは思っていない。だけど心の準備はしておけ。期待通りにはならないからな」


13: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:00:01 ID:VKu

~~


『奏でよう、想いをあつめて。大切にあたためてきた日々は』
『お互いの夢、願いを、叶えると、掴もうと、うなずきあった決意』


モバP「高山さんは、逸材ですね」

ミリP「あ、346さん。ありがとうございます」

モバP「まず歌に惹かれますが、ダンスも疎かにしていない。新人の子はどっちつかずになりそうなものですが、堂々としていますね」

ミリP「はい。『妥協はしたくないんです』って聞かなくて。かなり熱心にレッスンに取り組んでいました」

モバP「それでも普通は間に合わないでしょうに。よほど自信があったんですね」

ミリP「いいえ。逆です」

モバP「……逆、ですか」


14: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:00:32 ID:VKu

ミリP「紗代子は本当に、何事にも全力で取り組みます。努力も決して怠りません。だけど、それは自信がないからです。『これだけやったから大丈夫』と、そう思えるラインまで紗代子は止まりません」

モバP「なるほど」

ミリP「いえ、違いますね。紗代子はきっと永遠に止まりません。どれだけ努力しようが、どれだけ力をつけようが、『もっとできるはずだ』『もっと頑張れるはずだ』という考えが頭から離れないでしょう」

モバP「……それでは、すぐに潰れてしまいますよ」

ミリP「だからブレーキが必要なんです。紗代子の頑張りを認める存在が」

モバP「それが、あなたですか」

ミリP「ええ。俺や、劇場のみんながそうです」


15: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:01:06 ID:VKu

『歌声よ。私達のイマ、もっと遠く、彼方までのせてゆけ』


モバP「……ひとつ、いいですか?」

ミリP「はい?」

モバP「高山さんは、どうして──」


『広い空に、夜空にたったひとつ。なりたいのは、佇んでいる、美しい、大きく輝く月』
『Like a blue moon…』
『Like a blue moon…』


16: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:01:40 ID:VKu

~~


春菜「紗代子ちゃん!」

紗代子「春菜さん。今日は、ありがとうございました」

春菜「…………」

紗代子「その……お客さんの判断はともかく、春菜さんのパフォーマンスは、とても──」

春菜「どうして、どうして眼鏡を外したんですか?」

紗代子「…………」

春菜「お願いします、答えてください」

紗代子「……眼鏡をかけた弱い私が、ファンの皆さんの前に立つわけにはいかないからです」

春菜「眼鏡姿を見られるのが、恥ずかしいということですか」

紗代子「……『恥ずかしい』とは、少し違います」

春菜「それなら、どうして──」


17: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:02:08 ID:VKu

モバP「春菜、やめろ」

紗代子「!」

春菜「プ、プロデューサーさん……」

モバP「高山さん、悪いね。疲れてるだろうから、早く控え室に戻った方がいい」

紗代子「は、はい……」

モバP「それと、今日のステージはとても良かったよ。俺に言われても嬉しくはないだろうけど」

紗代子「い、いえ! あの……本当に、ありがとうございました。失礼します」タッタッタッタ

モバP「さて、春菜」

春菜「…………」

モバP「帰ろうか」

春菜「……はい」


18: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:02:35 ID:VKu

~~


モバP「春菜。言っておくが悪くはなかったぞ。歌詞も振り付けも完璧だった」

春菜「…………」

モバP「ただまあ、上の空というか、集中できてなかった気はする」

春菜「…………」

モバP「それでも紙一重の勝負だったと思う。自分のパフォーマンスに集中していれば勝ってただろうな。それが今回の反省だ」

春菜「…………」

モバP「なあ春菜。別に慰めるつもりじゃなくて、俺は本気でそう思って──」

春菜「プロデューサーさんは」

モバP「ん?」


19: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:03:01 ID:VKu

春菜「プロデューサーさんは、知ってたんですね。紗代子ちゃんのこと」

モバP「そりゃそうだ。あの765プロの新プロジェクト、そのオーディションを勝ち抜いた1人だ。注目しない理由がない」

春菜「紗代子ちゃんは、ステージで眼鏡を外していました」

モバP「そうだ。高山紗代子はステージで眼鏡をかけない。理由は……」


20: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:03:45 ID:VKu

モバP『……ひとつ、いいですか?』

ミリP『はい?』

モバP『高山さんは、どうして眼鏡を外したんですか?』

ミリP『ああ……。それですか』

モバP『ひどい近視でしょう? 彼女。最前列の観客さえ見えていないのでは?』

ミリP『はい。コンタクトも使う気がないみたいで。こっちはいつもヒヤヒヤしてますよ』

モバP『……理解できません』

ミリP『俺もです』

モバP『なっ……』

ミリP『一度聞きましたが、教えてはもらえませんでした。本人にとっては、これ以上ないほど意味のある行為らしいですけどね』

モバP『……知りたいとは、思わないんですか』

ミリP『思いません。話してくれるまで待ちますよ。そうでないと意味がない気がするんです』


21: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:04:14 ID:VKu

モバP「理由は、聞いたけど教えてもらえなかった」

春菜「……ごめんなさい」

モバP「どうした、急に」

春菜「ステージに上がって、紗代子ちゃんが眼鏡をかけていなくて……そこで、プロデューサーさんのアドバイスの意味がわかりました」

モバP「そうか」

春菜「言われた通りにやろうと、思いました」

モバP「でも、できなかった」

春菜「はい……だって、紗代子ちゃんは本当に眼鏡が似合っていて、可愛くて、それなのに……」

モバP「悔しそうだな、春菜」

春菜「……そうです! 私は悔しいんです! 紗代子ちゃんに胸を張ってほしいんです! 紗代子ちゃんに、眼鏡をかけた自分を好きになってもらいたいのに!」

モバP「…………」


22: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:04:52 ID:VKu

春菜「プロデューサーさん、私にチャンスをください!」

モバP「チャンス?」

春菜「2……いえ、1ヶ月後に、紗代子ちゃんにライブバトルを挑ませてください!」

モバP「それで、どうするつもりだ」

春菜「私のパフォーマンスで、紗代子ちゃんを変えてみせます! だから、お願いします!」

モバP「…………」

春菜「…………」


23: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:05:21 ID:VKu

モバP「お前が眼鏡に救われたように、眼鏡のせいで辛い経験をした人がいるかもしれない。それが高山紗代子かもしれない。それでもお前は、彼女に眼鏡をかけさせようとするのか」

春菜「……はい! そんな人にこそ、私は私の想いを届けたいんです!」

モバP「そうか……」

春菜「…………」

モバP「春奈、お前はひどいやつだよ」

春菜「……はい」

モバP「そして……最高だ!」

春菜「!」

モバP「やってやろうじゃないか! 1ヶ月後、お前の本気を見せてやれ!!」

春菜「……はいっ!! この、眼鏡に誓って!」


24: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:05:48 ID:VKu

~~


ミリP「紗代子、ライブバトルの挑戦が来た」

紗代子「わ、私にですか?」

ミリP「そうだ。期日は1ヶ月後。形式は『デュオ』で、会場はこの前と同じ場所だ」

紗代子「それで、相手は……?」

ミリP「346プロ、上条春菜」

紗代子「…………」

ミリP「あまり驚かないんだな」

紗代子「はい。もう一度ぶつかるような、そんな気はしてましたから」

ミリP「どうする? スケジュールは空いてるけど」

紗代子「……やります。やらせてください!」

ミリP「わかった。先方にもそう言っておくよ」


25: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:06:39 ID:VKu

紗代子「曲は、まだ決まっていませんよね?」

ミリP「いや。1曲目は346プロの『Nation Blue』だ」

紗代子「!」

ミリP「2曲目はこちらが選ぶけど、俺は『星屑のシンフォニア』を推そうと思っている」

紗代子「あの曲を、一人で……」

ミリP「一度敗けた相手に、1ヶ月後に勝負を挑む。どんな覚悟かは想像もつかないけど、今のままで勝てるとは思わない方がいい」

紗代子「…………」

ミリP「この歌をものにすれば勝てる。そして、紗代子ならそれができると思う。だから選んだんだ」

紗代子「プロデューサー……!」

ミリP「できるか?」

紗代子「はい! 全力で行きます!」


26: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:07:19 ID:VKu

~~


 もう少し。もう少しだ。
 高山紗代子というアイドルを知ったときから、いつか春菜の壁になると確信していた。実力ではなく精神、その在り方に対しての壁だ。春菜が目指すアイドル像、その究極に至る過程で必ずぶつかる壁だ。
 高山紗代子は眼鏡そのものを嫌悪しているわけではないだろう。しかし春菜にとっては同じことだ。眼鏡を「弱さ」として切り捨てるのなら、あいつは黙っていない。
 だから意図的にぶつけた。春菜には、ギリギリまで相手が高山紗代子であることを言わなかった。一種の裏切り行為によって、春菜を最大限動揺させるために。そして負けさせるために。
 そのとき春菜はどうするか。
 あいつは折れない。他のことはともかく、眼鏡のことなら譲らない。悔しさをバネにもっと輝く。必死に羽ばたく。
 だからもう少し。もう少しなんだ。
 もう少しで、上条春菜は次のステージに辿り着く。それは目先の勝利に比べて遥かに価値があることだ。


27: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:07:46 ID:VKu

~~


『速く、速く、速く。もっと走れるから信じてね』
『願う事の強さ。それが最後のDestination』


モバP「彼女はやっぱり逸材ですね。346の曲をこうも歌いこなすなんて。それともプロデューサーの腕ですか?」

ミリP「まさか。日頃のレッスンの賜物ですよ。頑張ったのは俺じゃなくて紗代子です」


『諦める事なく、前を向いて自分信じてね』


ミリP「今回も勝ちはもらいますよ。紗代子は、たった一度の勝利にあぐらをかくアイドルじゃないですから」


28: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:09:39 ID:VKu

『いつも、君を見てる』


モバP「……春菜は、眼鏡をかけてようやくアイドルでいることができます。眼鏡をかけて、ようやくステージに立っています。自信がないのは高山さんと同じです」

ミリP「そう、だったんですか……」

モバP「その春菜が自分から言ったんです。『もう一度やらせてほしい』『1ヶ月で仕上げてみせる』と。それがどんな意味なのか、わかりますか?」

ミリP「それは……」

モバP「765さん。春菜は勝ちますよ」

ミリP「…………」


29: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:10:14 ID:VKu

~~


『がむしゃら、未来へと。一途な明日へと。信じる力と情熱で走れ』


 春菜は歌う。春菜は踊る。広めるために。自分の世界を、理論を、信念を。
 紗代子は歌う。紗代子は踊る。引き込むために。自分の世界に、意志に、情熱に。
 ぶつかり合う歌と歌。踊りと踊り。過去と過去。意地と意地。
 「変えてみせる」と息巻く春菜に「変わるものか」と紗代子が応じる。侵略と魅了。二人の在り方は対照的だ。


『見上げた夜空に、星屑のシャワー』


 春菜は紗代子を見ていた。強さを得て鮮明になった視界で、しっかりと。
 紗代子は春菜を感じていた。弱さを捨ててぼやけた視界で、はっきりと。
 二人の世界にあるのは、もはや互いの姿だけだった。それで良かった。
 会場が揺れる。観客が沸く。ファンとアイドルはかけ離れていた。それで良かった。決闘を見守る彼らは、正しく観客だった。
 春菜に染められた会場は、紗代子に魅入られた会場は、どこまでもその熱を高めていく。


『もう一度願いをかけて』


30: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:10:38 ID:VKu




──そして、弾けた。


31: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:11:11 ID:VKu


~~


32: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:11:44 ID:VKu

 家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って。その間ずっと、家族に心配されるくらい私は上の空だった。 
 今もそう。学校の課題が手につかない。明日が休みでよかったと思いながら、私はベットに潜り込んだ。

 気を抜けば、すぐに今日のステージが頭に浮かぶ。あれだけ努力したけど、やっぱり反省点はたくさんあった。もっとやれた。そんな後悔がずっと消えない。
 だけどそれ以上に私の頭を占領する感情がある。それは好奇心。
 あのとき、あのステージの上で、私の隣にいたアイドルは、いったいどんな顔をしていたんだろう?

 「眼鏡をかけてたら、見えたのかな……」

 咄嗟に口をついて出た言葉で、眼鏡をかけたままだったことに気が付く。私は慌てて眼鏡ケースに手を伸ばした。

 そして目を閉じる。暗闇に浮かぶのは少女の顔。ぼんやりとしていて、表情は読み取れない。眼鏡をかけていて、そして私を見ていることしかわからない。
 意識が完全に闇に落ちるまで、彼女は私から目を逸らさなかった。


33: 名無しさん@おーぷん 2018/12/22(土)17:12:24 ID:VKu

終わりです。
渋に投稿した作品を少しだけ手直ししました。


転載元:【ミリデレ越境】春菜と紗代子と眼鏡と眼鏡
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1545465136/

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コメント

コメント一覧

    • 1 名無し春香さん
    • 2018年12月23日 17:41
    • 紗代子は別に眼鏡そのものを弱さとしているわけではないが…
    • 2 名無し春香さん
    • 2018年12月24日 21:32
    • 紗代子は眼鏡を外すことが弱い自分から脱出することの象徴になってるからな
      対してメガキチは眼鏡をかけることが力を得ることの象徴になってるから文字通り真逆の位置にある
      眼鏡を外して強くあろうとしている人間に眼鏡をかけて強くなろうって言ったって永久に平行線じゃないかな
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