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トップページCo > 橘ありす「幸せなお姫さま」【モバマス】

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:10:19.38 ID:KlI5BZD3o


「ん? ああ、アンタも入るのか、ほら」

 私が事務所へやってくるとちょうど、一人の子がドアを開けて入っていくところでした。 
 その子は、私が中に入ろうとするのに気付いて、ドアを開けたままで支えてくれました。

 ……え、あの、ありがとう。

 そんな風にしてもらえるなんて予想外で、私の返事はおかしなものになってしまいました。

「あ、オレ、今日からここに来ることになった結城晴、よろしくな」

 私は、橘ありすです。

 それが、私と晴くんの出会いでした。
 
 
 
 
 


3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:10:48.31 ID:KlI5BZD3o

 
 
 結城晴くんに会いました。私がそう言うと、プロデューサーは一瞬奇妙な顔をします。

「……あ、そうか。朝方会ったのか、ありす」

 橘です。私が事務所に来たときと、ちょうど時間が同じだったみたいで。

 ドアを支えてくれたときがちょっと格好良かったなんて、絶対に言いません。

「そうか、晴は今日は手続きだけだから、次に来たときにでも正式に紹介するつもりだったんだがな」

 会ったと言っても、顔を合わせただけのようものなんですけれどね。

「まあ、そうだろうな」


4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:11:15.23 ID:KlI5BZD3o


 なんでしょう。
 プロデューサーは、歯にモノの挟まったような言い方です。
 なんなんでしょう。

「どうした、ありす」

 橘です。何か私に隠してますよね。

「何か、というと?」

 もちろん、結城晴くんのことです。

「俺は何も隠してない」

 いいえ、隠してます。

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5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:11:49.57 ID:KlI5BZD3o


「いや、別に」

 どう見ても隠してますよね。

「俺は隠してないけど……ああ、そうだな、ウチはアイドル事務所だ」

 突然何を言い始めるんでしょうか。

「例えば、如月千早がウチに来る可能性は零じゃないけれど、天ヶ瀬冬馬がウチに来る可能性は零だ」

 だから何を……
 !
 あ
 あ、あ


6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:12:22.84 ID:KlI5BZD3o


 ……どうしよう。
 でも、私は晴くん……彼女にはまだ何も話してない。
 うん、プロデューサーにだって何も言ってない。
 大丈夫だ。

「晴のこと、男の子と勘違いしてたんだな」

 !!

「まあ、アイツの行動見てるとしょうがないかなって気もするが」

「安心しろ、アイツはそういうの慣れてるって言ってた」

「言葉遣いもアレだしな、本人だってその辺はわかってるよ」

 そんなものなんでしょうか。

「そうだ、安心しろ、ありす」

 だから、橘ですってば。


7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:12:53.98 ID:KlI5BZD3o

 
 
 
 晴くんと私は同じ歳のせいか、一緒にお仕事をすることが多くなりました。

 プロデューサーの言ったとおり、晴くんはそんなことは気にしていないようでした。
 どちらかというと、男の子と間違えられた方が嬉しいようにも見えます。

「普段? サッカーとかかな」

 普段は男の子達と遊んでいるようです。だけど、アイドルを初めてからは時間が取れないみたいで。
 
「一人だとやることが限られてくるからなぁ」

 晴くんはいつもガムを食べています。
 好きなんですか? と聞くと、好きだと言って、ガムを一枚くれました。

 私はイチゴのほうが美味しいと思います。


8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:13:21.00 ID:KlI5BZD3o


「これは食べて美味しいって言うよりも、こういうモノだから」

 言うと、晴くんは大きなフーセンを膨らませます。
 食べ物じゃなかったんですか?

「コレはフーセンガム、こういうモノだって」

 そんなモノもあるんですね。勉強になりました。
 御礼に美味しいものを食べさせてあげます。

「なにこれ」

 イチゴケーキですよ。

「オレ、食ってもいいの?」

 はい。そのために焼いたんですから。


9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:13:55.72 ID:KlI5BZD3o


「美味いな、これ」

 フーセンガムより美味しいですか?

「そりゃそうだろ。ケーキとガムじゃ比べものになんねーよ」

 そうですよね。やっぱり。

「美味えな」

 もっと食べますか?
 いいですよ、焼いてきてあげます。
 ちゃんと食べてくださいね。

「もちろん!」

「あ、ケーキの御礼しねえとな」

 いいですよ、そんなの。

「ほら、荷物持ってやるよ、貸してみろって」


10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:14:28.58 ID:KlI5BZD3o


 私はケーキを焼きます。
 晴くんは、私の荷物を持ってくれます。
 そして一緒に仕事へ行くんです。

 なんだろう、これ。
 なんだか、楽しいです。

「じゃ行こうか、橘」

 晴くん

「ん?」

 別に、名前で呼んでいいですよ?

「いいの? プロデューサーには橘って言ってるんだろ?」

 じゃあ、晴くんのこと、次から結城さんって呼びますよ?

「……わかった、ありす」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:14:55.87 ID:KlI5BZD3o

 
 
 
 一緒のお仕事が多くて、ついにユニットまで組むことになりました。

 プロデューサーの発案です。
 レッスンも少しだけ、ハードになりました。

「大丈夫か、ありす」

 ハードになると、当然厳しくなります。
 私も晴くんも頑張ります。
 だけど、晴くんは私よりも随分体力があるみたいで。

「無理すんなよ、ありす」

 でも、私も頑張らないと、結局晴くんに負担が掛かるんです。


12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:15:23.23 ID:KlI5BZD3o


「いいよ、それくらい」

「オレがその分もやりゃあいいんだ」

 だけど、晴くん。

「オレがありすを護るから」

 私は、護って欲しいと思ってしまいました。
 我が侭です、私。

 私はきっと、お姫さまになりたかったんです。
 王子さまが、欲しかったんです。

 晴くんは、私の王子さまでした。
 私は、晴くんのお姫さまでした。


13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:15:51.32 ID:KlI5BZD3o


 
 
 

 だけど時間は過ぎて

 ずっと王子さまではいられなくて
 ずっとお姫さまではいられなくて

 そして時間は過ぎて
 
 
 
 
  


14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:16:30.75 ID:KlI5BZD3o


 
 


15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/31(火) 00:16:59.24 ID:KlI5BZD3o


 来月、私の王子さまだった晴くんは、誰か知らない男のお姫さまになるんです。
 
 私は、いつまでもお姫さまでいたかったけれど。

 あの人は、やっぱり自分でお姫さまになりたかったんです。

 私は笑ってお祝いします。
 知らない男をお祝いします。

 そしてそれから、家に帰って。

 王子さまを思い出して、泣くんです。



 王子さまは、とても幸せなお姫さまになるんです。






転載元:橘ありす「幸せなお姫さま」【モバマス】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1388416192/



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