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トップページモバマス > 多田李衣菜「大喜利ですか?」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/06(日) 00:17:28.46 ID:qMzrOlGi0

P「そうだ。*(Asterisk)の番組のワンコーナーで、今度から大喜利をすることになった」

みく「そうにゃ。司会はみくがやるにゃ。りーなチャンと、ゲストのアイドルが回答者ね」

李衣菜「大喜利かぁ……私、何色の着物きるんだろ」

みく「あのね、りーなチャン? 今度の企画は、別にカラフルな着物きたり、座布団をたくさん積んだりはしないの」

李衣菜「うっそマジで!?」

P「今回やるのは、フリップ大喜利と呼ばれるものだな。
  松本人志のひとりごっつなどで有名になった形式で、その名の通りフリップ……一般的には、小さなホワイトボードやスケッチブックを使う事が多い。
  まあ、一先ずやってみるか。みく、俺が回しをするから、李衣菜とこのホワイトボードを使ってくれ」

みく「準備がいいね、Pチャン」

李衣菜「えっ、な、何? 何が始まるの?」

みく「はいりーなチャン。滑ったらロックじゃないからね」

李衣菜「えっ!?」

P「じゃあお題書くぞー」



【お題】こんな学校は嫌だ



李衣菜「えっ、えっ?」

みく「またざっくりとしたお題にゃあ」

P「まあ、初めての場合はこのくらい広いお題の方が力を測れるだろ」

李衣菜「えーと……?」

みく「つまり、このお題にボケるの。……ん、はい」

P「はい、みく」

みく「えー……『校庭に犬が迷い込んでくると一斉下校になる』」

李衣菜「ぶっ!」

P「みんな犬どんだけ怖いんだよ!? ……いや。てゆーかみく……慣れてんな?」

みく「たまに友達とやってたし……でも、みくは要素使いだし、もう少し狭いお題が好きにゃ」

李衣菜「え? どゆこと」

P「まあそれはいずれ説明する。ほら、李衣菜もとりあえず何か出してみろ。一答もしないのは、ロックじゃないぞ」

李衣菜「えええ!? そ、それはやだよ! え、あ、じゃー……は、はいっ!」

P「早いな? ほい、李衣菜」

李衣菜「はい! 『給食がない』!」

P「まあ嫌だけども!」元気はいいな……。

みく「これは……テレビに映せないにゃ……」

李衣菜「ガビーン! マジで!?」

みく「あのね、りーなチャン? 嫌だお題で普通に嫌なこと書いてもあんまりウケに繋がらないの。
   嫌すぎたら、それはそれで面白い事もあるけど……大喜利は、あくまで『おもしろいこと』を言う遊びにゃ。
   ほら、『ロックなアイドル』も、顔に刺青入れてたり、すっごく麻薬やってたら、ロックかも知れないけどアイドルじゃなくなっちゃうでしょ?」

P「ヒドい例えだな……」

みく「ね? これは大喜利にゃ。
   だから今は、みくや、Pチャンを笑わせたい気持ちで考えてみて?
   それにその、さっきのはあんまりにも安直だったし……もっとこう、深く考えてみて欲しいにゃ」

李衣菜「う、うん」

みく「……次面白くないこと言ったら、解散だから」

李衣菜「嘘でしょ!?」



2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/06(日) 00:19:08.52 ID:qMzrOlGi0

李衣菜(ど、どど、どーしよ。
    いきなり大喜利だなんて……それに、面白い事なんて分からないよ……!
    でも、みくの言ってる事は分かる……お題は『こんな学校は嫌だ』、だ。
    これの答えを探せば良いんだよね。
    つまり、学校にまつわる事を思い出すんだ!
    みくは「校庭に犬」「一斉下校」って単語を使った。
    一斉下校は確かに嫌かもなあ……友達と一緒にいられなくなるし)

みく「りーなチャン……」

P「シッ、みく。考えさせてやろう」

みく「う、うん!」

李衣菜(嫌なこと、学校で嫌なことってなんだろう……って、嫌なこと?
    そもそも私、学校で嫌な思いをしたことなんて、そんなにないな。
    ……ううん、だったら)

李衣菜(好きなことの反対を考えればいいんだ)

李衣菜(私が学校で好きなのは、『友達』。
    だから、その逆を書けば……って、それだけじゃダメなんだ。
    いけない、安直に出しちゃいそうになってた。
    そっか、これは一発勝負、ステージと一緒なんだ……。
    回答したらもう後戻りできないから、それまでに言葉を、思考を研ぎ澄まさなくちゃダメなんだ……。
    練習して、歌をうまく歌うみたいに……)

李衣菜(……歌? 節? ……リズム?)

李衣菜(分かんない。
    でもこの想像のとっかかりを……無駄にしちゃいけない気がする。学校で、歌、リズム)

李衣菜(……書けた。
    けど、どうなんだろ? 自信がないな。笑ってくれるかな。解散なんか、やだな。
    私、頭良くないし、もうこれ以上のものは、思いつかない気がする。
    回答を出すの、怖いな……)



――自信がない時ほど、ふてぶてしく笑うもんさ。だりー!



李衣菜(……!)

李衣菜(そう、だよね)

李衣菜「はいっ!」

P「お、おう。じゃあ、李衣菜」





李衣菜「『時間割が“国語・算数・理科・いじめ”だ』!」





P「……」

みく「……」


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/06(日) 00:19:38.94 ID:qMzrOlGi0

みく「……ぷ、あははははは! なにそれりーなチャン! 何でカリキュラムでそんなことしてんのー!?」

P「いや、社会潰していじめにしてるとこが、変に皮肉だなこれ!」

李衣菜「お、面白いかな……?」

みく「面白いよりーなチャン! あはは、これよく思いついたね!」

李衣菜「こ、これで、解散は無い!?」

みく「まー、頑張ったから、及第点はつけてあげる!」

李衣菜「よ、良かったぁ~……!(へなへな)」

P「よし、じゃあ一先ずお前らの実力は分かった!
  みくは普通に上手な大喜利をするし、李衣菜は初心者だが続ければ面白いプレイヤーになりそうだ。
  あとはこの後の番組の大喜利企画のための練習をしてだな、放送を重ねてくうちに2人にはレベルアップしてもらう。
  そして最終的には……」

李衣菜「最終的には?」

P「年末に行われるアイドル専門の大喜利大会『OOGIRI M@STER』に出場するぞ!」

李衣菜・みく「ええええぇぇ!?」





第1節 イントロはまだ遠く、号令はすぐそこに 了

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11: 前川みく「OOGIRI M@STER?」 2017/08/06(日) 21:12:51.30 ID:qMzrOlGi0

李衣菜「アイドル専門の大喜利大会?」

P「そうだ。
  OM(おおぎりますたー)は、年末にテレビ局が主催した大会で、約200人のアイドル達が大喜利で戦うらしい。
  優勝したら賞金100万円、更に地上波でゴールデンの冠番組が貰えるそうだ」

みく「ゴールデン番組……!」

李衣菜「ひゃくまんえん……!」

P「まだまだ露出の少ないお前達にはまたとないチャンスだと思うが、どうだ?」

李衣菜「で、出ます! みくも出るよね?」

みく「にゃ、にゃあ?
   みくは別に大喜利強くはないから……。
   でも、りーなチャンがやりたいなら、みくも頑張ってみてもいいかな……」

李衣菜「やったー! で、大喜利大会って何するの?」

P「お前それも知らずに喜んでたのか……。
  大喜利は大喜利でも、これは競技大喜利の部類だな。
  ダイナマイト関西やIPPONグランプリに代表される、ルールのある大喜利だ。
  ルールや形態はそれこそ大会の数だけあると言って良い」

李衣菜「大喜利の大会って、そんなにやってるの?」

P「大喜利の大会やライブは検索すれば結構出てくるぞ。大喜利会もな。
  動画も上がってるし、調べりゃ色々出てくるだろ。今やカルチャーとして成立しているぞ」

李衣菜「へえー、色々あるんだねえ」

みく「で、今回のルールは?」

P「まだルールは大まかにしか決まってないが、一先ず予選と本選に分かれているらしい。
  ちゃんとテレビに映るのは本選からだ」

みく「加点か印象かも分からない感じにゃ?」

李衣菜「加点? 印象?」

みく「加点は1答ごとに入るポイントを競うルール、印象は制限時間を通して誰が一番面白かったかを投票で決めるルールにゃ。
   他にもベストアンサーとか色々あるけど、大まかにはこの二つね」

李衣菜「ふーん、なんかよく分からないけど」

みく「まあ、やってるうちに分かると思うにゃ……」


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/06(日) 21:14:45.41 ID:qMzrOlGi0

P「OMはまだルールまでは決まってなさそうだな。
  で、ついでに言うとお前らの番組の企画の勝敗は、回しのみくの独断だ。
  WEB局内の『*(Asterisk)の明日にKICK!』の中で『多田李衣菜の大喜利道場』と題して、李衣菜には毎回ゲストと大喜利で対戦してもらう。
  面白かった方を、みくが決める」

李衣菜「そっか。……みく、なんか食べたいものとかある?」

みく「恥とか無いのにゃ!?」

李衣菜「あはは。それはそれとして……確か次の収録って明後日だよね。
    こないだの収録の時点でまだ決まってなかったけど、そういえばゲストは誰になったの?
    まーでも? さっきの実力を出せれば? なーんかやれちゃいそうな気もするなー!」

みく「フラグ立てお疲れ様にゃ。……で、みくも知らないんだけど、ゲスト誰なの?」

P「ああ、それなら……」



~2日後、WEB局スタジオ~



みく「お、おはようにゃ……」

李衣菜「この子たちと、大喜利……!?」





遊佐こずえ「ふわー……こずえ、おおぎりー……? やるのー……?」

佐城雪美「うん……そう、一緒に……。ペロ、いないけど……がんばる……」





第2節 かわいい刺客にご用心! 了


14: 多田李衣菜「大喜利なんて……大嫌いだ……(ガクッ)」 2017/08/07(月) 23:59:44.99 ID:BCqC20cK0

みく(ヤムチャみたいに死んでるにゃ)

雪美(死んでる……ヤムチャみたい………)

こずえ「……ふわー……ヤムチャー……?」

みく「え、えっと、じゃあ気を取り直して。
   勝者、雪美チャンとこずえチャンにゃ!」



~15分前~



みく「さあ、『*(Asterisk)の明日にKICK!』次のコーナーは新企画『多田李衣菜の大喜利道場』にゃ!
   この企画はりーなチャンの大喜利力を鍛えるために毎週様々なゲストと大喜利対決をして貰うコーナーです!
   と言うことでりーなチャン。自信のほどは、どれくらいかにゃ?」

李衣菜「いやーなんかもう余裕って感じかな!
    みんなで大喜利やってみたら、結構良い感じだったし、今回のゲストはちっちゃい子だし負けられないよね!
    記念すべき第1回、余裕で白星発進だよ!」

みく「おー、見事なフラグの立てっぷりにゃ。
   では、ゲストは引き続き佐城雪美チャンと遊佐こずえチャンにゃ」

雪美「……よろしくお願い……します」

こずえ「おおぎり……すきだよー……」

みく「では、早速お題を発表するにゃ。お題はこちら!」





【お題】動物達が住んでる町「アニマルタウン」で起こった珍事件





15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/08(火) 00:00:50.50 ID:ZNXs6Sb+0

こずえ「……ちんじけんー……?」

雪美「あ……ちんじけんは……変わった……出来事……」

こずえ「……わかったー……」

李衣菜(おっ、なになに?
    この様子なら、簡単に勝てちゃうかも!?
    えーっと、動物のお題なんだね。
    よーし、それじゃあ何かいい動物いるかな、犬とか猫……っと、ちょうど良いキャラいるじゃん!)

李衣菜「はいっ!」

みく「はい、りーなチャン」

李衣菜「はい! 『犬のお巡りさんが自分の尻尾をずっと追いかけてる』!」

李衣菜(どーよ!)

みく「あはは、本能丸出しにゃ」

雪美「……はい」

みく「はい、雪美チャン」

李衣菜(あれ、意外とあっさり?)

雪美「……『見にいったら』…………」

李衣菜「?」

雪美「…………『浦安市になってた』」

李衣菜「ぶは!」

みく「あはははは! 吸収合併されてるにゃ!? なんか企業の力が働いてるし!」

李衣菜(スタッフさんもウケてる!? さっき、私の回答では完全に愛想笑いだったのに!)

雪美「……ふふっ」

李衣菜(こ、これじゃ駄目だ。このままじゃ負けちゃう。
    もっと、こないだみたいに、落ち着いて、冷静に考えないと……!
    なにこれ、たった1答で、崖にでも追い詰められたみたい……これが大喜利対戦のプレッシャーなの……?
    動物、町、動物、町……! あああ、時間が過ぎてく……!)

雪美「……はい」

みく「はい。雪美チャン」

雪美「『橋』……」

李衣菜(橋……?)

雪美「……………『ぞうさんだけ渡れない』………」

みく「あははは! かわいそう!
   1頭だけ町の外に出られないのにゃ! インフラ整備を、早くちゃんとしてあげて!」

李衣菜(雪美ちゃん、凄い……!
    出すタイミングはゆっくりで、言葉もシンプルだけど……凄くウケてる!
    私も、は、早く……)

みく「さて! え~っと、そろそろ時間にゃ。
   それじゃあ今書いてる回答で終了ってことで……」

李衣菜「え、は、はいっ!」

みく「はい、りーなチャン」

李衣菜「えっと! 『めだきゃ』!」

みく「にゃ?」

李衣菜「え、あ、『めだかの学校が廃校になった』!」

みく「え、めだかって動物? まあ、噛んじゃったのは仕方ないにゃ……」

李衣菜(ううう、焦り過ぎた……!
    てゆーか、めだかはちょっと、求められてる動物と違った気がする……)


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/08(火) 00:02:22.20 ID:ZNXs6Sb+0

こずえ「…………はぁい」

みく「ん、じゃあこずえチャンでラストにゃ」

こずえ「……うん。
    ……あのねー……あにまるたうんにはねー……でんしゃー……。
    ……ふわー……でんしゃがあるのー……」

李衣菜「電車……?」

こずえ「でねー……へびさんの……のるでんしゃ……。
    へびさんせんよーしゃりょーがねー……あるのー」

李衣菜(へ、へびさん専用車両??)

こずえ「へびさんせんよーしゃりょーはねー……ぐねぐねしてるのー……。
    こんな風に……へびさん……ぐねぐねだから……へびさん、のりやすいのー……」

李衣菜(何あの絵、ぐにゃぐにゃした電車……?)

こずえ「…………せんろとあわなくて……はしれなかったのー……」

みく「そらそうにゃ!! 作る前に気付くべきにゃ、それは!!
   いや、ぐねぐねしてるからへびが乗りやすい理由もわかんないし!!」

李衣菜(な……!!)

李衣菜(な、何これ……!
    訳わかんない回答だけど、スタッフさん達のどよめきみたいな笑い声が、圧になって押し寄せてくるみたい……!)

李衣菜(ああ……そうだ)

李衣菜(これは、言われなくたって分かる。私の負けだ)

李衣菜(私は、この子たちを……大喜利を、ナメてたんだ)

李衣菜(どうして)

李衣菜(どうしてこの爆笑が、私のものじゃないんだろう……)

李衣菜「大喜利なんて……大嫌いだ……(ガクッ)」



~事務所・中庭~



李衣菜(昨日の大喜利、ダメダメだったな……)

李衣菜(本当に才能ある人だけが、あれだけの爆笑を取れるのかな……)

李衣菜(そうだよ、もともと私にはお笑いのセンスなんかないし……そもそも私に大喜利は無理だっ)

李衣菜「わぷっ!」

??「だーれだっ?」

李衣菜「え? ……あはは、分かるよ。声で……ううん、手で分かるもん」

李衣菜「ね、なつきち!」

木村夏樹「ははは。よっ、どうしたんだ? 何か嫌なことでもあったのかよ、だりー?」





第3節 よくわかるネオテニーのしくみ 了


19: 木村夏樹「大喜利で悩んでる?」 2017/08/09(水) 03:22:33.58 ID:6T7TMlnc0

李衣菜「うん……そうなんだ。えっと」

夏樹「ああ、こないだのネットの番組か?
   観た観た。雪美やこずえと対戦してただろ、頑張ってたじゃん」

李衣菜「だけど、何もできずに負けちゃった。
    2人とも凄く面白くてさー……私は面白くなかったんだ。
    噛んだりもしたし、とにかく下手くそだった。
    こないだ初めてPさんやみくと大喜利して、その時は上手くいったからちょっと自信があったんだけど。
    ……あはは、バカみたいだね。私、才能なんて全然なかったんだよ」

夏樹「……アタシは、そうは思わないけどな」

李衣菜「なつきち?」

夏樹「だりーはまだ走り始めたばっかだろ。
   アタシはああいう大喜利のことはよく分かんないけれど、番組で一生懸命大喜利やってるだりーは凄いと思うよ」

李衣菜「そんなこと……」

夏樹「お題が出て、面白い回答考えて、それを発表する。
   それは、アイドルが歌をうたうのとは違うベクトルのエンターテイメントだ。
   『即興』がすべての、練習を挟み込む余地がほとんどない空間だ。
   そいつは自分のクオリティを上げるしかない、かなりストイックなステージだと思う。
   そんな中で、だりーは2答したんだ。それは、すげーことじゃないか?
   アタシは、戦おうとしてるだりーを見てさ、かっこいいなって思ったんだぜ?」

李衣菜「なつきちが、私をかっこいい……!? で、でも大喜利だよ? ウケなきゃ、意味ないよ……」

夏樹「対戦だから、上手くいかない時もあるさ。
   違うお題なら、明日のだりーなら、あと30秒考えれば、違うメンバーなら……。
   もう少し何かが違ったら、結果は変わってたかも知れない。
   もちろん、『もう少し頑張ってれば』ってのも、あるかも知れないけどさ」

李衣菜「だけど、私には雪美ちゃんやこずえちゃんみたいには答えられない。
    象と橋とか、へび専用車両とか、どれだけ考えても私じゃ辿り着けないよ。
    ……私は、あんな風にはなれない……」

夏樹「まったく……だりーはバカだなあ」

李衣菜「ば、バカぁ……!?」


20: 木村夏樹「大喜利で悩んでる?」 2017/08/09(水) 03:25:15.69 ID:6T7TMlnc0

夏樹「確かにあの2人は凄かったよ。
   独自の視点……あのお題で、動物よりも街の在り方からアプローチをする事を見つけた雪美。
   そして、イメージを膨らませて誰も思いつけない回答に辿り着いたこずえ。
   2人とも、あの2人にしか出せない回答を出してた。
   雪美の、間をたっぷり使った回答や、こずえの引き込むような雰囲気。
   それは、才能と呼んで差し支えないものだ。
   ……でも、あの2人も、だりーにはなれないんだぜ?」

李衣菜「私には、なれない……?」

夏樹「カートがジミヘンになろうとしたか?
   キースがレノンの後をついてったか?
   違うだろ。
   ロックンローラーは己のロックを証明するためにロックンローラーになったんだ。
   誰かになるためじゃない」

李衣菜「己のロックを、証明するため……」

夏樹「だりーにしかできないロックがあるように、だりーにしかできない大喜利が必ずある。
   センス型にしか出せない回答があるように、要素使いにしか辿り着けない答えがあるんだ。
   だから、“あんな風”になる必要はないんだ。
   だりーはだりーとして頑張ってりゃいいんだ」

李衣菜「なつ、きち」

夏樹「だりー、それにさ」

夏樹「ロックンローラーは自信がないときほど、ふてぶてしく笑うもんさ!」

李衣菜「なつきちぃ……!」

夏樹「……なんて、アタシは思うけどな?」

李衣菜「ありがとうなつきち! 私、大喜利分かった!
    私にしか出せない答えがあるんだね。
    私、もう少し頑張ってみる!」

夏樹「ははっ、そうか! だりーが元気になったなら、良かったよ」

李衣菜「うん、リーナは自分を曲げないよ!」

夏樹「いやお前話聞いてたのかよ!?」みくのだろ、それ!

李衣菜「あはは、冗談だよ。
    でもさあ、なつきち。
    大喜利に練習はないって言ってたけど、やっぱり大喜利の練習してみたいよ。
    次の収録までに、もっと大喜利したいんだ。どうしたら良いかな?」

夏樹「んー、まあなあ。
   何にしろ、慣れもあると思うし。
   ……大喜利会とか、行ってみるのも良いんじゃないか?」

李衣菜「大喜利会?」

夏樹「ん、あれとか」

李衣菜「あれ……?」





掲示板のポスター『大喜利川島会 毎月第2第4月曜日 午後22時より川島宅にて、参加者募集中! 参加希望の方は川島瑞樹まで!』





第4節 リーナ・エクスペリエンス 了


23: 川島瑞樹「ようこそ! 大喜利川島会へ!」 2017/08/09(水) 22:50:04.60 ID:6T7TMlnc0

川島「今日は集まってくれてありがとう!
   今回は初参加の子もいるし、まずは自己紹介をするわね。川島瑞樹よ、よろしくね」

三船美優「あら……今回は珍しいメンバーがいるんですね。
     とても、楽しみです……。三船美優、です。お手柔らかに」

高垣楓「高垣楓です。マーカーの用意はマーカーせて下さいね。……ふふっ」

ヘレン「ヘレンよ、知ってると思うけれど……。私は大喜利の世界でもトップを目指すわ。
    分かってる、思考はダンサブルに……踊り出すわ」

李衣菜「え、あ、はい! 多田李衣菜、です! よろしくお願いします!」

李衣菜(ば、ばばばば、場違いなとこ来ちゃったー!)

李衣菜(なつきちに言われて思わず来ちゃったけれど……わ、私ここにいて良いのかな。
    と言うか、みんな凄いクールのお姉さまってカンジ……!)

川島「さあこれで全員揃ったわね! 今回は大喜利会兼お泊まり会に来てくれてありがとう!
   それでは早速ルールを説明する前に、うずうずしてる人も多いと思うし、先に恒例のやつやっちゃうわね。
   みんな、グラスは持った? それじゃあ、大喜利会を始めます!」

「「「「かんぱ~~~い!」」」」

李衣菜「か、かんぱーい!(コーラ)」



川島「ぷはー! んー、美味しい! ……さて、ルールを説明するわね!
   回しは時計回りでお題は各自持ち回り、制限時間は5分で、回しの人が好きな回答を1つ選んで、ピックアップ数が多かった人が第11回川島会の優勝者よ」

李衣菜(結構やってる! って、私、お題なんか用意してないし、回しもやったことないんだけど……)

李衣菜「あ、あの……」

川島「あ、お題は無かったら私のストックから出すわね。
   回しも、手を挙げた子の名前を呼んであげるだけでオッケーよ」

李衣菜「は、はい!」

川島「じゃあまずは私からお題出すわね。え~っと……じゃあお題はこちら!」





【お題】燃えてる家から出てきて一言





李衣菜(なんか変なお題出てきた!)

美優「燃えてる……家」

ヘレン「……」


24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/09(水) 22:51:31.49 ID:6T7TMlnc0

楓「うふふ、はいっ」

川島「あら、早いわね。じゃあ、楓ちゃん」

楓「『放火で家が、″ほうか″いしちゃいました』」

川島「余裕あるわね! もう、このダジャレさん!」

李衣菜(ダジャレさん???)

ヘレン「……。(スッ)」

川島「はい、ヘレンちゃん!」

ヘレン「『その目に焼き付けろ、ファイアーハウス!』」

李衣菜「!?」

川島「何それ!?」

ヘレン「(スッ)」

川島「え、いや、はいヘレンちゃん」

ヘレン「『その目に焼き付けろ、ファイアーハウスⅡ』!」

川島「何のシリーズ!? ねえ、それは何のシリーズなの!?」

ヘレン「(スッ)」

川島「いやもうせめて書き直してくれないかしら!? ヘレンちゃん!」

ヘレン「『その目に焼き付けろ、も~っとファイアーハウス どっか~ん!』」

川島「急に女児アニメみたいになっちゃった! あとずっと前フリ一緒なのね!?」

ヘレン「(スッ)」

川島「無限なのかしら!? はい、ヘレンさん!」

ヘレン「『火(ひ)レン』」

川島「あはははは! いやもう急に何なの!? 火レンてなに!?
   ヘレンちゃん、家火事になったら火レンて言うの!?」

楓「あ、はい」

川島「はい、楓ちゃん!」

楓「『家が、オール炎化になりました』」

川島「ずっと余裕あるわね!? オール電化みたいに言わないのっ!」


25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/09(水) 22:53:04.54 ID:6T7TMlnc0

李衣菜(な……)

李衣菜(な、何この異様な空間……!)

李衣菜(楓さんはとにかくダジャレ言いまくってるし、ヘレンさんはよく分からないことを好き放題に答えてるし。
    美優さんは……何かずっとホワイトボード見てるし……!)

楓「……李衣菜ちゃん、もしかして緊張してますか?(ぼそっ)」

李衣菜「んぇ!? あ……いやー、そうかも……」

楓「ふふっ、そんなに緊張しなくて良いんですよ。これは車座大喜利。
  ただ大喜利を楽しむための会です。競い合う大喜利じゃないので、思いついたことを好きに出して良いんです」

李衣菜「思いついたことを、好きに……?」

楓「それなら時間いっぱいまでたくさん出しちゃった方がお得、です。
  ね、李衣菜ちゃんも、一緒に大喜利で遊びましょ?
  ホワイトボードを持ってるなら、“ぼーっと”しちゃダメ……ふふっ」

李衣菜「一緒に、大喜利で遊ぶ……」

李衣菜(ああ、そうか。私たちは今、大喜利で遊んでるんだ。
    何かを証明するわけでも、誰かに勝たなければいけないわけでもない。
    クールのお姉さまとも、大喜利でなら、一緒に遊べるんだ……!)

美優「は、はい……!」

川島「はい、美優ちゃん!」

美優「あの……『衛星写真だと、鬱の字に見えると思います』」

川島「え、あ、怖い! 何それ鬱文字焼き!? ねえ何軒燃やしてるの!? 町一つ火の海になってるわよね!? 」

李衣菜「あはっ、凄い! ……よぉし、私も!」

李衣菜(思ったことを……私が、面白いと思ったイメージのカケラを、手繰り寄せるんだ!)

李衣菜(フレーズ? そういうの好きかも。
    無駄撃ちしたって、構うもんか。
    また新しい答えを考えれば良いだけ。
    楓さんみたいに余裕を持って、ヘレンさんみたいにアグレッシブに、美優さんみたいに真剣に……!)

李衣菜(私はこの大喜利を、楽しくやるんだ!)

李衣菜「はいっ!」

川島「はい、李衣菜ちゃんどうぞ!」





李衣菜「『家焼~~~き芋』っ!」


26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/09(水) 22:55:03.51 ID:6T7TMlnc0




川島「いやー、笑っちゃったわあ。
   じゃあベストアンサーは、えっと……ヘレンさんのあの最後のやつで。……なんだっけ?」

ヘレン「『こんにちは、私は火レン・ケラー。火を触ります。つんつん。“fire”』」

川島「それ! それにするわ……! なんで火をつんつんしてんのその人……くくく!
   あー、だめ! またツボに入っちゃった! いきなりだけど休憩させて! うふふふ!」

楓「1問目から跳ねましたね。楽しいお題でした」

李衣菜「あはは、凄かったあ……」

美優「あ、私は李衣菜ちゃんの『IHヒーターってやばいですね』が……面白かった、かな」

李衣菜「あっ、ありがとうございます!」

川島「李衣菜ちゃんも良かったわー。ねえ、今日はどうして来てくれたの?」

李衣菜「え、あ……私、ネットの番組で大喜利やる事になって……もっと大喜利上手くなりたくて、出来る場所探してたんです」

川島「あら、そうなの。大喜利やる場所って、やっぱり限られてるわよねー。
   直近で何か大会とか無かったかしら」

楓「ああ、それなら……ほら、再来週ありますよ。あれです、日曜日の」

川島「日曜日? ……あ、あれね」

美優「あれですね」

李衣菜「あれ?」

ヘレン「『ライブ権争奪! アイドル限定大喜利タッグバトル “DUO”』……世界レベルよ」

李衣菜(ヘレンさんが言うんだ)





第5節 しあわせのドン・キホーテ 了


27: 李衣菜「みく、一緒に大喜利の大会出よ!」 2017/08/10(木) 21:46:54.80 ID:8GGZx21X0

みく「い、いきなりにゃ!? 李衣菜チャン、どうしたの?」

李衣菜「昨日、川島さん達の大喜利会に行ったんだけど、再来週に“DUO”っていうアイドル限定の大喜利大会があるんだって。
    2人1組じゃなきゃ参加できないから、みくと出ようと思ってさ!
    プロデューサーからの許可も取ってあるよ!」

みく「大喜利大会……?」

李衣菜「みく、私とチームを組んでよ!」

みく「……チーム」

李衣菜「そう、みくは大喜利慣れてると思うし、一緒に出てくれれば心強いよ!
    お願い! このとーり!」

みく「えっと」

みく「えっと、その……あの」

みく「……ごめん!!」

李衣菜「えっ」

みく「りーなチャン、みくはちょっと出られない。
   あの、ほ、他の人誘って! それじゃ!」

李衣菜「え、え、みく!?」

李衣菜「走って行っちゃった……」

P「あれ、李衣菜。まだ帰ってなかったのか。
  いま、みくが走って出てってたけど、また解散か?」

李衣菜「あ、プロデューサー。ううん、実は……」


28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/10(木) 21:48:27.23 ID:8GGZx21X0

~みくの部屋~



みく「ただいにゃ」

みく「ふぅ……なんか、逃げちゃったみたい」

みく「(PCポチッ。カチッ、カチッ)……あっ、ボケ相撲の結果出てる」





【お題】お医者さんが驚いてる理由

勝ち 33点 刀
岡田監督「外れるのは医者。医者とカズ」

負け 27点 肉球防衛軍
心電図のピーと言う音に「あと5分」と言ってから死んだ





みく「あ……負け、てる……」

みく「……はああー。(ごろん)」

みく(私は、もう何年も“肉球防衛軍”の名前でネット大喜利をしている。
   いつからかは覚えていないが、気づけばこれが前川みくにとってのライフワークになっていた)

みく(ボケ相撲は、1対1の対戦型大喜利サイトだ。
   制限時間15分で1答し、15人の審査員が持ち点3で回答を審査する。
   今回の対戦は、自分の中では自信のある回答だった、つもりだ。
   45点満点中27点は、実際悪い成績ではない。
   相手の出方次第ではじゅうぶん勝ちを見込める点数だ。
   だけど、今回は力でねじ伏せられた。
   ネット大喜利最優のオオギリスト、“刀”に)

みく(“刀”も、私が大喜利を始めた頃にネット上に現れたオオギリストだ。
   だけど、“刀”の登場はあまりにも鮮烈だった。
   正統派の回答も、センス特化の回答も出来るオールラウンダー。
   とにかく平均点が高く、いとも簡単に票を奪っていく。
   研ぎ澄まされた短文も、時には気のふれた人間が書き殴ったような長文すら使う。
   ネット大喜利界隈では、スターの1人と言っていいだろう)

みく(暦だけは長い私も何度か“刀”とかち合ったが、1対1の勝負で私は“刀”に勝ったことがない。
   きっと奴は、真剣勝負ほど燃えるタイプなのだろう。
   “刀”にリベンジするチャンスだと思っていたが、今回もまたその喉元には及ばなかった)

みく「……はあ~、やんなっちゃう……」

みく(“肉球防衛軍”はそこそこの大喜利しかできない。
   どこにでもいる要素使いの普通のオオギリストだ。
   暦は多少あるが、それだけだ。
   理詰めで作られた私の回答は、考えれば誰もが辿り着けるものだ。
   “刀”のような天才とは、比べるべくもない)

みく(それに……)ぐ~。

みく「…………ご飯買うの忘れちゃった。買い物でも、行こっと」


29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/10(木) 21:49:50.89 ID:8GGZx21X0

~事務所~



P「そうか、そんなことが……。
 ……なあ、李衣菜。いきなりで悪いがちょっとこれを見てくれ」

李衣菜「ん? なんで今? 良いけど。
    ……Pさんの机の引き出し? ……って、わわ! 何このDVDの量!?」

P「……これだ。『第3回大喜利淀川杯』」

李衣菜「なにそれ?」

P「これは、数年前に関西で行われた一般向け大喜利大会の映像だ」

李衣菜「大喜利の大会?
    うん……えっと、それが、どうしたの?」

P「まあ、見とけ。
 この年の淀川杯は、タッグ戦だったんだ(パソコンポチー)」





パソコン「さあ、お題はこちら!」



【お題】こんなイタズラ電話がかかってきたら最悪だ



パソコン「さあ2問目、そろそろ突破するチームが出てくるか! 制限時間スタート!」

李衣菜「ふーん、結構参加者多いんだねー」

パソコン「はい、弁慶さんの笑いどころチーム!」

パソコン「『もしもしを256回言うともしもしがカンストします。
      なので、ここでもしもしを256回言いますもしもしもしもしもしもしもしもし』」

パソコン「だはははは! やめろやめろ! 何のTAS動画なんだよ!
     おっと、満票で2ポイント! 合わせて5ポイントで弁慶さんの笑いどころチーム、勝ち抜けー!」

パソコン「パチパチパチパチ……」

李衣菜「あはっ、変なの。
    ……で、プロデューサー? これ見せて、どうしたの?」

P「李衣菜。このブロックの参加者を見て、何か気づかないか?」

李衣菜「参加者? んー。あ、女の子のチームもあるんだね。
    ……って、あれ? このメガネの子……みく!?」

P「気づいたか。これは中学生の頃の前川みくだ。それに、みくの後ろにいるのは……」


30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/10(木) 21:50:55.23 ID:8GGZx21X0

~街~



??「あれ……? あ、おーい! みくちゃーん!」

みく「あ……」

??「あっはっはっ! 偶然やな! 会いたかったわー!
   お互いアイドルになってから、東京と大阪で会えんかったもんなー!
   ……ん、あれ、みくちゃん? どーしたん? 元気無いん?」

みく「あ、ううん。そうじゃないよ」

みく「笑美チャン、久しぶり。みくも久々に会えて嬉しいにゃ」

難波笑美「あははっ、せやね!
     何年前やったか忘れたけど、“ねこたこガールズ”で大喜利の大会出た以来やん!
     なあ、今時間ある? 一緒に茶しばきに行かへん?」





第6節 猫じゃないから忘れられない 了


32: 難波笑美「みくちゃんは最近、大喜利してる?」 2017/08/11(金) 22:11:39.98 ID:LcMp1/9M0

みく「大喜利は……んー、自分の番組で司会とかしてるくらいにゃ」

笑美「ええ!? もったいな! やらなあかんよ! みくちゃんの大喜利おもろいのに!」

みく「あはは、そんなことないよ。笑美ちゃんは?」

笑美「ウチか? ウチは絶好調や! ……とは言うものの、成績はエンジョイ勢と変わらんな。
   まあ、ライブにも出とるし、小規模な大喜利会ではちょくちょく優勝もしとる。
   タイトルが欲しいわ。精力的には続けてるで」

みく「へぇー、笑美ちゃんは大喜利頑張ってるんだね。みくはアイドル活動で目一杯にゃ」

笑美「……ふーん?」


33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/11(金) 22:12:10.60 ID:LcMp1/9M0

~事務所~



李衣菜「つまりみくは、昔から大喜利の大会に出てた、ってこと……?」

P「いや、大喜利の大会にたった一回だけ出た事がある、というのが正しいところだろう。
 みくが大会に出場した記録は、これしか見つからなかった。
 恐らく、これが初出場で、この大会を最後に表舞台からいなくなったんだ」

李衣菜「……どうして、出るのやめちゃったの?」

P「それは、この大会の結果に関係があるんだと思う。
 この大会は、お題3問のうち2人のプレーヤーが交代で取り組むルールだ。
 5人の審査員のうち、3人の挙手があれば1ポイント。
 5人全員の挙手があれば2ポイント。
  合計5ポイント取ったチームが勝ち抜けとなる」

李衣菜「えーっとつまり、答えて、挙手がないとポイントにはならないんだね?」

P「そうだな。この予選、チーム・ねこたこガールズの1問目は難波笑美が出場。
 3分間で3ポイントを獲得した。一度満票を取ったのが大きかったな」

李衣菜「お、すごいね、その難波ちゃんって子」

P「次のお題はみく。みくは3分間で5答したが、ポイントは1ポイント。これで合計4ポイントでリーチだ。
 3問目は相談の上どちらかが出られるんだが、ここで出場したのはみくだった」

李衣菜「うん」

P「3問目。みくは1答も出来ず、ねこたこガールズは予選を敗退した」

李衣菜「……えっ?」


34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/11(金) 22:12:50.39 ID:LcMp1/9M0

~喫茶店~



笑美「みくちゃん、もしかして……もう大喜利、したくないん?」

みく「えっ? あは、そんな事ないにゃ。大喜利は今も、投稿は続けてるよ?」

笑美「じゃあ、どうして……」

みく「んー。別に、機会が無かっただけにゃ。年末のOOGIRI M@STERだって、出ようと思ってるし。
   ただ、アイドルをやってる事でキャパシティがいっぱいになってただけ。だから、心配しないでにゃ」

笑美「なあ。……それ、ほんま?」

みく「……どういうこと?」

笑美「みくちゃん、あん時のこと……淀川杯の3問目を、本当は気にしてるんと違うんか」

みく「…………」


35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/11(金) 22:14:04.06 ID:LcMp1/9M0

~事務所~



李衣菜「2問目でたくさん答えてたのに……なんで?」

P「それは、やはりお題が合わなかったんだろうな。3問目は、こんなお題だった。(エンターキーポチー)」

パソコン「弁慶さんの笑いどころチームが抜けて、あと1つの椅子を争う4チーム! 3問目のお題は、これだー!」



【お題】3・3・7拍子でかっこいいひとことを言って下さい



李衣菜「…………ん?」

P「お、李衣菜も何となく気づいたようだな。そうなんだよ、このお題は『広い』んだ」

李衣菜「お題が……広い?」

P「つまり、要素が無いんだな。お題にもいくつか種類があるが、その中には明確に広い、狭いが存在する。
 李衣菜、例えば『一家に一人相撲取りを飼ってる世界のあるある』と言うお題が出たら、まず何を想像する?」

李衣菜「えっ? えーっと、まあお家にお相撲さんがいるんでしょ? 食費大丈夫かな……?」

P「まあ、そんなところだろうな。まず力士が家にいる状況というものを考えるだろ、それが与えられた縛り、要素だ。
 みくは以前自分を要素使いと言っていたが……恐らくみくの大喜利の考え方は、力士や家という大きな要素から、幾つもの小さな要素を考えるんだろうな。
 力士だったら、ちゃんこ、つっぱり、大銀杏、優勝杯。家だったら、庭、生活、キッチン、家事、家族……ってところか。
 多分だけど、みくはその要素同士をリンクさせることで回答を導き出しているんだ。
 だからみくが答えるなら……『飼ってる相撲取りが捨て相撲取りを拾ってきて「新弟子取っていい?」と聞いてくる』、みたいな感じかな。あるあるのお題だし」

李衣菜「うーん、30点!」

P「俺の答えを採点するなよ……。
 まあ、つまりみくはそういう意味で自分を″要素使い″と言ったんだろう。
 徹底的に理詰めで、まるで数学の答えでも探すように回答を導き出す、それが前川みくの信じる大喜利なんだ。
 しかし、この時はみくの最も苦手とするお題にかち合ってしまった」

李衣菜「3・3・7拍子と、かっこいいこと……」

P「これは逆に広いお題だ。つまり要素が少ないんだな。
 “かっこいいこと”という要素は漠然としているし、3・3・7拍子は思考のヒントにはならない。
 みくにとっては、白紙の問題用紙を与えられたようなものなんだろうな。
 回答者が今までの人生で何をかっこいいと感じたか、センスが問われるお題なんだ。
 もちろん、こういうのが得意なプレーヤーも存在するのも事実だがな」

P「結果、みくは回答出来ず、ねこたこガールズは負けた。
 ……俺は、もしかすると、その体験が原因じゃないかと思ってる。
 自分のせいでチームが負けてしまった、とかな」

李衣菜「そ、っか……」

李衣菜(じゃあきっと……ううん)

李衣菜(みくは、みくなら……)

李衣菜「ありがと、プロデューサー!」

P「お、おい李衣菜! どこに行くんだ!?」

李衣菜「やっぱり私には……みくしかいないよ!」


36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/11(金) 22:15:11.89 ID:LcMp1/9M0

~喫茶店~



みく「淀川杯……」

みく「……あはっ、あはははっ。そんなこと、もう忘れちゃったにゃ」

笑美「嘘や。ウチはみくちゃんがめっちゃ負けず嫌いなのを知ってる」

みく「負けず嫌い、かな……」

笑美「当たり前や。2問目のイタズラ電話のお題も、みくちゃんの苦手な広いお題やった。
   でもみくちゃんは、攻める手を緩めなかった。せやから3問目も任したんやで」

みく「……あの時は、ごめんね」

笑美「謝ることなんか一切あらへん。
   手数から一撃に切り替えたみくちゃんは、渾身の1答を出すために悩んだ。
   ウチは後ろで見てたんや、そんくらい分かるわ」

笑美「せやから、みくちゃんがあの日のことを絶対忘れるわけあれへんねん。
   試合後は平気そうにしてたけど、その後に隠れてトイレで泣いてた女の子が、あの日の悔しさを絶対に忘れるわけが、ない……! そうやろ……!」

みく「……そっか」

みく「…………笑美、チャン」

笑美「…………」

みく「そうだね。……みくは、嘘をついてた」

みく「みくが……みくが悔しかったのは、本当にゃ」

みく「笑美チャンがせっかく誘ってくれた大会で、何の力にもなれずに敗退してしまった。
   ウケなかった。自分の実力を発揮できなかった。
   あのお題には、今でもきちんとした答えは見つからない、自分の無力さが悔しかった。
   ……でも、それ以上に……」

みく「みくは……笑美チャンに負けたと思った……!!」

笑美「みく、ちゃん……?」

みく「笑美チャンは満票込みの3ポイント、みくはあれだけやってたったの1ポイント! みくは、笑美チャンに負けた!」

笑美「負けた、って……ウチらはチームで……」

みく「そう、チームにゃ! 始めはそう思ってた!
   でも、目の前で笑美ちゃんが大爆笑を取って、羨ましくなった! 負けたくないと思ってしまった!」

みく「だから、みくにとって笑美チャンは、チームメイト以上にライバルだった……!」

みく「……だから、みくはもう誰ともチームなんか組めないの。
   人前の大喜利を敬遠するようになってしまったのも……そういう自分の浅ましさが、怖くなってしまったから。
   冷静じゃいられなくなってしまうから。
   自分の弱さを見せつけられるから……みくは、大喜利の現場に、行けなくなったのにゃ」

笑美「…………」

笑美「みくちゃん」

みく「……なーに?」

笑美「ウチ、再来週に行われる大喜利の大会DUOに出る。
   2人1組のタッグ戦や。
   何人かからは誘われてたんやけど、パートナーが決まってなくて……そんな中でみくちゃんに会えて、運命かも知れんと思った」

笑美「せやな、これは運命なんや」

みく「笑美チャン?」

笑美「みくちゃん、DUOに出て。……ウチの敵として」

みく「えっ……?」

笑美「きっとウチらが男の子だったら河原で殴り合いしてるんやろうけど……ウチらは、女の子やし、オオギリストやから。
   決着は、大喜利でつけよ。……ウチも、神経質なまでにお題に沿おうとするみくちゃんを……ネット大喜利で活躍してるみくちゃんを、ライバルだと思ってるから。
   ……こないだは、″刀″との対戦、惜しかったな」

みく「笑美ちゃん……」

笑美「ほな、ねこたこガールズは解散や。……待ってるで! これお勘定、釣りはいらんわ! またな!」

みく「あっ! ……笑美、チャン……」


37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/11(金) 22:17:27.86 ID:LcMp1/9M0

~寮~



みく(笑美チャンは、みくのことをライバルだと認めてくれていた)

みく(アイドル限定大喜利タッグバトルDUO。……必ず2人1組でなければ、出られない大会)

みく(でも、みくはまた誰かと一緒に大喜利が出来るだろうか。
   そんな浅ましい思いを持ってしまう、みくが。
   ……チーム制の、大喜利大会に、出る? みくが?)

みく(……ん?)

みく(みくの部屋の前に、誰か、いる?)

みく「あっ……李衣菜、チャン」

李衣菜「……すーっ、はーっ……」

みく「どうしたの、えっと……(ホワイトボード……?)」

李衣菜「お題!」

みく「えっ」

李衣菜「3・3・7拍子でかっこいいひとことを言って下さい!!」

みく「!」

みく「そ、れは……」

李衣菜「『わたし みくに 負けたくないっ』!!!」

みく「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「みく……DUOに出よう! 一緒に! ……私たち、*(Asterisk)で!!」

みく「あ……」

みく「あはっ」

李衣菜「ふふっ」

みく「李衣菜チャン、それ……」

みく「3・3・6にゃあ……!!」





第7節 奈落の底へ、君と二人で 了





転載元:多田李衣菜「大喜利ですか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501946248/



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