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トップページモバマス > ありす「心に咲いた花」:前編

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:48:53 ID:zxl04jYw

このSSはアイドルマスターシンデレラガールズの世界観を元にしたお話です。
複数のPが存在し、かつオリジナルの設定がいくつか入っています。
連作短編の形をとっており、前のスレを読まないと話が分からない事もあるかと思います。
前スレ:ありす「心に咲く花」

その為、最初に投下するお話は事前情報なしでも理解できる構成としました。
こんな雰囲気が好きだなと少しでも感じて頂けた方は前スレも目を通して頂ければ
嬉しく思います。
それでは、投下を開始します。

前スレ
ありす「心に咲く花」:前篇
ありす「心に咲く花」:中篇
ありす「心に咲く花」:後篇














2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:50:40 ID:zxl04jYw

連作短編18
泰葉「宇宙船泰葉号」

夜空に輝く星を眺めて

私は一人、その場で立ちすくむ

その数に、その光に圧倒されて

それでも光り輝きたいと願うのは


3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:51:25 ID:zxl04jYw

P「スペースワールド?」

泰葉「ああ、あの遊園地」

先P「おう、お前らに仕事」

P「その遊園地、どこにあるんですか?」

泰葉「福岡です」

P「福岡? 九州?」

先P「岡崎は知ってたか、そうそのスペースワールドだ」

P「行った事あるのか?」

泰葉「ええ、小さい頃に。お仕事で」

P「そんな古くからあるのか?」

泰葉「私が小さい頃からありますから」

P「へえ、知らなかった」


4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:51:57 ID:zxl04jYw

先P「開業は20年以上前だ」

P「へー、だから九州生まれの泰葉に目が付けられたと」

先P「そういう事だ」

泰葉「でしたら福岡生まれのアイドルの方がいいのでは?」

先P「前に来てくれた子の方が勝手がいいとさ」

P「その頃からいるスタッフもいるのかな」

先P「ちょっとしたイベントだが、まあそれなりに頑張ってこい」


5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:52:30 ID:zxl04jYw

P「久しぶりの九州か?」

泰葉「はい、あんまり住んでた頃の記憶はないんですけど」

P「東京から1時間半か、そっから市内まで出て……スペースワールド駅なんてあるのか」

泰葉「そうですよ、着いたら目の前がスペースワールドです」

P「楽しみだな」

泰葉「遊びではありません」

P「分かってるって、ただこういう仕事してなかったら行くことも無かったろうなって思ってさ」

泰葉「……そうですね、今回も宜しくお願いします」

P「ああ、しっかりやろう」


6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:53:13 ID:zxl04jYw

CA「お飲み物は何になさいますか?」

P「コーヒーで、泰葉は?」

泰葉「温かいお茶を」

P「しかしこんな早いと人も少ないな」

泰葉「まだ星が見えますね」

P「夜明け前だからな、今から宇宙に行くんだからこれ位の方が雰囲気も出るか」

泰葉「雲を抜けて、星の下で」

P「俺達より星に近くいるのは本当の宇宙飛行士位だろうな」

泰葉「どんな気持ちなんでしょうね」

P「誰も知らない世界だからなあ、俺達がいるのは精々高度10キロメートル程度。宇宙に行こうと思ったらその10倍は必要だろ」

泰葉「想像もつかないですね」

P「全くだ、俺にできるのは黙ってここから眺めてるだけだな」


7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:54:20 ID:zxl04jYw

泰葉「行きたいとは、思いませんか?」

P「連れて行ってくれるのか?」

泰葉「プロデューサーなんですから道しるべ位にはなって下さい」

P「宇宙船泰葉号」

泰葉「ネーミングセンスの欠片もないです」

P「何か堕ちそう」

泰葉「機内でなんて事を言うんですか!?」

P「今月のオーディオプログラム、シンデレラガールズ特集だ」

泰葉「本当ですね、今は……肇さん」

P「聞いてたら寝そうだな、相変わらずの優しい声だ」

泰葉「……」

P「後は……十時さんにまゆに楓さん。人気所を並べてるなあ」

泰葉「どうせ私はいません」


8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:55:25 ID:zxl04jYw

P「精々13、4曲が限界なんだから大半のアイドルはいないだろ」

泰葉「これでも聞いてればいいんです」

P「何だよ、これなら持ってきてる」

泰葉「はい?」

P「その日、一緒に仕事するアイドルの曲は持ち歩いてる。当たり前だろ?」

泰葉「そう、ですか」

P「堕ちたな泰葉号」

泰葉「落ちてません!」

P「やっと降下か」

泰葉「少し驚くかもしれませんね」

P「驚く? 何の話だ?」

泰葉「見てれば分かりますよ」

P「なら楽しみに……どんどん街中に近づいていくんだが」


9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:56:28 ID:zxl04jYw

泰葉「そうですね」

P「下の人とか見えるんだが」

泰葉「そうですね」

P「……空港が町のど真ん中にあるんだが」

泰葉「そうですね」

P「テレホンショッキングか!」

泰葉「着陸ですよ」

P「こんなど真ん中にあるのかよ、市内まで5分!?」

泰葉「市内ってここも福岡市ですよ」

P「よくこんな所に作ったな、いや利用するだけなら凄く便利だけど」

泰葉「路線図も単純ですね」


10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 19:58:05 ID:zxl04jYw

P「博多まで一本、そっから鹿児島本線に乗るだけ。宿泊施設も園内にあるっていうし、至れり尽くせりだな」

泰葉「本当に久しぶりに来ましたから、私も何が何だか」

P「でも福岡市なのに博多駅なんだな、東京だったら千代田駅みたいなもんだろ。面白いな」

泰葉「こんなデパート出来てたんだ」

P「九州新幹線がらみで色々と作ったのか、さくらだっけ」

泰葉「ニューウェーブでも連れてきますか?」

P「一日駅長とか?」

泰葉「新幹線発車しまぁす」

P「さて、電車はどこから出るのかな?」

泰葉「……聞き流してくれてありがとうございます」


11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:04:13 ID:zxl04jYw

P「ちょっと出るとやっぱり地方って感じだな、えっと……千早駅?」

泰葉「青い鳥でもいるんでしょうか」

P「幸せの青い鳥ねえ、ここでコンサートしたら盛り上がるかな」

泰葉「私の場合は岡崎駅ですね」

P「その調子で色んなアイドルに行ってもらうか、渋谷さんとかなら凄い盛り上がりになるんだろうな」

泰葉「と思ったら古賀駅です」

P「イグアナの聖地だったりして」

泰葉「これだけいるとどこにもでありそうですね」

P「まあでも流石にもう……」

泰葉「東郷駅!?」

P「あいさん!?」


12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:05:16 ID:zxl04jYw

泰葉「まあ、駅自体は普通ですけど」

P「名前だけで凄くかっこよく見える、さっきの千鳥も名前はかっこよかったけど」

泰葉「出てきたら驚きですね」

P「何かいいな、知らない街ってだけで楽しくなる」

泰葉「最近は東京近辺が多かったですから」

P「さて、そろそろだな。スペースワールド駅、本当に目の前だ」

泰葉「宇宙の旅の始まりですね」

P「あのスペースシャトルがディスカバリー号か」

泰葉「もう引退してるんですね」

P「引退してからもああやって子供達から歓声が上がるって凄いよな」

泰葉「それだけの実績があるから、ですね」


13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:07:31 ID:zxl04jYw

P「さて、スタッフと合流しよう。スケジュールの最終確認もしないと」

泰葉「プラネタリウムですか」

P「3Dだってさ、そこがライブ会場にもなるんだと」

泰葉「イベント自体は30分位、短いですね」

P「プラネタリウムの上映もあるし、他のイベント会場にはまた別の催しがある」

泰葉「星空のメロディー」

P「多分、その曲があるから泰葉だったんだろうな」

泰葉「星ですか、機内で話の続きみたいです」

P「少し、周り歩いてみるか? 乗る時間は流石になさそうだけど」

泰葉「案内してくれるんですか?」

P「泰葉の方が詳しいだろ」


14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:10:01 ID:zxl04jYw

泰葉「もう色々と変わってますから、それに」

P「ん?」

泰葉「あの頃、あんまり覚えてないんです」

P「ザターンにタイタンにミューズにマーズ、星関係の名前ばかり」

泰葉「でもジュピターはないんですね」

P「そういえばないな、泰葉以上にぴったりかもって」

泰葉「いますね」

P「まあ名前だけならぴったりだもんなあ、北斗七星なんてのもあるし」

泰葉「ちなみにPさん、話したことは?」

P「あるよ、けど共演じゃない。あくまでプロデューサーとしての話」

泰葉「……」

P「もう今は離れた世界だから、今はプロデュースに忙しくてそれ以外に目を向ける余裕もないし」


15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:12:05 ID:zxl04jYw

泰葉「立ちたいと思いますか?」

P「立ちたいって」

泰葉「彼らと同じように、ステージに」

P「……未練がないことも無い、実際に復帰しようとはした」

泰葉「それなら!」

P「動かないんだ、もう」

泰葉「動かないって」

P「あんな風には踊れないってこと、そういう事だ」

泰葉「あの」

P「少し時間あるな。入ってみようか、ここ」


16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:16:04 ID:zxl04jYw

泰葉「宇宙博物館?」

P「当時の人は興奮したんだろうな、人間が月に行くなんて凄い事だよ」

泰葉「夢だったんでしょうね、人類の」

P「今は役目を終えて、その事実をここでしっかりと伝えてる」

泰葉「Pさんも同じだと?」

P「俺は違うよ、夢を与える前に終わっちゃったから」

泰葉「動かないんですか?」

P「俺も役目を終えたんだよ、プロデューサーになってからはっきりと分かった事だ」

泰葉「辛くないんですか? 自分が諦めた道を皆が進んでいくのを……目の前で」

P「自分の夢を押し付けてるんじゃないかって不安になる時がある、アイドルだった頃にこう考えてたからってそれが
  アイドル達にとってもそうだとは限らない。俺が進みたい道を代わりに進ませてるだけなんじゃないかと」

泰葉「そんな事ありません!」

P「だから見届けたいのかな。アイドル達が、泰葉が進む道が俺にとって思いもしなかった新しい世界なら」

泰葉「Pさん……」

P「俺は初めて、この世界に残って良かったって思えるのかもしれない」


17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:16:43 ID:zxl04jYw

泰葉「プラネタリウムって、意外と大きいんですね」

P「初めてか?」

泰葉「ええ、前に来た時はありませんでしたし」

P「一面に映し出されるみたいだな、試しに見せてもらえるらしい。今回のイベントの為だけに作られた特別なプログラムだって」

泰葉「今回の為だけに?」

P「先Pさんが色々と考えてたみたいだ、これだけやったなら自分が来ればよかったのに」

泰葉「静かですね」

P「誰もいないからな、本番はもう少し人が入るんだろうけど」

宇宙の誕生から137億年 幾億もの星が生まれてきました

泰葉「本当に途方もない時間」

人は夜空を見上げその星から様々な物語を作り上げました

泰葉「綺麗……」


18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:18:02 ID:zxl04jYw

「泰葉! ここはこうだ! 何度言ったら分かる!!」

「泰葉、もう少しゆっくりと声を出しなさい」

「そこはこうじゃない、ほら姿勢はこう」

泰葉「Pさん」

P「何だ?」

泰葉「あの頃のことあんまり覚えてないってさっき言いましたよね」

P「ああ」

泰葉「何で覚えてないんだろうって思って考えてみたんです」

P「単純に小さい頃の事だからじゃないのか?」

泰葉「いえ、あの頃は大人の言う事を聞いてばかりでしたから」

P「今も大体はそうだろ」

泰葉「もしそうなら、雛祭りのあれはありませんでしたよ」

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19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:20:00 ID:zxl04jYw

P「確かにそうだけど、あんな暴走は俺だって滅多にしない」

泰葉「今は自分で噛みしめながら進んでいますから、それだけ記憶に残るんだと思います」

P「……そうか」

貴方が私を思いもしない所にまで連れて来てくれましたから

今度は私が貴方を連れいていきます、宇宙船泰葉号で

絶対に落ちませんから、貴方がいてくれる限りずっと飛び続けますから

P「おい、おい」

泰葉「はっ」

P「いくら朝早いって言ってもな」

泰葉「ち、違いますっ! 昔を思い出してだけですから」


20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/04(月) 20:21:43 ID:zxl04jYw

P「にしては何かにやついてたが」

泰葉「にやついてなんかいません」

P「ならプログラムは覚えたな、本番まで繰り返し見なくても大丈夫って事か」

泰葉「……もう一回」

P「え? 何だって? 岡崎泰葉さん声が小さいぞ」

泰葉「もう一回見ましょう!」

P「はいはい、すみませんお願いします!」

泰葉「……だから最後まで、一緒にいて下さいね」

終わり 次回は10日後くらいを目安に


25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:16:23 ID:yfoNtEE2

連作短編19 凛「覚めない夢」

「ねえねえ、凄くかっこいい人を見つけたの!」

「ふうん、どこで?」

「オーディションで、何か一人だけ雰囲気が違ってさ。当り前の様に合格しちゃって、かっこよかったなあ」

「かっこよかったって、ライバルでしょ?」

「でもあの人になら負けても納得できる!」

「納得してちゃ駄目でしょ、いつかトップになるんでしょ?」

「凛もアイドルになったらいい所までいけると思うんだけどなあ、奇麗だし」

「私はそういうの興味ないから」

「もったいないよ」

「いいって、私はここから眺めてるだけで充分だから」


26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:17:00 ID:yfoNtEE2

「そんな凜に一つプレゼント」

「チケット?」

「そう、誰のだと思う?」

「今、話題に出てた人は一人しかいないよね」

「当たり! ねえ、行ってみようよ」

「どうしても?」

「どうしても!」

「分かった。でも、行くだけだから」

「きっと凛も気に入るから!」


27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:17:31 ID:yfoNtEE2

凛「あれから季節が何回変わったと思う? 正解は8回、二年経ったんだよ」

卯月「凛ちゃん、そろそろ時間だよ」

凛「長かった、本当に長かったよ。私がアイドルになって、当たり前の様にテレビに出てる位には」

卯月「まだ、覚めないんだね」

凛「ずっと、夢の中にいる。だけど」

卯月「頑張ってね、応援しかできないけど」

凛「大丈夫、必ず目覚めさせるから」


28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:18:33 ID:yfoNtEE2

P「……朝、か」

杏「見れば分かると思うけど」

P「そう呟きたくなる気分だったんだよ」

杏「あっそ、杏はまだ寝てるから」

P「いいのか? 叔父さんがまた心配するぞ」

杏「平気、鬱陶しいのがいなくなって清々してるだろうから」

P「俺はちょっと用事があるから、飯は適当に食べとけ」

杏「行くんだ?」

P「行くさ、いつかは通らなきゃいけない道だ」

杏「行かない方が楽だよ」

P「楽な道を通りたいなら、最初からこんな道なんて選んでない」


29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:19:05 ID:yfoNtEE2

杏「まゆがまた泣くよ、私はどうでもいいけど」

P「例えそうなったとしても、俺は行く」

杏「頑張らなくても生きていけるのに」

P「それはお前だけに許された特権だよ」

杏「行ってらっしゃい、夕飯の分がないから買って帰ってきて」

P「帰れたらな」

幸子「もしもし」

P「幸子か?」

幸子「ボクの携帯にボク以外の人間が出たら事件だと思います」

P「それはそうだ、統括は?」

幸子「スタッフと打ち合わせに、それなりに大きな仕事ですから」

P「悪いな、幸子一人に負担を掛けてしまって」


30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:19:36 ID:yfoNtEE2

幸子「本当にそう思うなら形として示して下さい」

P「分かったよ、服でもなんでも付き合ってやるから」

幸子「ボクの仕事を取ってきて下さい」

P「どんなのがいい?」

幸子「何でも構いませんよ、Pさんの能力はよく分かってるつもりですから」

P「じゃあ、その能力をフルに活かして頑張る事にするよ」

幸子「そろそろ仕事なので切りますよ」

P「分かった、頼むな」

幸子「寧ろ、プロデューサーの方が心配ですが。終わったらメールでもいいので教えて下さい、時間を見つけて連絡しますから」

P「さて、腹を括らないと」


31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:20:08 ID:yfoNtEE2

奈緒「次の駅か?」

加蓮「凛からもらった地図だとそう、そこから歩いて20分位かな」

奈緒「タクシー使うか?」

加蓮「いいよ、大げさ」

奈緒「涼しくはなってきたけどさあ」

加蓮「仕事だって頑張れてるし、今日次第では何歩も進めるかもしれないんだから」

奈緒「Pさんはもういるってさ」

加蓮「プライベートで会うの久しぶりだなあ」

奈緒「……だからそんなに気合入れてんのか?」

加蓮「どっかの誰かさんがいきなり家に来るから」

奈緒「だから悪かったって」


32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:20:53 ID:yfoNtEE2

加蓮「来る前に連絡入れてって言ったよね?」

奈緒「言った、言いました」

加蓮「何の連絡もなかったから、中止になったのかと思って完全に気を抜いてたのに」

奈緒「でも、お詫びって事でお願い一つ聞いてもらえるんだろ」

加蓮「当然の権利、奈緒もね」

奈緒「はいはい、でも変なのは止めろよ」

加蓮「プール行きたいなあ」

奈緒「プール……そういえばあの券」

加蓮「使用期限、なかったんだって」

奈緒「へえ、じゃあ四人分あるのか」

加蓮「そ、ルキトレさんも誘って。あ、幸子もかな」


33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:21:32 ID:yfoNtEE2

奈緒「練習とかしてるのか?」

加蓮「ううん、でもそれでいいの」

奈緒「初心者用のコースに混じるのか?」

加蓮「上手になっていくところも見て欲しいから」

奈緒「……そっか」

加蓮「だから、水着買いに行こ。可愛いの選んであげるから」

奈緒「べ、別に普通のでいいだろ」

加蓮「Pさん喜びそうなのってどんなのかな?」

奈緒「そんなの絶対に着ないからな!」


34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:22:04 ID:yfoNtEE2

P「何か、朝から疲れてないか?」

奈緒「……気にしなくていい」

加蓮「Pさん、普段はそういうの着てるの?」

P「俺の数少ない私服」

加蓮「センスいいね、いつもよりかっこよく見える」

P「加蓮もな、奈緒は普段と変わらないが」

奈緒「服なんてそこまで気にした事ない」

P「アイドルにあるまじき発言」

加蓮「モデルの仕事とかあんまりしないよね」

奈緒「誰が喜ぶんだよ」

P「俺と加蓮が」

奈緒「何でPさんのた、為にそんなの」


35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:23:36 ID:yfoNtEE2

加蓮「可愛いの着せてあげようよ」

P「やっぱりドレスかな、お姫様が着るような真っ白の」

加蓮「じゃあ私もドレス着たい」

P「どんなのがいいんだ?」

加蓮「ウェディングドレス」

P「早くないか?」

加蓮「いいの、練習にもなるし」

P「練習って」

奈緒「人生に一度だけのもんだろ」

P「二度三度する可能性もあるけどな」

加蓮「Pさんは二回だね」


36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:24:06 ID:yfoNtEE2

P「俺は離婚か死別する様に見えるのか」

加蓮「違うよ、私と奈緒で一回ずつ」

奈緒「はあ!?」

P「ちょっと待て!」

加蓮「あ、二人一緒の方が良かった?」

P 奈緒「そういう問題じゃない!」

P「で、今日の目的地ってのはどこなんだ?」

加蓮「とっておきの場所って凛は言ってた」

P「心当たりとかないのか?」

奈緒「いや、そんな事を言うの珍しいなって思ったくらいで」

加蓮「私も地図でしか教えてもらってないから」


37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:25:06 ID:yfoNtEE2

P「女の子限定ショップとかだったら俺は入れないな」

加蓮「その時は出るまで待っててね」

P「無になって待ってる」

奈緒「けど、ここら辺にそんなのあったか?」

加蓮「あんまり栄えてる所じゃないね」

P「開けてはいるんだが、あちこちにしか建物もないしな」

加蓮「女の子が遊ぶような場所じゃないのかな」

奈緒「スタジオ」

加蓮「あ、可能性ある」

P「渋谷凛って、仕事人間なのか?」


38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:25:43 ID:yfoNtEE2

加蓮「レッスン量、事務所でも多い方だよ」

P「仕事も多いだろうに、それに加えてだろ?」

奈緒「多分、事務所内でトップだ。大抵の日はいる」

P「やり過ぎなんじゃないのか?」

奈緒「もしそうだったら、都合はいい」

加蓮「落ち着いて話もできるしね」

P「オフにスタジオって、若いんだからもうちょっと――」

加蓮「見えてきた。あ、あれだよ!」

奈緒「当たっちゃったか、Pさんやっぱり凛は――」

P「……」

奈緒「Pさん?」

P「渋谷さん、俺が来る事を分かってたんだな」


39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:26:20 ID:yfoNtEE2

加蓮「あの建物が何か知ってるの?」

P「よく知ってる。そっか、駅からだと歩くんだな。安かった訳だ」

奈緒「借りたのか?」

P「全て、彼女が教えてくれるんじゃないか」

奈緒「入れるのか?」

P「開いてるな、ここを借りる人も少なくなったんだろうな」

加蓮「個人で借りれるような所なの?」

P「4時間くらいで5万だった、来たのは100人位だったかな」

奈緒「Pさん、一体どういう――」

P「俺がアイドルとして、最後にステージに立った場所だよ。そうだろ? 渋谷凛」

凛「ようこそ、やっぱり来たんだね」


40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:29:27 ID:yfoNtEE2

加蓮「凛?」

奈緒「何でステージに立ってんだ?」

凛「立ってみたかったんだ、アイドルになってからの夢が一つ叶ったかな」

P「そんな小さなステージに立つ事なんて、仕事ではもうないだろ?」

凛「そうだね、地方でもここよりは大きいかな。けど、どこにも負けない位いい景色だよ」

奈緒「Pさん、さっきのだけどアイドルとしてって」

P「言葉の通りだよ、アイドルやってたんだ。無名だったけどな」

加蓮「アイドル……」

凛「奈緒と加蓮は知らないと思うけど、本当」

P「よく知ってたな」

凛「いたからね、ここに」

P「また凄い偶然だな」


41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:30:05 ID:yfoNtEE2

凛「本当に凄い偶然だと思う、ニュージェネレーションが三人ともそこにいたんだから」

P「……本当に凄いな、観客なんて大して多くもなかったのに」

凛「事務所で会った時に皆で驚いた、あの時にそこにいたんだって」

奈緒「いや、でもアイドルって。いつまで?」

加蓮「引退したって事?」

凛「そのライブの一週間後にね」

奈緒 加蓮「一週間!?」

P「詳しいな」

凛「知ったのはアイドルになってから、見に行った時はそこまでアイドルに興味があった訳でもないしね」

奈緒「じゃあ何で行ったんだよ?」

凛「誘われたんだ、友達に。その子もアイドルやってたんだけど、凄くかっこいい人を見つけたって言われて何となく」

P「もう二年も前の話だ」


42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:30:41 ID:yfoNtEE2

凛「今でも簡単に思い出せる。熱気も、盛り上がりも、ステージの上に立つアイドルがどれだけ凄かったかも」

奈緒「やっぱり、上手かったのか?」

凛「私は今でも勝てる気がしない」

加蓮「今でもって、凛はもう」

凛「上には上がいる、だから今もこうして頑張れてる」

奈緒「ってか、そこまで凄いなら何でPさん引退したんだよ」

凛「うん、そう思うよね」

奈緒「それも知ってるんだな?」

凛「ライブが終わって一週間後、そのアイドルは表舞台から姿を消した。本当に突然で引退宣言もなく、誰が記事にする訳でもなく」

加蓮「それで?」

凛「同時に私の友達も連絡が取れなくなった、その時の私は忙しくなったんだろうなって気にも留めずに普通の生活に戻って」

奈緒「そういう言い方するって事は、違ったんだな?」


43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:31:14 ID:yfoNtEE2

凛「一年前にスカウトされてアイドルになって、私は統括にそんなアイドルがいなかったか聞いた。折角アイドルになれたんだから、
  どこかで再会できたら嬉しいなって思って。もちろん友達の事も聞いたよ」

奈緒「統括……」

加蓮「それで、会えたの?」

凛「会えたよ。その前に聞きたいんだけど、プロデューサーは覚えてる?」

P「覚えてるよ、その子の事。そっか、渋谷さんの友達だったのか」

奈緒「印象に残る人だったのか?」

P「当時、俺に話しかけてきた子がいたんだ。アイドルやってるだけあって可愛い子で、オーディションで会う度に話してた」

凛「覚えてるんだ」

P「引退してから見なくなったけど、この世界で会ってないって事はその子も引退したのか?」

凛「したよ、せざるを得なかった」

P「怪我か?」


44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:31:59 ID:yfoNtEE2

凛「いいの? 加蓮と奈緒の前で話しても」

P「どういう意味なのかな」

凛「そのままの意味だよ」

加蓮「聞く、ここまで来て帰るわけにはいかないから」

奈緒「当たり前だろ、判断はそれからだ」

凛「いい? プロデューサー」

P「俺に決定権はないみたいだし、黙って聞くよ」

凛「じゃあ、どこから話そうか」

奈緒「最初からでいい」

凛「プロデューサーの両親って、事務所を経営してたんだ。子役専門のプロダクション」

加蓮「子役? 小学生とか?」


45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:32:38 ID:yfoNtEE2

P「12歳以下の子供だけだった、例外は俺ともう一人くらいで」

凛「物心ついたときはもうこの世界にいたんだよね?」

P「いた、芸歴だけなら泰葉より少し長いかな。抜かれるのも時間の問題だけど」

奈緒「お互いに知ってたのか?」

P「最近になって泰葉にばれた、俺はその前から知ってたけど」

加蓮「他にも知ってる子いるの?」

P「ありすは知ってる、俺が教えたから。後は、彼女の口から出てくるんじゃないか」

加蓮「まだいるんだ」

凛「私たちが知ってるくらいだから、他にもいるかもしれない。泰葉が知ってる事も私は知らなかったから」

奈緒「……続けようぜ」


46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:36:42 ID:yfoNtEE2

凛「そうだね、そのプロダクションは人気があってさ。業界内でもそれなりの力を持ってた。将来有望な子もたくさんいた
  みたいで、そういう子は大きくなると大手の事務所に移籍していった」

加蓮「残らないんだ?」

凛「その見返りとして、結構なお金と仕事を回してもらってたんだって。そうだよね?」

P「その通りだよ」

奈緒「ああ、そういう……」

凛「そういった大手とのコネクションを活かして人と仕事を回す、そうやって事務所は大きくなっていった」

奈緒「順調だな」

凛「けど、そのやり方は続かなかった。原因は二つ、プロデューサーは分かるかな?」

P「一つはアイドルブームの到来」

凛「12歳以下のアイドルもいるにはいるけど、アイドルの主流は十代後半」

奈緒「仕事がなくなったのか」


47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:37:15 ID:yfoNtEE2

P「事務所に来る仕事を見てみれば分かる事だよ、150名以上のアイドルが在籍する中で12歳以下は14名。仕事の割合も変わらない」

加蓮「確かに、そうだね」

P「ファミリードラマがアイドル主体のドラマになるだけで子役の需要はそこから消える。そうなると始まるのが」

奈緒「な、何だよ?」

P「競争と淘汰」

加蓮「そんなに減ったの?」

P「とある事務所が折檻したからな。それまでにも伝説的な活躍をしたアイドルはいたけど、今は本当に戦国時代だ。
  それはもう、加蓮達のほうが分かってると思うが」

奈緒「それで、二つ目は」

P「収入は減る、大手は以前の様に相手をしてくれない。その結果、大手以外の事務所の相手をするようになる。
当然、待遇は低いし仕事は回ってこない。そんな噂が広まれば有望なのも集まらなくなる」


48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:42:14 ID:yfoNtEE2

加蓮「そんなのって」

P「で、あちこちから借金重ねて首が回らなくなった事務所はとんでもない事をやらかした。これが事務所が潰れる決定打だったんだろう」

凛「……知ってたんだ」

P「二つ目の理由、所属していた子を売り飛ばした」

奈緒「売り飛ばしたって」

P「文字通りの意味だよ」

凛「移籍、とは違うんでしょ?」

P「まるで違う、そんな生易しいものじゃない。本当に驚いたよ、移籍したらどこに移ったか位は教えてもらえるのが普通だったのに、
何も教えてもらえなくなるんだから。いくら調べても、誰に聞いても分からない。答えを知るのにそれから一年近く掛かった」

奈緒「やっぱり……その……」

P「ここから先も、必要な話なのか?」


49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:43:08 ID:yfoNtEE2

凛「言いにくいなら私が言うよ」

P「誰がアイドルに言わせるか。有体に言えば、枕って事だ」

加蓮「枕って……だって所属してた子達って」

P「関係ない、買う側からすればそれ目当てなんだから」

奈緒「いや、だって親とか絶対――」

P「反対すると思うか? 思うよな、俺だって思った。そんなのおとぎ話だって否定して他の可能性を探したさ」

加蓮「何で……そこまでして生き残りたいの!?」

P「俺にだって理解できない話だよ、それで生き残ったアイドルなんて本当に僅かだってのに」

凛「生き残ったアイドルもその話が明るみに出ればいつでも追放される立場、そんな中でステージに立つってどんな気分なのか想像したくもない」

P「君には関係ない世界だよ」

加蓮「結局、ばれたから潰れたの?」


50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:43:42 ID:yfoNtEE2

P「ある記者が記事にしようとしたらしいんだが、揉み消されたらしくて世間には出なかった。話に聞く限り億単位の金が動いたそうだけど」

加蓮「億……」

凛「その記者に情報をリークしたの、誰だと思う?」

P「……その子か?」

凛「当たり、まあ分かるよね」

奈緒「リークって、Pさんのファンだったんだろ? 何で事務所を潰すような事」

凛「その答えは、彼女しか知らない。今もまだ夢の中にいる彼女にしか答えられない」

加蓮「夢?」

凛「入院してるんだ、二年間」

奈緒「二年!?」

加蓮「事故……とか?」


51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:44:56 ID:yfoNtEE2

凛「外傷はない、街中で倒れてそれっきり」

奈緒「それでずっと眠ってるのか?」

凛「そう、いつ目覚めるか誰も分からない」

P「……」

加蓮「凜の話は分かった、Pさんのいた事務所が関係あるかもしれない事も理解した。だけど」

凛「加蓮達の質問は分かってる。どうして統括はプロデューサーと加蓮達を遠ざけたのか、だよね?」

奈緒「今の話だと、Pさんあんまり関係ないだろ。その子の事だって何も知らなかったんだから」

凛「うん、そうだろうね。私はプロデューサーが悪いとか責めようとかそういう事は考えてないから安心して」

奈緒「なら――」

凛「その子の事、何で統括はそんなに詳しいんだろうね」


52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:46:07 ID:yfoNtEE2

奈緒「まさか」

加蓮「……家族?」

凛「うん、当たり。世界って狭いね」

P「質問いいか?」

凛「いいよ」

P「その記者は特定できてるのか?」

凛「ううん、フリーだったみたいで足取りは不明だって」

P「その子が統括の妹で、意識不明の原因は俺に関係あるかもしれない」

凛「そうだね」

P「ならどうして楓さんを俺にプロデュースさせた? 失敗させたいなら他の新人の方が可能性は高かったはずだ」


53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:46:52 ID:yfoNtEE2

凛「楓さん、モデルだったって知ってる?」

P「それは知ってる、だからプロデュースの難易度としては低いんだ。一から教える必要がないってのはそれだけで大きいんだから」

凛「そう、低い。低いって、言いかえればその時点で完成してるって事」

P「それがプロデュースさせた事にどう繋がるんだ?」

凛「プロデューサーの裁量の余地が狭いって事、もっと言えば誰でもある程度の成功はした。つまりプロデューサーの功績としては薄い」

P「生かさず殺さずって理解でいいのか?」

凛「統括からすればいなくなられても困るから、必ず加蓮達に勝てる人を用意したんだと思う。加蓮達を成功させたら事務所内での力が強まっちゃうから」

奈緒「強まったら問題なのか?」

凛「妹を殺したかもしれない人に成功させたいとか思う?」

奈緒「いや、だったら居場所だけ把握しといて採用しなければいいだろ」


54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:47:24 ID:yfoNtEE2

P「それは統括でも無理だったと思う、採用を決めたのは社長だから。統括の態度を見る限り俺の事、途中まで知らなかったんじゃないか?」

加蓮「社長って、ちひろさん?」

P「何故かアイドルに名前で呼ばせるよなあの人」

奈緒「社長って言われるまで気付かなかった、ドリンク売ってるし」

加蓮「そもそもPさん、何でここを受けたの?」

P「紹介されたんだよ、ここに行ってみたらって」

凛「それは私も知りたい、誰に言われたの?」

P「俺がここに来る前、どこにいたか知ってるか?」

凛「統括は知らないみたいだった」

P「俺の両親がどうなったかは?」

凛「それは……知ってるみたい」

加蓮「Pさん?」

P「俺にここを紹介したのは、高木順一郎って人だ」


55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:47:56 ID:yfoNtEE2

奈緒「たかぎじゅんいちろう?」

加蓮「誰それ?」

凛「……」

P「765プロの会長だよ」

奈緒「765って、あの765!?」

加蓮「天海春香とか星井美希とかいるあそこ!?」

P「そう、天海春香とか星井美希がいるあそこ」

奈緒「どんな繋がりがあったらそうなるんだよ!? ってか本当なのか?」

凛「本当だよ」

P「なるほど、統括はって言い方をしてたな」

凛「そのままそこにいた方が互いに幸せだったかもね」


56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:48:36 ID:yfoNtEE2

P「俺の父とそれなりに仲が良かったらしい。途中でその繋がりは途絶えたみたいだけど、俺の事をどこからか聞いてたみたいで拾われたんだ」

奈緒「何してたんだよ?」

P「マネージャーの様な、雑用の様な。忙しかったよ」

凛「だからプロデューサーとしてやっていけるんだ、そんな大手の力を借りてるなら余裕だよね」

P「彼らの名誉の為に言うが、そんな事実は一切ないよ。成功してるのは全てアイドル達の力だ」

凛「目覚めた時、彼女の返答次第では居場所を無くすよ。それでもいるの?」

P「いる、何より俺が知りたくなったから。どうしてその子はそんな事になったのか」

奈緒「なあ、あたしも質問いいか?」

凛「隠し事をするつもりもないから」

奈緒「何で今になって統括はあたしと加蓮を担当しようとしてる?」


57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:51:02 ID:yfoNtEE2

凛「橘ありす、藤原肇、岡崎泰葉、黒川千秋」

P「その四人がどうかしたのか?」

凛「気付いてないんだろうけど、この四人はプロデューサーと関わって変わったんだよ。見違えるくらいに」

奈緒「まあ、柔らかくなってはいるけど」

凛「最初は固かったのに、今では笑顔も増えて人気も出てきた」

P「ああ、これ以上はって事か」

奈緒「……何だよそれ」

加蓮「ふざけてる」

奈緒「その話に協力してたって事は、凜も同じ考えなのか?」

凛「彼女を目覚めさせる事なら協力するけど、そんな意地の張り合いには興味ないよ」

P「君はどうしたいんだ?」


58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:52:02 ID:yfoNtEE2

凛「私はトップになる、それはあの子が見れなかった景色を見せたいから。ならまずは、最初に目標に定めた人を超えないと
  話にならない」

加蓮「なら、凛はどうして私達を誘ったの?」

凛「本気じゃないよ、来るとも思ってない。かといって、統括を無視する訳にもいかないよ。
  私たちをここまで連れてきてくれた人だから」

P「何でそれを明かす気になったんだ?」

凛「楓さんと共演した時、緊張したよ。だけどそっちは素知らぬ顔で心配そうに見てきて、何か悔しかった。こっちがどんな思いで
  歌ってるかとか知らない癖にって」

P「なるほどね、どうしたのかとは思ってた」

凛「私は純粋にアイドルとしてプロデューサーを超えたいだけ、そうすればきっと……あの子も目覚めるって信じてるから」

P「話は分かった、それで俺はどうすればいい?」

凛「どうしようもないんじゃないかな、私が驚く様な情報なんてもう持ってないでしょ?」

P「そうだな、目覚めない以上どうしようもない」


59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:52:33 ID:yfoNtEE2

凛「今日はこれで終わりかな。ごめんね加蓮、奈緒。折角のオフだったから普通に遊びたかったんだけど」

加蓮「まだ今は、一緒にそのステージには立てない」

凛「うん、分かってる。ただ聞いて欲しかっただけだから、今はそれでいい」

奈緒「なあ、凛。まだ、言いたい事あるんじゃないのか?」

凛「何を言ってるの、全て言ったよ。知りたかったんでしょ?」

奈緒「統括の事情は分かった、けど凛の事情が分からない」

凛「私?」

奈緒「その子が心配で色々と調べたっていう気持ちは分かる。だけどさ、じゃあ何でPさんと今まで会わなかったんだよ?」

加蓮「あ」

P「……」


60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:53:48 ID:yfoNtEE2

奈緒「統括の目だってこうやって潜り抜けられるんだから、事情に詳しい人に聞きたいならPさんだって適任だろ? 何で統括だけに聞いて満足してたんだ?」

加蓮「ねえ、どうして?」

P「俺の前で言いにくいなら席を外してもいいが」

凛「スケジュールが合わなかっただけ、それだけだよ」

奈緒「あんなに分かりやすい嘘、初めてだ」

加蓮「無理してたよね」

P「俺、何かしたのかな」

加蓮「Pさんは悪くないと思う、もし非があるなら凛は言ってくるから」

奈緒「なんか思い詰めてるって感じだ」

P「島村さんや本田さんも同じなのか、あるいは彼女だけなのか」

奈緒「そっちの二人はあんまり話したことないんだよなあ」


61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:54:18 ID:yfoNtEE2

P「何で渋谷さんだけなんだよ?」

奈緒「いや、レッスンで一緒になる回数が多くて」

加蓮「話してる内に気が合って、いつの間にか」

P「しかし、統括はどうすればいいのかな」

奈緒「Pさんの両親は何してんだ?」

P「空の上だよ」

奈緒「旅行か?」

P「天国か地獄か知らないけどな」

加蓮「奈緒」

奈緒「ごめん!」

P「いや、こっちこそ申し訳ない。生きてたら解決してたかもしれない問題なんだから」


62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:54:52 ID:yfoNtEE2

奈緒「そんな言い方はしなくていいって」

P「二人揃って置いてったんだから少しくらい役に立ってくれよって感じだ」

加蓮「何も残ってないの?」

P「全て燃えて無くなった、処分には手っ取り早い方法だったんだろう。さて、駅に到着」

奈緒「仕事とか、当分は別の方が良いか?」

P「暫くはな、こうなると俺と統括の問題だ。あんまり動くなよ」

加蓮「動くよ」

P「……無理するな。後、トレーナーさんには絶対に内緒だ」

奈緒「分かってる、余計な事は何も言わないって」

P「それじゃ、今日はここまでだな。悪かった、こんな事に付き合わせて」


63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:56:10 ID:yfoNtEE2

杏「目覚めるの?」

P「さあな」

杏「投げやり」

P「俺は医者でもなんでもない、そんな判断できるか」

杏「凛もよくそこまで調べたね」

P「統括からの情報がほとんどなんだろうが、それは同感」

杏「でも話からして、私やまゆの事は知らないみたいだね」

P「完全に揉み消されたみたいだから、運が良かったな」

杏「どうだろうね。案外、こういうのって後になってどかんと来るから」

P「来たってお前は気にしないだろ」

杏「調べるの?」


64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:56:43 ID:yfoNtEE2

P「まあ、無関係とは言えないからな。そもそもその子が独自に情報を得たとは考えにくいって疑問もある」

杏「誰かが唆したんだろうね」

P「間違いなくそうだろ。俺のファンって事は知ってる人は知ってただろうから」

杏「で、その情報を記者に教えた後に意識不明」

P「怪しすぎるよな、統括や渋谷さんも思ってんだろうけど」

杏「口止め?」

P「何かお前と話してて思ったけど、怪しいの俺だな。事務所を守る為に口を封じたって理由もあるし、
  統括も警戒して当たり前か」

杏「兄貴が怪しいなら私も容疑者になるんだけど」

P「まゆはやってないよな?」


65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:57:36 ID:yfoNtEE2

杏「確かにそんなイメージはあるけど、そこまでするかな?」

P「やっぱりないな、あいつは俺に少しでも迷惑が掛かるような事は絶対にしない」

杏「信頼してるね」

P「信頼というか、もしあいつがやったんだとしたら俺は事務所を辞める」

杏「そういうの、かっこわるい」

P「ほっとけ、もう夜も遅い。とっとと寝ろ」


66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/18(月) 14:58:59 ID:yfoNtEE2

未央「うーん、しぶりんでも全部は言えないかあ」

凛「言っちゃった方がよかったかな」

卯月「そんな事ないよ、言ったらプロデューサーさんが困っちゃったと思う」

未央「悩むもんね」

卯月「でも会えて嬉しかったでしょ?」

凛「……そうだね、やっぱり変わってなかった」

未央「プロデューサーが?」

凛「違うよ、変わってなかったのは」

未央「何か顔が赤くなっておりますなー」

卯月「茶化したら駄目だよ、それで変わってなかったのは?」

凛「……私の方だった」

次回は22日 今度はきちん投下します


69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:09:30 ID:K/0J2tp2

連作短編20
智絵理「クローバーを探して」

夕美「今日、皆に紹介するのはこのお花。え? 知らないって? でもね、このお花は葉っぱに特徴があるんだ。
   
   ほら、知ってるよね? シロツメクサって言うんだ。この3枚の葉っぱは4枚だったり5枚だったりするんだけど、
   
   今までの最高記録は56枚なんだって。皆は何枚の葉っぱのクローバーを見つけられるかな? もし見つけたらいい事ある
   
   かもしれないよ。そんなシロツメクサの花言葉は復讐、幸運、約束。ちょっと怖い言葉が出てきたね、この花が珍しいのは4枚の
   
   葉っぱに特別に花言葉が与えられてるところ。その花言葉は……好きな人が出来たら調べてみてね、お姉さんとの約束だよ。
   
   じゃあ皆また明日、相葉夕美の今日の花言葉でした」

智絵里「クローバー……」

女P「本当に好きなのね。栞にもする位だし、当り前か」

智絵里「私はそんなに……運がいい方じゃありませんから」

女P「私の担当ではトップなんだから、少しは胸を張りなさい」

智絵里「いえ、それも女Pさんのおかげ……ですから」

女P「謙虚なのは確かに美徳だけど、まあいいか。行きましょ、今日のお仕事は気に入ると思う」


70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:10:01 ID:K/0J2tp2

智絵里「本当ですか?」

女P「嘘をついてどうするのよ、来なさい」

美穂「あ、女Pさん」

女P「はいお待たせ、智絵里を連れてきた」

智絵里「今日は美穂ちゃんとお仕事…ですか?」

女P「そ、うちの事務所が誇る乙女達が幸せを探すって企画」

美穂「お、乙女ですかぁ」

女P「デビューしたてじゃないんだから、どう見たって乙女じゃない」

美穂「そうですね、もう……どんとこいです!」

智絵里「幸せを探すっていうのは……?」

女P「ま、その名の通り幸せの象徴として扱われてる物の紹介といったところね。今回のテーマが、智絵里の
   好きなクローバー」

智絵里「やった」


71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:10:52 ID:K/0J2tp2

女P「見つかるかは貴方次第、茄子でも連れてくれば簡単に見つかるんでしょうけど」

美穂「もし、それで見つからなかったら」

女P「没ね」

美穂「ぼ、ぼつ……」

女P「幸せ、見つかりませんでした! なんて許されるのは茜くらいでしょ」

智絵里「見つからなかったら……」

女P「何で始まる前からネガティブなのよ! ほら段々と景色もよくなってきた」

美穂「この前の楓さんの撮影した所ですか?」

女P「確かに似てるわね……あいつとセンスが一緒ってのはちょっと癪ね」

美穂「プロデューサーですか?」

女P「確か選んだのあいつなのよね、悔しいけど似合ってたわ」

智絵里「プロデューサー……三人いますよ?」

美穂「若い方です、いつも千枝ちゃんと一緒にいる」


72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:11:39 ID:K/0J2tp2

女P「そんな印象なのね、無理もないか。あの子は本当にPさんPさんだから」

美穂「懐いてますよね」

女P「って、何でわざわざこんな綺麗な所であいつの話になるのよ! 今日は関係ないでしょ!」

智絵里「仲がいいんですか?」

美穂「この前、一緒にお出かけしたんです。幸子ちゃんと三人で」

女P「幸子と?」

美穂「はい。えっと、駄目でしたでしょうか?」

女P「いえ……何もなかった?」

美穂「はい、幸子ちゃんも嬉しそうでした」

女P「となると、やっぱりあの二人か」

美穂「その時に二人に協力してもらって取ったのがこの熊さん」

智絵里「真っ白」


73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:12:19 ID:K/0J2tp2

女P「へえ、趣味いいわね。あの二人にしては」

美穂「折角だから、名前を付けたんです。幸Pちゃんって」

女P「その熊さんに同情するわ」

美穂「か、可愛い名前でしょう!?」

智絵里「うん…かわいい」

女P「ボクは世界一かーわーいーいー、とか言いそう」

美穂「言いません!」

女P「さて……広いわね」

美穂「ここから探すんですか?」

智絵里「これだけあれば、見つかります」

美穂「今日中に見つからなかったら……没……」


74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:12:54 ID:K/0J2tp2

女P「そんなプレッシャー感じなくていいから、智絵里は着替え終わった?」

智絵里「白のワンピース…初めてです」

美穂「うわぁ、天使みたい」

女P「他人事みたいに言ってるけど、貴方も着るのよ」

美穂「無理です!」

女P「即答しないの!」

美穂「う……分かりました!」

女P「あら、妙に物分かりがいいわね」

美穂「これでもアイドルなんですから」

女P「……へえ」

智絵里「クローバーがいっぱい」

美穂「えっと、三つ葉じゃなくて四葉」


75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:13:31 ID:K/0J2tp2

女P「一応、撮影は後で入れるからあんまり服を汚さないようにね。私はちょっと外すけど無理しちゃ駄目よ」

美穂「はい……じゃあ探そっか」

智絵里「熊、好きなんですか?」

美穂「好き、なのかな? あの熊さんは本当にたまたま見つけただけだから」

智絵里「熊本だから、熊さん?」

美穂「そうかな、東京にはあんまりいないから熊さんの方から来てくれたのかも」

智絵里「優しい熊さんだ、いいな」

美穂「智絵里ちゃんは何でクローバーが好きなの?」

智絵里「涙の数だけ強くなれる アスファルトに咲く花みたいに」

美穂「何かの歌?」

智絵里「うん、デビューしたての頃に女Pさんから教えてもらって」


76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:14:01 ID:K/0J2tp2

女P「一応、撮影は後で入れるからあんまり服を汚さないようにね。私はちょっと外すけど無理しちゃ駄目よ」

美穂「はい……じゃあ探そっか」

智絵里「熊、好きなんですか?」

美穂「好き、なのかな? あの熊さんは本当にたまたま見つけただけだから」

智絵里「熊本だから、熊さん?」

美穂「そうかな、東京にはあんまりいないから熊さんの方から来てくれたのかも」

智絵里「優しい熊さんだ、いいな」

美穂「智絵里ちゃんは何でクローバーが好きなの?」

智絵里「涙の数だけ強くなれる アスファルトに咲く花みたいに」

美穂「何かの歌?」

智絵里「うん、デビューしたての頃に女Pさんから教えてもらって」


77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:15:37 ID:K/0J2tp2

美穂「その花が四葉のクローバー?」

智絵里「うん……幸せもらった気がしたから」

美穂「きっと、智絵里ちゃんに会いに来たんだ」

智絵里「じゃあ、今日は私が会いに行く番」

美穂「そのクローバーさんも待ってるよ」

智絵里「待ってると…いいな」

女P「お待たせ、スタッフさんも到着したから……って」

スタッフ「機材はここで大丈夫ですか? プロデューサー?」

女P「あの子達はどこに行ったのよ!?」


78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:16:12 ID:K/0J2tp2

ありす「だから、どうしてナビ通りに進んだらこうなるんですか?」

P「そのナビがおかしかったから、としか言い様がない」

ありす「買い換えた方がいいのでは?」

P「申請出すか……ありす、そのタブレットは使えるか?」

ありす「もちろんです、どうぞ。現在地は恐らくここです」

P「随分と街から外れちゃったな、仕方がないここから……こう行くのが早いか」

ありす「時間に余裕があって良かったですね」

P「全くだ、とはいえ早朝の仕事だったから眠いのがなあ。本当に寝ててもいいんだぞ?」

ありす「そこまで薄情ではありません」

P「何か飲み物でもないかな、目が覚めるようなの」

ありす「少なくとも、コンビニはありません」

P「それは想像ついてた。お!」


79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:16:43 ID:K/0J2tp2

ありす「こんな所にあって採算が取れているんでしょうか」

P「とはいえ今の俺たちにとっては棚からぼた餅だ」

ありす「大げさですよ」

P「さて、何にしようかな」

ありす「別に何でもいいです」

P「珍しいのもあるんだし、飲んでみたらどうだ?」

ありす「そんなロマンはいりません」

P「全く、ミルクティーなんて飲んでたらミルクティーみたいな人生しか送れないぞ」

ありす「充分、変わった人生を送ってると思いますが」

P「俺はこれだな」

ありす「大相撲自販機場所うっちゃり……飲み物なんですか?」


80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:17:16 ID:K/0J2tp2

P「缶に入ってるし、液体だぞ」

ありす「液体だからといって飲めるとは限りません」

P「そんな事を言って、欲しいってだだこねてもあげないからな」

ありす「ありえませんから、きちんと飲んで下さいね」

P「さて、では一口」

ありす「どんな味ですか?」

P「うっちゃられた感じがする」

ありす「答えになってませんが」

P「今ならどんな怪事件でも解決できる気がする!」

ありす「はいはいそうですか」

P「目は覚めたし、これなら事務所まで何とかなりそうだ」

ありす「別にどこかで休憩しても構いません」


81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:17:49 ID:K/0J2tp2

P「折角の夏休みなんだ、それは悪いって」

ありす「折角の夏休みだから、です」

P「帰って遊んだりしたいだろ?」

ありす「それとこれとは話が――」

P「何の音だ?」

ありす「動物では?」

P「いや……こっちに来そうだな。ありす、車に戻るぞ」

ありす「何か持ってますか?」

P「うっちゃり」

ありす「動物に飲ませるのは駄目ですよ」

P「分かってるって、せーので走るぞ」


82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:18:19 ID:K/0J2tp2

ありす「分かりました」

P「せーの!」

美穂「やっと出れたー!」

智絵里「出れないかと思って……よかった……」

ありす「うっちゃられた感じです」

P「……おう」

ありす「お仕事中だったと」

美穂「探してる内に夢中になっちゃって、気づいたらこんな処に」

P「待ってて、とりあえず連絡を取るから。今日の担当は?」

智絵里「女Pさんです」

P「了解、目を離して遭難未遂とはね……げ、圏外。さっきまで使えたのに」


83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:18:51 ID:K/0J2tp2

美穂「わたし達も使えなくて」

ありす「何を探してたんですか?」

美穂「クローバーです、四葉の」

ありす「幸せの象徴の、ですか?」

智絵里「うん、とても奇麗で…優しい気持ちになれる」

ありす「それで遭難ですか」

智絵里「う……」

P「ありすもそれくらいにしとけ。車に乗って仕事場まで送るよ、それが早いだろうから」

美穂「すみません」

P「いいよ、どうせついでだ」

智絵里「熊さん……取ったのってもしかして」

美穂「うん、この人だよ」


84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:19:24 ID:K/0J2tp2

P「あれは小日向さんが自分で取ったんであって、俺は何もしてないよ。幸子共々惨敗を喫
  しただけだ」

美穂「そんな事ありません、プロデューサーが頑張ってくれたからわたしの所に来てくれたんです」

P「そう言ってくれると救われるよ」

ありす「熊さん?」

P「ゲーセンに行った時にちょっとな」

ありす「……そうですか」

P「そういえば、その服は衣装?」

美穂「はい……その、ど、どうでひょうか!?」

P「大丈夫、ちゃんとアイドルに見える。可愛いよ」

美穂「よかった、ありがとうございます」

ありす「可愛いですか」

P「何でそんな不穏なオーラを出してるんだよ」

ありす「知りません」


85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:20:11 ID:K/0J2tp2

P「さて、緒方さんと呼んだ方がいいかな」

智絵里「智絵里でも…いいです」

美穂「初対面ですよね?」

P「プロデューサーとしては、そうだな」

ありす「プロデューサーの前って」

P「それの後」

智絵里「トレーナーさんだと、思ってたんですけど」

美穂「トレーナー? そういえば幸子ちゃんの時にそんな事……」

ありす「一体、何がどうなったらそんな事になるんですか」

P「色々とあったんだよ、その時にちろっとね」

智絵里「ちろっと、です」


86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:21:22 ID:K/0J2tp2

美穂「一緒にお仕事を?」

智絵里「ドラマの撮影があって…そこで……」

P「本当に偶然なんだよ。俺はその頃、どんな仕事があるのやらって見学してた時期だっ から」

智絵里「色々…教えてもらって」

P「上手いよ、入り込むっていうか……そういえばそのドラマのタイトルが」

智絵里「クローバーを探して、です」

P「またクローバーか、縁があるんだね」

智絵里「はい、またお会いできました」

P「今日はすぐお別れだろうけど……雨か」

美穂「天気予報は晴れだったのに」

ありす「本降りになってしまいそうですね」

P「さすがにこれだと中断だろうし、丁度よかったかな。ありす、天気予報は?」


87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:21:55 ID:K/0J2tp2

ありす「降水確率は終日72%です」

P「中止かな」

智絵里「それは駄目です」

美穂「智絵里ちゃん?」

智絵里「駄目……嫌です…」

P「……ここなら携帯も通じるだろうから、話してみるよ」
――

P「分かりました、では一応そこまでは送りますから」

美穂「どうですか?」

P「協議中らしい、まあ居場所が分からなくて撮影すら始めてなかったから別に進行にそれほど不都合が
 出てる訳でもなさそうだ」

美穂「中止でしょうか?」

P「俺ならそう判断するかな、結構な人員をここに留まらせるのはちょっと」


88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:22:56 ID:K/0J2tp2

ありす「止みそうにありませんね」

P「見えたな、ここに停めておくから待ってて。どうせ俺も帰りの途中だから中止って事ならここから
 事務所まで送るよ」

ありす「傘は?」

P「いいよ、すぐの距離だ」

智絵里「……」

美穂「やっぱり駄目でしょうね」

ありす「仕方がありません、無理して体調を壊したらその方が……あの、緒方さんは?」

美穂「……え?」

P「何をやってるんですか」

女P「ごめん、本当にごめん」

P「変なのに見つかって連れ去られたら事務所が潰れますよ」

女P「始末書よね……」


89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:23:55 ID:K/0J2tp2

P「そんなもん書く暇あるなら仕事して下さい」

女P「……借りになっちゃったわね」

P「いいですよ。で、今日の仕事はどうするんですか?」

女P「中止、無理させてもしょうがない」

P「賢明です。車に二人ともいますから、事務所までついでに送りますよ」

女P「そうよね、こんな状態で運転してたら事故って新聞の一面飾って」

P「どこまでネガティブになったら気が済むんですか、午後も仕事でしょう」

女P「大丈夫かな……」

P「たまにやらかすとこれだ……先輩を見習って堂々としてればいいんです」

女P「あれの真似は出来ない」

P「あれって」

美穂「あの!」

P「って、傘もなしに何で出てきたの?」

美穂「智絵里ちゃんがいなくなっちゃいました!」


90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:24:29 ID:K/0J2tp2

女P「車にいたんじゃないの?」

P「さっきまでいましたよ」

美穂「いつの間にか姿がなくて、ありすちゃんが追いかけて行っちゃって」

P「おいおい……」

女P「行く場所なんて一つよね」

P「探しに行ったんでしょう、クローバーを」

美穂「何でそんなに拘るんでしょう」

P「……まあ、あれでしょうね」

女P「ったく、もうあの時から変わってないじゃない」

P「とりあえず俺はありすを、女Pさんは緒方さんを優先に。小日向さんはスタッフに知らせて」

美穂「手伝います」

P「いや、その気持ちがあるなら車にいて欲しい」

美穂「わ、わたしもいなくなりますよ!」

P「……俺の目の届く位置にいるように」


91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:25:07 ID:K/0J2tp2

美穂「いない……大丈夫かな」

P「靄が出てきたな、視界がこんなに悪いとなるとやっぱり警察かな」

美穂「呼んじゃったら騒ぎになるんじゃ」

P「行方不明になったら洒落にならない、本来ならもう呼ぶべきなんだけど」

美穂「そうなったら本当にこのお仕事、なくなっちゃいますね」

P「緒方さんがショックを受けるだろうからなあ、頑張り屋なんだけど空回る時があって」

美穂「あんなに人気があるのにですか?」

P「完璧超人がトップになれる世界でもないよ」

美穂「そう……ですよね」


92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:25:41 ID:K/0J2tp2

P「緒方さんは……」

美穂「何かあったんですよね?」

P「緒方さんの言葉の中で一つ、印象に残ってるのがある」

美穂「何ですか?」

P「見捨てないで下さい、って言ったんだ。事務所に入って二か月くらいたった時だけど」

美穂「み、見捨てないで下さい?」

P「まあ、俺がまだトレーナーという名の研修期間だった時の話だよ」


93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:27:25 ID:K/0J2tp2

智絵里「……」

女P「こんな所にいた、ああもう涙目になってどうするの。失敗一つしただけでしょ?」

智絵里「でも、最初からこんなので……」

女P「最初も最後もない、少し時間を取るからそれまでに拭いておきなさい」

智絵里「あ……でも汚れて」

女P「そんなの気にする訳ないでしょ」

智絵里「……ありがとうございます」

女P「アイドルなんだから、当然の様に受け取ればいいのよ」

智絵里「いえ、心配…してくれてるんですから」

女P「もう……10分後に再開するから」


94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:27:56 ID:K/0J2tp2

P「お取込み中でしたか?」

女P「ん? ああ、新人か」

P「ええ、今日は見学させて頂きます」

女P「好きにしてていいわよ、智絵里が主役の撮影だから」

P「ありがとうございます、後でお話を伺っても?」

女P「ええ、最後までいるのなら」

P「そのつもりです」

女P「何時に終わるか分かっている?」

P「今日の撮影スケジュールなら、日が変わるまでには終わりそうだと思ってますが」

女P「……どこかで経験あるの?」

P「まあ、それなりには」

女P「そう、ならいいわ。経験があるなら話せる事も少ないと思うけど」


95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:31:06 ID:K/0J2tp2

P「そうでもありませんよ。では宜しくお願いします」

女P「こちらこそ、じゃあ行くわね」

P「緒方智絵里か……デビュー二か月でドラマの主演、主題歌は20万枚。凄いな」

千秋「全くね」

P「……共演者の方ですか?」

千秋「せめてその持ってる台本に目を向けようとは思わないのかしら?」

P「黒川千秋、さん?」

千秋「それ位の漢字は読めるようね」

P「すみません、まだ全てのアイドルを把握できていないものですから」

千秋「いいわ、知らなくて当然。これが初仕事だから」

P「それで役を貰えて……バーターですか」


96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:32:01 ID:K/0J2tp2

千秋「そう、彼女のおまけ。面と向かって言うなんて色んな意味で清々しいわ」

P「それでもチャンスを貰えるんですから、見どころがあると思われてるんでしょう」

千秋「さあ、どうかしらね?」

P「出番までまだあるんですから、控室にいては?」

千秋「いいじゃない、撮影の空気を感じるだけでも勉強になるわ」

P「控室にいても緊張で落ち着けませんか」

千秋「……私に言ってるの?」

P「隠したいなら台本は持ってこない方が良かったですね。
  震えてますよ」

千秋「台詞合わせ、お願いできる?」

P「いいですけど、ちょっと待ってもらえます?」


97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:32:34 ID:K/0J2tp2

千秋「ええ、私も見たいから」

P「主役が戻ってきた」

少女「幸せはー歩いてこないーだーから歩いて行くんだねー」

妖精「しあわせってなあに?」

少女「幸せ?」

妖精「どこにもないよ?  みえないし、つかまらない」

少女「うん、それでいいんだよ。どこにもないから、幸せなの」

妖精「そんなのつまんない」

少女「つまらないかな?」

妖精「かんたんになんでもできたほうがたのしいよ」

少女「何でも出来ちゃったら、きっとその方がつまらないと思う」

妖精「そうかなぁ?」

少女「だから……私はこの道を歩こうって決めた」


98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:33:14 ID:K/0J2tp2

P「そもそもどんなドラマなんですか?」

女P「まあ、有体なハートフルな感じ。企画段階でそれは明言されてて、その通りの脚本ができあがった」

P「少女が妖精と旅をしながらその場その場で幸せを探す物語、朝には丁度いいかもしれませんね」

女P「重いストーリーなら他に適任がいるから」

P「クローバー一つで幸せになれたら苦労しませんけど」

こずえ「なれないの?」

P「君はどう思うのかな?」

こずえ「あなたたちにはむりかも」

女P「私まで巻き込まれたじゃない」

P「そんな事を言われても」


99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:33:47 ID:K/0J2tp2

こずえ「じぶんがしあわせになっちゃいけないってかおをしてる」

P「……そんな顔、してますか?」

女P「私に聞かないでよ」

こずえ「ちょっとねてるね、でばんきたらおしえて」

P「あの子、何者なんですか?」

女P「遊佐こずえ、11歳」

P「出番も多いんですよね? 寝てますけど」

女P「台本はすぐに覚えるから問題ないのよ、杏も同じタイプだけど年齢を考えたら彼女以上の才能かも」

P「天才ですか、確かにあの落ち着きは見事ですが」

千秋「そろそろいい?」

P「ああ、お待たせしてすみません。今から行きます」


100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:34:54 ID:K/0J2tp2

千秋「こんなところかしら」

P「こんなところでしょうね」

千秋「言いたい事があるなら言いなさい」

P「いえ、充分だと思います。役も合ってるかと」

千秋「幸せから逃げ続ける哀れな女の役が?」

P「どんな役でもこなせれば評価は上がりますよ」

千秋「言ってくれるわね」

智絵里「あ、すみません。えっと…入っても」

P「入りにくかったですか? すみません、もう出ますので」

千秋「邪魔者みたいじゃない」

智絵里「いえ…あ、わ、私ちょっと出てます!」


101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:35:54 ID:K/0J2tp2

P「何であんな事を」

千秋「そんなつもりなかったわ……探してくる」

P「後悔するなら最初から柔らかく接すればいいんです」

千秋「分かってる!」

P「……個性派が多いなあ、ここ」

女P「智絵里は?」

千秋「控室に戻っては来た」

女P「何となく分かった、慣れてないのが二人もいて怖気ついたのね」

千秋「本番の集中力はどこにいったのやら」

女P「そんなの私が聞きたい、探してくれてたのね。ありがと」


102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:36:26 ID:K/0J2tp2

千秋「原因は私にもありますから」

女P「スタジオからは出れないはずだけど……」

千秋「探すのであれば行きますが」

女P「本番前でしょう?」

千秋「外の空気を吸いに行きたかった所ですから」

女P「誤解してたわ、意外と面倒見がいいのね」

千秋「それこそ誤解です」

智絵里「また…やっちゃった」

千秋「こんな所にいたのね」

智絵里「ふぇっ!?」

千秋「どんな鳴き声よ」

智絵里「すみません……」


103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:37:02 ID:K/0J2tp2

千秋「謝らないで、悪かったわ。あんまり人当たりが良くないの」

智絵里「えっと、えと、次、一緒に撮影ですね」

千秋「そうね」

智絵里「あ、いいドラマになると…いいですよね」

千秋「そうね」

智絵里「うう……」

千秋「ふふっ」

智絵里「ふぁ?」

千秋「ごめんなさい、困ってる顔も可愛いのね」

智絵里「あ、あの顔が」


104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:37:33 ID:K/0J2tp2

P「スタジオの裏でスキャンダルですか」

千秋「いつ出てくるのかと思ったわ」

P「その度胸を撮影でも活かしてくださいね」

千秋「見てなさい、ぎゃふんと言わせてあげる」

P「ぎゃふんって……いくつでしたっけ」

千秋「20よ」

P「げ、年上」

千秋「跪いて敬語を使いなさい」

P「とりあえず後ろで固まってる子をどうにかする方が先でしょう」

智絵里「もしかして、探しに来てくれたんでしょうか」

P「まあ、他にすることもなかったから」


105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:39:46 ID:K/0J2tp2

智絵里「あの……」

P「本当に気を遣わなくていいから、寧ろ俺が使わなくちゃいけない訳で」

智絵里「貴方達は私を」

千秋「何?」

智絵里「見捨てないでくれますか?」

P「……何だったんでしょうか」

千秋「誰かに捨てられたんじゃない?」

P「そんな投げやりな」

千秋「私に聞かないで、撮影ね。行きましょう」

女P「私を見捨てないで?」

P「いきなり言われて驚きましたよ、何かあったんですか?」


106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:40:20 ID:K/0J2tp2

女P「統括のせい」

P「統括?」

女P「詳しくは言えないけど、どうやら見限られたみたい」

P「人気あるのに?」

女P「扱いづらいタイプではあるから、彼も忙しいのを多数抱えてるから手が回りきらないのもあったんでしょうけど」

P「じゃあ女Pさんも」

女P「言われた、捨てられた子犬みたいな目で」

P「俺もプロデューサー候補だからあんな事……」

女P「嬉しくないわよね、あんな事を言われたって」

P「統括ってどんな人なんです? まだ会った事がなくて」

女P「優秀、欠点はアイドルも自分も道具としか思ってないところ」

P「自分も?」


107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:40:55 ID:K/0J2tp2

女P「目的を達成するためなら自分の命も平気で捨てそうって思った、私の想像だけれど」

P「機械みたいな感じを想像してしまうんですが」

女P「それで間違ってないから大丈夫、会えば分かる。それより今は目の前の撮影に集中しなさい」

少女「貴方の幸せは……どこにあるの?」

妖精「むりだよ、このひとにしあわせなんてない」

女「無理よ、誰にも見つけられない。見つけさせない」

少女「必ず見つけます」

女「好きにしなさい」

P「撮影に入るとがらっと変わりますね」

女P「千秋も前見た時より緊張がないわね、こずえも無理してないし」

P「まあ、80点くらいは付けられますか」


108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:41:38 ID:K/0J2tp2

女P「智絵里は?」

P「98点」

女P「ああいう演技が好きなの?」

P「自分を完全に捨てられるって憧れるんですよね」

女P「でもあれは」

P「まあ、確かに褒められた事ではありませんけど」

女P「どうしたらいいと思う?」

P「それは……女Pさんの仕事だと思いますよ」

美穂「褒められたものじゃないんですか?」

P「本当に上手い人は自分の色を役に落とし込む、見てる人に意識させないレベルでね。まあ、そうは言ってもそんなのベテランにしか出来ないから」

美穂「もうちょっと……人間味を持つとかですか、難しいです」


109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:42:09 ID:K/0J2tp2

P「演技に正解なんてないからね、極論を言っちゃうと数字が取れたらそれでOKな訳だし」

美穂「でも、どこからクローバーが出てくるんですか?」

P「千秋さん演じる女性の幸せの鍵がクローバーで、紆余曲折ありながら最後にそれを見つけて撮影は終わりだった」

美穂「その後に何かあったんですか?」

P「じゃあ、そこから話そうか」

女P「皆、お疲れ様。疲れたでしょうから、早く帰りましょう」

千秋「終わってみれば早いものね」

P「そうですね、足の震えも収まってます」

千秋「……最後まで言ってくれるわね、見てなさい。次に会う時は思い知らせてあげる」

P「楽しみにしてます」

こずえ「もうおわりー?」


110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:43:04 ID:K/0J2tp2

智絵里「うん、楽しかったね」

こずえ「ばいばい、おねえちゃん」

P「何か、育ちの良さそうな人が迎えに来てますけど」

千秋「迎えね、かなりの資産家なんじゃない?」

P「よく分かりますね」

千秋「私の家も似たようなものだから」

P「アイドルって……まあそういう家だからできる仕事って面もありますけど」

智絵里「はい……あ、ありがとうございます」

女P「何かもらったの?」

智絵里「クローバーです……撮影に使った記念にって」

女P「へえ、良かったじゃない」

智絵里「最後までいてくれて、ありがとうございます。記念にしますから……頑張ります」


111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:44:30 ID:K/0J2tp2

女P「え、ええ」

P「その時さ、俺も女Pさんも言葉の意味を理解できてなかったんだ」

美穂「分かります」

P「分かるんだ、他の子に聞いても同じ反応になるのかな」

美穂「朝、おはようございますから始まって……仕事が終わってお疲れ様でしたって言って。そんな些細な事でも、嬉しいんだなって思ったんです」

P「俺は後から知った、統括はあんまり仕事に付かないって。営業に割く時間が多いからなんだろうけど」

美穂「現場で一人は慣れました、スタッフさんが付いてくれる時もありますから寂しいとは思いません。思わないんですけど……」

P「マネージャーがいないんだよなあ、四人だけだとどうしても限界が出てくる。スタッフはあくまでスタッフで仕事に対する決定権がない」

美穂「だから智絵里ちゃん、嬉しかったんだと思います。初めて最後まで付いてくれた仕事の記念品かあ……」

P「小日向さんは……統括とはどう?」


112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:45:18 ID:K/0J2tp2

美穂「厳しい方です……でも何だか余裕がないように見えて」

P「……そう。やっぱり、けりをつけた方がいいんだな」

美穂「プロデューサー?」

P「寂しくなるかもな」

「きゃああああああああ!!」

美穂「悲鳴!?」

P「緒方さんか?」

女P「今のどこから!?」

P「こっちです!!」

女P「智絵里!! いるの!?」

美穂「返事が……」

P「ええ、救急で。場所は――」


113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:45:50 ID:K/0J2tp2

智絵里「もう……大丈夫だから……」

女P「智絵里!!」

智絵里「少し、滑っちゃいました……」

女P「クローバー一つで何で……」

智絵里「最初はそうだったんですけど……ほら……」

女P「って……鳥?」

智絵里「羽…怪我してるみたいだったから、追いかけてたら……」

女P「はあーっ、あのねぇ」

智絵里「でも、そのお蔭で見つけました」

P「クローバー……」

美穂「初めて見ました」


114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:46:34 ID:K/0J2tp2

女P「ほら。手、貸しなさい」

智絵里「これで、お仕事きちんとできましたか?」

女P「あのね、智絵里」

智絵里「はい! 褒めてくれますか?」

女P「ああもう! 泥だらけになってまでやれなんて言ってないでしょう!!」

智絵里「女Pさん?」

女P「何でそんなに頑張っちゃうのよ! 私の為にって、いつもいつも!」

智絵里「幸せをくれた…恩返しです」

美穂「ど、どうしましょう?」

P「俺は彼女達の間に今まで何があったかなんて知らないから、どうこう言うつもりはないけど。ただ、それでも」

美穂「プロデューサー、手が」

P「間違ってるとか合ってるとか関係なく……俺は見たくない」


115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:47:13 ID:K/0J2tp2

ありす「運ばれていったんですね」

P「誘導ありがとな」

ありす「何も言わずに放置しておいてそういう事だけ任せるのは卑怯だと思います」

P「小日向さんもごめんな、遅くなっちゃって申し訳ない」

美穂「いえ、元々は私達が暴走しちゃった結果ですから」

ありす「大丈夫なんですか?」

P「女Pさんは病院に行くって言ってたから俺は事務所に報告かな、救急隊の人も擦り傷だろうって言ってたから心配しなくてもいいと思うけど」

ありす「そうですか」

P「なあ、ありす」

ありす「はい?」


116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/22(金) 17:49:38 ID:K/0J2tp2

P「俺の為になんて考えるなよ」

ありす「……私がどんな理由で仕事をしようと私の勝手です」

P「それでも、だよ」

ありす「考えておきます、一応」

終わり 次回は来週中に
シリーズ最長の3万7000字、主役はニューウェーブです。


118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:17:55 ID:isgSSEeQ

モバマス連作短編21
ニューウェーブ「寄せては返す波の様に」

あい「これで一通りは回った事になるのかな?」

P「大体は終了です、しかし」

あい「しかし、なんだい?」

P「プロデューサーの営業にアイドルがついてくるって異例にも程があるんですが」

あい「君はプロデューサーとしてアイドルの仕事に付くだろう、同じ事さ」

P「同じなんでしょうか」

あい「こうしてスーツを着て歩くというのもいいものだ。どうした? 立ってないで座りたまえ」

P「えーっと」

あい「それともそこから私の脚を眺めていた方が休まるというなら、協力するのも吝かではないが」

P「違いますって!」


119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:18:32 ID:isgSSEeQ

あい「何の為に隣を空けていると思っているんだ?」

P「……失礼します」

あい「それでいい」

P「あいさんが着てるとスーツまで衣装に見えてきますね」

あい「素直に似合ってると言ってくれると嬉しいのだが」

P「俺に言われても仕方がないでしょう」

あい「本気でそう思っているのなら、君は一から勉強しなおした方がいい」

P「ありすからも似たような事を言われたような気が」

あい「そしてもう一つ、女性と二人でいる時は他の女の名は出さない事だ」

P「女って、ありすはまだ12ですよ」

あい「そう思っていると、いつか袋小路に追い詰められるのは君だよ」

P「笑い話として受け取っておきますよ」


120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:19:09 ID:isgSSEeQ

あい「……君を慕う子は多い。受け止めろとまでは言わないが、それでも」

P「誰も言わないんですよね、お前のやり方は間違っているって」

あい「君は優秀だ。熱心で、真っ直ぐで、そんな君を間違いだとは誰も言えないさ」

P「いつか誰かが泣くのだとしたら、それは全て俺のせいですから」

あい「半分は自己責任さ、私も黙ってその子に胸を貸すくらいはしよう」

P「行きましょうか、もう少しです」


121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:19:45 ID:isgSSEeQ

みく「今日のワンニャフルラジオのラジオは……大丈夫にゃ?」

比奈「多分……あー、大丈夫っス」

みく「眠そうにゃ」

比奈「昨日、寝たの陽が昇ってからで……やばいっス」

みく「頑張るにゃ! お仕事が忙しいのにゃ?」

比奈「いやー、漫画読んでたらいつの間にか」

みく「酷いにゃ!」

比奈「大丈夫っス、スタドリ飲んで来たんで」

みく「うにゃあ……じゃあ信じてコーナー行くにゃ!」


122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:20:25 ID:isgSSEeQ

比奈「今日のみくにゃん、このコーナーではリスナーの方からみくの日常を愉快に勝手に想像してもらうコーナーっス」

みく「じゃあ一通目を比奈にゃん宜しくにゃ」

比奈「ペンネーム、ヒノエウマ=アンペア=ボルト=ワットくんさんからっス」

みく「長いにゃ!」

比奈「まあ、拘りっスかね。今日もひとりぼっちなみくにゃん、ふらりと立ち寄ったお店で見つけたカップを手に取りご機嫌」

みく「終わりにゃ?」

比奈「そうっス」

みく「やっと、やっと平和な投稿が来たにゃ! こういうのでいいのにゃ!」

比奈「笑いがないっス」

みく「それでいいのにゃ! 今日は平和な日にゃ、平和が一番にゃ!」


123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:22:53 ID:isgSSEeQ

比奈「ペンネーム、蒼さんから」

みく「ゆったりした気持ちで聞けるにゃ」

比奈「手に持ったカップを会計に持っていこうとするみくにゃん、その背中に幼子の手を引いた母親の無言の視線が突き刺さる。どうするみくにゃん!? 
頑張れみくにゃん!」

みく「続き!?」

比奈「これはプレッシャーっスね」

みく「みくはどうすればいいのにゃ!」

比奈「三通目いくっスよ、ペンネーム紅さんから」

みく「どうするのにゃ」

比奈「突き刺さった視線を引っこ抜いたみくにゃん、背中の痛みをこらえレジに向かたみくにゃんに店員が一言」

みく「ドキドキ……」

比奈「非売品です」

みく「見られてたってそういう事にゃ!?」

比奈「そりゃ見られるっスよ」


124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:23:43 ID:isgSSEeQ

みく「変な小話を送ってくるコーナーじゃないのにゃ!」

比奈「いいじゃないっスか、平和で」

みく「そんな平和は望んでないにゃ!」


125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:24:15 ID:isgSSEeQ

頼子「秋……芸術、読書に適したこの季節。今日、お薦めするのはこの絵画……ブリュンヒルデの微笑み」

沙紀「何だか物々しいっすね」

頼子「ブリュンヒルデは戦場で命を失くした戦士達の命をヴァルハラへと導くワルキューレの一人」

沙紀「ワルキューレって何すか?」

頼子「戦場において死を定め、勝敗を決する存在。この絵はまだワルキューレであった頃のブリュンヒルデを描いたとされる絵画」

沙紀「この人って、じゃあその戦場を見て笑ってるんすか」

頼子「それは画家にしか分からない、私達は想像するだけ」


126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:25:01 ID:isgSSEeQ

沙紀「それを考えて見ると何だか死神みたいで不気味っすね」

頼子「命を賭す者達の最後を見て何を思うか……考えてみるのもいいかもしれません」

沙紀「考えさせられる絵っすね」

頼子「明日もまた、新たな世界をお見せします」

沙紀「明日はあの名作の登場っすよ」

渚「今日はプロ野球が6試合、サッカーが9試合行われました。それでは友紀さんお願いします!」

友紀「おっけー! 今日はキャッツが初回から大爆発! 打者一巡の猛攻で6点を先制してそのまま圧勝! 優勝までのマジックを22としました!」

渚「……その他の試合は?」

友紀「以下のとおりです」

渚「端折りすぎでしょ!?」

晴「いつもの事だろ、お次は皆も待ってたか? サッカーの時間だ。今日は渚さんが言ったとおり9試合、まずはこの試合から――」


127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:25:40 ID:isgSSEeQ

P「……」

あい「何やら感傷に耽っているように見えるが?」

P「分かります?」

あい「折角、仕事も終わったんだ。ならこうして仲間の活躍を見るのも悪くはないさ」

P「何か、不思議なんです。俺の知らない所でもこうして皆が活躍して、頑張ってる。それでも同じ事務所の繋がりは確かにあって、
俺の顔を見ると手を振ってくれたりして」

あい「ここは特殊みたいだからね、他の事務所の子によく不思議そうな顔で聞かれるよ」

P「プロデューサーの数がこれだけ少なくてもやっていけるのは、そんなアイドルがいてくれるからなんだって改めて思ったっていうか」

あい「だからといって、君が不要になる日が来る事はないよ」

P「そこまでは思ってませんって」

あい「どうだろう、君は私の想像を常に越えてくるからね」

P「そんな事ありましたっけ?」


128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:26:19 ID:isgSSEeQ

あい「私にメイド服を着せたのはどこの誰だったか、ここで思い出させてあげようか?」

P「あれはほら、ノリです」

あい「全く、そういうところに無自覚だから苦労するんだ」

P「返す言葉もないです」

あい「さて、お喋りは控えようか。歌姫の出番だ」

P「西川さんか、16歳なんですね。驚きましたよ」

あい「色んな子がいる、その魅力を引き出すのが君の役目だ」

P「一日、ありがとうございました。お蔭で助かりましたよ、女性がいるとそれだけで場の空気が柔らかくなる」

あい「まだそれを言うのは早いな」

P「何かありましたっけ?」

あい「確か、ここは屋上にも行けるんだったね?」

P「ええ」

あい「少し、いいかい?」


129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:26:56 ID:isgSSEeQ

P「外で過ごすには、少し肌寒くなってきましたね」

あい「何だか動き始めてる気がして、話をしたくなった」

P「流石」

あい「そんな賞賛は今はいい、私が聞きたいのは」

P「結果なんて知りませんよ、情けないですが全てを知っている訳でもない」

あい「では、聖來さんの様子がおかしい事にも気付いていないのかな?」

P「最近、一緒に仕事をしていませんから」

あい「……理由を知っている顔だね」

P「大体の想像は付きます。ですが、その結果をどう受け止めるかも聖來さん次第です。俺の出番はありません」

あい「出来る事は何もないと?」

P「別にあいさんを蚊帳の外に置こうなんて思ってません。ただ、それほど大きな話でもありませんから」

あい「……信じていいのかい?」


130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:28:55 ID:isgSSEeQ

P「どう受け止めるかは、あいさん次第です」

あい「なるほど、好きにしろという訳だね」

P「生憎、これ以上は何とも――」

あい「凄い歓声だね」

P「この歌は、ニュージェネレーションか」

あい「流石エース、と言ったところか」

P「今日はLIVEバトルの日ですからね、ツアー中でもこうして出てくるのか」

あい「いつもより人も多いね、さて今日の相手は誰かな?」

P「……あんまり楽しい思いはできませんよ」

あい「なるほど、理解した」

P「普段なら、バランスを考えて組み合わせは考えられます。人気や実力も同じ位で、来た人がどちらに入れようか迷う様に」

あい「私もその配慮は分かっているしありがたいと思う、だが今日は」


131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:31:58 ID:isgSSEeQ

P「はっきり言います、ニューウェーブでは相手になりません」

あい「歓声も下がったか、これでは互いにやりにくいだろう」

P「会議で話す事もあるんですが、この事務所ユニットが少なすぎるんですよ。ソロで出来るのが多いというのもありますが、
  ニュージェネレーションとニューウェーブしかいないんですよ」

あい「特別に組む事は多々あっても、認知されていると言い難い事は確かだ」

P「迷走してるのは俺達の責任でもあります、この二組を上手く差別化できてないんですから。だからどちらかに人気が偏って
  しまう。だからこそ共演なんてさせてないはずだったんですけど、統括と女Pさん何を考えて……」

あい「君がニュージェネレーションを相手にするなら誰を出す?」

P「にゃんにゃんにゃんを、スケジュールを合わせるのに凄く苦労するんですけど
  あれも特別に組んだだけでユニットではないんすよね」

あい「あのユニット名は君が考えたのかい?」

P「いえ、あれも統括の案です」

あい「たまに、彼は思い切った事をするね」

P「それで結果が出てるんですから」


132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:32:46 ID:isgSSEeQ

あい「君はユニットを作ろうとか思わないのかい?」

P「ユニットですか……考えてる案はあります。本当に頭の中にあるだけのお話ですが」

あい「いつか実現するのかな?」

P「さあ、どうでしょうか。終わりましたね」

あい「圧勝と言うべきか、惨敗と言うべきか」

P「何とも言えませんね、実力にそこまで差はあるとは思ってませんが」

あい「なら、君はあの二組の差は何だと思っているんだい?」

P「ニュージェネレーションって、最初からニュージェネレーションとして活動してた訳じゃないんですよ」

あい「それが問題だと?」

P「だからこそ、ユニットにとらわれない活動ができる。最初からユニットとしてデビューしてしまうと、そこから踏み出すのが
  難しいんですよ。あのユニットの誰々だ、なんて言い方もされますし」

あい「ニューウェーブはまだ踏み出せていない、か」

P「女Pさんや本人達がどう考えているか知りませんが、今のままだと埋もれていくだけです。変わらなければ、ニュージェネレーションと
  ずっと比較され続ける事になる」

あい「アイドルとして生き残る為の、踏ん張り所だね」


133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:33:23 ID:isgSSEeQ

亜子「アカン! 三馬身どころやない! 八馬身差や!」

泉「これが今の差、騒いでも仕方がない」

さくら「何かさぁ、もう最初から勝負が決まってるっていうかぁ」

泉「私達、女Pさんの顔に泥を塗ってばかりだね」

亜子「ここで思いつめてもどうしようもあらへんけど、それでも何とかしないと」

さくら「もう共演するの辞めようよぉ」

亜子「白旗掲げて平伏すんかい!」

泉「勝つとか負けるとかじゃない、ただ何かを変えないといけないのは事実」

亜子「何かって……」

泉「分からない、でも」


134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:35:11 ID:isgSSEeQ

さくら「それなりには売れてるのにぃ」

亜子「比較対象がでか過ぎやっちゅうねん!」

泉「三人でデビューするって決めた時から分かってた事、今更それを言うのは無し」

さくら「そんなぁ」

亜子「終わった事を考えても仕方あらへんけど」

泉「弟に、笑われちゃうね」

亜子「笑わへんよ、それはアタシが保証したる」

泉「……そうだね、頑張らないと」

女P「入るわね」

さくら「はぁい!」

女P「見たくないでしょうけど、今日の結果」

亜子「またシビアなものが」


135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:36:01 ID:isgSSEeQ

女P「有効票数2万9700票、ニュージェネレーション2万2351票」

泉「私達に入ったのは7349票ですか」

女P「そういう事ね」

亜子「これ……史上最大の差とか?」

女P「酷かったのは他にもある。ただ……やっぱりね」

さくら「どうしたって無理だよぉ」

泉「これで三連敗」

女P「票数の差なんてライブごとに変動するんだから、そこまで気にしなくていい。今回だって相手がいなかったから
   出てあげただけの話」

亜子「そうは言ってもなあ」

泉「女P」

女P「何?」


136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:36:45 ID:isgSSEeQ

泉「どうして私達はニューウェーブなんですか?」

女P「どういう事?」

さくら「あっちと名前が似てるってことぉ!」

女P「名前なんて一年も前に決めた事でしょ? 今更それを言ってどうするの」

さくら「分かってるけどぉ」

女P「ニュージェネレーションの事は考えなくていいから、貴方達には貴方達のファンがいる」

亜子「まあそうやけど」

女P「切り替えなさい、これも仕事の内よ」

亜子「行ってもうた」

さくら「本当にこれでいいのかなぁ」

泉「これから……どうすればいいのかな」

亜子「落ちたで、あれ? 珍しー」

さくら「イズミンが缶ジュース!」


137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:37:48 ID:isgSSEeQ

泉「ううん、貰ったもの。入ってたの忘れてた」

さくら「誰から貰ったの?」

亜子「スタッフとかやろ?」

泉「えっと、誰だったっけ?」

亜子「誰って」

さくら「そんなに前なの?」

泉「確か先月」

亜子「その間、ずっと鞄の中……」

泉「いる?」

亜子「いるかい!」

さくら「そろそろ帰る?」


138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:38:20 ID:isgSSEeQ

亜子「よっしゃ! 反省会といこか」

さくら「美味しいもの食べたら元気になるかも」

泉「そうだね、たまにはそういうのも」

亜子「なら食べる物は決まりや!」

さくら「なぁに?」

亜子「カツに決まっとる」

さくら「アコちゃんって時々、おっさんだよね」

亜子「お、おっさん……」

泉「早く行こう、遅くならないうちに」

さくら「はぁい、賛成」

亜子「ちょっと待たんかい!」


139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:38:50 ID:isgSSEeQ

さくら「コーラに砂糖を入れてぇ♪」

亜子「うっわ」

泉「もう慣れたでしょ?」

亜子「慣れても理解できへん」

泉「まあ、ね。席、戻ってるね」

亜子「りょーかい、いやーファミレスもええもんやね」

泉「気分転換にはなるかな」

美嘉「あ」

泉「美嘉さん」

莉嘉「あー! 泉ちゃんだ!」

美嘉「大声を出さないの、気付かれたらどうする訳?」

莉嘉「すごいぐうぜーん☆ みんなでご飯?」


140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:40:18 ID:isgSSEeQ

泉「まあ、ちょっと気分転換に」

美嘉「そういえば……」

泉「担当が同じだと、スケジュールもばれちゃうか」

莉嘉「何かあったっけ?」

美嘉「えっと、あたしたち邪魔?」

泉「そんな事。すみません、気を使わせてしまって」

莉嘉「ねえお姉ちゃんってば」

美嘉「あんたこの前の負けもう忘れたの?」

莉嘉「まけ?」

美嘉「6票差」

莉嘉「せっかく忘れてたのにー!」

美嘉「自業自得でしょ、そういうこと」

莉嘉「あれは奈緒ちゃん達が凄かっただけ!」


141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:41:18 ID:isgSSEeQ

泉「奈緒さんと加蓮さん?」

美嘉「宥めるの大変だったんだから、拗ねちゃうし」

莉嘉「拗ねてないもん」

泉「仕事を誰かが見てる訳でもなかったはずですよね」

美嘉「でも莉嘉の言う通り凄かった。アタシたちってさ、長く一緒にやってるから息が合ってるとか
   合ってないとか何となく分かるんだけど」

泉「合ってたんですか?」

美嘉「そうだね、悔しいけどあの時だけは負けたって思った。最近になって凄くなってきてるよ、あの二人」

泉「自分達だけでそんなに」

美嘉「ま、アタシたちも負けない様に頑張ろーよ。一回くらいでどうこうなる訳でもないでしょ?」

亜子「誰かと思えば」

莉嘉「おっつー☆」

亜子「おっつー、しっかし17にもなってオムライス」


142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:42:07 ID:isgSSEeQ

美嘉「べっつにいいでしょ! そっちは何?」

亜子「カツや!」

美嘉「カツ?」

亜子「肉も食わんと付くもんも付かないかもよ」

美嘉「そんなの無くてもいいし!」

亜子「ほんまかぁー?」

さくら「なになにぃー? 誰かいるのぉー?」

泉「本当に、すぐに賑やかになっちゃうんだから」


143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:42:53 ID:isgSSEeQ

統括「いつまであれの面倒を見る気でいる?」

女P「あれって?」

統括「分からないか?」

女P「アイドルをあれ呼ばわりされる覚えはないから」

統括「切り捨てる時は躊躇うな、自分の身を滅ぼすぞ」

女P「余計なお世話」

統括「一つ、チャンスをやる」


144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:44:54 ID:isgSSEeQ

女P「チャンス?」

統括「使うか使わないかは自分で決めろ」

女P「何このファイル?」

統括「他の事務所から適当に名前を挙げておいた、好きなのを選べ」

女P「ふうん、こういう事もするのね」

統括「得意だろう?」

女P「……受け取っておくわ」


145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:45:59 ID:isgSSEeQ

先P「おう、早いな」

菜々「早いなって、スケジュールを組んだの先Pさんですよ」

先P「違いないが、俺はもう少し遅くてもいいと伝えたはずなんだがな」

菜々「久しぶりのLIVEですから、身体を動かさないと」

先P「年を考えると始動も遅いってかそりゃ大変ぐはっ!」

菜々「レッスン場に行ってますね♪」

先P「お、おう……」

藍子「今のは擁護しません」

先P「ここのアイドルはおじさんに冷たいねえ」

藍子「そんな事ありませんから、早く体を起して下さい」

先P「へいへい。で、ゆるふわちゃんはおじさんに何の用かな?」

藍子「統括さんから言われて来たんですけど、何も聞いてませんか?」


146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:47:26 ID:isgSSEeQ

先P「統括? ちょっと待ってろ……俺には何もないな。Pか女Pか、ドジっ子はどっちだ?」

藍子「パソコン、見ちゃっていいんですか?」

先P「俺達のは二重ロックになっててな、最初のパスは全員が知ってる。二つ目に入ってたら俺もお手上げだが、共有情報ならこっちにあるだろ。
   あったあった女Pの方に、レコーディングの日程か。こんな大事な物をあいつは何で放置してんだ」

藍子「よかった、メモしますね」

先P「おう、終わったら言ってくれ。一応、他のは目に入っても見なかった事にしとけ」

藍子「見ません。はい、これで終わりました」

先P「早いな、ばれない内にとっととっと、新着メールか」

藍子「見ちゃうんですか?」

先P「重要な案件だったら教えた方がいい、携帯もそこにある。煙草でも吸いに行って忘れてんだろうさ」

藍子「いいんでしょうか」

先P「彼氏からのデートの誘いならOKしとくさ」

藍子「そんな調子のいい事ばかり言うんですから」


147: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:48:12 ID:isgSSEeQ

先P「新着2件。先月の実績表か」

藍子「実績?」

先P「こんなんだよ」

藍子「これ、私が見たら駄目です!」

先P「別にいいさ、うちのプロデューサーどもは真面目に働いてんのか知りたいだろ?」

藍子「皆さん一生懸命になってくれてるのは知ってます」

先P「全米が泣きそうな台詞をどうも、今月は……こんなもんか」

藍子「統括さん、凄いですね」

先P「事務所開設以来、トップから落ちた事はない。毎月恒例の醜い二位争いに、どこまでもマイペースな最下位」

藍子「低いんですか?」

先P「いや、一人当たりの仕事にすればまあまあだ。他に十代のプロデューサーなんて765にいるのしか知らないが、ここも当たりを引いたことは確かだ」

藍子「凄いんですね」

先P「それを言うならアイドルだって大したもんだよ、これが先月のアイドル達の実績表」


148: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:49:15 ID:isgSSEeQ

藍子「シンデレラガールズって、こんなに」

先P「うちの稼ぎ頭だ、統括もこの二人だけで食ってける位だからな」

藍子「やっぱり、人気に直結するものですよね」

先P「金を落とさせる能力に長けてる奴は生き残る、そんだけ厳しい世界ってこった。ここにいるのはとりあえずは安泰だが、
   だからといってこの先がどうなるかは誰にも分からない」

藍子「生きていけなくなったら……その時は」

先P「潔く身を引くか、抗うか」

藍子「抗う」

先P「どんな道を選んでもこの世界にいたいなら、そういう道を選ぶ子もいるって事だ」

藍子「どんな道でも、ですか」

先P「そういうこった。さてもう一つのメールは、と」

藍子「統括からですね」

先P「何で一緒に添付してないんだ? いや、俺とPには内緒か。珍しいな、本当にデートの誘いか?」


149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:50:47 ID:isgSSEeQ

藍子「これは絶対に駄目です」

先P「分かってるよ、これでも紳士なんでね」

藍子「私は行きますけど、勝手に見たら言っちゃいますからね」

先P「廊下の隅でバケツ持って震えておくよ」

藍子「また」

先P「行ってこい、お前のファンが待ってる」

藍子「はい、失礼します」

仁奈「お仕事でごぜーますか?」

先P「ん? いや、お遊びだ。今日は何だ、イカか?」

仁奈「白いタコでごぜーますよ」

先P「何だそれ、旨いのか?」


150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:51:24 ID:isgSSEeQ

女P「いいわね、遊んでる暇があって」

先P「お蔭様でね」

女P「あんた、これ弄った?」

先P「高森にスケジュールを伝え忘れたお前が悪い」

女P「……しまった」

先P「それを見せただけだ、他は実績表を覗いたくらいだ」

女P「またギリギリで三位なのね」

先P「毎月、こうも競り負けるとなると俺も鷹富士を担当に付けてほしくなるね」

女P「ねえ」

先P「あん?」

女P「プロデューサーの仕事ってアイドルを上へ連れて行くことよね?」

先P「そんな十人十色な疑問に答える気はないな」

女P「私はそう思う」

先P「なら、それを信じて仕事するしかないだろ」

女P「……そうよね」


151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:51:58 ID:isgSSEeQ

亜子「二週連続でLIVEバトル?」

泉「また急な話ね」

さくら「今度は大丈夫かなぁ」

亜子「まあ、相手を見る限りそんな格上でもないけど」

さくら「これで負けたら連敗だよぉ」

泉「練習してきたことを練習通りに出せばいい、私たちにできるのはそれだけ」

亜子「考えてもしゃーない、とりあえずやるだけやろか」

さくら「勝ったぁ!」

亜子「自分でも信じられへん」

泉「気を使わせちゃったかな」

さくら「勝てば全てOK!」

亜子「そうやな、何か悩んでたのがアホみたいや」

女P「ええ、はい、ありがとうございました……礼はまたおって、はい、ええ次も」


152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:52:35 ID:isgSSEeQ

亜子「いやー、勝った後の飯は美味い!」

泉「あんまり大声出さない」

さくら「よかったぁ、これで安心」

亜子「ええ報告もできるな!」

泉「さっき電話してきた」

亜子「喜んどったやろ?」

泉「うん、最近はあんまりそういう報告をできてなかったから」

さくら「このまま順調にいけるかなぁ」

亜子「いけるいける! 悩んどっても仕方ないって事はもう分かったんやから」

泉「うん、次に帰る時にいい報告ができる様に」

亜子「このまま突っ走るだけや」


153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:53:28 ID:isgSSEeQ

女P「ありがとうございました」

統括「しかし、あっさりと手を出したな」

女P「いけませんか?」

統括「いや、いい事だ」

女P「初めてでもありませんから」

統括「何かあれば言うといい、力になろう」

女P「当面は、このままいきますから」

統括「分かった」


154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:54:12 ID:isgSSEeQ

春菜「LIVEバトルですか」

P「ついに、って感じだ」

春菜「一番手に私とはPさんもいいところに目を付けましたね!」

P「スケジュールの都合」

春菜「……嘘でもそこはそうだって言って下さいよ」

P「というか、俺が都合付けられるアイドルだとソロしかできないし、LIVEに慣れてるの多くないし」

春菜「ないないだらけじゃないですか」

P「千枝やありすにそういうのはまだ早いし、楓さんだと今度は相手がいない。肇とか千秋さんはドラマとかで忙しくて、
  沙紀は学園祭のシーズンはあちこちに引っ張りだこ」

春菜「聖來さんは?」

P「いやーえっと」

春菜「忙しいんですか?」

P「ここ一か月、会ってない」


155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:54:42 ID:isgSSEeQ

春菜「会ってない? 珍しいですね、仕事がなくても事務所に来たりするのに」

P「……まあ」

春菜「喧嘩ですか?」

P「いや、そういう訳じゃないんだけど避けられてる。連絡しても返事がなくて」

春菜「何したんですか」

P「うーん、理由は分かってるんだけど俺にはどうしようもないというか」

春菜「私から言ってみましょうか?」

P「いいか?」

春菜「猫カフェで」

P「猫でも犬でも狸でも」

春菜「とりあえず返事をする様にと言っておけばいいんですね?」

P「時間が空いたらでいい、今はこっちに集中しよう」

春菜「それで、初めての相手は?」


156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:56:07 ID:isgSSEeQ

P「みく」

春菜「緊張感が吹き飛びました」

P「凄くいい勝負になると思う、人気も同等だし」

春菜「それ位が盛り上がりますから、下手に格上だったりすると」

P「惨めだよなあ、曲の選定とかは俺がやるから。慣れてるのでいこう、リラックスして」

春菜「任せて下さい!」

P「無理に勝つ必要はないからな。同じ日は他に……ニューウェーブか」

春菜「ユニットですか」

P「そ、他に三組いるから」

春菜「ソロは私達だけですか?」

P「目立つチャンスだ、しっかりな」


157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:58:00 ID:isgSSEeQ

亜子「これで三連勝や!」

泉「うん、知らない内に力を付けてるのかも」

さくら「今度も頑張れるよぉ」

P「好調みたいだな、見るのが楽しみだ。おっと、みくにも伝えておかないと」

みく「Pチャン何でみくに付いてくれないのにゃ!?」

P「春菜とみくなら春菜」

みく「酷いにゃ、差別だにゃ!」

P「差別って、別に俺はどっちが勝っても公平に褒めるつもりだけど」

みく「じゃあ勝ったらご褒美頂戴!」

P「ご褒美?」

みく「その時はみくに付き合ってもらうのにゃ」

P「春菜に全力でいけって指示出しとく」

みく「何でにゃ!」


158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 18:58:46 ID:isgSSEeQ

女P「LIVEバトルデビューだそうね」

P「ああ、聞きましたか」

女P「身内同士なんて困った事をするわよね」

P「初めてなんでその方が春菜もいいかと思いますから」

女P「当日は私もいるから」

P「分かりました、ニューウェーブ楽しみにしてます」

女P「……そう」

P「そう? また妙な反応だな」

凛「いた」

P「本気でびっくりした、どうしたの?」

凛「一つ、教えてあげようかと思って」

P「女Pさんのしてる事か?」

凛「気付いてた?」

P「ニュージェネレーションに負けテンション最悪の状態から三連勝、誰だって疑う」


159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:00:30 ID:isgSSEeQ

凛「結果を聞いてちょっと不思議に思って統括に聞いたんだ」

P「回答は?」

凛「ノーコメント」

P「肯定と見た方がよさそうだな」

凛「上条春菜と前川みくはどっちを勝たせるの?」

P「どっちでもいいさ、勝ったら褒めるし負ければ反省会。その工程をあの人は無駄だとすっ飛ばした、
  それも一つのプロデュース方法」

凛「意味あるの?」

P「結果なんて出てみない事には分からないさ、それにある程度の実力がなければ勝たせてもらう事もできない。
  それで好調になるならそれも一つの方法だよ」

凛「私は嫌い」

P「なら、実力でねじ伏せればいい。そういう世界だ」


160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:01:00 ID:isgSSEeQ

凛「聖來さんとはどう?」

P「なるほど、原因は君か」

凛「私は話しただけ、何か言われた?」

P「接触すらないよ」

凛「そっか」

P「軽く言うね」

凛「大丈夫だよ、嫌われてる訳じゃないと思うから」

P「本当か?」

凛「隠し事はするけど嘘はつかない、もう行くから」

P「統括に見つからないようにな」

凛「人の心配してる場合?」

P「全くだな」


161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:01:38 ID:isgSSEeQ

春菜「つまり、ここは……」

P「春菜の場合、俺が弄らない方がいいんだよな。良くも悪くもそれで完成」

春菜「妥協されてます?」

P「いや、安定してるってのは長所だよ。変わり映えしないともいえるけど」

春菜「せめて短所から長所に直すような言い方にしましょうよ」

P「ぶっちゃけ、眼鏡アイドルっていう一つのジャンルを確立してるから普通のアイドルと比べようがないっていうか」

春菜「色物みたいな言い方に聞こえるんですけど」

P「どこの世界に振り付けの最中に眼鏡アピールするアイドルがいるんだよ」

春菜「お望みならもっと増やしますよ!」

P「あのなあ……って言ってる内に来たな色物」

みく「にゃ?」


162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:02:11 ID:isgSSEeQ

春菜「来ましたね」

みく「ふふふっ勝負にゃ!」

P「そういえばのあさん、バニーの服なんて着てたけど内紛でもあったのか?」

みく「違うにゃ、あれは……」

P「何だよ?」

みく「みくのハンバーグ勝手に食べたのにゃ! だからついかっとなって……」

春菜「なって?」

みく「猫失格にゃ! って怒ったらあんな事になってたのにゃ」

P「まず猫失格って何だよ、抜け目のなさとか猫らしくていいじゃねえか」


163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:02:44 ID:isgSSEeQ

春菜「簡単に取られるみくさんに問題があるのでは?」

P「それで出て行かれたのか、アナスタシアさんも愛想を尽かすのは時間の問題だな」

春菜「ああ、だから今回ソロなんですね。可哀想に」

みく「せ、精神攻撃なんて卑怯だにゃ!」

P「明日は貰ったな」

春菜「ふふん、眼鏡の力を思い知らせてあげますよ」

みく「思い知るのはそっちの方にゃ!」


164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:03:26 ID:isgSSEeQ

P「春菜お疲れ、いいライブだった」

春菜「あっけなかったですね」

みく「んにゃああああああああああ!!」

P「まさか第一声で噛むとは思わなかった」

みく「違うのにゃ……大事に大事にいこうと思ってたら」

春菜「大事にいきすぎたと」

P「言っちゃ悪いが、馬鹿だ」

みく「ふにゃあ」

P「ったく、後で反省会だ。シャワー浴びたら部屋で休んでろ、後で迎えに行くから」

春菜「にゃあ! Pチャン大好きにゃ!」

P「仕事見てるの統括だろうに、何で俺にくっついてくるんだ」

春菜「懐かれましたね」


165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:04:05 ID:isgSSEeQ

P「情は湧いてこないけどな」

春菜「またまた」

P「春菜も休んでていいぞ。悪かったな、手探り状態で行かせて」

春菜「栄えある一番手でテンションも上がってましたから、平気です」

P「眼鏡でユニットかあ」

春菜「だから比奈さんと真尋ちゃんあたりで!」

P「……考えるだけ考えておく」

春菜「ぜひ!」

P「どうした? 戻っていいんだぞ?」

春菜「個人的に興味のある子達ので、ここで鑑賞させてもらおうと思いまして」

P「ニューウェーブと仲いいのか?」

春菜「学校の後輩なんです」

P「凄い学校だな」

春菜「あんまり交流とかないんですが、それでも気になっちゃいまして」


166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:04:40 ID:isgSSEeQ

P「何となくその気持ちは分かる」

春菜「大丈夫でしょうか?」

P「見てみない事には何とも」

司会「以上、ニューウェーブのステージでした!」

P「……」

春菜「凄いですね、輝いてましたよ!」

P「やっぱりモチベーションってのは大きいな、前に見た時とは大違いだ」

春菜「文字通り、新しい波って感じです」

P「この分なら、もう必要ないだろうな」

春菜「何がです?」

P「何でもない。さて、祝勝会と反省会だ」

春菜「景気よくいきましょう」


167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:05:18 ID:isgSSEeQ

P「の前に、女Pさんに一声掛けてくるから車で待っててくれ。ほら鍵」

春菜「分かりました、今日の眼鏡を選びながら待ってます」

P「はは、楽しみにしてる」

女P「ええ、はい次もよろしくお願いいたします」

P「おめでとうございます」

女P「称賛ならあの子達にしてあげなさい」

P「いえ、今日の勝利は女Pさんの力ですよ」

女P「何が言いたいの?」

P「これでもプロデューサーですよ、分かるに決まってるでしょう」

女P「それで、やるなって止めに来たの?」

P「いえ、モチベーションを上げるにはいい方法だと思います。手放しで褒める訳ではありませんけど」


168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:09:03 ID:isgSSEeQ

女P「余裕ね」

P「そんなのありませんって。ただ、これならもう大丈夫ですよね?」

女P「まだよ」

P「まだですか?」

女P「そう、まだ」

沙紀「あの、Pさん?」

P「んー?」

沙紀「凄く難しい顔してますけど、何かあったんすか?」

P「いや、俺にはそんなに関係ない事なんだけど」

沙紀「問題が?」

P「かもしれないし、そうでないかもしれない。なあ、女Pさんが仕事を見てるアイドルで仲がいいのって誰かいるか?」

沙紀「聞きたい事でもあるんすか?」

P「少し」


169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:10:22 ID:isgSSEeQ

智絵理「あ……あの、何か?」

P「どういう繋がりだよ」

沙紀「伊吹に頼んでそこからっすけど」

P「バレンタインか……ここのアイドル全員が繋がってたりして」

沙紀「で、何を聞くんすか?」

P「その前に、体調はどう? もう良くなった?」

智絵理「すみません、ご迷惑をお掛けしてしまいまして」

P「あの後、女Pさんとは?」

智絵理「無理をしない様に、と」

P「それだけ?」

智絵理「あまり、たくさん話さない人ですから」

P「様子がおかしかったり、とかはないか?」


170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:11:24 ID:isgSSEeQ

智絵理「何かあったんですか?」

P「これから起こるかもしれない」

沙紀「また微妙な言い方っすね」

P「俺だって断定できないし、かといって誰かに相談もできないで困ってんだよ」

智絵理「聞きたいです」

P「言うと思ったし、意地悪な事を言うと言わせようと思った」

沙紀「チキンだ」

P「実は沙紀に最初に言ったのも計算があってな」

沙紀「DVD?」

P「BDを導入する財力は俺にはなくてな、画質は気にするな。そんなに長くは見せないから」

沙紀「LIVE映像っすね、いい盛り上がり」

P「参考にしたいってスタッフに言ったら貸してくれた。二ヶ月くらい前のLIVEバトルだそうだ」


171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:12:17 ID:isgSSEeQ

智絵理「ニューウェーブ……」

沙紀「やっぱり凄いっすね」

P「この光景をよく覚えておけよ」

沙紀「他にもあるんすか」

P「次はこっち、先週のLIVEバトルの時の映像だ」

智絵理「こっちも、さっきと同じ様に見えます」

沙紀「全く違うっすね」

智絵理「え?」

P「沙紀だからすぐに気づける、俺でも気付くのにもう少し掛かった」

沙紀「へへっ、そう言われると照れるっすよ」

P「何が違うか分かるかい?」

智絵理「何も変わらないと、思います」

P「こっちもこっちで流石だよなあ」


172: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:13:10 ID:isgSSEeQ

智絵理「気づけないのにですか?」

P「沙紀、正解を」

沙紀「LIVEバトルは誰が出てくるか分からない中で、アイドル達がいかにパフォーマンスで観客を引きこめるかの勝負」

P「無作為に選ばれるからな、まあアイドル好きしか応募してこないからある程度の知名度があればすぐに観客も乗ってくれるんだけど」

沙紀「最初の方は段々と観客が盛り上がる……言ってみれば波っすね。それが奇麗に見えるんすけど」

智絵理「二回目は違うんですか?」

沙紀「最初から波が高すぎるっていうか、ピークが早いって思ったんすけど」

P「その要因は何だと思う?」

沙紀「こんなのあんまり言いたくないんすけど……サクラっぽいっすね」

P「95点」

沙紀「ありゃ」

智絵理「でもほとんど合ってるんですね」


173: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:14:37 ID:isgSSEeQ

P「合ってる、作為的に観客を選んでるんだから。だけどニューウェーブくらいのレベルのアイドルならサクラなんて一発で気づく。
  そんな作られた声援を浴びたら彼女達は一発でこれは違うなってなっちまう、それだと意味がないんだ」

沙紀「本物のファンなんすね」

P「やり方は簡単、応募してきた中からニューウェーブのファンを優先的に選んで当選させるだけ」

智絵理「そんな事」

P「情報を仕入れて、相手と打ち合わせすればいいだけ。現に、超大手のプロダクションでもわざと弱い相手を用意するくらいの事はしてる。
  俺は道場って呼んでるけどな、若手のアイドルはそういう経験をしてライブに慣れていく」

沙紀「そういう手もあるんすね」

P「やり方は簡単だけど、必要な条件は多い。まず、相手の事務所に恩を売る価値があると思われなきゃこんな話は受けてもらえない。
  おまけに、ファンの数がある程度はいないと二週目でアイドルの方が気付く。同じ面子だらけだと流石におかしいってなるだろ?」

沙紀「で、それに何でアタシが気付くって思ったんすか?」

P「生の声に慣れてるだろ、学園祭とかで学生を相手にライブやったりするんだから」

沙紀「ああ、そういう事っすか」


174: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:15:36 ID:isgSSEeQ

P「乗り気でなかったり、参加自体がめんどくさいと思ってるのだって当然いる。その中で何度もライブやってる沙紀なら、こういう事には敏感になる」

沙紀「まあ、そういう子達も最後は乗ってくれますから」

P「それは沙紀の力だよ、規模ももう少し大きくしていってもいいかもな。大学とかならまた違う空気の中でのライブになるし」

智絵理「あの、さっきの話ですけど」

P「ああ、気付けないのに流石って言った意味か。そのまんま、何の皮肉もない純粋な評価だよ」

沙紀「どういうことっすか?」

P「そういう空気が分からないってのは、そういう経験が一切ないって事。自分に興味のない人のいる場でライブした事ないんだと思う」

沙紀「そんなのありうるんすか?」

P「緒方さんならあるいは、トップ層にいる中でも最初から人気あったからなあ」

智絵理「そう、でしょうか……」

P「俺は実際に見てた訳じゃないから好き勝手な想像になってしまうけど、思う様な場所でライブのできないアイドルはたくさんいる。
  ステージに立って歓声が貰えなかったことはある?」

智絵理「私は、そこまで目を配る余裕がないだけです」


175: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:16:15 ID:isgSSEeQ

沙紀「ステージ上で何を考えてるんすか?」

智絵理「頑張れば、認めてくれるかなって」

P「女Pさんに?」

智絵理「はい。あの、もう行きますね。お話、ありがとうございました」

沙紀「あのまま行かせていいんすか?」

P「緒方さん以外だったらこの話はしないつもりだった」

沙紀「何で緒方さんだったら話す気になるんすか?」

P「この前、ちょっとありすとの仕事の帰りに鉢合わせしたんだけど。何か余裕がなかったんだよ、あの子。仕事が一つお蔵入りになった所で人気が左右される
  レベルでもないのに、何でなんだろうってちょっと気になって……嫌な言い方をすると試したくなった」


176: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:16:51 ID:isgSSEeQ

沙紀「どう動くか見るんすか」

P「何か互いに痛々しく見えた。あんな状態が続いたら遅かれ早かれどちらも潰れるんじゃないかって心配になって……」

沙紀「確かに余裕はなさそうっすね」

P「少し様子を見るよ。どの道、同じやり方を何回も続けさせる訳にもいかないからどこかで止める事にはなるんだが」

沙紀「上手くいくといいっすね」

P「本当にな」


177: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:18:25 ID:isgSSEeQ

泉「智絵理さん、お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」」

智絵理「ライブ、調子いいって聞いたからお祝い」

泉「ありがとうございます、早く追いつけるように頑張ります」

智絵理「これ、三人で分けてくれると嬉しいなって」

泉「クローバーの栞……いいんですか?」

智絵理「既製品だけど、似合うと思って」

泉「これを機に、さくらや亜子も本を読んでくれるようになるといいんですが」

智絵理「それで……もしよかったらなんだけど」

泉「何か?」

智絵理「次のライブ、すぐだよね?」

泉「来てくれるんですか?」

智絵理「迷惑じゃなければいいんだけど」

泉「いえ、ぜひ。楽しみが一つ増えました、最高のライブをお見せします」

智絵理「うん、じゃあまたその日に」


178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:18:56 ID:isgSSEeQ

泉「今日は少し大きい場所ね」

亜子「ま、今のニューウェーブなら大丈夫やろ」

さくら「心配しなくても三人なら大丈夫だよぉ」

泉「分かってる、武者震い」

亜子「ちょっと敵情視察してくるわ」

泉「相手に迷惑かけないようにね」

亜子「分かっとるー!」

さくら「今日はどんなライブになるのかなぁ」

泉「油断は禁物」

さくら「もう、イズミン心配性なんだからぁー」

亜子「お、ここか?」


179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:19:35 ID:isgSSEeQ

アイドル「ニューウェーブの土屋亜子?」

亜子「そうやけど、今日の相手さん?」

アイドル「そう、宜しくね」

亜子「こちらこそ、いい勝負にしようや」

アイドル「なるほど、知らないパターンか……まあいいや」

他P「何を話してる?」

アイドル「何でも。それじゃ、また後で」

他P「仲良くしてどうする」

アイドル「私を踏み台にして上へ行くのはどんな子かなぁーって」

他P「いずれ、お前が上へ行ける日も来る」

アイドル「来る訳ないでしょ。大丈夫、私はステージに上がれるだけ幸せだと思ってるから」


180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:21:24 ID:isgSSEeQ

智絵理「……」

美嘉「緒方智絵理?」

智絵理「はやひゅ!?」

美嘉「あ、ごめん。別に驚かせる気はなかったんだけど」

智絵理「あの、今日のライブを?」

美嘉「見に来た、好調みたいだしその元気を分けてもらおっかなって」

智絵理「開場時間だから、もう行きますね」

美嘉「後で莉嘉にも会ってくれないかな? お気に入りみたいでさ」

智絵理「今日は……ごめんなさい」

美嘉「忙しかった? 気にしなくていいって、また次の機会があったらヨロシク」

智絵理「次、多分すぐに来ます」

美嘉「そんな予定あった?」

智絵理「これから、入ると思います」


181: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:22:02 ID:isgSSEeQ

先P「ニューウェーブ四連勝」

P「凄いですね」

先P「本気で思ってるか?」

P「次が限界でしょうね」

先P「だな、悪者やるか?」

P「どうやって? 普通に言って聞くと思います?」

先P「それをどうにかして聞かせるのが後輩の仕事だろ」

P「まあ、一つ手は打ちました」

先P「マジか」

P「マジです。正しい一手だったかは分かりませんが、何もしないよりはと」

先P「任せていいか?」

P「頑張るのはアイドルですよ、プロデューサーはあくまで舞台装置でしかないんですから」


182: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:22:54 ID:isgSSEeQ

先P「お前は違うと思ってるが」

P「買い被りすぎで――」

先P「何の騒ぎだ?」

P「あんまり聞きたくないですけど、そうも言ってられませんか」

先P「はいどうも、報告が来たぞ」

P「ありがとうございます、さて」

先P「これがお前の一手か」


183: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:24:37 ID:isgSSEeQ

P「間違ってはないです、この可能性も考えてましたから」

先P「女Pは知ってるのか?」

P「どうでしょう、この子が独断でやったのなら……あるいは」

先P「緒方智絵理ってどんな子だ? 関わりないから分からん」

P「俺だってそこまで関わりあるわけではありませんから」

先P「この子なりの罪滅ぼしのつもりか?」

P「女Pさんの為の、という意味かもしれません」

先P「何れにせよこのLIVEバトルは荒れるぞ」

P「見届けるしかありませんよ」


184: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:25:53 ID:isgSSEeQ

美嘉「これ、どうなの?」

莉嘉「相手ってこの前、ニューウェーブに負けた人だよね?」

美嘉「勝負なんて最初から決まってると思うんだけど」

泉「やっぱりその話題ですか」

美嘉「何か聞いた?」

泉「それを私も聞こうと思ったんですが」

美嘉「行ってみないと分からないかな」

泉「女Pは?」

美嘉「返信ナシ」

泉「……スケジュール開いてますか?」

美嘉「開始は夜だから、何とかってところ。そっちは?」

泉「私だけですが、行けます」


185: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:26:38 ID:isgSSEeQ

莉嘉「何? 何か問題なの?」

美嘉「その日、一日中あんたは仕事でしょ。気にしないでいいから」

莉嘉「また隠し事!?」

美嘉「後で説明はしてあげるから。じゃ、当日に」

泉「はい……本当に、どうしたんだろう」

泰葉「ちょっと、宜しいですか?」

泉「えっと」

美嘉「岡崎さん……でいいんだよね」

泰葉「はい、それで構いません。時間は大丈夫ですか?」

泉「何か私たちに?」

泰葉「少し気になったものですから、その……今回のLIVEバトルの件も含めて」

美嘉「も?」

泰葉「相手のアイドル、少し有名な子で」


186: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:27:21 ID:isgSSEeQ

泉「名前は聞いた事のなかった人でしたけど」

泰葉「その……どういう言い方をすればいいのか分らないんですけど」

美嘉「どんな言い方でもいいって」

泰葉「わざと負けるんです、この事務所」

美嘉「わざと……って」

泰葉「やり方は様々です。ですが、智絵理さんのレベルならそういった方法を取らなくても勝てる相手なんていくらでもいるはずなんです。
   なのに、どうしてなのかなって少し気になったものですから」

泉「……女Pに聞いてみる」

美嘉「先週も同じだったって決まった訳じゃないよ」

泉「それでも!」

泰葉「先週?」

泉「先週、一緒にステージに立ちました」


187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:27:52 ID:isgSSEeQ

泰葉「それ、智絵理さんは知ってるんですか?」

美嘉「そういえば見に来てた」

莉嘉「じゃあ絶対に知ってるよ!」

泰葉「勝つなら実力通りの結果で問題ありませんが、もし負ける事がある様なら」

美嘉「そんなのアタシが許さない」

泉「智絵理さんはどこに……」

泰葉「プロデューサーの誰かがいればいいんですが」

泉「女Pの場所が分からないのに、誰に聞けば……」

泰葉「……相談してみます」


188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:28:55 ID:isgSSEeQ

P「やっぱり来たか」

泰葉「知ってましたか?」

P「俺もその子の事は知ってる、使った事はないが」

泰葉「智絵理さんに教えたのはPさんですね」

P「その通り、そして俺の想像通りならあの子は負ける」

泰葉「それが負けたアイドルへの贖罪ということですか」

P「女Pさんに対して依存的な面もあるから、負けた後にニューウェーブとLIVEバトルしようとするかもな。踏み台にされるのは私でいいとでも考えて」

泰葉「そんなの事務所も世間も許しません」

P「そう、だから女Pさんがどうするかなんだ。泰葉だけじゃない、瞳子さんや白菊さんだって気付きかねない問題だから、俺も早めに手は打ったんだけど」


189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:29:34 ID:isgSSEeQ

泰葉「智絵理さんが動けば解決するんですか?」

P「するしないに関わらず、やっぱり動くのは彼女達であるべきだと思う。俺が動いても意味がない」

泰葉「無いことは無いと思います」

P「負けると分かっている舞台に立てって言われたら、泰葉は立てるか?」

泰葉「Pさんの判断にお任せします」

P「俺は自分から立ってしまうと思うんだ。もちろん、泰葉の様にプロデューサーに従うのも当然の意見だよ。だけど今回の問題を解決するのに必要なのは、
  俺や泰葉の様なタイプの人間じゃないと思う。そろそろいい時間だ、今日はこれでおしまいにしよう。当日は俺も会場に顔を出すから」

泰葉「……プロデューサーなら誰にでも従う訳ではないんですよ、Pさん」


190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:31:07 ID:isgSSEeQ

ありす「扉の前に仁王立ちする趣味にでも目覚めたんですか?」

春菜「私がそんな事をする女に見えますか?」

ありす「一応」

春菜「コホン、あのですね。今、私はPさんから頼まれた重要な任務の真っ最中なんです」

千枝「Pさん?」

春菜「本当に名前を出したらどこからでも出てくるね」

千枝「えっへん」

ありす「Pさんがどうしたんですか?」

春菜「聖來さんと喧嘩したみたいです」

ありす「ありえません」

千枝「千枝も、流石にそれは」


191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:33:16 ID:isgSSEeQ

春菜「ここで衝撃の事実。あの二人、一か月会ってません」

千枝「Pさんと一か月も会えなかったら死んじゃいます」

ありす「……死にはしませんが」

春菜「それで話を聞きに来たんですが、応答がなくて」

千枝「お出かけ中でしょうか?」

ありす「分かりました、見かけたら声を掛けるようにします」

春菜「簡単に仲直りしてくれたらいいんだけど」

千枝「大丈夫です、Pさんと聖來さんならすぐに仲直りです」

春菜「そうだね、不在なだけかもしれませんし出直そうかな」

聖來「……」


192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:33:52 ID:isgSSEeQ

女P「準備はいい?」

智絵理「はい、ばっちりです」

女P「いきなり出たいなんて言いだして驚いたけど、大丈夫?」

智絵理「こういう事もしていかないと」

女P「出番は後だから、もう少しゆっくりしてなさい。普段のライブとは雰囲気も違うでしょうけど――」

智絵理「大丈夫です」

女P「智絵理?」

智絵理「ちゃんと歌いますから、聞いて下さいね」

アイドル「二回連続かあ」

他P「今回は、前回と条件が違う」

アイドル「勝ってもいいって言われても、勝てないし」

他P「俺はそうは思ってない」

アイドル「やるだけやるよ、私なりの歌を」

他P「明日の為に、だ」

アイドル「どんな明日なんだろうね、私達の明日って」


193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:34:48 ID:isgSSEeQ

泰葉「Pさん、本当に来たんですか」

P「それはどっちかって言うとこっちの台詞だ、何でそこまで気にするんだ?」

泰葉「あの子の最後のステージかもしれませんから」

P「そういう事か、緒方さん次第だろうな」

泰葉「Pさんこそ、わざわざ時間を空けてまで来た理由は?」

P「焚き付けたの俺だし、何かあったら責任取るのも俺。なら見届けようかなって」

泰葉「当たり前だと思っていた事が、ここでは特別なんですね」

P「俺達が異常なのか、それともここが特別なのか。どっちだと思う?」

泰葉「その問いに答えるのにはまだ、時間が足りません」

P「一つの答えを示してくれるのかもしれない、彼女が」


194: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:35:39 ID:isgSSEeQ

泉「もうすぐです」

美嘉「自分のライブよりも緊張してきた」

泉「もし岡崎さんの話が本当なら」

美嘉「出来にかかわらず大した盛り上がりもなく終わるって話でしょ?」

泉「前回の時は覚えてますから、それが比較対象になります」

美嘉「気にし過ぎって事が分かるだけだって」

泉「それも、今から分かる事です」

アイドル「今日はみんな来てくれて――」

美嘉「って、何?」

泉「何で最初から!?」

泰葉「これ……」

P「どうなってんだ?」

女P「何で最初からこんな盛り上がり!? これじゃまるで……」

智絵理「……おめでとう、ごめんなさい」


195: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:38:01 ID:isgSSEeQ

泰葉「Pさん!」

P「多分、緒方さんのやった事なんだろうけど」

泰葉「やっぱり」

P「あの子のファンを優先的に集めたのか? だけど個人でそんな事……」

泰葉「いえ、きっとこれは」

P「泰葉?」

「頑張れ!」

「今日は応援するぞ!」

「やっと来れた! 誰が相手でも絶対にやれる!」

泉「何、この雰囲気?」

美嘉「ちょ、ちょっとどうなってんの?」

泰葉「緒方さんは何もしていません、条件は対等です」


196: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:42:03 ID:isgSSEeQ

P「なるほど、観客も分かってたんだな。この子がそういう環境で歌ってきたって」

泰葉「長くやってきた子ですから、知名度はあります。同情かもしれませんが、相手のファンがいない
    この環境なら票は彼女に集まるかもしれません」

P「そっか、だから出てきた途端にこの盛り上がりって訳か」

泰葉「緒方さんでも、今日の彼女を相手だともしかしたら」

P「そうだな、活き活きとしてる。相手のファンばかりの環境で歌ってきたんだもんな」

泰葉「ファンも長い間、待ち続けてたでしょうから」

P「これは決まったかな」

アイドル「ねえ、楽しかった」

他P「……ああ」

アイドル「やっぱり……楽しいよ……アイドル」

他P「よかった、これなら緒方智絵理にも勝てる」

アイドル「うん!」


197: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:43:04 ID:isgSSEeQ

泉「雰囲気は完全に持っていかれてる」

美嘉「ここから逆転とか、できる?」

泉「厳しい、としか言い様がありません」

美嘉「だよね、どうするんだろ?」

泉「気を使ってもらわなくても大丈夫です」

美嘉「な、何の事?」

泉「私たちの時と出来が全く違いました。そういう話が合った事はこれで……分かりました」

美嘉「それは本人に聞いてみないと」


198: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:43:42 ID:isgSSEeQ

泉「今日の彼女を相手に勝つ自信が私にはありません、ステージに立っても結果は見えてます」

美嘉「最初からそんな事を言ってどうすんの!?」

泉「事実です、智絵理さんも分かっていたんでしょうね」

美嘉「代わりに負けようとしてるってこと……?」

泉「恐らく」

美嘉「やってみなくちゃ結果なんて分からない」

泉「分かります、こればかりはプログラムと一緒です」


199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:44:17 ID:isgSSEeQ

女P「智絵理」

智絵理「出番ですね、行ってきます」

女P「智絵理、あのね」

智絵理「いいんです、全て分かってましたから」

女P「……そう、それでこんな」

智絵理「だから、気にしないで下さい。ちゃんと歌ってきますから、見てて下さい。それだけで、いいですから」

女P「言われなくても、それくらい」

智絵理「なら、私は歌えますから」

P「出てきた」


200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:45:04 ID:isgSSEeQ

泰葉「何か、騒然としてますね」

P「事務所の中でもトップ層だ、普通にやればまず負ける事はない子なんだけど」

泰葉「その不敗神話も今日でストップかもしれません」

智絵理「あの、とっても素晴らしいステージでした。心が震えて、そんな方と一緒のステージに立てて嬉しいなって、そう思います」

泉「智絵理さん」

美嘉「ステージ上だとあんな風に喋るんだ」

智絵理「その余韻の中に浸っていられたら、って思いますけど、でもこれもLIVEバトルで、だから私もここで精いっぱい歌いたいと思って、ここにいます」

P「さて、どうする」

泰葉「始まる」

泉「な……」

美嘉「すご……」

泰葉「はは……そっか、そうなるんですか」


201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:46:06 ID:isgSSEeQ

女P「あんたには無理なのよ、智絵理。あんたじゃどんな風に歌ったって」

アイドル「見せつけられちゃってるなあ、さっきまで完全に私の場所だったのに」

P「楓さんや蘭子と同等か。やっぱり、この世界は残酷だな」

泉「勝つとか負けるとかそんなレベルじゃありません」

美嘉「アタシ達だって、ここまでは」

泉「智絵理さんには必要ありませんよね、よく分かりました」

美嘉「泉、ニューウェーブだって」

泉「それが女Pの選択! 彼女は勝てる、けど私達は勝てない!」

美嘉「今は確かにそうだけど、でもいつかは!」

泉「私達にいつか、なんて言葉は許されない」

美嘉「泉?」

泉「今日は帰ります、ありがとうございました」


202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:46:45 ID:isgSSEeQ

P「結果は見るまでもないよな、もう」

泰葉「Pさんなら、この後でもステージに立てますか?」

P「立つよ、今でも立てるなら立ちたいと思う。だけどそれは今の俺の答えで、あの時の俺がどう答えるかは分からない」

泰葉「私は、分からなくなってきました」

P「それでいい、迷うことを恥じるな。誰だって戸惑う、それで当たり前だ」

泰葉「それでも、出さないといけませんから。迷ったままステージに立っても」

P「これで拗れたら俺も謝らないといけないな」

智絵理「勝っちゃいました」

女P「勝ちに相応しい歌だったもの、誇りなさい」

智絵理「でも、これだと私は」

女P「……智絵理、あなたは何も気にしなくていい。今日の様に明日からもそのままで――」

智絵理「女Pさんの役に立てません」


203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:47:35 ID:isgSSEeQ

女P「あんたにそんな役は無理、今日で分かったでしょ? 私がプロデュースしてもこれ程のアイドルになれるんだから」

智絵理「だから、ニューウェーブも信じられないんですか?」

女P「そうよ、分かった? 私はそういうプロデューサーなの」

智絵理「自分を信じられないから、人も信じないんですか?」

女P「あの子達には時間がない、智絵理と同じ様にいけたなら私だって何もしない。けど、残念ながらあの子達に智絵理と同じ力はなかった」

智絵理「私と同じ力なんてありません、私はニューウェーブにはなれませんから」

女P「正論、アイドルにそう言われるのも情けないけど……自分のやり方を貫いてアイドルを潰す様な真似はもうしたくないの」

智絵理「そんなの、絶対に違います」


204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:48:16 ID:isgSSEeQ

女P「智絵理、どうして今日のLIVEバトルに出ようと思ったの?」

知絵理「私は女Pさんを信じてここまできたんです。だから、何の力がなくても勝てるって、示したくて!」

女P「それは私の力じゃない、ごめんね。こんなプロデューサーで」

智絵理「まだ続けるんですか!?」

女P「今日、泉と美嘉が見に来てた。選ぶでしょう、どうするか。もう一人、今日来てた彼についてみるのもまた一つ」

智絵理「そんなの……嫌です」

女「だから悪役は私だけでいい、帰りなさい。ここはいつまでも智絵理みたいな子がいていい場所じゃない」


205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:49:09 ID:isgSSEeQ

泉「と、いう結果でした」

さくら「はぁー、そっかー」

亜子「調子に乗ったらこうなるっていういい例やな」

泉「私達に残された選択はあまり多くない」

さくら「このまま続けるか止めるかって事ぉ?」

亜子「辞めるのは現実的じゃないやろ?」

さくら「お金まだまだ足りないもんね」

泉「それは私の問題だから、別に亜子やさくらが気にすることじゃない」

さくら「気にするよぉ!」

亜子「泉、それは言わん約束や。私達は三人でニューウェーブなんやから」

泉「辞めるのは無しにしても、このまま続けても必ずどこかで行き詰まる。それは女Pの問題じゃなくて私達の問題」

亜子「いつか勝てなくなったら……またずるずるといきそうやな」


206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:49:42 ID:isgSSEeQ

さくら「じゃあ、どうすればいいの?」

泉「提案がある」

亜子「また怖い顔しとるけど」

さくら「何かあるのぉ?」

泉「そのライブ、実は私と美嘉さん以外にも事務所の人間で来てる人がいた」

亜子「って事はその人も……」

さくら「知ってるかもしれない?」

泉「だから聞きに行こう。全てを曝け出してでも、その価値はあると思うから」


207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:50:19 ID:isgSSEeQ

P「そっか、見てたか」

泉「岡崎さんといる所を見かけましたので」

P「俺がどこまで知ってるかって言われてもな……あんまり耳触りのいい事は言えないぞ」

泉「そのつもりです」

P「四連勝は恐らく何らかの力が外部から働いてる可能性が大きいっていうのは?」

泉「何となく、ですが」

亜子「やっぱりか」

さくら「ずばっと言われちゃったねぇ」

P「自覚あったのか?」

泉「気づいたのは緒方さんのおかげです、恥ずかしながらそれまでは全く」

P「気付いたなら俺じゃなく女Pさんに聞いた方がいいと思うが」


208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:51:25 ID:isgSSEeQ

泉「……手詰まりなんです、このままじゃ」

P「順調に見えるが」

泉「このまま同じ方法を続けて勝ってもいつか限界が来ます」

P「続けなくても限界は来るぞ」

亜子「それは分かっとるけど、それでもどうにかせなあかんって話」

P「どうにかって……そもそも女Pさんは何で始めたんだ? 俺だってそういう手法に理解はあるけど、
  まだ焦る段階でもないだろ?」

泉「……時間がありませんから」

P「時間って、まだまだこれからだと思うけど」

亜子「ま、泉が話すなら止めはせんけど」

さくら「イズミン……」

泉「実は」


209: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:52:12 ID:isgSSEeQ

杏「弟?」

P「そう、弟」

杏「病気か、大変だね」

P「で、治療費が中々に掛かるそうで」

杏「それでアイドル?」

P「まあ、あの年齢で稼ごうと思ったらな」

杏「0か100しかないのに、よくやろうと思ったね。全て無駄になるかもしれないのに」

P「それでもデビューはした」

杏「して、それから?」

P「伸び悩んでるのは事実、だからといって辞める訳にもいかない」

杏「事務所から貸せば?」

P「核心を突いてきたな」

杏「当然の感想だと思う」


210: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:53:38 ID:isgSSEeQ

P「それ、実は社長に聞いてみた。知ってますかって」

杏「ふうん、何て?」

P「断られたって」

杏「よく分かんないけど、何で?」

P「返せるか分からないから」

杏「そんなに凄い額なの?」

P「詳しい額は分からないけど、現状で足りてないならそれなりの額なんだろう」

杏「また首を突っ込むんだ」

P「ただ、今回ばかりは解決法が見つからない。人気をいきなり上げられる方法なんてないし」

杏「その子って、危ないの?」

P「いや、それは否定された。もしそうなら形振り構ってないだろうし、問題は今の収入がいつか途絶えるんじゃないかって方だ」

杏「仕事なら喜んで譲る」


211: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:54:15 ID:isgSSEeQ

P「お前とニューウェーブじゃ仕事が違いすぎる」

杏「そもそもさ、LIVEバトルって稼げるの?」

P「出れば分かるが、ファン数は増えるし賞金も貰える。だから道場なんてものがある、勝てなくなれば逆に搾取されるけどな」

杏「出続けてればいいじゃん」

P「それやって段々と勝てる相手が減ってきたから女Pさんもあんな手に出たんだ」」

杏「本末転倒、自業自得」

P「言うな、本人達も分かってる。デビュー当時はどうだったんだ? 俺が来る前だからよく分からないんだよ」

杏「失敗」

P「失敗って、何かやらかしたのか?」

杏「大々的に売り出されてた、イベントの主役だったし」


212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:54:51 ID:isgSSEeQ

P「そのイベントが駄目だったのか?」

杏「何というか、キャラが受け入れられなかったというか、そもそも売り出し方を間違えたというか」

P「統括から女Pさんに変わったのってそこら辺の事情が絡んでるのか?」

杏「さあ、そこまでは知らない」

P「となると、起死回生で何かやるしかないが……そういえば俺が来てからあの子達の仕事って」

杏「主役はないね」

P「それは確かに焦る気持ちは分かるが……」

杏「それで、どうするの?」

P「一度、見る事にはなった。軽いレッスンだけどな」

杏「ふうん、いいんじゃない」

P「それでどうにかるのか、自信はまるでないな」

杏「自業自得」

P「分かってるよ、それでも何とかするのが俺の仕事」

杏「後悔しないといいけど」


213: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:55:24 ID:isgSSEeQ

P「何だこれ!?」

泉「えっと、今までのスケジュールですが」

P「LIVEだけ?」

亜子「それも、異常なんか?」

P「デビューした時はイベントの主役だったって聞いたけど」

亜子「懐かしい話やなあ」

P「それがこれ? 女Pさん何をしてたんだよ……」

さくら「それはまあ……その」

泉「あの頃は色々と手探りでしたから」

P「何で俺を頼ってきたのか分かってきた、何かやらかしたな?」

亜子「まあ、さくらの迷台詞があったんやけど」

P「名台詞? ファンに向かって何か言ったのか?」


214: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 19:56:06 ID:isgSSEeQ

「プロデューサーさん、わたし営業のお仕事に向いてないんじゃないかなって思うんですけどぉ」

「むぅ…プロデューサーさん、今日は全然営業のお仕事が出来なかったですねぇ…」

「プロデューサーさんってもしかして…ちょっと優柔不断な感じですかぁ?」

「こんなことばっかりじゃ、わたし心配になっちゃいますよぉ! プロデューサーさぁん!」

P「統括にこれ言ったのか? 馬鹿だろ」

さくら「うわぁんこの人やっぱり嫌!」

亜子「まあまあ、もう昔の事やから」

泉「……本当に、何と言ったらいいのか」

P「女Pさんよく引き受けたな」

さくら「感謝してまぁす」

P「何でそんな事情でそんな台詞が……ああ、焦りか」


215: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:04:24 ID:isgSSEeQ

泉「早く上へ行かないとって焦ってばかりで、私や亜子も口には出さなかっただけで」

P「統括もそんなんで放り投げるなよ、子供の言う事だろ。しかも事情は似てるんだし……」

泉「似てる?」

P「何でもない。過去は俺にはどうにもできないし、とりあえず通しでやってみよう」

さくら「どう?」

P「じゃあ、次」

さくら「次?」

P「次」

亜子「嫌な予感が……」

P「その反応には訳がありそうだな」

泉「私達、曲のレパートリーがあまりなくて」


216: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:05:03 ID:isgSSEeQ

P「ちょっと待った、リストとかある?」

泉「リストですか、これでいいでしょうか?」

P「……なるほど、LIVEバトルに特化してるのか。完成度がやたら高いから、他はどんなのだろうと思ったんだけど」

さくら「褒めてくれた?」

P「うーん」

泉「そういう訳ではなさそうですね」

P「勝率もそれなりにいいし、大概のアイドルには勝ってきたんだろう。そういうアイドルもありなんだが……負のスパイラルに陥りやすいんだよなあ」

泉「それを強引に解消しにいった結果が、今です」

P「その特化してる部分でさえニュージェネレーションには負けてるとなると……女Pさん、本当に数字を重視してやってんだな。ここまでとは思ってなかった」

亜子「どうしようもないとか?」


217: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:07:50 ID:isgSSEeQ

P「ちょっと試したい。さっきの曲でいいから、何度か繰り返してくれないか?」

卯月「……」

未央「おやおやー? そんなに真剣に何を見て――」

卯月「ニューウェーブの人達が練習してるんだけど……」

未央「って、あのプロデューサー!?」

卯月「確か、女性のプロデューサーだったよね?」

未央「これは……事件の匂いがするねえ」

P「普段からトレーナーさんが見てるのか?」

泉「そうですが」

P「まあ、プロデューサーからの意向は尊重するもんなあ、かといって……うーん」

さくら「何かまた渋い顔してるよぉ」

亜子「宣告前の空気や」


218: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:09:03 ID:isgSSEeQ

P「はっきり言う、スタミナが無さすぎだ」

さくら「スタミナぁ?」

泉「でも、まだこれ位なら」

亜子「別に、他のアイドルとのレッスンもこなしとるけど」

P「違う、もっと言うなら集中力の使い方って言い替えようか。LIVEバトルの間でも、他のアイドルは仕事を入れる」

泉「いけない事なんですか?」

P「仕事ってのはライブだけじゃない。ドラマやコンサート、営業にグラビアと山程ある。その辺りへの力の振り分けができてないのに、
  他のアイドルとレッスンこなせたって満足してたらそこで終わりだ」

卯月「厳しい事も言うんだ」

未央「何かイメージと違うかも」

卯月「真剣なんだよ、真っ直ぐ向き合ってる」

未央「ここからどうなる……?」


219: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:11:25 ID:isgSSEeQ

P「得意分野を持つ事と、一極集中ってのは違う。ライブで負けて行き詰って袋小路にはまるのは、他にできる事がないって自覚があるからだろ?」

亜子「耳が痛いけど」

泉「正論なんでしょうね」

さくら「うう……」

P「どんな形であれ勝ってるのに現状に満足できないなら、変わるしかない」

泉「変わる、か。今からできるのかな」

P「俺に聞かれても、と言いたいけど緒方さんをけしかけたの俺だしなあ」

さくら「はぁ?」

P「……睨むな、悪かった。だから本気でやる」


220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:12:17 ID:isgSSEeQ

泉「宣材写真からですか?」

P「生徒手帳かと思ったぞ、あれ」

亜子「確かに固い」

さくら「笑えば可愛いのにね」

P「笑えば誰だって可愛いだろう……アイドルなんだぞ」

さくら「かわいい? サービスショット!」

P「ぶっとばしたくなる」

さくら「やっぱりこいつ嫌だぁ!」

P「本気でぶっ飛ばすか」

亜子「ええコンビや」

泉「……そうかな?」


221: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:13:08 ID:isgSSEeQ

P「口を開けて、はい閉じて」

さくら「何か、地味」

P「鎧でも着せてエキストラで放り込むぞ」

さくら「天下統一!」

P「俺の方がまだ可能性が高い」

さくら「そんなことないもん!」

亜子「こういう事から逃げとったから、こういう事になったんかな?」

泉「効率だけを追い求めても、駄目だったのかな」

亜子「まあ、あの人の言う通り過去はどうにもならん。頑張ろ、そして女Pに示すしかない」

P「しかし、俺が片手間にやっても限界はあるなあ……ん?」

亜子「そこは自分たちで何とかするって、子供じゃないんやから」

P「そこにいるの、誰ですか? そこで見てる暇があるなら手伝ってもらいますよ」


222: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:14:08 ID:isgSSEeQ

卯月「あ」

未央「いやー、ばれちゃってましたか」

P「……ニュージェネレーション?」

泉「いつから?」

卯月「ついさっきだよ、あはははは」

P「じゃあ俺がさっきまで見てたのは幻影なんだな?」

卯月「は」

未央「投降しよう、凛と同じタイプだよ」

卯月「そうだね」

卯月 未央「ごめんなさい!」

P「別に俺は怒ってないが、まさかこんな大物が隠れてたとは」

卯月「こうしてお喋りするのは初めてですね」

亜子「そうやけど、時間とか大丈夫なんか?」


223: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:15:06 ID:isgSSEeQ

未央「いやー、私達はそこまで忙しくもないから」

卯月「凛ちゃんは凄いけどね」

P「まあ、全員が同じ人気とも限らないが」

卯月「ちょっと気になってたんです、凛ちゃんが張り切っちゃったからあんな結果になってしまって」

亜子「いや、あれは完全に実力差やし」

P「ライバル視してたりするのか?」

未央「屋上にいたでしょ?」

P「マサイ族かよ」

さくら「見てたんですかぁ?」

P「何となくな、仕事の終りにちょっと見ただけだ」

未央「いやー、照れますな」

P「照れるって……もう何百回としてきた事だろう?」


224: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:15:53 ID:isgSSEeQ

未央「あれ、しぶりんから聞いてない?」

P「まあ、ざっとだが」

未央「なら、そういうこと」

卯月「お詫びとして、協力できることはします!」

泉「いいんですか?」

卯月「私も勉強になりますから」

P「願ってもない話だけど……島村さんちょっと」

卯月「はい?」

P「統括にばれたら不味くないのか?」

卯月「大丈夫です、今日は凛ちゃんにずっとついてますから」

P「だが、何で事情を知ってるのに」

卯月「美穂ちゃんと泰葉さんのお礼です、二人とも元気にしてくれたんですよね?」


225: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:16:53 ID:isgSSEeQ

P「泰葉……さん?」

卯月「私にとっては大先輩ですから」

P「ありがとう。ごめん、何か誤解してたみたいだ」

卯月「仕方ありません、それに……」

P「それに?」

卯月「いえ、まずは何からお手伝いしましょうか?」

P「宣材写真見て思ったんだけど、ニュージェネレーションは統一感がまるでないんだな」

卯月「別々に撮りましたから」

未央「まさかこんな風になるとは思ってなかったからね」

泉「個性がいるのかな」


226: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:17:40 ID:isgSSEeQ

亜子「よっしゃ! なら胸元開けるか!」

泉「え」

未央「はい、見ない」

P「言われなくても分かってる!」

さくら「個性……」

P「個性の塊が何を言ってんだ」

さくら「でも、イズミンやアコちゃんみたいなスタイルも胸もないし」

P「スタイルはともかく、胸のないアイドルなんてうちの事務所にもいくらでもいるだろ」

さくら「こういう時、どうすればいいんだろうっていっつも迷っちゃってぇ」

卯月「自分らしくしてればいいんだよ」

さくら「卯月ちゃんはだって、お尻大きいしぃ」


227: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:18:57 ID:isgSSEeQ

未央「お、やっぱり分かってた? このダイナミックな二つの山」

卯月「ちょっと未央ちゃん! こんな所で……もう……」

亜子「ちょっとくらい見たって黙っとくけど?」

P「絶対に見ない、絶対に絶対に見ない」

卯月「私は気づいてなかったんだけど、なんかファンの人からいつの間にか言われるようになってて」

未央「頑張ってれば、個性なんて勝手に誰かが見つけてくれるから。だから今は笑って皆の前で全力でアイドルやるのが一番だって!」

卯月「未央ちゃんの個性は誰が見つけてくれるんだろうね?」

未央「卯月……何か辛辣」

卯月「お尻なら未央ちゃんの方が大きいもん!」

さくら「やっぱり、お尻も大きい方がいいのぉ?」

P「俺に聞くな!」


228: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:20:10 ID:isgSSEeQ

泉「勝手に見つけてくれる、か。考えたこともなかったな」

亜子「この衣装も、久しぶりや」

未央「デビューした時を思い出して、感想は?」

泉「何か、不思議なんだけど懐かしくない」

未央「ほう? その心は?」

泉「まだ、私はスタート地点にいる」

卯月「私達もだよね」

亜子「ゴールは遠いなあ」

さくら「これから走るのぉ?」


229: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:20:45 ID:isgSSEeQ

P「一度、ゴールしたんだよ。また新しいゴールを見つけたからスタート地点にいるんだ」

泉「新しいゴール」

亜子「とりあえずは女Pに心配かけなくて済むアイドルになる事やな」

泉「撮影、お願いします」

P「何だ、いい顔で笑えるんだな」

泉「女Pに見せる最初の写真だから」

P「それがきっと、君の自然な表情になるよ」


230: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:21:32 ID:isgSSEeQ

未央「ちょっとギブギブギブギブギブ!!」

亜子「意外と固いなあ」

P「体力は島村さんがトップか、意外」

卯月「体育祭でも頑張ったんですよ!」

さくら「もう……駄目……無理だよぉ」

泉「私の半分だよ、もうちょっと頑張って」

さくら「うう、イズミンが鬼に見える……」

P「あっはははははは、腹が……腹が……」

亜子「笑わんでもええやろ!」

さくら「だから苦手だってデビューの時から言ってるのにぃ」

未央「ダンス、苦手?」


231: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:22:15 ID:isgSSEeQ

泉「歌なら何とかなるんですけど」

P「だからレパートリーが少ないのか、納得した」

卯月「これから覚えていけばいいんだよ、大丈夫。未央ちゃんは今もライブが近づくと特別にレッスン組まれてるから」

未央「それは今ここで言う話じゃないよね!?」

P「基礎からやるか、忙しくなるとこういう時間も取れなくなるよな」

泉「ふう……」

P「お疲れ様。はい、今度は貰い物じゃなくてちゃんと買ってきた」

泉「私達のしてる事って、他の人から見れば単純で地味で」

P「結果は見えにくいな、プログラム組む時はどうなの?」

泉「亜子やさくらから聞いたんですか?」

P「いや、あの日ルキトレと会ってさ。ちょっと聞かせてもらった」


232: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:23:54 ID:isgSSEeQ

泉「趣味みたいなものです、亜子は勝手に売ろうとしましたけど」

P「売らなかったの?」

泉「利益が大して望めるものではありませんでしたから。一つ作ると、その修正に時間も取られてしまいます」

P「そこら辺の世界はさっぱりだ」

泉「知らなくてもパソコンは動きますから、その仕組みに興味を抱く人も少ない」

P「でもそういう仕組みに精通してる人は確かにいるんだよなあ」

泉「アイドルもいつかそうなるかもしれません」

P「アイドルがプログラミングで動くの?」

泉「画面の中なら、今だって動かせます」

P「そんな時代が来たらプロデューサーなんて職種もなくなるかもな」

泉「その歌もまた、誰かに響くのか。響かせる歌があるのか、私は知りたい」


233: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:25:53 ID:isgSSEeQ

P「なら、俺はそれに負けないアイドルを育てたいな。いつか頂上決戦する日がくるかも」

泉「この汗も、その為の小さな一歩ですね」

P「その時は、どっち側にいるんだ?」

泉「どちらにも」

P「言い切ったね」

泉「でなければ、進む意味がありませんから」

P「さて、もういい時間だな」

卯月「続きはいつですか?」

P「できるかなあ……えーっとスケジュール的には……」

亜子「アタシらそれほど仕事がある訳でもないしなあ」

P「うーん……まあ何とか……夜でもいいか?」


234: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:26:41 ID:isgSSEeQ


未央「もっちろん!」

P「来るの?」

卯月「お邪魔でしょうか?」

P「いや……別に来たいならいいが」

未央「じゃ、これメアドだから決まったら教えて!」

泉「あの二人、どうして」

亜子「お人好しなんかね」

P「まあ、レッスンするというのなら止めないが」


235: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:27:44 ID:isgSSEeQ

千枝「それで千枝を放って夜の特別レッスンですか!?」

P「……まあ」

千枝「千枝にも夜の特別レッスンして下さい!」

P「だから変な言い方をするなって! それに決まったわけじゃない、女Pさんに報告して駄目だというなら
  その時点で――」

女P「いえ、続けてもらえる?」

P「知ってたんですか?」

女P「担当の動向くらい把握してる……悪いわね、本当に」

P「いえ、出来る限りはしますが」

女P「担当、変えてみる?」

P「それは彼女たちが拒否すると思いますよ」

女P「今はそうでしょうね」

P「これからもですよ」


236: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:29:07 ID:isgSSEeQ

千枝「何か、元気なさそうです」

先P「向き合うのを怖がってるからな」

P「先輩……そのきのこは一体」

先P「ん? 生えてたから回収した」

P「頭に植えます?」

先P「ほう……いい度胸だ」

P「すいません冗談です。で、さっきのですが」

先P「あいつはアイドルとの接し方がビジネスライクにしようとしてるだろ?」

P「しようとしてますけど、実際は違いますよね」

先P「ここはアイドルが距離を詰めてくるからな、どこにこんなおっさんの机の下でフヒフヒ言うアイドルがいるんだか」

P「ああ、そのきのこもしかして」


237: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:29:54 ID:isgSSEeQ

先P「友達だそうだが、生憎あそこに置かれたら邪魔なんでね。丁重に移住してもらうさ」

千枝「Pさんのきのこ?」

先P「お前……」

P「はい千枝はこっちにおいで。まあ、それは同意しますが」

先P「あいつはずっと戸惑ってんだよ、その理由は知らねえが」

P「アイドルと仲良くなるのが嫌なんでしょうか」

先P「そんな風に見えるか?」

P「……うーん、女Pさんってここに来る前は何してたんですか?」

先P「俺は知らん、適当に聞いてみればいいんじゃないか?」


238: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:33:15 ID:isgSSEeQ

レナ「それで私に?」

P「女Pさんが仕事を見てる中で、年が近いのって兵頭さんくらいですから」

レナ「ブラックジャックは知ってる?」

P「ええ、ルールくらいなら」

レナ「どうぞ」

P「……では」

レナ「貴方の手にはトランプが二枚。一枚はクローバーのエース、もう一枚はクローバーの9」

P「お見通しですか」

レナ「私の手にはダイヤの8とダイヤのクイーン、つまり貴方が勝つには?」

P「ジャックしかない」

レナ「トランプの枚数は全部で52枚、残っているのは48枚。つまりジャックを引く確率は12分の1」


239: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:34:04 ID:isgSSEeQ

P「その通りです」

レナ「さて問題、貴方はカードを引く?」

P「引きません、これで勝負です」

レナ「そう? 本当にいいのね?」

P「はい、では勝負です」

レナ「……どうして」

P「俺の勝ちですね」

レナ「私が嘘を付いてるって分かったの?」

P「ただの勘ですよ」

レナ「その勘はどこから来たのか教えてくれない?」


240: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:35:58 ID:isgSSEeQ

P「誰にどんなカードがいくかは兵頭さんの次第。素人の俺はそんなの見破れませんから、この勝負は
  単純に兵頭さんが勝つ気があるかどうかに掛かってます」

レナ「そうね」

P「もし勝つ気があるならやり方はいくらでもある。その状況下でわざわざ自分の手まで晒して作り上げたのは、
  12分の1の確率に頼らざるを得ない状況」

レナ「うんうん」

P「ですが兵頭さんは勝つ確率とは言わなかった、ジャックを引く確率なんて表現にした時にこれはヒントかなと」

レナ「……へえ」

P「俺は捻くれ者ですから、ここまで厳しい確率を提示されると勘ぐりたくなるんです。つまりジャックを引く以外にも勝つ手段を
  この人は用意しているんじゃないかって」


241: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:36:35 ID:isgSSEeQ

レナ「それで引かなかったの?」

P「ジャックしかないなんて言った手前、引いた方がかっこよかったんでしょうけど。俺の所に来てくれた子達を信じてみました、なんて
  言えば少しはかっこよく見えますか?」

レナ「お見事、私の負けよ」

P「それで、この勝負と女Pさんと何か関係が?」

レナ「彼女も貴方と同じ引かなかったのよ」

P「そうなんですか? 理由は?」

レナ「私の選択一つで、負けるかもしれない子を増やしたくないから」


242: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:38:46 ID:isgSSEeQ

亜子「プロデューサー?」

P「え?」

亜子「疲れ取るんか? ぼーっとしとったけど」

P「いや、ちょっと考え事をしてて」

泉「お疲れですか?」

P「違う違う。よし、もう少し続けようか」

さくら「お疲れ様でしたぁ」

P「お疲れ様。しかし、どうするかな……このままレッスンだけ続けたって」

美嘉「よかった、まだいた」

P「城ヶ崎さん? どうしたの?」

美嘉「ニューウェーブを見てるって聞いたからさ」

P「まあ、責任をもって見てるよ。幸い、俺は他のプロデューサーと比べて仕事の量も少ないから」


243: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:40:05 ID:isgSSEeQ

美嘉「大丈夫だと思う?」

P「彼女たち次第、としか。俺はちょっとしたお手伝いしかできないから、よくも悪くも」

美嘉「女P、何であんなにピリピリしちゃってんのか分かる?」

P「俺が知りたい、先輩は接するのを怖がってるなんて言い方をしてたけど」

美嘉「プロデューサーは怖くないの?」

P「怖いと思ったことならある。大きな仕事の前とか、俺の言葉一つでアイドルが動揺したらとか考えると自然と慎重にはなる」

美嘉「それはそうだけど、でも」

P「そういうのとは違うんだろうな、何でそんな事になったんだか」

美嘉「調べる方法とかある? 協力できるならアタシもするから」

P「本人に無断で?」

美嘉「このままだと共倒れになるよ」

P「その言い方をされると辛いんだが……ちょっと業界内の知り合いに聞いてみる」


244: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:40:58 ID:isgSSEeQ

美佳「変なことになんない?」

P「大抵の事は知ってそうだから、聞いてみるさ」

監督「何だよ、復帰するのかと思ったんだが」

P「ありえません、ちょっとした質問です」

監督「そんなんでお前はこの時間に電話してくるのか」

P「今は海外でしょう? 何時ですか?」

監督「朝の8時」

P「ならいいじゃないですか」

監督「貴重な自由時間を」

P「すぐに済みますよ、女Pってうちの事務所にいるんですけど知ってますよね?」

監督「何だ、注意しとけって言ったのにもう問題起きたのか」

P「まだ起きてません、ただ起きちゃいそうなんで先手を打とうかと」

監督「昔、何て言ったか……雪月花だったか」

P「あ、共演した事あります」


245: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:42:04 ID:isgSSEeQ

監督「ならお前、女Pとも会ってるぞ」

P「関係者?」

監督「プロデューサーだったんだよ」

P「はあ? あそこそれなりに大きな所でしょう、何で移籍なんか」

監督「噂とか聞いたことなかったか?」

P「噂? いえ、あんまり」

監督「魔王の怒りを買って潰されたらしいぞ」

P「……何でまた」

監督「色々やってたんだとさ、妨害じみた事を何度も」

P「なーるほど、それでやられたのか」

監督「今こそ大人しくしてるが、また何をやるか分からんぞ」

P「分かりました、すみませんわざわざこんな時間に」

監督「あ、もう一つ」


246: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:43:21 ID:isgSSEeQ

P「何でしょう?」

監督「前に言ってた撮影の話だが、恐らく黒川千秋になる」

P「あ、本当の話だったんですか。連絡ないんで聞こうかと思ってたんですが」

監督「準備に時間が掛かってたんだが、この撮影が終わったらそっちだ。お前は来れるのか?」

P「海外だと俺は厳しいんで、スタッフを何人か行かせるくらいでしょうか」

監督「ま、そんなとこだろうな。ブラックも真っ青な業務形態だもんな」

P「ブラックが真っ青って」

監督「おっと呼ばれた、じゃあな。正式に決まったら連絡する」

P「お待ちしてます」


247: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:45:16 ID:isgSSEeQ

先P「分かったのか?」

P「まあ、痛い目を見たんだなって事くらいは」

先P「お前の情報網も謎だよな」

P「先輩って俺の前職知らないんでしたっけ?」

先P「お前が俺の前職を知らねえのに……お前、ここに来る前も働いてたのか?」

P「収入は得てました」

先P「曲者揃いかここのプロデューサーは」

P「これ以上、首を突っ込んでもいいと思います?」

先P「全身しっかり浸かってる奴が何を言ってんだ」

P「……そうですよね。ちょっと勝負に出ます」

先P「勝算は?」

P「勝つ必要なんて誰にもありませんよ」


248: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:46:31 ID:isgSSEeQ

さくら「単独ライブ!?」

P「そんなに驚くことか? デビューする時もそうやってしたんだろ?」

さくら「そうだけどぉ」

泉「お客さん、入ってくれるのかな?」

亜子「どうやろうなあ」

P「そこまで大きい箱を抑える気もないし、チケットが売り切れる必要性もない」

泉「利益を求めないということですか?」

P「力を試す格好の場だと思ってくれていい」

亜子「いや、本当に?」

P「大丈夫、それ位の損は何とかなる」

さくら「で、でも曲とか今から用意しても」


249: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:47:47 ID:isgSSEeQ

P「使える曲なんていくらでもある、ニュージェネレーションの曲を使ったっていい」

泉「今から練習してマスターできるかどうか」

P「決定権は君達にある、時間が欲しいなら待つが」

泉「……やります」

さくら「イズミン!?」

泉「チャンスをくれたんだもの、次があるか分からない」

P「分かった、じゃあ君達の曲は使ってもいいのかな?」

卯月「私は大歓迎です」

未央「ふふふ、一ヶ月ぽっちで大丈夫かな?」

卯月「未央ちゃんはもう少し掛かったね」

未央「ぐぬぬ……」

P「使えそうな曲は限られてるけど、できる限り用意するから。さあ、始めようか」


250: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:48:38 ID:isgSSEeQ

卯月「気のせいか、前より活き活きしてますね」

P「分かりやすい目標があるからかな、そこに向かって頑張れる」

卯月「プロデューサーさんは何か目標とかあるんですか?」

P「皆をトップアイドルにすること……何でそんな不満そうな顔を」

卯月「凛ちゃんの目標はなんでしたか?」

P「俺を超えたいって言ってたな」

卯月「簡単に越えられないで下さいね」

P「既に超えられてる気しかしないけど、またどうして?」

卯月「最初に超えるのは私ですから」

P「そんなタイプには見えなかったな」

卯月「皆が友達で、皆がライバルです。だから私はいつも頑張れるんですから。練習、見てきますね」

未央「ライバル宣言ですなあ」


251: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:49:26 ID:isgSSEeQ

P「不思議に思ったんだけど、何で俺のライブに行こうとか思ったの?」

未央「チケット拾った」

P「拾ったあ?」

未央「運命かと思って行ったら運命だったって感じかな!」

P「何だそれは……」

未央「しぶりんの理由は知ってるよね、じゃあしまむーは?」

P「そういえばまだ聞いてないな」

未央「面白いよ、他のライブに行こうと思って間違えたんだって」

P「いや、どこかで気付けよ!?」


252: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:50:33 ID:isgSSEeQ

未央「チケット見て気付いたけど、お小遣いがなかったんだって」

P「あの日のライブ、そんなんばっかりだったのかな」

未央「でもそれでファンが少なくとも三人は増えたんだからさ」

P「まあ、どんな理由でも来てくれるのは嬉しいけど」

未央「そうだよね、本当にそう思う!」

P「成功するといいな」

未央「させるんだよ!」

P「そうだな、させようか」


253: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:51:48 ID:isgSSEeQ

先P「任せっきりでいいのか?」

女P「それで成功するならあの子の方があってる事でしょ」

先P「ほー」

女P「何よ?」

先P「挫折ってのは人を変えるなと思ってな」

女P「変わらなきゃ、しょうがないじゃない」

先P「だとさ」

女P「美嘉」

美嘉「ちょっといい?」

先P「邪魔者は失礼するさ、ごゆっくり」

美嘉「ニューウェーブの三人、頑張ってるよ」

女P「知ってるわよ」


254: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:54:16 ID:isgSSEeQ

美嘉「見に行かないの?」

女P「邪魔じゃない、あんなやり方しか取れないのがいたって」

美嘉「アタシはそうは思わない。アタシ達だって女Pがいたから」

女P「結果論」

美嘉「何でそんな!?」

女P「あの子は簡単に変えるじゃない、やる気のなかった加蓮は今や人気アイドルの一角。泰葉は笑顔が柔らかくなってファン層の幅が増えた、
   名前を呼ばれる事さえ嫌ってたありすは自分から呼んでくれと人に頼み始める始末」

美嘉「アタシが……皆が何も変わらなかったとでも思ってんの?」

女P「……」

美嘉「絶対に見に行って」

女P「……」


255: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:56:26 ID:isgSSEeQ

P「大人を説得するのって難しいな」

莉嘉「大人ってタイヘン?」

P「俺はまだ大人になれてないからよく分かんないな」

莉嘉「働いてるのに大人じゃないの?」

P「働いてなくたって大人にはなっちゃうんだよ」

莉嘉「むずかしーねー」

P「全くな」


256: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:57:16 ID:isgSSEeQ

さくら「ここが会場?」

亜子「ほへー、こんな所があったんか」

卯月「ここ……」

未央「うん、プロデューサーの」

P「まさかリハまで来るとは思ってなかった、ツアー中だよな?」

未央「いや、もう行かなくちゃいけないんだけどね」

卯月「本番は間に合うように頑張りますから」

P「無理しないように」

泉「プロデューサーにとって特別な場所なんですか?」

P「ん? まあ、ちょっとここからアイドルがどんな風に見えるか見てみたくなってさ」

泉「私はどんな風に映るでしょうか?」

P「すぐには変われないよ。誰にだって積み重ねはあるし、それを否定する必要もない。
今はただ、女Pさんの心に何かが響くように願うだけだよ」


257: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 20:58:34 ID:isgSSEeQ

泉「チケットは?」

P「聞かなくていい、販売期間は一週間前からの短期間。どんな結果でも責任は俺が負う。
別に興行として成功しなくたっていいんだ、目的はそこじゃない」

泉「……どうしてそこまでするんですか?」

P「心が動く瞬間ってのを、見たいからかな」

春菜「Pさん!」

P「おお、お帰り。地方ロケありがとな」

春菜「帰ってみたら何ですかこれ!?」

P「ニューウェーブのライブ、チケットあるけどいるか?」

春菜「欲しいですけど、何があったらこうなるんですか?」

P「何も教えないでおくよ、その方が彼女達のためになる」

春菜「その言い方、やっぱり何かあったんですね?」

P「終わった時、ありのままを伝えてあげたらいい。それが一番、彼女達の為になるはずだから」


258: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:00:15 ID:isgSSEeQ

さくら「本当に今日、ライブするんだよね?」

亜子「ここまできたらやるしかない」

泉「女Pは?」

美嘉「来る、来ないなら引きずってでも」

泉「そう、なら後は私達次第」

美嘉「ごめん、何か任せるだけの形になっちゃうけど」

泉「元々、私達のせいだから。こっちこそ謝らないと」

美嘉「頼むね、アタシもこのままは嫌だからさ」

亜子「任せとけ! と言いたいけど、どうなる事やら」

智絵理「あ、あの」

美嘉「智絵理!?」

さくら「うわー久しぶりに会ったぁ」

亜子「また凄い意外……でもないか」

泉「意外って言っても知り合ってからライブするの初めてだし、それに」


259: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:01:48 ID:isgSSEeQ

智絵理「ライブ、おめでとう」

泉「ずいぶんと遠回りした気もするけど、ありがとう」

智絵理「そんな事ない、羨ましいなって思う」

泉「私たちが?」

智絵理「私がどんなに歌っても、変えられなかったから」

亜子「いや、変わったと思う。アタシ達も女Pも」

さくら「多分、私たちはあのまま続けてただけだったと思うし」

泉「ライブしても、女Pがここに来てたか怪しいと思う」

美嘉「本当に何もしてないのは莉嘉くらい」

亜子「実は裏でとんでもない事しとったりして」

美嘉「ないない」


260: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:04:01 ID:isgSSEeQ

泉「頑張ろう、勝つためにじゃない。ファンと女Pと何より……私達の為に」

春菜「こんな後ろの席でいいんですか?」

P「ここなら全体がゆっくりと見えるから、劇場みたいな作りになってるんだな。ここは」

春菜「結局、完売したんですね」

P「実は売ってない」

春菜「売ってない!?」

P「配っちゃった」

春菜「あの、誰に?」

P「過去のLIVEバトルの記録を調べてさ、ああ言ってなかったか。うーんと、まあ実は女Pさんがちょっと観客を操作してたんだけど」

春菜「え」

P「それで行けなくなった人達が発生してたからさ。こんなライブやりますけど、どうでしょうかって電話してチケットを発送して」

春菜「でもニューウェーブは普通にファンが来ると思ってますよ」


261: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:05:24 ID:isgSSEeQ

P「うん、だから俺からのテスト。ここで駄目なら違う道を歩んだ方がいいかなって。お金を稼がないといけないなら、
  普通に勉強して就職した方がいいと思う。特に大石さんにはその力が既にある様だから」

春菜「何と言いますか」

P「もちろん、ここまで全力は尽くした。後は――」

莉嘉「ニューウェーブのお姉ちゃんたち次第だね!」

春菜「えっと、この子って確か」

P「そう、城ヶ崎さんちの下の方。ちょっと打ち合わせを兼ねて一緒にいたんだけど」

春菜「しかし、普通の単独ライブだと思ってるでしょうに」

P「あ、単独でもない。これも内緒だけど」

春菜「はい?」

P「だってさ、LIVEバトルだったら複数のアイドルが出てくるだろ? その代替ライブなら他にも出さないと失礼かなって」

春菜「誰を用意してるんですか?」

P「ちょっと、とっておきの人達をね」


262: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:06:49 ID:isgSSEeQ

泉「アイドル?」

亜子「そうや、アタシらが稼げるチャンスや!」

泉「だからって、私達そんな経験ないじゃない」

亜子「経験じゃない、女は度胸や!」

さくら「イズミン、お金がいるの?」

泉「え、ああ……まあ。けどさくらと亜子には」

さくら「協力するよ」

泉「えっと、理由とか何も言ってないけど」

さくら「イズミン困ってるんだよね? アコちゃんお金稼ぐ方法を探してたんだから、何かと思ってたんだけどぉ」

泉「二人とも、本気?」

亜子「冗談でこんな事は言わないって、けどさくらは」

さくら「仲間外れは駄目だよぉ、いつか話してくれたらそれでいいから」


263: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:07:54 ID:isgSSEeQ

泉「でも、事務所とか決めてるの?」

亜子「ここ!」

さくら「シンデレラガールズ?」

泉「まだ新しいみたいだけど」

亜子「何でもこの学校を卒業した人がここでアイドルやってるらしいのよ」

泉「そんな噂どこから」

亜子「先生が言ってたんだから間違いない、な? やってみよ?」

泉「アイドルは手段のはずだった。二人が協力してくれるからって始めて、どこか冷めてて……でも」


264: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:08:34 ID:isgSSEeQ

亜子「どーもどーも、亜子でーす!」

さくら「さくらでぇす! えっへへー」

泉「大石泉です、今日は本当にありがとうございます。久しぶりのライブ、本当に楽しみで……」

春菜「言葉が……」

P「大丈夫だよ、流されてない」

泉「今ここで私達の持つ全てを出し切ります、最後まで一緒にこの波に乗って盛り上がりましょう!」

美嘉「デビュー曲……」

女P「構成は、あの子達が考えたの?」

智絵理「女Pさん!」

美嘉「多分、三人と彼が考えたんだと思う」

女P「そう、そっか」

美嘉「誰の為に歌ってるか分かってる?」

女P「分かってる、ここまでされないと分からない自分が馬鹿だったって事も」


265: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:11:50 ID:isgSSEeQ

亜子「最高のLIVEにするよん!」

さくら「えっへへー♪ いくよーっ!」

泉「私たちの、魅せてをここで!」

P「デビューまでどんな葛藤があったのかとか俺は知らないけどさ。でも誰かの為にここまで歌えるなら、彼女達は大丈夫だと思う」

春菜「それで、この後に誰を?」

P「そろそろ出てくるよ」

泉「皆さん、今日は本当にありがとうございました。今日のライブはこれで――」

莉嘉「って思うでしょー!?」

美嘉「莉嘉!?」

智絵理「だ、大丈夫でしょうか?」

女P「大丈夫でしょ、客席であいつがにやっとした」


266: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:13:03 ID:isgSSEeQ

美嘉「折角のライブがこれで終わっちゃうのもったいないから、凄い人達を呼んじゃったんだ!」

美嘉「凄い人達?」

女P「あいつの呼べるアイドルで凄いっていうレベルだと」

智絵理「高垣さん」

美嘉「後は?」

女P「誰が出てくるか」

未央「みんな、待たせたね!」

卯月「遅れてすみません! 島村卯月です!」

美嘉「はあ!?」

智絵理「ニュージェネレーションだ……」

女P「」


267: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:14:03 ID:isgSSEeQ

春菜「これ、お金とか」

P「さっきも言ったとおり一円も取ってない」

春菜「よく呼べましたね」

P「あのステージに立ってみたいという彼女達からの希望もあった。それに何というか、これは俺からの」

春菜「からの?」

P「宣戦布告だ」


268: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:16:00 ID:isgSSEeQ

泉「ありがとう、来てくれて」

未央「あれ? 分かってた」

亜子「ま、何となく」

さくら「凄い、それ私達と同じ衣装だぁ!」

卯月「特別に作ってもらったの、似合う?」

亜子「何でも似合うね」

未央「だからこのお尻がいいんだって」

卯月「未央ちゃん」

未央「よっし、じゃあ一曲いってみよう!」

泉「うん、では聞いて下さい!」


269: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:17:29 ID:isgSSEeQ

美嘉「って、何も言わずに帰る気!?」

女P「やる事がたくさんあるから」

美嘉「それ、絶対にしなくちゃいけないの?」

女P「もちろん、あの子達のプロデュースを一から見直す。彼女達が結果で示したんだから、私も示す」

美嘉「はあ、もう」

智絵理「でも、いい顔でした」

美嘉「大人ってこうなんだから」

智絵理「でも、嬉しそう」

美嘉「……まあ、いいライブだったよね」

智絵理「うん!」


270: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:18:56 ID:isgSSEeQ

さくら「疲れたぁー」

泉「うん、でも今までとは違う」

亜子「女Pチャン、本当に帰ったみたい」

泉「仕方ないよ、すぐには――」

さくら「メール?」

泉「……ふふっ」

亜子「お? まさかの本人から?」

さくら「見せて見せて」

泉「はい」

亜子「何というか、女Pチャンらしいというか」

さくら「でもこんな風に送ってくれたの初めてだね」


271: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:19:54 ID:isgSSEeQ

泉「これで、弟にも笑われなくて済むかな」

亜子「よっしゃ、この調子でばんばん稼ぐで!」

さくら「うん、頑張ろイズミン」

泉「ええ、私達は波だから」

亜子「一度引いても繰り返す」

さくら「世界のどこにでもあるし」

泉「寄せては返す波のように、返す度に新しい何かを見せられるように」

亜子「はりきっていこう!」

NW「おー!」


272: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/11/29(金) 21:21:44 ID:isgSSEeQ

マストレ「ライブは成功だったようだ、利益はなかったようだが」

社長「その条件で許可しましたから、問題ありません。構いませんよね?」

統括「決定権は私にはありませんので、失礼します」

マストレ「どう思う?」

社長「ニュージェネレーションの内の二人を連れていったのは予想外でしたけど、それが彼からのメッセージなんでしょう」

マストレ「彼を入れて正解だったと思うか?」

社長「そう思いましたからここに彼を入れたんです。さて、では行きますね」

マストレ「仕事か?」

社長「スタドリの販売にイベントの告知、やる事が盛りだくさんです」

マストレ「トップ自ら現場に出る社長、か。人手不足は間違いないが」

社長「プロデューサーさん達も頑張ってますから」

マストレ「なら、私もそれに応えるとしよう」

終わり 次回は10日後くらいを予定してます


275: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:50:24 ID:GiDtJ1eI

さあ、今年のシンデレラガールは!?

その先に私の名前は呼ばれなかった。

一年前、涙で滲んだ景色が今年も滲んだ。

一年前とは、違う涙で。

連作短編22
愛梨「シンデレラの足跡」

おはよう

事務所に入るといろんな方向から声が飛んできて、私は色んな方向に頭を下げます。

おはよう、今日も可愛いね。とか、今日も元気だねとか。

誰も昨日の結果には触れません。

そして、新しく生まれたシンデレラもどこにも見当たりません。


276: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:50:57 ID:GiDtJ1eI

一言、ちゃんとおめでとうって言うんだ。

そう決めてきたのに何だか肩すかしを食らった気分です。

愛梨、これからのスケジュールだけど

そう言って声を掛けてきてくれたのは、この事務所でたった一人の女性のプロデューサーさん。

私と一回りくらいしか離れてないのに、何だかもっと大人の様な感じがします。

こんなこと言うと、怒られちゃうんですけど。

聞いてる?

はい、聞いてます。また新しい番組ですね。

シンデレラになった後、お仕事はとっても増えました。

ファンの方と接する機会も増えて、アイドルってこんなに注目されるんだって改めて思いました。


277: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:51:31 ID:GiDtJ1eI

メインだから、しっかりね

いつの間にか、私が立つ位置は真ん中が多くなりました。

傍には同じ事務所の誰かがいたり、全く知らない誰かがいたり。

それで、今日の夜からの特番なんだけど。

プロデューサーさんの目が少しだけ陰ります。ああ、その話題なんだ。

蘭子が一緒に出る事になった

少しだけ、本当に少しだけ表情が強張りました。いつもはごまかせます、けど

目の前にいる人には通用しませんでした。

嫌よね、こんなの

そんな事ありません、一緒にお仕事できて嬉しいです。本心です、嘘じゃありません。

別にいいのよ? 私相手に隠さなくたって

そんな事を言わないで下さい、泣きたくなっちゃうじゃないですか。


278: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:52:28 ID:GiDtJ1eI

14位、立派な数字です。こんなにアイドルがいる中で、私には

不釣り合いなんじゃないかって思っちゃうくらいの。

ここでは誰もそんな事を言わないけど、恐らくこう言われる

初代シンデレラガールの十時愛梨ってな

身構えたところに、私の後ろから声が飛んできました。

あーあ、プロデューサーさんの顔が険しくなりました。

あんたにデリカシーって言葉はないの?

生憎、家に忘れてきてしまったらしい

探しても多分、ないわよ

4人いるプロデューサーさんの中で最年長のおじさんプロデューサーです。

何て呼べばいいですか? って聞いたらおじ様とでも呼んでもらおうか、と言われたので

そう呼んでます。

仕事場で呼ぶと、周りの人はびっくりしてますけど。


279: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:53:07 ID:GiDtJ1eI

難儀な事をするよなここは、アイドルに数字を付けて

仕方ないでしょ、そういう方針なんだから

前からも後ろからもため息が聞こえてきて、何だか申し訳ない気分になってきました。

あんたにはまた別の仕事があるから、○○局には行ったの?

行ったよ。で、今度は何のお使いかなお嬢さん

とっても楽しいお使いよ。愛梨また後で

そう言って二人ともどこかへ行ってしまいました。

どうしましょう、移動は夕方から。それまでする事がありません。

おはよ

涼やかで、それでいて凛とした声が隣から聞こえました。

その、大丈夫?

はい、大丈夫です


280: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:53:49 ID:GiDtJ1eI

心配されちゃうくらい落ち込んでるように見えたのかな? そう考えると相手の方を見れません。

と思ってたら、前に座られてしまいました。

本当に?

凛ちゃんの眼は真剣そのものです。

本当にいつもクールな凛ちゃん、5位で名前を呼ばれた時も顔色一つ変えずに黙って頭を下げて。

本当だよ

本当に見えてるかどうか自信がありません。

私にとっては、愛梨も一つの目標なんだ

目標 その人のがんばる理由、目指すもの。

この一年間、私は何を目指してきたでしょうか。

色んな笑顔と涙があったよね、順位が発表された時

全員が参加する一大イベント、涙の理由も人それぞれです。


281: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:55:09 ID:GiDtJ1eI

速報に名前がなくて本番で48位だった千枝ちゃんは笑顔も上手く作れず泣き出しちゃって

終わった後すぐにいつもくっついてるプロデューサーさんの所に行ってわんわん泣いてました。

そんな千枝ちゃんを微笑ましそうに見ていたありすちゃんと雪美ちゃんも

褒められてとっても嬉しそうで。

もちろん皆が皆、いい結果になった訳ではありません。

莉嘉ちゃんは番組中ずっと笑顔でした、終わっても事務所に帰っても笑顔で。

家に着いてようやく泣いてくれたって美嘉ちゃんは笑ってました。

瑞樹さんは結果発表が終わると、蘭子ちゃんにおめでとうって言ってすぐに帰って行きました。

その後、礼子さんや志乃さんとずっと飲んでいたそうです。


282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:55:51 ID:GiDtJ1eI

順位って意識しなくてもやっぱり心には残るよね

凛ちゃんが雑誌に目を向けたまま口を開きます。

もちろん残ります、14って数字を聞く度にどこか心は動きますから。

卯月が29位、奈緒が11位、加蓮は9位

出てくるのは凛ちゃんの中のいい子達、人気もあって皆が上位に入りました。

未央がいなかったんだ。だからあの時、笑えなかった。

だから黙って頭を下げたんだ、と納得して。かっこいいなあなんて無邪気に思っていた

私の頭をひっぱたいてやりたくなりました。

でも、未央は笑ってた。おめでとうって言われて、それでも私は笑えなかった

なのに、卯月はありがとうって笑ったんだ

その時の凜ちゃんの気持ちは私には分かりません、ユニットを組んだこともありませんから。

そういえば、最後に誰かと一緒に歌ったのっていつだっけ?


283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:56:36 ID:GiDtJ1eI

強がりだと思った、だけどすぐに違うって気付いた

凜ちゃんは優しいから

ふいに横から声が掛かりました、何だか甘い匂いもします。

卯月、いたんだ

ケーキ買ってきたんだ、凜ちゃんのお祝いもできてなかったから

愛梨さんも食べます?

凄く美味しそうな宝石箱を前に、はたと今日の予定が頭を巡ります。

そうです、ここで誘惑に負ける訳にはいきません。

また胸の辺りが苦しくなったら大変ですから。

そう言うと、何故か凜ちゃんが私の胸をじっと見つめてきます。何かついてるんでしょうか?

1位から5位までは呼ばれてるんだよね?

そう、だから今日は愛梨と一緒に仕事


284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:57:16 ID:GiDtJ1eI

凜ちゃんの他に選ばれたのはアーニャちゃんに幸子ちゃんに楓さん。

皆、とっても綺麗で可愛くて。

さっきの話の続きだけど

凜ちゃんがケーキを小さく切って口に運びます。何だか凜ちゃんがそんな風に食べると、

ケーキがとっても高級品みたいに見えるから不思議です。

ファンの人達が見たいのは、応援してるアイドルの笑顔なんだよね

悲しさも悔しさも全てこらえて、ファンに向かってきちんと笑うって想像以上に難しい

凜ちゃんは自分が主役でも周りを見ちゃうから

私は不安なだけだよ、本当にここにいていいのか分からなくなるから

ううん、私は笑う事しかできなかっただけ

凜ちゃんと卯月ちゃんが思い思いに話していく中、私こそここにいていいのか分かりません。


285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:58:04 ID:GiDtJ1eI

一回目と二回目で順位が変わらなかったんだ、私

凄いよ、アイドルも増えてる中で維持したんだから

前にも後ろにも進めなかった

間髪入れず、でした。卯月ちゃんの手が止まります。

今の私の限界を突き付けられてるみたいで、笑うしかなかった

周りを考える余裕なんてなかった。名前を呼ばれた時、私の頭の中には凜ちゃんも未央ちゃんもいなかったんだよ

名前を呼ばれた時、私の頭の中には何があったでしょう。

あれ、思い出せない。何だっけ?

5位だったら、きっとはしゃいで……未央ちゃんを傷つけてたかも

何のお話をしてるのかなあ?

話していた卯月ちゃんの体が文字通り浮き上がりました。

無理もありません、噂をしていたら何とやらが現実に起こったんですから。


286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 01:58:46 ID:GiDtJ1eI

未央、おはよ

凜ちゃんが全てを諦めたのか両手を挙げて未央ちゃんを迎えました。

卯月ちゃんはまだ固まってます。

慰めの言葉を掛けてくれたって罰は当たらないと思うんだけどな

いるの?

しぶりんからならいくらでも!

何それ

あははー未央ちゃんおはよ

やっとこっちを向いたねしまむー

未央ちゃんが卯月ちゃんのほっぺを引っ張って遊びます。

ま、当面は追いかけるから覚悟しとくように!

これで話題は終わりとばかりにそのまま座ってケーキに手を伸ばします。


287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:00:43 ID:GiDtJ1eI

うーん、後で走ればいいかな?

それにしても、凄いよね。

何が?



彼とは誰でしょう? 私の頭の上でクエスチョンマークが踊ります。

あ、?の事ですよ。この前のクイズ番組で覚えました。

統括?

そ、統括

統括さんかあ、クエスチョンマークが踊り終わりました。

第一回から第二回に移っても、担当アイドルを1位にしちゃった。

そうなんです、去年も上位はほとんど統括さんの担当アイドルでした。

でも今年はちょっと違いました。


288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:01:15 ID:GiDtJ1eI

楓さんと幸子ちゃんが割って入ってきたでしょ?

うん、それが?

ありすちゃんも千枝ちゃんも入ってきた

そんな事を言ったら先Pさんや女Pさんも入ってきてるって

そうなんだけどさー、何か流れを感じない?

流れですか、もしあるなら取り残されないようにしないと。

さあね、別に順位が私達の全てじゃない

凛ちゃんがそう言って立ち上がりました、私に目配せして歩き出します。

あれ? もう時間だっけ?

まだ時間あるし、ちょっといい?

卯月ちゃんと未央ちゃんに見送られて私は外に出ました。

都会だけど、どこか優しい空気の漂う街。

平日のお昼なので、お昼休みの方がいっぱいです。


289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:01:51 ID:GiDtJ1eI

近いから、心配しないで

大丈夫です、始めから心配なんてしてません

凛ちゃんが一緒ですから、なんて言うと歩調が速まりました。

待って、置いていかないで下さい!

ここ

そう短く言って、凛ちゃんは立ち止まりました。

ここかあ、と私は納得です。

シンデレラガールズ劇場

300人規模の小さな劇場です。毎日、必ず誰かがここでライブをするんです。

とはいっても人が多いので、私が最後にライブをしたのはもう半年も前のことです。

した事ないって人もまだたくさんいるみたいですから、全員が登場するにはまだまだ時間が掛かりそうです。


290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:02:23 ID:GiDtJ1eI

ですが、今日は一年ぶりのお休みの日です。

明日から本格的に改装が始まるから、見ておきたくて

改装の理由は簡単です、第一回総選挙の結果や記念のトロフィーの展示スペースが第二回仕様に

なるからです。

トロフィー持って涙ぐんでるけど、この時って何を思ってた?

頭が真っ白でした、何にも覚えてないんです

本当に

そっか、そんなものなのかな

そんなものですよ

本当は一つだけ覚えてますけど、それは私とあの人だけの秘密です。

私はこの一年間、追いかけ続けてきたよ。シンデレラを


291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:03:06 ID:GiDtJ1eI

シンデレラって私ですか?

他に誰がいるの?

シンデレラガールズなんですから皆がシンデレラですよ

だったら一位を決める理由もないよね

凜ちゃんってそういうところ真面目ですよね

そうかな?

そうです、その真っ直ぐさが羨ましいです。

今日の記念イベントの後にシンデレラガールズフェスティバルの発表をして

忙しくなりますね

魔法使いに会えないとシンデレラにはなれない

じゃあ、その前に誰かに虐められないといけませんね

そっか、愛梨に虐めてもらおうかな

で、できませんよー

簡単に反撃されちゃう未来しか見えません。


292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:03:44 ID:GiDtJ1eI

それでガラスの靴を落として、王子様に拾ってもらって

王子様かあ

愛梨にとって王子さまって誰?

へ? お、王子様!?

シンデレラの終わりって確かそうだったよね?

そうですけど

ファンって答えるかと思ったのに、何か意外だな

意地悪です

はは、これだとまた愛梨がシンデレラかな

もう! そんな事ばかり言われてると私でも怒っちゃいますよ!

愛梨が怒る? 可愛いだろうなあ

何で年上の私が頭を撫でられているんでしょうか、ぷんぷんです!


293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:04:23 ID:GiDtJ1eI

何をやっている?



二人一緒に声が出て、同時に天井の明かりがつきました

イベントの打ち合わせに事務所に来たところで、メインが不在では進まん

統括、来てたんだ

おはようございます

凜ちゃんが降参のポーズなのか両手を上げました、黙って入った私も同罪です。

場所を変えるだけだ、別に撤去する訳じゃない

でも、この場所で見るのは今日まで

展示期間は昨日までだ

そこはほら、私達の特権

特権はそこから眺める事ではなく、ステージ上に立つことだ

いいじゃん、たまには。統括も来なよ


294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:05:06 ID:GiDtJ1eI

打ち合わせと言ったはずだ

少しだけだって

この前の少しは何分だったか覚えてるか?

5分くらいだったっけ?

8分だ

いいじゃんそれくらい

スポットライトに当たる私がいます、それを見つめている私もここにいます。

来年の私は、どこにいるんでしょうか。

十時、何か言ってやれ

もう少し、駄目ですか?

渋谷に毒されたか……

統括さんも私に目を向けます、一位と呼ばれた瞬間。私は絶対に忘れません。


295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/08(日) 02:05:50 ID:GiDtJ1eI

いつもはクールに私達を引っ張ってくれる貴方が一瞬だけ微笑んだのが見えたから

私は今日も頑張れるんです。

アイドルになってからの一年間、シンデレラになってからの一年間。

貴方と歩む次の一年は、どんな一年になるんでしょうか。

また、見せて下さいね

二度と見せん

酷いです、本当に見せてくれなかったら衣装合わせの時の事を皆に言っちゃいますから

……あれは忘れろと言ったはずだ

忘れませんよ、出会った時から全て

この先も、ですよね?

もういいだろう、行くぞ


298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:15:24 ID:Kse3ClHM

連作短編23 
杏「馬鹿であほで大嫌いな誰かさんのお話」

あの日、全てが無くなった。

声も出せず、ただ失われていく様を見届けるだけの。

哀れな人形だった。

杏「……ん」

P「よ、起きたか」

杏「起きたよ、馬鹿兄貴」

P「朝飯、食うか?」

杏「何?」

P「パンと牛乳」


299: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:15:57 ID:Kse3ClHM

杏「もう焼けてるんだ」

P「トーストだって偶に食べると美味いよな」

杏「焼くだけにしてはね」

P「さて、俺は出勤時間だ。行ってくる」

杏「行ってらっしゃい、帰りは?」

P「今日は早い、夕飯も一緒に食えそうだ。仕事は午後からだっけ?」

杏「だから寝る」

P「はいはい」

杏「……寝れないなあ」


300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:16:27 ID:Kse3ClHM

泉「プロデューサー」

P「おはよ、その後の調子はどう?」

泉「お陰様で、順調です」

P「そっか、それは何より」

泉「それで、その」

P「まだ何か?」

泉「ど、どうぞ」

P「……俺に? 女Pさんじゃなくて?」

泉「女Pに作ったら余ってしまいましたので」

P「なら遠慮なく頂くよ、昼ごはんどうしようかって思ってたから」

泉「ささやかなお礼です、それでは失礼します」

P「こういうの作るタイプだったのか、楽しみだな」


301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:17:01 ID:Kse3ClHM

先P「朝から妬けるねえ」

P「何を言ってるんですか」

先P「アイドルから弁当なんてファンが知ったら暴動が起きるぞ」

P「それを言ったら俺は命が何個あっても足りませんね」

先P「確かに。さて、今日は外回りだ」

P「こっちの分まで取ってきて下さいね」

先P「人の世話まで見る余裕はないね」

P「ですよね。さて、俺も出るか」


302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:17:37 ID:Kse3ClHM

莉嘉「次はこっちー!」

ありす「分かってますから引っ張らないで下さい!」

P「一緒に走ってきたら?」

桃華「私はここで一緒に眺めていた方が楽しいですわ」

P「次世代のトップアイドル特集か、ごめんなこんな仕事させちゃって」

桃華「そういった目で見られる事は仕方のないことですわ」

P「達観してるなあ」

桃華「焦りや不安もありますわ。ですが、ここの事務所には優秀な方が揃っていますので。
   次の時代とやらが来るのを待たずとも、上へ行けると信じていますわ」

P「お褒めの言葉どうも」

桃華「社交辞令ではありません」

P「その手は?」

桃華「あら、レディが手を出したらエスコートするのは紳士の役目でしてよ」

P「なるほど、では」


303: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:18:09 ID:Kse3ClHM

ありす「何をさせているんですか」

桃華「その姿に嫉妬は似合いませんわ」

ありす「そんなんじゃありません!」

P「ほら」

ありす「……ちゃんと握って下さ――」

莉嘉「かっこいー! アタシもしてーっ!!」

P「って、ちょっと待った!」

ありす「……」

桃華「残念でしたわね」

ありす「……別に思ってない」


304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:18:55 ID:Kse3ClHM

P「やれやれ、ようやくお弁当だ」

千枝「Pさんご飯ですか?」

P「レッスン終わりか?」

千枝「はい、一緒に食べましょう」

P「相変わらず美味しそうな弁当だな」

千枝「食べますか?」

P「いや、今日はあるんだ」

千枝「お弁当……」

P「さーて中身は」

千枝「お好み焼き?」

P「ああ、何となく誰の発想かは読めた」

千枝「Pさん、誰かから貰ったんですか?」

P「朝にちょっとね」


305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:19:33 ID:Kse3ClHM

千枝「ニューウェーブさん!」

P「当たり、でもユニット名にさんを付ける必要はないからな」

千枝「夜の特別レッスンで色々と教え込んだって聞きました」

P「何だろう、俺の心が澱んでるのかな」

千枝「千枝にも夜のレッスンして下さい!」

P「普通のレッスンだからな!」

千枝「はい!」

P「いい返事だよ本当に」

千枝「聖來さんもあんまり放っておくと怒っちゃいますからね」

P「放っておいてる訳じゃないが、何で返事もくれないんだろう」

千枝「行きましょう」

P「どこに?」

千枝「聖來さんの部屋です」

P「いやいや、いるとは限らないだろ」

千枝「います、朝に確認しました」


306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:20:29 ID:Kse3ClHM

P「今は?」

千枝「……います!」

P「その間は何だよ」

千枝「時間ありますか?」

P「そうだな、行ってみるか。それでいなくても姿勢だけは見せておかないと」

千枝「でも、どうしたんでしょうね?」

P「実は原因に心当たりはある」

千枝「そうなんですか?」

P「ちょっと」

千枝「なら、やっぱり話すべきです」

P「だからいるといいんだけどな」

千枝「えっと、この部屋です」

P「聖來さん! Pですいますか!」

千枝「音もしませんね」


307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:22:06 ID:Kse3ClHM

P「うーん、もういないかな」

春菜「Pさん?」

P「ごめん、立ち入っていい場所じゃないってのは理解してるんだけど」

春菜「いえ、聖來さんですよね?」

P「そういうこと、時間作ってきたけど出直しかな」

春菜「入りますか?」

P「流石にそれは不味い、緊急でもないし仕事をさぼってる訳でもないんだから」

千枝「でも不安です」

春菜「難しいですね、どうしてしまったのか」

P「悪かったな休みのところ、今日は……開いたな」

千枝「鍵、掛かってなかったんですね」

春菜「寮ですからあんまり気にしない人もいますからね」

P「聖來さんもこういうところあるんだな、開けてても悪いしさっさと閉めよう」

千枝「何か飛んできましたよ?」


308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:22:42 ID:Kse3ClHM

P「新聞記事か、何か集めてるのかな」

春菜「えっと、2年前ですね。芸能事務所で火災発生、死者2名重傷1名軽傷1名」

千枝「火事ですか?」

P「……ああ、まあ調べるよな」

千枝「Pさん?」

春菜「あの、大丈夫ですか?」

P「とりあえず戻しておこう、俺はちょっと用ができた」

千枝「Pさん!?」

春菜「何だか急いで行ってしまいましたけど」

千枝「入っちゃいましょう」

春菜「部屋の中に?」

千枝「謝るのは後でもできますけど、入れるチャンスは今日だけかもしれません」

春菜「……共犯ですか」

千枝「ここで入らなかったら、後でずっと後悔すると思いますから」


309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:23:12 ID:Kse3ClHM

P「聖來さん、出てくれないかな」

聖來「ごめんねPくん、この電話は出れないよ。やっとここまで来たから、聞いてみないとね」

P「駄目か。多分、行くとすれば」

聖來「真実ってやつをさ」

杏「……ん、客? いいや、居留守で」

「すいませーん、いませんか?」

杏「いないよ、さっさと諦めて帰るんだね」

「双葉さんいませんか?」

杏「だからいないって」

「双葉杏さんいませんか?」

杏「名前まで? 事務所の人?」

「水木聖來だけど、いない?」

杏「……何でまた、仕方ないなあ」


310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:24:53 ID:Kse3ClHM

聖來「やっと出てくれた」

杏「何の用?」

聖來「入ってもいいかな、お話がしたいんだ」

杏「まあ、いいけど」

聖來「思ったよりあっさり入れてくれたね」

杏「渋谷凛が動いたのは知ってるから」

聖來「Pくんに聞いたの?」

杏「よく調べたね」

聖來「色々と事情を知ってる人が多くて、この事務所」

杏「まゆかな」

聖來「何だ、分かってるんだ」

杏「統括だったら態度は変えたけどね」


311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:26:48 ID:Kse3ClHM

聖來「アタシは凛とまゆちゃんからしか情報を得てない」

杏「その二人から聞いてるなら充分だよ、私から言うことなんて何もない」

聖來「その二人の間で矛盾があったとしても?」

杏「食い違ってるの?」

聖來「Pくん絡みでね」

杏「あいつの事なんて気にしたって無駄だよ」

聖來「そうも言ってられないから、こうしてここに来たの」

杏「どこが食い違ったの?」

聖來「Pくんってさ」

杏「うん」

聖來「もうアイドルには戻れない体なの?」

杏「そっか、凛は知らないんだ」

聖來「じゃあやっぱり」

杏「無理だよ、動けてるだけで奇跡」


312: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:27:26 ID:Kse3ClHM

聖來「踊るのも?」

杏「奈緒たちを見てる時、あいつ家に帰ってからずっと痛みに耐えてたよ」

聖來「そっか……無理させちゃったか」

杏「本人が好きでやったんだから気にしなくていいって」

聖來「歌も?」

杏「何か一から話すのもめんどくさいね、ちょっと長くなるけどいい?」

聖來「うん、話せる範囲で構わないから」

杏「あの日さ、普通に学校に行って授業受けて教室でだらーんとしてたんだ」

聖來「普通の学生だったの?」

杏「その頃はね。それで下校間際になって放送で呼び出されて、職員室に行って知った」

聖來「巻き込まれたとかじゃなかったんだ、よかった」

杏「事務所が燃えて、両親とお兄さんが病院に運び込まれてるからって。それだけ聞かされて車に乗せられて病院に行ってさ」

聖來「うん」


313: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:28:32 ID:Kse3ClHM

杏「まあ、察しの通り。呆然としてるまゆと意識不明の馬鹿がいた」

聖來「……そっか」

杏「親は歯型だけが判別の材料だった、何も残らなかったら火葬する手間は省けたけど」

聖來「一人で手続きしたの?」

杏「親戚とか、後はまあ関係者。追い詰めた罪悪感とかあったんじゃない?」

聖來「まゆちゃん、私のせいですって言ってたけど」

杏「それはあれだよ、事務所内にまゆがいてそれを助けるためにってあの馬鹿は突っ込んだみたい」

聖來「それって」

杏「そうだね、いなかったらあいつはアイドル続けてたかもね」

聖來「凛は、できれば戻って欲しいって言ってた。アイドルに戻らないのは罪の意識があるからなんじゃないかって」

杏「それもあるかもね、でも無理だよ。医者が不可能と言ったし、させたくない」

聖來「統括が何を望んでるとかも知ってるんだよね?」

杏「妹でしょ、はっきり言うけど私には関係ないよ。あいつはそう思ってないみたいだけど」

聖來「恨んでる?」


314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:30:20 ID:Kse3ClHM

杏「別に、遅かれ早かれああなったんだと思うし。努力とか全て意味ないって分かっただけでも収穫だよ」

聖來「ねえ、どうすればいいのかな?」

杏「なるようにしかならないでしょ。そのライブで都合よく妹が目覚めたって、あいつの体が元に戻る訳じゃない」

聖來「そうだね」

杏「勝手に巻き込んできてるだけだよ、それに付き合ってあげてるあいつは馬鹿。それだけ」

聖來「ねえ」

杏「んー?」

聖來「何でアイドルになろうと思ったの?」

杏「……さあ、思い出すのもめんどくさい」

聖來「アタシをプロデュースするのもきついのかなあ」


315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:30:57 ID:Kse3ClHM

杏「そうでもないんじゃない、教える事ないって言ってたし」

聖來「はは、そう言ってもらえると助かる」

杏「他に何かある?」

聖來「ううん、いやな話させちゃってごめんね」

杏「いいよ、必要なんでしょ?」

聖來「そうだね、長居しても邪魔だろうから失礼するよ」

杏「どうするのさ」

聖來「やるだけやってみるよ、凛をあのままにもしておけないから」

杏「ふうん、まあ頑張って」

聖來「ありがと、本当に。それじゃまたね」

杏「……頑張るなあ」


316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:34:02 ID:Kse3ClHM

P「メール? 聖來さんか……駅まで来て? 何でまた」

凛「えっと、聖來さんは……どうしたんだろう、急に用なんて」

P「ここか、さてどこに……」

凛「……」

P「お、お疲れ様」

凛「う、うん」

P「あー、仕事?」

凛「それはもう終わって、人を待ってるんだけど」

P「そっか、俺も人を待っててさ」

凛「……」

P「……」

凛「……」

P「……」

凛「えっと、未央と卯月が首を突っ込んだって聞いたけど」


317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:34:35 ID:Kse3ClHM

P「ニューウェーブの時の?」

凛「そう、ごめん。邪魔しちゃったかな」

P「いや、助かったから。俺がお礼を言う立場だよ」

凛「ならいいんだ、よかった」

P「ああ、気にしなくていいから」

凛「……」

P「……」

凛 P「聖來さんまだかな」

凛「え?」

P「そういう事かよあの人!」

聖來「頑張れ、凛。さーて、どこで時間潰そうかなあ」


318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:36:36 ID:Kse3ClHM

P「あー、ちょっとメール見せてもらえる?」

凛「これだけど、一緒?」

P「一字一句同じだな。仲いいんだね、一緒に散歩してるとは聞いてたけど」

凛「犬、飼ってるんだ。ハナコっていうんだけど、聖來さんも可愛がってくれて」

P「やっぱり名前付けるよね?」

凛「聖來さんの犬?」

P「そう」

凛「わんこだもんね、わんこ」

P「俺は人って名づけられたら自分の命の在り方を考える」

凛「花屋がハナコって名づけるのは?」

P「え、そっから?」

凛「何か思いつかなくて」


319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:39:35 ID:Kse3ClHM

P「まあ、珍しすぎても苦労するから」

凛「そうなのかな」

P「俺もそんなに珍しくもないから考えたことなかったんだけど、苦労する子もいるみたいで」

凛「時間、大丈夫?」

P「まあ、この為に作ってきたから拍子抜けしてるというか。渋谷さんは?」

凛「似たようなものかな」

P「ここにいても仕方ないよな、どうするかな」

凛「じゃあ、ちょっとついてきくれない?」

P「ああ、構わないが」

凛「すぐそこだから」

P「アイドルの実家、パートスリー」

凛「噂どおりプレイボーイなんだ?」

P「プレイボーイって……」


320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:40:26 ID:Kse3ClHM

凛「冗談、連れてくるからちょっと待ってて」

P「何で上機嫌なんだろうあの子……」

凛「お待たせ」

P「その子がハナコ?」

凛「うん、折角だし」

P「付き合う、聞きたい事もあるし」

凛「聖來さんに話したかって?」

P「そう」

凛「話したよ、プロデューサーに話す前の日に」

P「忙しい割にそういう暇はあるんだな」

凛「毎日アイドルやってる訳じゃないから、そういう日もあるってだけ」


321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:41:08 ID:Kse3ClHM

P「渋谷さんが奈緒たちに会ったって聖來さん知らないの?」

凛「知ってるんじゃないかな、話すって伝えたし」

P「しかし、あんな記事まで手に入れてるとはね。焦ったよ、調べたの?」

凛「記事?」

P「ほら、二年前の事務所の火災の記事。聖來さんの部屋から出てきたんだ、あ、別にわざと見ようとした訳じゃないからな」

凛「何の事?」

P「えーっと、まさかとは思うが」

凛「そういう事があったのはニュースとかで調べたけど、記事なんて知らないし渡してない」

P「島村さんや本田さんの可能性は?」

凛「あの二人は私以上の情報は知らないはず」

P「なーるほど、つまり他に教えたのがいるってことか」

凛「他に知ってる人いるの?」


322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:42:29 ID:Kse3ClHM

P「いる、少なくとも二人」

凛「二人もいるんだ」

P「当事者だからな、その時の状況に限るなら俺以上に詳しい」

凛「関係者?」

P「そういう事だが、二人ともそろそろ仕事だな。一人はすぐに終わるが、もう一人はちょっと長丁場か」

凛「仕事してるんだ」

P「渋谷さんと同じ仕事をね」

凛「まさか、アイドル?」

P「ご名答」

凛「その二人の内のどちらかが聖來さんに何らかの情報を教えてるって理解でいい?」

P「可能性は高い、統括がするとは思えないし」

凛「何の為に?」

P「教えて何らかのメリットが得られると判断したからだろう」


323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:44:01 ID:Kse3ClHM

凛「その人達も彼女のことは知ってるんだよね」

P「どうだろう、俺の知らなかった事を知ってるとは思えないけど。もしかしたらという可能性もあるんだよなあ」

凛「会える?」

P「可能性の高い方は、終りまでまだ掛かる。待てるか?」

凛「低い方は?」

P「低い方は焦らなくてもなあ、ってかあんまり行きたくない」

凛「遠いの?」

P「遠いっていうか」

凛「うん」

P「俺の家に来るか?」

凛「え? いや駄目だよ……まだ早いし」

P「そういう意味じゃねえよ!!」


324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:45:31 ID:Kse3ClHM

凛「お、お邪魔します」

P「アイドルを家に上げるのって初めてなんだが」

凛「でも誰かにばれても説明楽だよ、友達の家ってことにすればいいんだし」

P「杏と事務所で会話したことは?」

凛「少しだけ」

P「だろうね、お茶でも出すよ。座ってて」

凛「何か、思ったより綺麗」

P「掃除しないとあっという間に汚れてくから、気は使ってる」

凛「掃除するんだ」

P「家事は昔からしてたから、何かこれだとサボってるだけだな。仕事させてもらっていいか?」

凛「帰ってくるのはいつごろ?」


325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:47:09 ID:Kse3ClHM

P「後、二時間くらいか。一つ気づいた」

凛「何?」

P「誰かが来客用のカップ出してる」

凛「誰か来たんじゃないの?」

P「杏が誰かにお茶を出したって?」

凛「あり得ないね」

P「聖來さんじゃないだろうな」

凛「家とか教えたの?」

P「いや、でも知ろうと思えば方法はある」

凛「ちょっと情報を整理しない?」

P「そうだな、情報を共有しようか。お互いにまだ話してないこともあるだろ」


326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:48:20 ID:Kse3ClHM

凛「双葉杏が妹って本当?」

P「本当、もし嘘ならスキャンダルだ」

凛「二人でここに住んでるの?」

P「その通り」

凛「よく一緒の事務所にいるね」

P「先にあいつの方がいて、俺は知らずに入った。その頃は別々に住んでたから気付かなかったんだが、初めて見た時は心臓が止まるかと思った」

凛「それって、統括のこと知ってるってこと?」

P「分からない、けど聖來さんが来たと仮定するなら知っててもおかしくないな」

凛「もう一人っていうのも家族とか親戚?」

P「佐久間まゆっているだろ?」

凛「ああ、あの」

P「あんまり印象が良くなさそうだね」


327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:50:54 ID:Kse3ClHM

凛「そういうわけじゃない、ただ何というか」

P「俺がいた事務所に所属していた子なんだ」

凛「……統括それ知っててプロデュースしてるの?」

P「情けない話だけど、分からない。まゆが統括に入れ込んでるってのは聞いてるけど、実際はどうなんだ?」

凛「繰り返しになっちゃうけど、さっぱり。統括にはあからさまに態度を変えるから分かりやすいんだけど、統括はほら」

P「トレーナーさん?」

凛「うん、だから何というか」

P「気味が悪いと」

凛「そこまでは言わないけど」

P「顔に出てる」

凛「報われない恋なのになあって」


328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:51:51 ID:Kse3ClHM

P「ただ情報を流してるのはまゆの公算が高い。まゆが怪しいってよりは杏が自ら行動に出る可能性が低いってだけだけど」

凛「統括がまゆを動かしてるかもしれない」

P「想像の域を出ないな、最近は動きないのか?」

凛「私が見る限りは普通に仕事してる」

P「何が動いてるんだかさっぱりだな」

凛「……それ、アイドルだった頃の?」

P「あ、見つけられたか」

凛「あのさ、アイドルに戻りたいとか思わないの?」

P「いーや、全く」

凛「理由は?」

P「それより楽しい世界を知ったから」

凛「アイドルより?」

P「アイドルよりも」


329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:54:43 ID:Kse3ClHM

凛「一緒にステージに立ちたいって望んでも?」

P「その要望には沿えないな、残念ながら」

凛「私をこの世界に引きずり込んだ癖に身勝手」

P「デビューが二年遅かったな」

凛「この前、何でこのタイミングだったって聞いてきたよね?」

P「あの分かりやすい嘘な」

凛「ばれてた?」

P「奈緒達だって気づいてる、ばればれだ」

凛「本当は最後まで距離を置こうかなって思ってた、彼女がああなってるのに自分だけ近づくのも後ろめたいから」

P「それが変わったのか?」

凛「怖くなった、だから加蓮達に近づいて何となく様子を聞いたりして」

P「怖い? 俺が?」


330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:56:26 ID:Kse3ClHM

凛「どんどん周りを変えていくから、焦っちゃうよ。何だか置いてかれそうで」

P「先頭をひた走るアイドルが何を言ってんだか」

凛「プロデューサーになったって聞いて最初は失望したんだ、逃げたのかなって」

P「間違ってはないよ」

凛「それが加蓮達をあのレベルまで押し上げて、千枝や千秋さんを変えて」

P「過大評価だ」

凛「加蓮達を陰ながらサポートして、楓さんまで」

P「あの時、楓さんは気負いだって言ってたけど」

凛「対抗意識があったんだ、逃げたあいつには絶対に負けたくないって」

P「俺が見てるアイドルにも?」

凛「うん、それが何か圧倒されて情けなかった。二年もたって差が埋まってないんだよ?」


331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:57:56 ID:Kse3ClHM

P「いや、勝手に勝負されて勝手に負けたって思われてもな」

凛「このままだと今度のライブも同じ結果になるんじゃないかって、怖くなって確かめようと思った」

P「俺がプロデューサーとしてどうかって?」

凛「今でもこの人は私の目指すべき人なんだろうかって」

P「……あのなあ」

凛「たくさんのステージに立って、たくさんの観客の前で歌った。緊張もない、自然体でいられる様になって色んな仕事を経験して」

P「……」

凛「だから大丈夫だって思った。楓さん達が凄いんだ、あの人はもう過去だってそう言い聞かせて」

P「もう全て過去だよ」

凛「あの頃のままだよ、ずっと。私にはそう見える」

P「あの頃のままじゃない、気付かないかそう思いたがってるだけだ」

凛「できるなら、戻って欲しい」

P「……俺は」


332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 21:59:46 ID:Kse3ClHM

杏「ただいま」

凛「お帰り、ごめんねお邪魔しちゃって」

P「もうこんな時間か。なあ、今日もしかして」

杏「来たよ、多分想像通り」

P「じゃあやっぱり情報源は」

杏「まゆだね、何で今になってこんな事してるか知らないけどいい迷惑」

凛「迷惑?」

杏「杏にとってはの話、そこいい?」

凛「どうなろうと知ったことじゃないって言いたいの?」

P「杏、そこまでだ」

杏「そうだよ悪い?」

凛「……そうなんだ」


333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:00:47 ID:Kse3ClHM

杏「仕事、終わったの?」

P「いや、まだ」

杏「そう、会いに行くんだ」

P「まあな、知りたいから」

杏「行けばいいよ、後悔しないようにね」

P「何したって後悔はするさ」

杏「好きにすれば、ゲームでもして待ってる」

凛「行くよ、後悔しない為に。先に出てるね」


334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:03:33 ID:Kse3ClHM

P「……杏、さっきのは」

杏「全て知っても後悔しかないから。後で責められるのも嫌だしね、忠告だけはする」

P「それはもう、渋谷さんがどう受け止めるかだ」

杏「兄貴もだよ」

P「大丈夫、とっくの昔に受け止めたから」

杏「知ってたの?」

P「行ってくる」

杏「……しーらない」


335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:05:45 ID:Kse3ClHM

凛「出ちゃったね、まだ時間あるのに」

P「渋谷さん、あのさ」

凛「いいよ、返事なんて。ちょっと場の空気に押されちゃっただけ、おかしなこと言ってごめん」

P「……事務所まで歩くか」

凛「ハナコおいで。ごめんね、外で待たせちゃって。ふふ、よしよし」

P「そうやって見ると普通の女の子だな」

凛「普通の女の子じゃないアイドルなんているの?」

P「ニュージェネレーションは少し違って見えるよ」

凛「……ニュージェネレーションって何だろうって、思う時がある」

P「どういう意味?」

凛「アイドル増えたよね、ここ数年で一気に。765に始まって色んなプロダクションがアイドルを輩出してる中で、次の世代に求められるものって何だろう」

P「過去のアイドルを超える為に必要な何か、だろうな」


336: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:06:55 ID:Kse3ClHM

凛「今のトップアイドル達と私は年も変わらない。ダンスも歌も頑張ってるけど、上には上がいる」

P「分かりやすい目標ではあるな、そういう存在は」

凛「でも、超えたとしてもそれは世代の移り変わりなのかただ単に人気が逆転しただけなのか分からない」

P「誰がどんなタイミングで起こすか分からない、日高舞や765に続く波を起こすのは誰なのか。誰にもね」、

凛「私達がその世代に取り残されてたら笑い話だよね」

P「取り残されないよ、渋谷さんが時代に背を向けても時代が君を離さない」

凛「何それ」

P「プロデューサーとしての勘だけどね」

凛「まゆと話したとするでしょ?」

P「ああ」

凛「それでまゆが聖來さんに話したって分かったとする」

P「それで?」


337: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:08:43 ID:Kse3ClHM

凛「話す理由に心当たりある?」

P「仮に統括の指示でないなら、まゆ個人の意思がそこにあるんだろう」

凛「まゆってどんな子だったの?」

P「何をしても可愛いって言葉がよく当てはまる子だった、俺に対しても杏に対しても」

凛「仲が良かったんだ」

P「良い方だったと思うんだが、ここでは会話した事もないのが引っ掛かる」

凛「避けてた訳じゃないの?」

P「避けられてるんだろうとは思う」

凛「何かされたの?」

P「これは先に言っておくが、冷静に聞いてくれるか」

凛「何?」


338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:10:11 ID:Kse3ClHM

P「事務所で火災があったあの日、まゆは事務所にいたんだ」

凛「そうなんだ」

P「そこに戻ってきた俺は事務所に飛び込んで、まゆを助けて親を見つけてその場で意識失った」

凛「飛び込んだの?」

P「結果、全身に火傷を負って喉もやられた」

凛「それって」

P「先に言っておくが、俺がアイドルを辞めたのとこれは無関係だからな。身体が無事でも俺は
  アイドルを辞めてた、これは言っておく」

凛「そんなの分からない!!」

P「もう一つ、この件でまゆを責める様なら俺からの協力はないと思ってくれ」

凛「恨まないの?」

P「何でだよ、あの子も事務所を失ったんだ。それに多分、責任は充分過ぎるほど感じてる」

凛「統括に熱を上げてるのに」

P「そこから俺は疑ってるけどな」


339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:11:26 ID:Kse3ClHM

凛「そんな事をして何になるの?」

P「それを今から聞くんだよ」

凛「事務所に戻ったのって車を取るため?」

P「それと一応、今からまゆ迎えに行ってきますって報告。まゆには俺から伝えておきますって
  言ったから、逃げるとかはない」

凛「信頼してるわけじゃないんだ」

P「二年も話してないんだ、今がどうかは分からないよ」

凛「二年でプロデューサーは変わったの?」

P「変わったよ、変わりすぎて元の形に戻れなくなったくらいには」

凛「そんな風には見えない」

P「人間、変わるのはいつだって見えないところだよ」


340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:13:04 ID:Kse3ClHM

凛「まゆって今日は何をしてるの?」

P「ドラマらしい」

凛「ドラマか、あんまり好きじゃないな」

P「そう? いい演技してるけど」

凛「見たの?」

P「見たよ」

凛「よくそんな時間あるね」

P「全ては見てないけど、見ないと怒るアイドルもいるから」

凛「私は別に気にしないかな」

P「それに、営業先でそういう話をされた時に担当じゃないから知りませんとは言えないから」

凛「大変だね、今さらだけど」


341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:14:21 ID:Kse3ClHM

P「そうでもないよ、好きでやってる事だ」

凛「ここ?」

P「そう、少し待つかな。現場に行って動揺させたら悪い」

凛「私は行ってもいいよね?」

P「もちろん、俺はここにいるから」

凛「分かった、連れてくるから」

P「了解」

まゆ「はい、分かりました。失礼します、お疲れ様でした」

凛「今、終わったところ?」

まゆ「渋谷さん?」

凛「来ちゃったよ、迷惑だった?」

まゆ「いえ、アイドルに迎えに来てもらったのは初めてだなって思いまして」


342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:16:12 ID:Kse3ClHM

凛「いつも統括だもんね、たまにはこういうのもいいでしょ?」

まゆ「はい、でもどうやってここまで?」

凛「実は車に乗せてもらってきたんだ、誰だか分かる?」

まゆ「スタッフさんですか?」

凛「ううん、違う」

まゆ「では、どなたが?」

凛「どんな反応してくれるのかなってちょっとわくわくしてる」

まゆ「そんなに凄い方なんですか?」


343: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:17:01 ID:Kse3ClHM

凛「凄いよ、もう見える」

まゆ「あの車ですね」

凛「そう、ほら見えた」

まゆ「ふふふ、どんな方でしょ……」

凛「驚いてくれた?」

まゆ「……はい、とても」

凛「そういう事だから、乗ってもらえるかな」

P「久し振り、でもないか。顔は合わせてたんだから」

まゆ「……はい」

P「積もる話は色々とあるけど、聖來さんに話したのか?」


344: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:19:17 ID:Kse3ClHM

まゆ「水木さんがそう言っていたんですか?」

P「可能性の話、杏がすると思うか?」

まゆ「そうですね、杏さんはそういう人ですから」

P「全くな」

まゆ「理由ですか?」

P「そう、意味もなくしないだろ? まゆにとってもあまりいい記憶ではないだろうし」

まゆ「……どうしてPさんはいつもそうなんですか」

P「まゆ?」

まゆ「どうしていつもいつもそうやって!!」

P「落ち着け、どうした?」

まゆ「何でそうやって……何も言ってくれないんですか?」

凛「分かった」


345: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:20:16 ID:Kse3ClHM

P「渋谷さん?」

凛「何だ簡単だった、そっかそういう事か。だから私、まゆの事あんまり好きじゃなかったんだ」

まゆ「だから渋谷さんとは一緒にいたくありませんでした」

P「待った、二人だけで納得されても困る」

凛「まゆが聖來さんに話した理由、プロデューサーに構って欲しくなったからだよ」

P「は?」

凛「何か私と考え方が似てるね、似た者同士なのかな」

P「構うって、こんな遠回りな事しなくても」

凛「プロデューサーの身体を傷つけて平気な訳ない、けど素直に謝る事もできない」

P「渋谷さん、そこまでだ」

まゆ「続けて下さい」

凛「ご要望にお応えして続けるよ、だから――」

P「電話? まゆ、出てくれるか? 営業先の誰かなら折り返すと伝えてくれ」


346: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:21:02 ID:Kse3ClHM

まゆ「はい、すみませんこの電話は――」

杏「私」

まゆ「杏さん?」

凛「杏?」

P「なるほど、まゆが出るって分かってたか」

杏「この通話、ハンズフリーにしてくれる?」

P「そこに繋いでくれ」

凛「私にも用があるってこと?」

杏「本命だよ、前にいる二人に用はないから」

P「言ってくれるな」

杏「全て知ってるのに黙ってる方がよく言うよ」


347: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/18(水) 22:24:27 ID:Kse3ClHM

まゆ「Pさん?」

P「……さて、何を話すんだ?」

杏「いい加減、時間もないから。隠し事は無しにしようよ」

P「話すのか?」

杏「夢が終わった日、何があったか。凜、教えてあげるよ」

終わり 次回は23日、Pの過去話です


350: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:18:09 ID:1TebX10E

連作短編24
P「夢の終わり」

ステージの上では何もかもが輝いて

何もかもが笑顔で溢れていた

いつまでも続くと信じていた夢の様な世界は

夢の様に呆気なく終わった


351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:18:52 ID:1TebX10E

P「杏、学校だって!」

杏「もう少しで起きる」

P「それ5分前も聞いた」

杏「五分後も言うから」

P「それじゃ完全に遅刻だ」

杏「あーうー」

P「聞こえないふりをするな、今日は父さんも母さんもいない」

杏「そもそも義務教育なんてものは――」

P「日本の制度に文句を垂れる前に着替えろ」

杏「兄ちゃん今日は?」

P「オーディション、学校には連絡入れてる」


352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:19:24 ID:1TebX10E

杏「杏も行く」

P「何しに来るんだよ、目は覚めたか?」

杏「よくアイドルなんてやるよね」

P「杏はなりそうにないな」

杏「なる気ないよ、あー何でこんないい天気なんだ……」

P「いい事だろ、もう行くからな。ちゃんと行けよ」

杏「分かってるよ」

P「おはようございます」

スタッフ「おはよ、場所は分かってるよね?」

P「全て頭に叩き込んだから大丈夫だって、父さんは?」

スタッフ「午後からの予定、大事な会議があるから私達は昼で上がっていいんだって」

P「仕事、少なくなっちゃったもんな」


353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:20:11 ID:1TebX10E

スタッフ「Pがもっと上に行ったらまたあの頃みたいに戻れるよ」

P「うん、頑張ってくるよ」

まゆ「Pさん!」

P「まゆ、仕事か?」

まゆ「はい、今日は勝負の日ですね」

P「まあね、何とかできるなら何とかしたいなって思う」

まゆ「昨日も一人、移籍してしまいましたから」

P「ってことは、残ったのは」

まゆ「まゆだけです」

P「別にいいんだぞ、移籍しても。まゆなら他でもやっていける、またここが立ち直ったら戻ってこればいい」

まゆ「いえ、今日も待ってますから」

P「はあ、もったいないなあ」


354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:21:21 ID:1TebX10E

まゆ「Pさんなら大丈夫です、それまでずっと傍にいますから」

P「まゆは今日は?」

まゆ「午前中はお仕事です、昼から時間が空きますからその……」

スタッフ「じゃあ事務所においで、会場まで送ってあげる。見たいでしょ? Pくんの頑張ってるところ」

まゆ「大丈夫ですか?」

スタッフ「大丈夫、鍵は持ってるよね?」

まゆ「はい」

P「応援って、中には入れないぞ」

まゆ「外で待ってます」

P「あのなあ」

スタッフ「ほらほら、遅れるよ」

P「ああもう、行ってきます!」


355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:22:24 ID:1TebX10E

まゆ「あ」

P「ん?」

まゆ「これ、どうぞ」

P「お守りか、サンキュ。貰っとく」

まゆ「待ってますから」

P「おう、期待しとけ」

スタッフ「本当に、合格するといいね」

まゆ「……大丈夫です、Pさんですから」


356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:23:18 ID:1TebX10E

P「でっかいなあ。俺、本当に受けていいのかな?」

受付「お名前と所属事務所を」

P「ああはい、Pです所属事務所は○○プロダクションです」

受付「はい、どうぞ。大変だけど頑張ってね」

P「はは、ありがとうございます。受付の人にまで応援されたよ」

審査員「本日のオーディションの審査項目を配布します。一時間後から始めますので、それまで控室で待機していて下さい」

P「ダンスと歌。まあ妥当か、対策も済んでるし落ち着いてやるだけだな」

少女「あ、Pさん」

P「また会ったか、つけてるな?」

少女「つけてませーん、偶然ですー」

P「これに受かったらドラマのタイアップでCDが出せるし、主演の座も入ってくる。お互いに勝負だよなあ」


357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:23:59 ID:1TebX10E

少女「事務所、大丈夫ですか?」

P「今日の俺次第」

少女「良かったら、うちに来ませんか?」

P「気持ちはありがたいけど……」

少女「そういえば、プロダクションが一つできるって話ですよ」

P「へえ、アイドル事務所?」

少女「はい、シンデレラガールズだそうです」

P「ふうん、女性アイドルなら俺との競争はないかな」

少女「お兄ちゃんがそこに関わることになるみたいで教えてくれたんです、たくさん採用するからお前も来いって言われちゃって」

P「どうすんの?」

少女「どうしよう、Pさんが来てくれるなら今の事務所にいるんですけど」


358: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:25:15 ID:1TebX10E

P「残念ながら合格する可能性より低い」

少女「もう!」

P「ほら順番だぞ、行って来い」

少女「はーい」

P「やれやれ、相変わらずだな」

「あーあードーレーミーレードー、ちょっと音程ずれたかな?」

P「ちょっとじゃないだろ……何だあの子?」

「あ、これトイレのスリッパだ! 変えてこないと!」

P「……大丈夫かあの子」

係員「続いて、35番から39番までの方どうぞ」

P「えーっと、残ってるのは……」

「時間あるし、少しウォーミングアップあわっわああわあ!」


359: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:25:55 ID:1TebX10E

P「本当に何なんだよ……」

「いてててててて……」

P「少し落ち着いたらどうだ?」

「あはは、見られちゃった?」

P「見られちゃったも何も俺と君の二人しかいないんだけど」

「え!? 本当だ……って事は次!?」

P「行ったばかりだからもう少し時間はあると思う」

「慣れてるんだね」

P「まあ、もしかしてあんまり経験ないのか?」

「初めて、だったり。えへへへへ」

P「初めてで何でこのオーディションに」

「プロデューサーさんがここがいいだろうって」


360: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:26:30 ID:1TebX10E

P「へえ、まあ人の心配してる場合じゃないが」

「そうだ、名前は?」

P「P、アイドルやってる」

「私は天海春香、16歳の高校生!」

P「天海春香ね、覚えた」

春香「宜しくね」

P「まあ、本番で転ばないようにな」

春香「そこは私を信じなさい!」

P「いきなり会った人間に信じるも何も、ってかライバルだろう」

春香「あ、そっか。負けないからね」

P「はいはい」

春香「相手にしてない!?」

P「来たか」


361: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:27:27 ID:1TebX10E

係員「40番、41番の方どうぞ」

春香「ははははははははほい!」

P「宜しくお願いします。おい少し落ち着け、俺まで固くなる」

春香「ははは、うん何かもう真っ白」

P「あのなあ」

審査員「では、40番の方どうぞ」

P「はい」

審査員「君か、直前で申し訳ないがこちらから曲を指定してもいいか?」

P「ええ、それは大丈夫ですが」

審査員「直前で申し訳ないが、実は曲自体は既にできていてね」

P「では課題曲は」

審査員「君に限っては無しでいい、そういう事だ」


362: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:28:12 ID:1TebX10E

P「あの、そんな力うちの事務所にはないと思うんですけど」

審査員「せめてもの罪滅ぼしだ」

P「……分かりました、聞かせて頂けますか」

審査員「聞くといい、さて。41番さん」

春香「……」

審査員「おーい」

春香「……」

P「天海さん!」

春香「はい! 天海春香16歳です! 趣味はお菓子作りとかカラオケとか、トップアイドル目指してますので宜しくお願いします!」

P「……」

審査員「……」

春香「あ、あれ?」


363: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:29:34 ID:1TebX10E

P「何をやってんだか」

審査員「あーコホン、今の話は聞いていたかね?」

春香「今の話?」

審査員「聞いていないならいないで別にいいんだ」

春香「あ、曲が用意されてるんですか? 私も聞いていいんですよね?」

P「いやこれは」

春香「じゃあ、イヤホン半分こ」

P「プレイヤー使わなくてもパソコンから聞けばいいだろう」

春香「あ、そっか」

P「別に聞くのは構いませんよね?

審査員「構わんよ、小さい事務所だ。聞かれても問題ないさ」

P「では」

春香「わー凄くいい歌!」

P「気合入れましたね」


364: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:30:12 ID:1TebX10E

春香「これを今から歌えばいいんですね!」

P「ああ、そうだが一度聞いただけで」

春香「いきます!」

P「え」

審査員「ちょっと君!」

春香「えっと、どうでしょうか?」

審査員「……」

P「へえ……」


365: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:31:02 ID:1TebX10E

春香「良かった?」

P「下手」

春香「あ、やっぱり……あははははは」

審査員「確かに技術面はまだまだだな」

P「でも、いいと思った」

春香「下手なのに?」

P「上手ければいいってもんじゃない、次いいですか?」

審査員「ああ」

P「では、始めます」


366: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:33:26 ID:1TebX10E

春香「ほわーすっごい」

審査員「分かってて歌ったか」

P「そうですね、自分の歌の欠点も分かりましたから」

春香「え? 上手だったよ、千早ちゃんみたい」

P「ちはやちゃん?」

春香「うん、一緒にアイドルしてるんだ。すっごく歌が上手いんだよ」

P「俺と本当にそっくりなら、その子はただ上手いだけだな」

春香「そんなことないよ!」

P「一次審査は終わりだ、いつまでもいないで引っ込むぞ」

春香「ひ、引っ張らないでよ」

少女「通った!」

P「俺も通って」

春香「通ったよ!」


367: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:34:05 ID:1TebX10E

P「奇跡」

春香「本当だよ、もう何も覚えてない」

少女「凄いね、初めてなのに」

P「……残ったのは6名か」

少女「順番的には私達が最後かな」

P「この中の誰が受かるんだろうな」

少女「悔いの残らない様に頑張ろっかー」

P「全くだ」

係員「それでは、残りの三名入って来て下さい」


368: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:34:36 ID:1TebX10E

春香「スタートだ」

P「どんなゴールなんだろうな」

少女「そうだね、でも最後まで……」

P「最後まで?」

少女「走り続けるって決めたから、ほら置いてっちゃうよ」

P「待てって、あ」

少女「落としたよ、お守り?」

P「ああ、ちゃんと持っておかないとな」

審査員「曲は課題曲を一曲、自由曲を一曲。6名の中で1名が合格、何か質問は?」

P「いえ」

審査員「最初は、32番」

少女「はい、よろしくお願いします」


369: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:35:57 ID:1TebX10E

春香「綺麗だね」

P「褒めてどうする」

春香「綺麗だもん」

P「頑張るさ、トップアイドルになりたいのは誰だって同じだ」

春香「何でなりたいの?」

P「見たいから」

春香「見たい?」

P「一番上から見た景色はどんなだろうって」

春香「へえ」

P「まあ、期待してくれる人もいるから」

春香「合格、決まってるんだね」

P「……聞いてたか」


370: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:37:22 ID:1TebX10E

春香「ああ反応した方がいいかなって、だから歌っちゃった」

P「あの歌?」

春香「だって、あそこで逃したらもう歌えないんだって思ったら歌いたくなっちゃって」

P「まだ決まった訳じゃないと思う」

春香「そうかな?」

P「その可能性は感じた、行ってくる」

少女「頑張って」

P「分かってる」

審査員「では……40番」

P「はい」

少女「凄いでしょ?」

春香「うん、何か凄い迫力」

少女「実は私、ファンなんだ」


371: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:39:15 ID:1TebX10E

春香「ファン?」

少女「うん、憧れてアイドルになった」

春香「分かるよ」

少女「本当?」

春香「私も憧れてる人がいて、だからこの世界に入ったんだ」

少女「家族には反対されたけど、それでも私の人生だからって思って」

春香「うん」

少女「だから、もう悔いもないなって」

春香「え?」

少女「出番だよ、応援してる」

春香「あ、うん」


372: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:40:17 ID:1TebX10E

P「何を話してたんだ?」

少女「何でも」

P「さて、天海春香か」

少女「気になる?」

P「まあ、面白いとは思う」

少女「やっぱり、何かあったの?」

P「歌を聞いて、下手だと思った」

少女「あはは、まあ偶にいるよねそういう子」

P「だけどもっと聞きたいって思ったんだ、何故か」

少女「下手なのに?」

P「初めての感覚で戸惑った、けどダンスも同じなら」

少女「本物のアイドルなのかもね、彼女」


373: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:40:54 ID:1TebX10E

P「かもしれない」

少女「伝説の始まりだったりして」

P「それならそれで生き証人だな」

春香「天海春香、宜しくお願いします!」

P「……」

少女「……」

審査員「……」

春香「はあっ、はあっ」

少女「Pさん」

P「事務所をどうにかしたいなんて思って来た俺との差なのかな」

少女「そんなことない、Pさんの方が上手だった」

P「それでも、主役は彼女だよ」

少女「今回だけだよ」

P「いや、何となく分かった。終わりかな……結果出るまで外にいる」


374: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:41:49 ID:1TebX10E

少女「Pさん……」

P「あーあ、アイドルか……はい、Pです」

スタッフ「Pくん! 今どこ!?」

P「どこって、会場にいますけど」

スタッフ「戻ってこれる!?」

P「戻ってって、何かあったんですか?」

スタッフ「事務所が燃えてる!」

P「……そうですか、戻ります」


375: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:42:22 ID:1TebX10E

審査員「Pは?」

少女「分かりません、さっきから姿も見えてなくて」

審査員「それなりの役は用意するつもりでいるんだが」

少女「あの、じゃあやっぱり」

審査員「一人の力ではどうしようもない、それに彼が納得しないだろう」

少女「そう、ですよね」

審査員「だからといってあの事務所がどうなる訳でもない、やり過ぎた面もあった。
    記事も掲載は見送られたし、これからやり直せばいい」

少女「彼ならもっと上へ行けます」

審査員「ああ、さて結果発表だ。行こうか」

少女「はい!」


376: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:46:10 ID:1TebX10E

P「誰かに連絡は取れてますか?」

スタッフ「それで社長に連絡取ってるんだけど、繋がらなくて」

P「消化はいつから?」

スタッフ「10分前から、でも全く駄目で」

P「分かりました、大丈夫ですよ。燃えてるだけですって」

スタッフ「追い込まれちゃったのかな、何もできなかった」

P「……まゆは?」

スタッフ「どこだろう?」

P「確か仕事の後に」

スタッフ「戻ってくるって約束して、その後は普通に送り出して」

P「スタッフさん、そういえばよく逃げれましたね」

スタッフ「裏口に誰か来たみたいだから見に行ってたの」

P「どこで?」

スタッフ「裏口、こっちがインターフォンで答えても何も答えないからどうしたんだろって見に行ったら」


377: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:47:18 ID:1TebX10E

P「そういう事ですか……」

スタッフ「連絡取れないと不安よね」

P「大丈夫ですよ、放火される心当たりなんていくらでもありますから。寧ろこれくらいされた方が0からのスタートって割り切れます」

スタッフ「色んな子に連絡取ってみる、ニュース見て心配してるかもしれないから」

P「連絡いったから、かな。ごめん、ごめんな杏」

Pさん!

P「誰だ?」

「Pさん!」

P「声? でもどこから――」

まゆ「Pさん!」

P「まゆ!?」

まゆ「Pさん、それ以上は近づいたら駄目です!」

P「いや……何やってるんだ……」


378: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:48:33 ID:1TebX10E

まゆ「お仕事終わって、誰もいなくて部屋で待ってたんです! それで――」

P「火が……まゆ!? まゆ!! 返事しろ!! 部屋って表からはもう入れない……まだこっちからなら!」

スタッフ「一通り連絡はついたかな、あれ? ……Pくん?」

P「煙が……ぐっ! はあ……どこだまゆ!?」

まゆ「……」

P「まゆ!? 気を失って……だけどこれなら、軽くて助かるよ」

まゆ「P……さん……」

P「ここにいるって、さて出口だ」

まゆ「だめです……来たら……来たら」

P「まだ裏口からなら!! 裏口は……くそっ! ならどっかの部屋の窓から……よしこの部屋からなら」

まゆ「はあ……はあ……」

P「まゆ、ちょっと走るぞ。振り落とされるなよ! よし開いた!! 開い……た……」


379: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:52:57 ID:1TebX10E

父「」

母「」

P「父さん!? 母さんも何やって早く逃げ……逃げない……と」

消防隊「残ってる人はいますか!? いたら返事して下さい!!」

P「何やってんだよ……なあ、何でこんな……まだ、まだこれからだろ……?」

消防隊「誰もいませんか!?」

P「はは、あははははははははははは!!」

ステージの上では何もかもが輝いて

何もかもが笑顔で溢れていた

いつまでも続くと信じていた夢の様な世界は

夢の様に呆気なく終わった


380: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:53:34 ID:1TebX10E

杏「……いたんだ」

まゆ「……」

杏「まだ起きないって、ここで待ってても無駄」

まゆ「私の責任ですから」

杏「私なんて似合わないよ」

まゆ「私のせいです」

杏「遅かれ早かれこうなってたんじゃない、だからさ」

まゆ「いえ、起きるまで――」

杏「出てけよ!」

まゆ「あ……」

杏「自覚あるなら……今すぐ出てけ!」

まゆ「……ごめんなさい」


381: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:54:15 ID:1TebX10E

杏「……いつまで寝てるのさ。いつも起きたくないのに起こしてくるんだから、さっさと自分で起きてよ」

少女「あの」

杏「うん? こいつに面会?」

少女「その、病院の人に聞いて」

杏「見ての通り、寝てるよ。部屋の中で意識不明で倒れてた所を消防隊の人に発見された」

少女「当分は入院なんだ……」

杏「そうだね、少なくとも一か月は」

少女「せっかくいい役貰えたのに」

杏「断ったよ」

少女「そうだよね、間に合わないもんね」


382: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:55:05 ID:1TebX10E

杏「間に合わなかった」

少女「どれくらい掛かりそう?」

杏「もうずっと間に合わない、アイドルとしてステージに立つ日は来ない」

少女「そんなに……酷いの?」

杏「無理して飛び込むから、至る所に火傷を負って……それだけならいいのに、喉もやられちゃったんだってさ」

少女「じゃあ……」

杏「目覚めた時、声が出るかも分からない。アイドルとしては完全に死んだんだよ」

少女「……」

杏「落ちた連絡が親にいって、それ聞いて火を付けたんだってさ。馬鹿だよね」

少女「……」

杏「ねえ教えて欲しいんだけど」

少女「な、何?」


383: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:56:21 ID:1TebX10E

杏「受かったの、誰?」

少女「聞いてどうするの?」

杏「人の人生を滅茶苦茶にした人の名前くらい知っとこうかなって」

少女「直に分かる、そのドラマの制作発表は予定通り行われるから」

杏「そっか、なら頑張らないと」

少女「頑張るって?」

杏「ねえ」

少女「……うん」

杏「私でも入れそうな事務所、どこか紹介してくれない?」

少女「分かった、いいよ。けど一つ条件がある」

杏「何でもいいよ」


384: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:57:23 ID:1TebX10E

少女「私、長くないって教えたよね」

杏「病気だったっけ、家族にも伝えてないんでしょ?」

少女「この意識はもう一年持つか分からない、明日にでも倒れるかもしれない」

杏「それを承知で続けてきたんでしょ、こいつに憧れたから」

少女「うん、だから……もし私が倒れちゃったら」

杏「うん」

少女「もし倒れたら、私の代わりに――」
――

杏「花、今日も変わってる」

まゆ「凜さんですよ」

杏「来てたんだ」

まゆ「頼まれてしまいましたから、貴方に」


385: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:58:04 ID:1TebX10E

杏「凜が兄貴と接触したよ」

まゆ「はい、聖來さんも知ったようです」

杏「仙台にまで行って医者を探してたのは驚いたけど、治るの?」

まゆ「それはもう、彼女次第としか」

杏「ばれたらアイドル辞めさせられるって隠し続けて、結果がこれじゃ誰も浮かばれないよね」

まゆ「統括さんは今もまだ、彼に対しての態度を決めかねてます」

杏「嫌いだよね、アイドルやってなければ後10年は普通に生活できたんだから」

まゆ「それでも、私はできる事をするだけです」

杏「あいつがプロデューサーになるって言い出したのも驚いた、うちに来たのも驚いた。分かってるのかな?」

まゆ「さあ、どうでしょうか? 勘のいい人ですから」

杏「まあ約束通り事務所は紹介してくれたし、そろそろ私も叶えてあげないとね」

まゆ「あの約束ですか?」


386: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:58:38 ID:1TebX10E

杏「事務所に入る条件だったし、そろそろいいかなって」

まゆ「私には――」

杏「ねえ」

まゆ「はい?」

杏「まだあいつのこと好き?」

まゆ「……はい、愛しています」

杏「そっか、違うって言ったらぶっ飛ばすところだった。じゃあまたね」

まゆ「……兄妹揃って、狡いんですから」


387: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 14:59:32 ID:1TebX10E

統括「ああ、それは別にいい。次のライブの調整は」

杏「お久しぶり、病院の前でも仕事なんて精が出るね」

統括「お前か、互いに顔も見たくないはずだが」

杏「そうだね、でも無干渉って訳にもいかないよ。そのライブ、それなりに意味があるんでしょ」

統括「治療にも限度がある」

杏「二年だもんね、杏も寝るのは丸二日が限界」

統括「お前も大概だ」

杏「皮肉でも褒めてくれるんだ、意外」

統括「出る出ないは好きにしろ」

杏「出るよ」

統括「雨でも降るのか?」

杏「彼女が目覚める事はない、あいつもステージには立てない。それは変わんない」

統括「……そんな事は分かっている」

杏「そこは同情する、そこだけ」


388: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:00:12 ID:1TebX10E

統括「次のライブの終了と同時に延命措置は終えるつもりだ」

杏「なら、ラストチャンスってこと?」

統括「お前にできるのか?」

杏「分からない、でも約束だから」


389: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:00:53 ID:1TebX10E

――


まゆ「……」

P「延命措置、終えるのか」

杏「やっぱり知ってた」

P「一応、俺も出してたから」

杏「統括を通じて?」

P「いや、高木さんを通して」

杏「そっか、で本題だけど」

凛「知らないとでも思った? 今度のライブの意味は私も知ってるよ」

杏「そんな事を聞きたいんじゃないんだよ、覚悟の問題」

凛「覚悟? できてるよ」

杏「それは死を受け止める覚悟で会って、私が欲しい覚悟じゃない」


390: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/12/23(月) 15:02:15 ID:1TebX10E

凛「さっきから何が言いたいの?」

杏「考えなよ、少なくともそんな考え方しかできないならステージに立つ意味がない」

凛「それは杏が決める事じゃない、私が決める」

杏「終わらせる為に歌うの?」

凛「そうだよ、ニュージェネレーションはその為の――」

杏「意味ないよ、そんな腐ったアイドル」

P「杏、やめろ」

杏「やめたら話した意味がない、だから言うんだ。考えなよ、彼女がどうして凜に何も言わずに去ったか。
  統括はどうして凜にニュージェネレーションっていうユニットを与えたのか」

凛「……」

杏「それが分からないなら、ステージには立たない方がマシだよ」
終わり 次回30日


転載元:ありす「心に咲いた花」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1383562133/


次回→中編






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