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トップページモバマス > 【安価】モバマス 桃華と早耶

5: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/17(水)23:45:40 ID:k1y.19.pj

4月も中旬になり、桜の花も終わるころ、担当アイドルである桃華に一つ提案された。

「Pちゃま。お花見をしませんか?」と、いつもの優雅な笑顔と共に桃華が言う。

今日は午前中で付き添う仕事も終わるし、午後も軽いデスクワークがあるだけなので、ここは桃華の提案に乗ろうと返事をした。

「今年は花見が出来なかったし、喜んで付き合うよ」

だいぶ葉っぱが目立つようになってきたけれど、逆に考えればゆっくりと花見をできるだろうし、騒がしくないのは良いかもしれない思ったからだ。

「よかったです。それと、もう一つお願いがあるのですが……」

何故だか歯切れが良くない。俯き、声が少し上ずっている。

「桃華らしくないな。言ってごらんよ」

俺の言葉にようやく決心したのか、桃華が顔を上げ、ゆっくりと口を開いた。

「お腹を空かせておいてほしいんですの」


6: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/17(水)23:54:29 ID:k1y.19.pj

真面目な表情をしてそんなことを言うものだから、俺はついつい噴き出してしまった。

「もう! Pちゃまは酷い方です。わたくしが勇気を出してせっかく切り出したのに……」

瞳を潤ませ、顔を赤くして抗議するその姿は年相応なもので、桃華の頭に手を乗せて正直に謝ることにした。

「ごめん。桃華が可愛い事いうものだからついつい。ちゃんとお腹を空かせておくから安心して」

「そうやっていつも子供扱いするんですから……でも、これはこれで悪くないですわ」

子猫のように手に頭を擦りつけながら、鈴のような声の桃華に安心した俺は少し強引に髪の毛の感触を楽しみつつ。

「よし、それじゃあ収録を一発で終わらせるとしようか」

「もちろんですわ」

力強い返事をする桃華を連れて、スタジオへと向かうことにした。


7: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:02:54 ID:VsV.wk.iw

「……驚いたな、まさか本当にミスなしで終わらせるなんて」

「わたくしの力をもってすれば、このとおりですわ……と言いたいところですが、今日はPちゃまが見てくださいましたし、良いところを見せたいというのが本心です」

こういうセリフは本当にずるくて、とても嬉しい。プロデューサー冥利というか、そんなこと言われたらもっと頑張りたくなる。

「そんなこと言う子にはこうだ!」

「やめてくださいまし。髪が乱れます」

なんてことを言われるけど、決して手は止めない。

「頑張った桃華にご褒美。あとで梳かしてあげるからさ」

「それなら……Pちゃまはあいからわず強引ですわね」

温かな陽だまりの中をそうして歩いていると、目的地まであっという間だった。

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8: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:12:47 ID:VsV.wk.iw

事務所の裏の河川敷にちょっとした桜並木がある。きっと少しまえだったならばたくさんの人で賑わっていただろうけれど、今日は俺と桃華で貸し切りだ。

「さぁPちゃま。どうぞこちらへ」

いそいそと大き目なバスケットから小さなビニールシートを広げると、俺を手招きした。

「それじゃお邪魔します」

視界が下がると上から桜を見上げる形になって、より桜のシルエットが鮮明になる。

「花が少ないけど、これはこれで良いな」

「そうですわね。わたくしとPちゃまだけの特等席です」

そう言って差し出されてお茶は、じんわりと体に染みわたり、ほっこりと体を温めてくれた。


9: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:26:27 ID:VsV.wk.iw

「それと……ええと、これをよろしければ召し上がってください」

おずおずと桃華から手渡されたのは可愛らしい弁当箱。

「お口にあうかはわかりませんが、お腹の足しにはなると思いますわ」

この口ぶりから察するに手作りの弁当なのだろうか。

「ありがとう。それじゃあ早速いただきます」

わくわくしながら弁当箱の蓋を開ける。卵焼きにウインナーにポテトサラダ、それとミニトマトが綺麗にまとまっている。

「おお、これはすごいな」

思わず声が出て、遅れて自分の腹の虫がくうっと鳴った。


10: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:36:35 ID:VsV.wk.iw

まず卵焼きに箸をつける。うん、甘くて俺好みの卵焼きだ。ウインナーも良い焼き加減だし、ポテトサラダもマヨネーズが少なめで良い。白飯も固めに炊かれていて、言い過ぎかもしれないが、俺の好みを知りつくした弁当だ。

こうなるともう箸が止まらなくなる。わしわしと弁当をかっこんで、最後にミニトマトを口の中に放り込むと、あっという間に空っぽになった。

「ごちそうさまでしたっと」

「そんなに早く食べて大丈夫ですの? 今お茶を用意しますから」

桃華は自分の弁当箱を置くと、そそくさと水筒からお茶を出してくれた。よく見てみると桃華の弁当は三分の二くらいは残っており、もう少し味わって食べればよかったと後悔した。


11: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:44:35 ID:VsV.wk.iw

「この弁当はやっぱり桃華の手作りなのか?」

お茶をすすりながら、桃華へと質問する。

「……ええ。不格好ですが、味には自信がありましたわ。Pちゃまのお弁当箱を見て確信に変わりました」

空っぽになった弁当箱をかたしながら、桃華がほほ笑む。

「今度来るときにはもう少し上達しておきますので。ですから、次もご一緒していただけますか?」

小さなレディのお誘いに、俺は感謝の念と精一杯の笑顔を作って頷く。

「もちろん。また来年も再来年も、こうやって花見をしよう」

残り僅かな桜が散って風に乗っていく。けれど、俺の前には綺麗な華が咲きほこっていた。



おしまい


12: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)00:45:34 ID:VsV.wk.iw

ありがとうございました。
次の安価は時間が出来たらもらいます。


13: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:18:32 ID:VsV.wk.iw

こんばんは、>>15の安価書きます。


15: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:30:59 ID:GaO.uo.e1

早耶の生配信


16: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:36:48 ID:VsV.wk.iw

それでは「早耶の生配信」でひとつ


17: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:45:07 ID:VsV.wk.iw

「配信動画……?」

配信って言うと……YouTubeとかのやつかな。

「えっとぉ、その、配信を早耶がやるんですかぁ?」

「そうなんだ。アイドル達の身近な姿を配信するっていう形でさ。もちろん変なことはさせないし、事務所のバックアップもある」

なるほど。プロデューサーさんの説明を聞く感じだと、おたよりの返事したり、その日の報告みたいなので良いみたい。

「わかりましたぁ。それじゃあ早耶はこれで失礼しますねぇ」

なるべく早耶たちの顔を知ってもらおうという魂胆だろうけど、こういうのは正直にどうなんだろう、なんて思ったけど、せっかくプロデューサーさんたちが考えてくれた企画だしやってみよう。


18: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:53:11 ID:VsV.wk.iw

「おはようございます。辻野あかりです、よろしくお願いします!」

えっ? この子だれですか? ここにいるってことはうちの事務所かほかの事務所の関係者さんなのかな。

ぴょこりとりんごの葉っぱみたいな髪を揺らしながら、元気な声で挨拶をされて、ちょっと戸惑っちゃった。

「松原早耶です。よろしくお願いしますぅ」

どなたかはわからないけど、挨拶はしっかりと。

「あは♪ とうとう私もアイドルとしての一歩を踏み出すんご」

……んご? 今はそれは置いておいて、この子もアイドルなんだ。早耶が知らないってことは新人さんかも。


19: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)20:58:03 ID:VsV.wk.iw

「二人ともおはよう。今日はよろしくね」

あ、プロデューサーさん。と、カメラやらマイクやら機材がたくさん。

「おはようございますぅ」「おはようございます!」

プロデューサーさんと辻野さんは面識があるみたい。ということはうちの新人さんってこと。

「あの、早耶はどういうことはさっぱりなんですけどぉ……」

この中で自分だけ仲間外れなんて嫌なので、きちんと説明してもらわないと……。


20: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)21:07:38 ID:VsV.wk.iw

「これも上からのお達しでさ。早耶の新鮮な反応が欲しかったんだってさ」

あはは、と笑って説明してくれたけどちょっと怪しい気もする。

「もしかして説明するのを忘れてたりとか……」

「あ! ほら、辻野さんは挨拶したかな?」

むぅ……やっぱり怪しい。

「はい、先ほど! やっぱりアイドルやってる人は違いますね」

「そうかそうか。それじゃあ今日は早耶に色々教えてもらうと良いよ」

早耶のプロデューサーさんはちょっと抜けてるところがある。致命的じゃないけど、ちょっとこういうときはずるいって感じる。


21: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)21:17:23 ID:VsV.wk.iw

「はい。それじゃあそろそろ取り掛かろうか、二人とも準備はいいか?」

「もちろんですぅ」「んご! よろしくお願いします」

早耶もプロなんだし上手にやらないと。今日は後輩さんもいるんだし、良いところ見せなきゃね。

流れはプロデューサーさんが指示を出してくれるみたいだし、頑張ろう。

「それじゃあ、3、2、1」

でも、早耶に何も教えてくれなかった罰として、美味しいご飯でもおごってもらわなくちゃ。


22: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)21:27:40 ID:VsV.wk.iw

「松原早耶です。よろしくお願いしまぁす」

「あ……えっ……」

これくらいは想定内。

「今日は新人アイドルの後輩を連れてきてまぁす。さぁ、あかりちゃん挨拶してくださいねぇ」

少しでも話しやすくなる状況を作る。早耶の役目はそれしかない。

「山形から来ました! 辻野あかりです。よろしくお願いしますんご」

「よくできましたぁ。今日はこの二人でお送りしまぁす」

気負わず焦らず、普段どおりに。あかりちゃんと楽しくお話するような感じでやってみよう。


23: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)21:43:07 ID:VsV.wk.iw

「あかりちゃんはどうしてアイドルに?」

さっきの会話だけじゃあかりちゃんの人となりが全く分からないので、共通の話題であろうアイドルのことを聞いてみた。

「私はりんごの宣伝を兼ねてです」

りんご……? んご……? んごってそういうこと!?

「あの、もしかしてその『んご』って」

「都会で流行ってる話し方なんですよね? ネットで調べたんです」

ものすごいすれ違い。おバカなこと考えてた早耶を忘れたい……それに「んご」って話し方初めて聞いたような……


24: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)21:56:26 ID:VsV.wk.iw

「そうだ、りんご食べますか? 自慢の山形のりんごです!」

「あらぁ、こんなにたくさん」

プロデューサーさんはフリップで食べて良いよと指示してくれた。

「それじゃあ早耶がリンゴの皮を剥きますねぇ」

「私がやります。ちょっと待っててくださいね」

鳴れた手つきでするすると皮を剥いて、これはうさぎさんの形かな。皮が途中で切れてないし上手。


25: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)22:02:53 ID:VsV.wk.iw

「召し上がってください! 美味しいですよ」

お皿にもられたたくさんのりんご。蜜をたくさん含んでいて、見ているだけでも美味しそう。

「それでは頂きますねぇ」

一つ齧ってみる。一口、二口と食べ勧めているとすぐなくなっちゃった。

「もう一つ頂きますねぇ」

「どうぞどうぞ! たくさん食べてほしいんご!」

これは……とっても美味しい、んご。


26: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)22:13:15 ID:VsV.wk.iw

「りんごがこんなに美味しいなんて……」

「やったぁ! 松原さんもこれでりんご好きになってくれましたね、プロデューサーさんも食べてほしいんご」

いつのまにか画面外にいるプロデューサーさんにりんごを渡しに行っちゃった……

「うお! これ美味いな、もっとあるか?」なんて聞こえてくるし。

「もちろんです! まだまだたくさんありますからね」

これは配信って言うか、もうりんごの試食会?


27: 名無しさん@おーぷん 平成31年 04/18(木)22:22:33 ID:VsV.wk.iw

結局あの配信はお蔵入りになっちゃったけど、あれがきっかけになってあかりちゃんとは仲良くさせてもらってる。

「松原さん、おはようございます!」

「おはようございます。あかりちゃん」

今は緊張しないで話してくれるし、一歩前進したと思う。ただ、ひとつだけ気になることがあって……。

「今日も美味しいりんご持ってきました! よかったら食べてほしいんご」

「……プロデューサーさんが食べたいって言ってましたよぉ」

せっかくのお気持ちだけど、毎回こうもりんごを食べさせられるとちょっと苦手意識みたいなものがでちゃう……んご。

「はっ! 早耶は今なにを……?」

しばらくはりんごは食べなくて良いですねぇ……。




おしまい








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