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トップページモバマス > 【デレマス】ファースト・シンデレラ Scene 2

146: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 22:58:18.83 ID:PtCBDhPH0


Scene 2

前スレ
【デレマス】ファースト・シンデレラ
【デレマス】ファースト・シンデレラ Scene 1

147: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 22:58:49.09 ID:PtCBDhPH0


何度目かの待ち合わせ。

賑やかな夜の街に君を誘う。

時計を見ながら待つ僕の前に、君は悠然と現れた。

周りの女性に比べてやや小さな背丈からは想像もできない。

豊かな胸元を見せつけるような大胆なドレス。

タイトなスカートからふっくらとした太腿が伸びて。

「待たせたかしら?」

君は挑発的な上目遣いで僕の顔を覗き込んでくる。

「いや。今来たところだよ」

決り文句にむず痒さを感じつつ、君の手を取る。


148: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 22:59:18.65 ID:PtCBDhPH0


君は僕より少しだけ年上だけど、何かにつけてリードされたがっているのは知っている。

「今日はいつものバーで少し飲んだあと……」

細くくびれた腰に手を回し、こちら側に引き寄せる。

「会えなかった時間をたっぷりと埋め合わせしよう」

周りの目なんか気にせず、君の耳元に囁きかけた。

「若いわねぇ」

君は妖艶さに芳醇な色香を混ぜて、童顔な顔立ちに背徳的な微笑みを浮かべる。

「いいわ。今夜も付き合ってあげる……」

指先で僕の頬をなぞる君に、これから訪れる目眩く時への誘いを感じて……。






転載元:【デレマス】ファースト・シンデレラ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1669389946/



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149: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 22:59:48.16 ID:PtCBDhPH0


『朝よー!(カンカン!)起きなさい!(カンカン!!)』

けたたましく響く目覚ましボイスに脳が激しく揺さぶられる。

この【片桐早苗ボイス付き目覚まし時計:4980円(税抜)】を使ってから、寝坊知らずだ。

問題は、せっかく夢の中で片桐早苗さんに出会えたとしても、

そこでの触れ合いでたとえどんな美しく扇情的な装いであったとしても、

時間がくれば早苗さんは突然割烹着姿に着替えてフライパンを叩き出すということだろう。

「おはよう。早苗さん」

壁の、早苗さんが浴衣姿でにこやかにビールを煽る広告ポスターにひと声かけて、身支度を始めた。


150: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:00:22.61 ID:PtCBDhPH0


早苗さんが28歳にしてアイドルデビューを果たして暫く経った頃に、

テレビのバラエティで朗らかに、ハキハキと周りの出演者たちを引っ張っている早苗さんを見た。

なんて素敵な人なんだろうと早苗さんのファンになってから、毎日が随分と変わった。

大学を卒業して2年目、24歳の僕にとって早苗さんは年上のお姉さんだ。

友人たちや会社の同期達は同じ28歳でもクールで知的な美女、川島瑞樹さんのファンが多い。


151: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:00:48.47 ID:PtCBDhPH0


童顔で背も小さく、なのに抜群のスタイルを誇る早苗さんが好みだというと、

周囲からはなぜか口リコン扱いされることもあり、あまり口に出さなくなった。

それでも、こうやって早苗さんの写真集や歌、グッズなんかを買い集めて、

どんどん活躍の場を増やしていく早苗さんの笑顔を思い浮かべると、

どんなに仕事が辛くても気持ちが楽になるんだ。


152: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:01:19.70 ID:PtCBDhPH0


帰りがけに寄ったコンビニ。

巻頭グラビアを飾る早苗さんが表紙になっているからと

ろくに中身を読むもないタブロイド雑誌を買うのも珍しくなくなった。

部屋に戻ると、10代の少年のような胸の高まりを抑えながら雑誌をめくる。

水着姿で、ギュッと両肩を窄めて谷間を強調して見せては、イタズラっぽく笑う早苗さん。

写真一枚一枚に「どうもありがとう」と声に出す僕も相当なもんだ。

(一度でいいから、会ってみたいなぁ)


153: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:01:49.18 ID:PtCBDhPH0


東京の方では、頻繁にLIVEや握手会が開催されていて、早苗さんもよく出演している。

地方都市に在住で土日が出勤の僕は、未だに映像でも写真でもない早苗さんを見たことがない。

LIVE映像を見ると、早苗さんは楽しそうに歌って踊って、時折カメラに視線を送ってウインクなんかして。

まるで、誘惑されているような気持ちになってくる。

だからあんな夢を見るんだ。覚めてほしくない、願望に塗れた生々しい夢を。


154: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:02:19.33 ID:PtCBDhPH0


「どうかしたの?」

「……いや。特には」

久しぶりに休日が合ったこともあり、その日は朝から彼女と出かけていた。

彼女とは大学時代から付き合っていて、もうすぐ6年になろうとしている。

最初は趣味の話で盛り上がったことから始まった関係も、

何年も経てばお互いに興味の向かないジャンルをいくつか抱えるようになっている。

ただお互いに余計な詮索をしない関係は、居心地が悪いわけではない。


155: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:02:50.00 ID:PtCBDhPH0

そして当然、彼女には早苗さんのファンであることは伝えていない。

多分僕は、彼女より早苗さんに恋をしてるんだろう。

もちろんこんな気持ちを、頻繁に夢に見ているなど彼女に話せるわけない。

このぬるま湯のような関係を捨ててしまうほどの度胸はない、そんな小心者の恋なんだ。


156: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:03:23.00 ID:PtCBDhPH0


……ランチのために立ち寄った喫茶店で、彼女はこれ見よがしに結婚情報誌を眺めていた。

その号には短いながらも早苗さんへのインタビューが掲載されているのを知っている。

ウェディングドレスを着た早苗さんの写真を想像して、なぜかとても嬉しくなった。

「……何を笑ってるの?」

彼女が嬉しそうにこちらを見てきた。

……やっぱりこういうのも悪くない。


157: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:03:59.34 ID:PtCBDhPH0


一週間後、ファンクラブの連絡で、早苗さんが近くの街にイベントで来ることを知った。

ユニット『セクシーギルティー』でのトークショーの後、新曲のお披露目と握手会が開催されるそうだ。

千載一遇だった。多分もう、二度とこんな機会は訪れない。

直ぐに予約をとって、次の日には有給休暇も確保した。


158: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:04:28.73 ID:PtCBDhPH0


後から知ったが、握手会は先着100名の狭き門だった。

質問が一つだけ許されるそうなので、どうしても聞いてみたかったことを聞くことにした。

……それがつまみ出されるかも知れない危険な質問だというのは後から知ったことだけど。

とにかく、永遠とも思えるような日々を過ごした後、待ちに待ったイベントの日がやってきた。


159: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:04:58.33 ID:PtCBDhPH0


(動いてる……!そこに居る……!)

トークショーでも、LIVEでもとにかく頭にあったのはほとんどその言葉。

初めて、本物の片桐早苗さんを見た。

画面の向こうから見るのに比べて、本当に可愛らしくて、本当に元気で、本当にセクシーで。

ユニットメンバーがふたりとも高校生だから、頼もしいお姉さんとして存分に魅せてもらえた。

思い残すことはなにもない。いや、まだ最後の思い残しがある。


160: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:05:29.88 ID:PtCBDhPH0


新曲の披露が終わって、僕はもう魂が抜けたような感覚だったけれど最後の力を振り絞って握手会の行列に並ぶ。

少しずつ、少しずつ距離が縮まっていく。

もう少しで、早苗さんに触れることができる。

早苗さんはまるでファンがずっと前からの友人であるかのように短い対話を楽しんでいた。

あと3人、あと2人、あと1人。

鼓動が早鐘のようだ。口から飛び出してしまいそう、というのはこういうことを言うのだろう。


161: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:05:59.56 ID:PtCBDhPH0


「はじめまして!よね!?」

自分の番になって、戸惑ってしまった僕の手を、早苗さんは強引に両手で手を掴んできた。

近い。小さい。可愛い。柔らかい。でもちょっと力が強い。いい匂いがする。あぁ……。

「あ、あの、ずっと、ずっと好きでした!」

しまった。何もかもすっ飛ばして……。

「あはは!ありがと!お姉さんもみんなが大好きよ!」

そこはやっぱりアイドルなんだ。早苗さんは何の迷いもなく、何の躊躇いもなかった。


162: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:06:29.29 ID:PtCBDhPH0


目の前の早苗さんは、夢で見た早苗さんなんかよりも、もっともっと魅力的だった。

決して、手に届かないところに居るんだということを実感できるほどに。

「それで、君はお姉さんに何を聞きたいのかな?」

そうだった。早苗さんは本当に優しい人なんだな……。

「えっと、あの、早苗さん!」

「なーに♪」

大きな目をぱっちりと開けて、朗らかに笑ってくれている。

「早苗さんは今、恋を……していますか……?」


163: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:06:59.05 ID:PtCBDhPH0


最後の方は、もう殆ど聞こえていないのではないだろうか。

怖くて、怖くて目を伏せてしまった。周りが少しざわついているような気がする。あぁ。終わった。

早苗さんの手は、ずっと僕の手を握ってくれたままだったけれど……。

「うふふっ……アイドルの恋は秘密よ♪」

そう言って、うつむいたままの僕の頬を両手で挟んで。

「あはは!しゃんとなさい!次は堂々と聞いてきなさいよ♪」

早苗さんはウインクをして、ペ口リと舌を出した。


164: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:07:30.01 ID:PtCBDhPH0


握手会を終えて、さっきまで早苗さんに包まれていた右手と、頬を交互に左手でなぞりながら家路につく。

そう、秘密だ。早苗さんもまた、秘密の恋をしているんだ。そういうことにしておこう。

僕と同じなんだ。そう思うと、少し心が楽になる。

誰に恋しているのかなんて、この際どうでもいい。踏ん切りがついた。

これからも、ずっと応援していよう。ファンであり続けよう。

そして僕は僕の生活を続けていこう。

今度は、胸を張って大好きだと言えるように。


165: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:07:59.59 ID:PtCBDhPH0


君を想って、この後ずっと生きてゆこう。

それでいい。

君を想って、この後ずっと頑張ってゆこう。

何も変わらない。


166: ◆xMUmPABXRw 2022/12/08(木) 23:08:45.10 ID:PtCBDhPH0


【Scene [ FRIENDS Ⅱ] ある密かな恋 ― 了 ―】


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