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トップページ765プロ > 千早「雨に濡れて」

1: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:05:21.80 ID:kOVaQeaTo

スーパーでお昼ご飯の材料を買って、いざ外に出ようとした所で、雨がざんざんと降っているのが見えた。

最近、こう言う突然の雨が多いのよね。夏だからかしら?

スーパーの店員が慌てて傘立てと売り物の傘を用意しているのを横目に、雨が弱まるタイミングを待つ。

別に、家までかなり近いから、私単身ならそのまま帰ってもよかったんだけど、今日のお昼ご飯を犠牲にするわけにはいかない。



2: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:05:50.84 ID:kOVaQeaTo

土砂降りの外を眺めていると、ランチ帰りのサラリーマン達が折り畳み傘を差して歩いていたり、

ずぶ濡れの学生がカバンを傘に走っていたり。

ちょうどさっきのカバンを傘にしていた学生がスーパーの入り口に避難してきた所で、ふっと気がついた。


3: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:06:16.41 ID:kOVaQeaTo

「……真美じゃない」

「あり? 千早お姉ちゃん?」

遠目では気がつかなかったけど、その学生は同じ事務所のアイドル、双海真美だった。


4: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:06:57.26 ID:kOVaQeaTo

私は入り口近くにある売り物の傘を二本掴んでレジに持って行き、会計を急いで済ます。

すぐに使うと言って包装を剥がしてもらってから、真美の元へ戻る。

「千早お姉ちゃんも傘持ってなかったんだ」

「家が近いから雨が止むまで待とうかと思ったのだけど……真美、この後予定はない?」

「へ? あ、特に平気だけど……どったの?」


5: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:07:24.02 ID:kOVaQeaTo

「風邪引いちゃうから私の家に来なさい」

「え、千早お姉ちゃんの家に?」

真美は驚いたように聞き返してくるが、当然である。

真美は水に落ちたのかってくらいずぶ濡れだし、外の雨は収まるどころか更に激しくなるし。

私は真美に傘を渡して、スーパーの外へと歩き出した。



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6: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:08:57.71 ID:kOVaQeaTo

自宅に着く頃には雨も少し落ち着いていた。

傘立てに傘を入れて、真美を家に上げる。

「お邪魔しまーす」

「どうぞ。そのままだと風邪引いてしまうから、まずはシャワーでも浴びて来なさい」

「ほーい」


7: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:10:05.39 ID:kOVaQeaTo

「上がったらあったかい飲み物を用意しておくわね」

真美をお風呂場に押し込んでから、着替えとタオルを用意しておく。

次に、台所でコーヒーとココアを用意して、リビングのテーブルに置いておく。

最後に、押し入れからクッションを一個引っ張り出してきて、準備完了。

ついでにご飯の支度でもしようかと思った所で、真美がお風呂場から出てきた。


8: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:10:47.36 ID:kOVaQeaTo

「いやーサッパリしたぜーっ!」

「ふふ、良かった。ココア飲む?」

「いいの? あんがと!」

ちょっと降られただけですぐ身体は冷えてしまうから、ちゃんと暖かくしないと。

真美はすぐに飲み干して、ふいーっと息を吐いた。


9: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:12:50.80 ID:kOVaQeaTo

「落ち着いた?」

「うん。意外と冷えるんだねぃ……」

っと、ノンビリしてたらいけない。

真美の着ていたものを洗濯しないと。

脱衣所に行って洗濯機を回した辺りで私のお腹がぐう、と鳴った。

聞かれてなくて良かったと思って脱衣所から出ると、


10: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:13:27.34 ID:kOVaQeaTo

「んっふっふ~、千早お姉ちゃんの腹の虫が騒いでますなぁ」


11: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:14:49.93 ID:kOVaQeaTo

バッチリ聞かれていた。

誤魔化しながら台所に向かうと、後ろから同じような、ぐう、と言う音が聞こえた。


振り返ると、真美がバツの悪そうな顔で笑っていた。


12: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:16:15.77 ID:kOVaQeaTo

「真美もお腹空いていたのね。ご飯にしましょう」

「やた! ……って、真美もいいの?」

「もちろん」

「千早お姉ちゃん大好き!」


13: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:17:05.42 ID:kOVaQeaTo

現金なものね、と笑いながら台所に立つ。

と言っても、今日は塩ラーメンなのだけど……。

オフで学校もない日だし、たまにはと思って袋で買った物だ。

「塩ラーメンで大丈夫?」

「うん! ラーメン好きだよん」


14: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:19:47.41 ID:kOVaQeaTo

「四条さんが聞いたら喜ぶわね」

「……!」

真美は慌てて辺りを見渡して、ホッと胸をなでおろしている。

……からかったつもりはないのだけど。


17: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:23:41.38 ID:kOVaQeaTo

さて、そうこうしているうちにインスタントのラーメンは出来上がり、テーブルの上には二人分のラーメンが湯気を立てている。

「いただきまーす!」

「召し上がれ」

塩ラーメンはあっさりしていて食べやすい。

四条さんは豚骨ラーメンや醤油ラーメンなど、濃いラーメンが好きみたいだけど、私は塩ラーメンが一番だと思う。

その話を真美にしたら、普通の醤油が一番だと力説してきた。

ラーメンは相容れないのね。


18: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:25:30.15 ID:kOVaQeaTo

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまー! 美味しかったよ」

食器を片付けて、洗濯機を見ると、ちょうど終わった頃だった。

乾燥機に服を入れて、リビングに戻ると、真美がカーテンを開けて外を見ていた。


19: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:28:30.26 ID:kOVaQeaTo

「見て! 虹だよ!」

真美のはしゃぐ様な声を聞いて窓の外を見ると、そこには綺麗な虹が見えた。

思わず目を奪われてしまう。

最近虹を見たのはいつだったか……。

思い出せない位には虹を見ていなかった。


20: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:30:17.12 ID:kOVaQeaTo

「綺麗だねぃ」

「ええ、そうね。綺麗」

二人で顔を見合わせて、くすっと笑う。


21: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:32:07.42 ID:kOVaQeaTo

こんな雨も悪くないかもしれない。

雨上がりにはこんなに綺麗な虹が見えて。

今の私たちはきっと、世界で一番美しい虹を見ているに違いない。

だって、一緒に虹を見ている仲間がいるから。


22: ◆RY6L0rQza2 2015/08/17(月) 21:32:39.64 ID:kOVaQeaTo

「さ、服が乾くまでゲームでもしましょうか」

「おっけー! 真美が勝っちゃうかんね!」


おわり








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